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新型肺炎でイタリア医療崩壊「60代以上に人工呼吸器使わず」 [日々想々]

新型肺炎でイタリア医療崩壊「60代以上に人工呼吸器使わず」

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 イタリアで、新型コロナウイルスの感染が急激に広がっている。ジュゼッペ・コンテ首相は、3月9日、北部のみに限定してきた移動制限を、10日からイタリア全土に拡大することを発表した。仕事など正当な理由がある場合のみ、移動が許可されるという。
 イタリアの感染者数は9000人を超え、死者の数は中国に次ぐ世界第2位となっている。コンテ首相は「イタリアの将来は私たちの手にある。私たちは今まで以上に責任を持たねばならない」と宣言した。

 9日、イタリアの保守系メディア『イル・ジョナーレ』に、「すべての患者に挿管はできない。60代以上は無理だ」というタイトルで、ミラノの医師のインタビューが掲載された。
 医師は、現在患者におこなっている処置について、「エイズ用のウイルス薬などを投与していますが、うまく効くかはわかりません。できることは人工呼吸器の挿管です。患者の肺を休ませ、免疫が復活するのを待つだけです」と話す。
 だが、急激な感染拡大により、人工呼吸器が足りなくなっているという。
 「これから挿管する人を選択する必要があります。若い人や、他に症状のない人を選びます。ニグアルダ(ミラノの地区)の他の大病院ではもはや挿管もしません」
 患者が多すぎて、すでに60代以上の患者には人工呼吸器さえ使えなくなっているというのだ。WHO(世界保健機関)のテドロス事務局長は、9日の会見で「パンデミックの脅威が現実味を帯びてきた」と発言している。感染拡大が止まらなければ、日本でも「命の選別」が現実味を帯びてくる。
 【Yahoo! Japan ニュース 3/11(水) 6:33配信】
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ブログが重い [日々想々]

重いのは広告のせい?

 「設定」で広告表示をOFFにしたが、有料設定での非表示ではないためか広告は完全にはOFFとならず、相変わらずブログは重い。
 
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REBT(論理療法、論理情動行動療法、人生哲学感情心理療法) [日々想々]

 水谷明弘先生による職場講演会(2016.7.27)の最後は、REBTによる評価であった。
 興味のある方は表(https://www.facebook.com/photo.php?fbid=615735725262777&set=a.530169687152715.1073741826.100004790640447&type=3&theater)にて、自己評価をしてみて下さい。

結果の解析
 REBT解析.jpg

 上記は私の結果です。
 「依存」性が乏しいのは良いことかも知れないが、「限界まで行って潰れるタイプ」とズバリ当てられてしまいました。 

詳しく知りたい方は以下など。
 アルバート・エリス(A.Ellis)イラショナル・ビリーフ(irrational belief)
 http://digitalword.seesaa.net/article/17884995.html

D7への思い─改めて『告知』について考えてみたい [日々想々]

https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/601568503346166
D7への思い─改めて『告知』について考えてみたい―「早期診断・早期絶望」にならないためには何が求められているのか?」(https://www.facebook.com/photo.php?fbid=601360306700319&set=a.530169687152715.1073741826.100004790640447&type=3&theater)に寄せられた樋口直美さんからのご指摘(https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/601462810023402?pnref=story):

樋口直美さんのご意見
 私は、医師にも、「わからない。(特に初期であるほど)」ということを前提にして欲しいです。

Re(私の返信):
 私自身が経験した「誤診例」に関して、以前、アピタルで記述(言及)したことがあります。
 探すのは大変ですが、見つけたらFacebookにてアップ致します。


誤診、それは認知症診療の世界では約20%!

 NINCDS-ADRDAによって策定されたアルツハイマー病の診断基準については、シリーズ第19回『認知症の代表的疾患─アルツハイマー病 アルツハイマー病の臨床診断』において少しだけ触れておりますね。有用な診断基準であることは間違いないのですが、20%以上の非AD疾患をADと誤診していることも事実ではあります。
 アルツハイマー病の臨床診断は決して簡単ではない(誤診が結構多い!)という事実はこの機会にきちんと覚えておいて下さいね。
 東京大学大学院神経病理学の岩坪威教授が「誤診」が多いことについて最近のデータも交えて報告しておりますので以下にご紹介します。
 「1984年に米国国立神経疾患・脳卒中研究所(National Institute of Neurological and Communicative Disorders and Stroke;NINCDS)とアルツハイマー病関連疾患協会(Alzheimer's Disease and Related Disorders Association;ADRDA)によって策定されたアルツハイマー病(Alzheimer's disease;AD)の診断基準(McKhann G, Drachman D, Folstein M et al:Clinical diagnosis of Alzheimer's disease: report of the NINCDS-ADRDA Work Group under the auspices of Department of Health and Human Services Task Force on Alzheimer's Disease. Neurology Vol.34 939-944 1984)はその後の臨床、研究において幅広く使用されてきた。その最大の理由としては、magnetic resonance imaging(MRI)はおろかcomputed tomography(CT)スキャンすら臨床現場に登場して日が浅かった時代に、主に臨床症状から診断することで感度81%、特異度70%(Knopman DS, DeKosky ST, Cummings JL et al:Practice parameter: diagnosis of dementia(an evidence-based review). Report of the Quality Standards Subcommittee of the American Academy of Neurology. Neurology Vol.56 1143-1153 2001)を達成していたことであろう。検査所見や画像所見も取り入れられてはいたが、それらの役割はあくまで副次的項目である上、それらの結果が『正常』である事が条件とされていたため、あくまで他疾患の除外が目的とされていた。この基準はその後30年近く使用され続けており、もちろん現在でも有用である事に変わりはない。
 前述のようにNINCDS-ADRDA基準による診断の確度は高く見積もっても80%であり、20%以上の非AD疾患をADと誤診している事になる。実際、NINCDS-ADRDA基準でADと診断された患者にアミロイドPETを実施した場合、実に16%の『AD』患者で検出感度以上のAβ沈着のないことが示されている(Johnson KA, Sperling RA, Gidicsin CM et al:Florbetapir(F18-AV-45)PET to assess amyloid burden in Alzheimer's disease dementia, mild cognitive impairment, and normal aging. Alzheimer's & dementia: the journal of the Alzheimer's Association PubMed PMID:23375563 2013)。」(岩田 淳、岩坪 威:アルツハイマー病の新しい診断ガイドライン─オーバービュー. Dementia Japan Vol.27 307-315 2013)


朝日新聞アピタル「ひょっとして認知症-PartⅡ」第349回『それって本当に認知症?─専門医でも見逃す認知症』(2013年12月20日公開)
 私は開業医の先生向けの認知症講演会では、「認知症専門医が見逃した認知症」というスライドを複数入れて、専門医であっても初期段階のアルツハイマー型認知症は見逃すケースが多々ありますので細心の注意を払って診察する必要がありますよ!と啓蒙するとともに、私自身の反省材料としてきました。
 しかしながら、細心の注意を払っていてもやはり誤診してしまうことはあります。そういった自験例をご紹介しましょう。
【症例】
 70歳代後半・女性
【病歴】
 X-2年、語想起障害にて発症。開業医にてアルツハイマー型認知症と診断され、以降はドネペジルによる治療を受けてきた。
 X年、榊原白鳳病院を初診。初診時の改訂長谷川式認知症スクリーニングテスト(HDS-R)は8点であった。HDS-Rの点数から判断すると比較的進行したアルツハイマー型認知症と思われたため、ドネペジルを5mgから10mgに増量してみたものの明確な改善効果は確認されなかった。効果が認められなかったため、ドネペジルは5mgの維持量に戻して継続した。
 X+1年になると焦燥(メモ1参照)が目立ってきたため、メマンチン(http://apital.asahi.com/article/kasama/2013040200011.html)の併用を開始した。メマンチン投与により穏やかとなり、HDS-Rも8→9点とほんのわずかではあるものの改善した。
 X+3年のHDS-Rは、6点であり進行速度は比較的穏やかであった。
 シリーズ第14回『認知症の診断─素人判断は難しい』において述べましたように、典型的なアルツハイマー型認知症であれば、通常はHDS-Rが年間2.5点程度悪化していくのですがこのケースにおいては3年間で2点しか悪化しておりません。
 不思議に感じて脳の断層撮影を再検査してみました。すると、3年前と比べて左側頭葉の萎縮が顕著になっておりました。
【最終診断】
 進行性非流暢性失語(Progressive non-fluent aphasia;PNFA)

メモ1:焦燥
 焦燥とはイライラして落ち着かない状態を指し、しばしば、徘徊、暴言・暴力、大声、拒絶、常同行為となって表出されます。
 焦燥は認知症患者さんの約半数が呈するとされております。抗うつ薬の副作用として焦燥が悪化しているケースもあります。
 焦燥に対しては、非定型抗精神病薬(リスペリドン、クエチアピン、オランザピンなど)やアセチルコリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン)あるいはメマンチンで改善したとの報告もされております。また、バルプロ酸、カルバマゼピンの有効性も報告されておりますが、エビデンスとしては確立されておりません。
 焦燥への対応を以下に列記します。
 a)不快な刺激を除去する(室温・照度の調整、騒音を減らす)
 b)身体的不具合(便秘・疼痛・掻痒感など)への対応
 c)好きな音楽などで落ち着ける環境を作る
 d)分かりやすい言葉・文章を使ってコミュニケーションを図る
 e)安心感を与える接し方(ゆっくりと穏やかな対応など)


朝日新聞アピタル「ひょっとして認知症-PartⅡ」第359回『それって本当に認知症?─「誤診症例から学ぶ」』(2013年12月30日公開)
 細田益宏医師および古田光医師の報告にみられるように、精神疾患と認知症の鑑別が非常に難しいケースは歴然と存在します。私も精神神経科(メモ4参照)での臨床経験がありませんので、精神疾患と認知症の鑑別に難渋するケースがあるのは紛れもない事実です。
 私のような精神疾患の診療を苦手とする認知症専門医にとって非常に有益な本が出版されております。その著書名は、『誤診症例から学ぶ─認知症とその他の疾患の鑑別』です。
 この著書の編集を担当した筑波大学医学医療系臨床医学域精神医学の朝田隆教授が序文において非常に印象的なことを述べておられますので一部改変して以下にご紹介しましょう(朝田 隆編集:誤診症例から学ぶ─認知症とその他の疾患の鑑別 医学書院, 東京, 2013, ppvii-viii)。
 「医学雑誌『精神医学』には、ケースレポートのみならず『私のカルテから』という人気の高い投稿カテゴリーもある。系続的な臨床研究にはないレアケースの報告や、ある種の精神疾患に思いがけない薬剤が効果を奏したという内容の論文が寄せられる。そのような論文の中には、若い精神科医が筆頭著者になった誤診例や危うく誤診しそうになったケースの報告も少なくない。数年来、同誌の編集委員を務めさせていただく中でこうした諸ケースには、どうも共通するものがありそうだと感じるようになっていた。
 少なからぬ精神科の教授たちが、若い精神科医は神経学的所見を取らなくなっていると指摘されるのを聞くことがあるが、そのようなことがこうした例の背景にあるのかもしれない。
 私は認知症を専門にしているが、患者さんの団体などから認知症に絡んで精神科医療に対する意見やコメントを受けることも少なくない。その中で何度も言われて強く記憶に残るものがある。若年性認知症の診断に関して『当初うつ病と診断されて2年通った後に、実はアルツハイマー病ですと言われました。この年月をどうしてくれるの?』というものである。
 以上のような現実があるだけに、好むと好まざるとにかかわらず、多くの精神科医には器質性精神疾患・症状性精神疾患と機能性精神疾患を鑑別する能力が求められる。
 東日本大震災以降、がぜん注目されているものに失敗学がある。その根本は『失敗にはいくつかのパターンがある』という考えである。老年期精神疾患の鑑別の難しさと重要性を学ぶには、正統的な教科書スタイルというよりも痛恨の誤診症例を振り返って、失敗に至るパターンを学習することが効果的ではなかろうかと考えた。以上のような思いがあって本書を企画した。
 本書の題名には敢えて『誤診症例』という言葉を用いた。その理由を、偉大な先達の言葉を拝借してここに説明しておきたい。
 『誤診という言葉はかなりどぎつい響きをもっている。医者はみなこの言葉をはなはだしく忌み嫌う。学会報告でも“貴重な一例”とか“診断に困難をきたした症例”という演題はあっても、“誤診例”という報告はまず見当たらない。(中略)医者の間ではこの言葉をもう少し使ってもよいのではないか。あるいはその意味の取違いがないようにしておくとよい。(中略)診断とは必要なあらゆることを知り尽くそうとする終わりのない努力である』(山下 格:誤診のおこるとき─早まった了解を中心として. 精神科選書3, 診療新社, 1997)」

メモ4:精神神経科
 「最近になってわが国でも厚生労働省により、神経精神科とか精神神経科という標榜科名が廃止」(朝田 隆編集:誤診症例から学ぶ─認知症とその他の疾患の鑑別 医学書院, 東京, 2013, p2)されております。詳細はウェブサイト(http://www.med.or.jp/nichinews/n200305l.html)などでご覧頂けます。


朝日新聞アピタル「ひょっとして認知症-PartⅡ」第402回『さまざまな「急速に起きる健忘」― 一過性てんかん性健忘にも種類』(2014年2月11日公開)
 脳ドックなどを受けますと、無症候性脳梗塞が見つかるケースは多々あります。
 無症候性脳梗塞は、欧米では潜在性脳梗塞(silent cerebral infarction;SCI)と呼ばれており、韓国での報告では、40代2.4%、50代6.6%、60代14.7%、70代25%にSCIが認められたことが報告されております。なお、脳ドックを受診した健常成人(平均60歳)における無症候性脳梗塞の頻度は、60歳代から急激に増加し、70歳代以降では35%にも達するものの全体の頻度は約14%で、久山町の剖検による頻度12.9%とほぼ一致していることも報告されております(斎藤 勇:無症候性脳血管障害. 日本医師会雑誌・生涯教育シリーズ56─脳血管障害の臨床 S203-213 2001)。
 したがって70歳以上の方がCT・MRI検査を受けますと、およそ3人に1人の割合で「あなたは脳梗塞があります」と医師より告げられることになるわけですね。
 「無症候性脳梗塞」に関してもう少し詳しい情報を知りたい方は、大阪医療センターのウェブサイト(http://www.onh.go.jp/seisaku/circulation/kakusyu115.html)などご参照下さい。
 しかしながらここで注意しておくべきことがあります。隠れ脳梗塞による一過性てんかん性健忘かも…と思っていたら、そうではない場合もあるということです。2012年4月21日に開催されたアルツハイマー病研究会第13回学術シンポジウムにおいて、東京都健康長寿医療センター放射線診断科の徳丸阿耶部長は、「治りにくいてんかん性健忘として、海馬硬化症(メモ5参照)の存在を忘れてはならない」ことを指摘しました。

メモ5:海馬硬化性認知症(hippocampal sclerosis dementia;HSD)
 海馬硬化症は、てんかん・認知症などとの関連が示唆されている疾患です。高齢初発のてんかん患者さんを診察したときには、海馬硬化症も念頭におく必要があります。
 病変が海馬に限局しているときには、症状は記憶障害だけです。しかし病変が拡がってくると、その症状はアルツハイマー病と類似した症状を呈してきます。
 軽度認知障害、認知症疑いでMRIを施行した3,500例のうち、2%程度で「海馬硬化症」が確認されるそうです。海馬硬化症においては、MRI上は海馬の萎縮所見が目立つため、安易にアルツハイマー病と誤診される可能性があり注意が喚起されております(村山繁雄:認知症におけるMRI診断の可能性. 医学のあゆみ Vol.235 No.6 619-626 2010)。
 海馬は、低酸素や虚血に対して特に脆弱な部位です。心不全・呼吸不全などの内科疾患が重篤化した場合や、麻酔・手術などの際に脳が低酸素状態にさらされた場合に、海馬の神経細胞が脱落し海馬硬化症が生じうるのではないかと考えられています。
 海馬硬化症の画像診断の特徴として、両側ないしは片側の海馬の萎縮と、MRIでのT2強調画像やFLAIR画像でのシグナル上昇が指摘されています。

世帯分離 [日々想々]

「両親を離婚させるしか…」 介護費倍増、揺らぐ中流【朝日新聞デジタル 6月19日(日)18時41分配信】
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160619-00000026-asahi-soci

 特養からの請求額が昨夏以降、はね上がった。食費や部屋代に介護保険の自己負担分なども含め、月約8万円から約17万円に倍増。両親の年金は月約28万円だが、実家の借地料は月8万円近く、一人暮らしをする父(75)の医療費や社会保険料の負担も重い。男性は毎月4万円の仕送りを始めたが、なお足りない。
 負担が増えたのは、介護保険制度の改正で昨年8月から施設の食費・居住費の補助(補足給付)を受けられる条件が厳しくなったため。母は特養の住所で住民票登録をしており、実家の父と「世帯分離」をしている。これまで非課税世帯とみなされた母は補助を受けられていたが、制度改正によって世帯が別でも配偶者が住民税の課税世帯なら補助の対象外になった。

 「世帯分離」制度の活用にメスが入っていたことを私は今まで知りませんでした。
 まあ本来の姿に戻ったというべきなのでしょうか?
 でも、それがために“晩年離婚”となるとあまりにも寂しい現実ですよね。

朝日新聞アスパラクラブ「ひょっとして認知症-PartⅠ」第316回『■介護者は我慢するしかないのか(その3) 介護に困ったらケアマネジャー』(2012年2月2日公開)
 まだまだ認知症専門医数は少なく、一人一人の専門医が抱える患者数は多く、診療面で負担となっているのが事実です。私も、入院患者さん(約50名)を診療しながら「もの忘れ外来」を担っておりますので、なかなか多忙です。だからといっていきなり「かかりつけ医」に戻していたら、認知症診療に精通したかかりつけ医ならともかく、そうでなかったら家族は不安を抱え込んでしまいます。適切な介護指導をし、認知症に伴う行動障害と精神症状(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia;BPSD シリーズ第10回・35回参照)がそこそこコントロールできた時点でかかりつけ医に戻すのが望ましいと私は考えています。

 認知症の人を在宅で介護していく際には、多くの困難があります。介護者は、介護保険の仕組みをある程度理解し、上手に活用していくことも時に必要となってきます。
 介護で困ったときに身近な存在で何かと相談しやすいのは、介護支援専門員(通称:ケアマネジャー)ではないでしょうか。

 理学療法士・介護福祉士・介護支援専門員の資格を持つ岡田慎一郎氏は、著書において介護保険制度の仕組みについても言及しております(岡田慎一郎:家族のための介護入門─負担を減らす制度と技術 PHP新書, 東京, 2010, p26,p49,p63)。
 「介護とお金の問題は切っても切り離せません。介護保険は一割負担ですので、最も介護度の高い、要介護5のサービスを限度額いっぱいに使っても、自己負担は1カ月3万数千円です。実際には、介護保険サービスそのものは限度額内で利用している方が多く、この部分だけ見ると、介護にかかるお金は介護保険の創設によって、ずいぶん軽減されているように感じられます。
 しかし、実は介護保険以外にかかるお金がかなりあるのです。介護施設に入所すれば、食費や居住費など介護保険ではまかなえない部分がありますし、在宅介護でデイサービス(通所介護)などを利用するにしても、食費、オムツ、日用品、レクリエーション代などの負担が必要です。」
 「在宅介護の場合、要介護度3以上の判定であれば、支給限度額の範囲内で毎日、訪問介護サービスを利用することは可能といえます。30分~1時間の訪問介護を毎日使ったとすると、自己負担額はおよそ12,000円です。」
 「緊急に介護の必要性が生じた場合、申請前や認定前でもサービス事業者を利用したいことがあるでしょう。緊急またはやむを得ない理由によって事前に利用した分については、申請前の分も支給対象になります。サービス利用料の支払い時には全額自己負担しなければなりませんが、認定後に申請にすれば、その費用の9割分が市区町村から支給されます。ただし、認定結果が出る前に利用したサービスの料金が、認定結果の上限金額以上なった場合、超えた分は自己負担になるので注意が必要です。」(一部改変)
 種々の通所介護・施設介護の紹介、各施設・サービスの利用料金の目安なども記載されており、これから介護保険制度の概要を勉強しようという方にはうってつけの本だと思います。
 なお施設によっては、費用負担に困窮している利用者を見るに見かねて「世帯分離」という方法を勧めてくれる場合もあります。大いに議論が分かれる手法ですが、制度の詳細を知りたい方は、産経新聞ウェブサイトの世帯分離・上(http://www.sankei.co.jp/yuyulife/sonota/200706/snt070604002.htm)、世帯分離・中(http://www.sankei.co.jp/yuyulife/sonota/200706/snt070605001.htm)、世帯分離・下(http://www.sankei.co.jp/yuyulife/sonota/200706/snt070606003.htm)において概要を知ることができます。産経新聞・ゆうゆうLifeにおいて2007年6月4日~6日報道されたものです。

 以上述べたような情報は、ケアマネジャーに相談するとその時々の状況に応じていろいろアドバイスをしてもらえます。まずは担当のケアマネジャーの方に相談してみるのがよいと思います。
 もしケアマネジャーに相談しにくい内容でしたら、高齢者総合相談センター(シルバー110番)に問い合わせてみるのも一つの方法かも知れません。高齢者総合相談センターでは、高齢者やその家族が抱える高齢者福祉、介護保険、医療などの心配事、悩みごとに対する総合的な相談に応じています。ほぼ各都道府県に1カ所ずつ設置されており、設置がないところには、「シルバー110番」に代わるものがあります。相談方法は電話相談、面談などで費用は一切かかりません。プッシュホン回線の電話では、局番なしの♯8080を押すと、無料でつながるようになっています。
 鹿児島県(http://www.kaken-shakyo.jp/e/e-1.html)や山梨県(http://www.nenrin.or.jp/yamanashi/)では、シルバー110番に寄せられた相談事例がQ&A形式で紹介されています。


ケアマネジャーさんに「感謝」
投稿者:イートントン 投稿日時:12/02/02 18:15
 介護において、私の母は、認知症の度合いは低いのですが、身体的・家庭的事情が主でした。
 在宅・病院・通所・老健・入所と、お決まり?のコースをたどりました。
 その時々に、ケアマネジャーさんには、たいへんお世話になりました。「感謝」の一言です。みなさんも、困っていること等は、何でも、相談することを、お勧めします。

感謝・感謝ですよね!
投稿者:笠間 睦 投稿日時:12/02/02 19:31
イートントンさんへ
 良いケアマネさんに巡り合えて良かったですね。
 ケアマネさんには私もいつも感謝感謝です。

 ある意味、良いケアマネさんに巡り会えるかどうかも「運」だのみですよね。
 しかし、「運任せ」では不安ですよね。

 シリーズ第155回『認知症サポーター 認知症介護者の心情変化(2) 辛いときほど適切な指示』においてご紹介しましたように、かつて認知症の人と家族の会・三重県支部では、「認知症の方と家族に寄り添えるケアマネジャーのリスト」(「ぽーれぽーれ」通巻313号付録 2006.8.25発行)という資料を作成しました。
 すごく良い試みでしたのに、何故か全国に拡がりませんでしたね。その理由は、私にはよく分かりません。


>「認知症の方と家族に寄り添えるケアマネジャーのリスト」
投稿者:梨木 投稿日時:12/02/02 23:11
 三重県にはそんな凄い裏リストがあったんですね。そしてそれは普及しなかったと。そういえば世間に「名医」や「名病院」のランク本は沢山出てますが、名看護師とか名ケアマネジャーの本はないですものね。すばらしいアイデアだったのに残念!
 私の推測では、拡がらなかった理由の一つは評価の難しさと、それに伴い評価の信頼性が低く見られたからでは、と思います。
 ケアマネが思う「良いケアマネ」と利用者様・介護者様の求める「良いケアマネ」の像の統合は、時に難しかったですから。
 でもとても面白い実践だったと思うので、そのリストを活用されてどんなことが現実に起きたか、とても知りたいです。


Re:>「認知症の方と家族に寄り添えるケアマネのリスト」
投稿者:笠間 睦 投稿日時:12/02/03 05:14
梨木さんへ

> リストを活用されてどんなことが現実に起きたか

 「認知症の人と家族の会・三重県支部」の会員しか、「認知症の方と家族に寄り添えるケアマネジャーのリスト」(「ぽーれぽーれ」通巻313号付録 2006.8.25発行)という資料を目にしていませんから、一番資料が必要な介護保険を導入して間もない介護者(=当然まだ「認知症の人と家族の会」の会員ではない)が目にすることは少なかったのでしょうね。
 まあ私は個別に「新規の介護者」の方で必要な方には資料を紹介しておりましたが・・。

 という状況ですから、ほとんど活用されなかったのが実情ではなかったのかなと推測しております。

病室に写真を飾ることのもう一つの意義 [日々想々]

朝日新聞アピタル「ひょっとして認知症-PartⅡ」第700回『転倒防止─「施設で最期を」が最多』(2014年12月12日公開)
 2013年6月28日付朝日新聞においては、2013年3月に20歳以上の5千人を対象として厚生労働省が実施した「国民の意識調査」の速報値(6月27日開催の厚労省検討会にて報告)が報道されました。記事によると、認知症になった時に終末期を過ごしたい場所は、特別養護老人ホームや老人保健施設といった施設が最も多かったそうです。私は、自宅でもなく病院でもなかった状況を知り、国民が介護施設に対して抱く期待と理解が深まりつつある現状を感じました。
 日本福祉大の二木立教授は、厚生労働省の人口動態統計に基づく死亡場所別の死亡数百分率の推移(2000年から2011年)を紹介し、「自宅での看取りに過度に期待しないという認識はリアルだと思います。事実、病院での死亡割合(%)は2005年をピーク(79.8%)にして漸減(ただし実数は増加)しつつありますが、自宅での死亡割合はほとんど一定だからです。」(一部改変)と述べております(二木 立:今後の死亡急増で「死亡場所」はどう変わるか? 2012年12月22日発行日本医事新報No.4626 26-27 2012)。
 土岐内科クリニック(http://brain-gr.com/tokinaika_clinic/)の長谷川嘉哉医師(日本神経学会専門医、日本老年病学会専門医)は、在宅での看取りが増えない現状に関して、著書の中で次のように語っています(一部改変)。
 「当院では『在宅死』の希望をかなえることを目指していますが、開業10年で約200名の方を在宅で看取らせていただきました。
 2006年にようやく『在宅療養支援診療所』という制度も生まれ、在宅医療を積極的に行う診療所を登録しようという動きが進んでいますが、全国で約1万件の診療所が登録をしているものの、そのうち年間10人以上の在宅看取りを行った診療所はわずか200件という状況です。
 当院もその中に含まれたことは、ある意味自信になりましたが、今後は登録している『在宅療養支援診療所』のレベルアップが望まれるところではないでしょうか。」(長谷川嘉哉:増補版 患者と家族を支える認知症の本 学研メディカル秀潤社, 東京, 2012, p75)
 在宅療養支援診療所に関する地域の情報をお探しの方は、「在宅療養支援MAP」のウェブサイト(http://www.tcs-cc.co.jp/maps/shienmap/index.html)から入って地域の診療所を探し、そこで「詳細」をクリックすれば、「対応地域」・「対応療法」・「対応疾患」などを確認することができます。以前はWAM NET(ワムネット;http://www.wam.go.jp)において、「医療」→「在宅医療でさがす」を順にクリックし、在宅療養支援診療所を検索することができましたが現在この機能は使えなくなっており非常に残念です。
 なお、在宅療養支援診療所・機能強化型在宅療養支援診療所の要件は、ウェブサイト(http://24.iryoujimu1.com/entry15.html)にてご覧頂けます。厚生労働省の調査では、12,487件の診療所が在宅療養支援診療所として届出を済ませている(平成22年7月1日現在)ものの、実際には在宅患者の看取りを行っていない診療所が6,046件あり、一般の診療所が看取りまで支えているのが現状(太田秀樹:在宅療養支援診療所の現状と課題. 日医雑誌 第142巻・第7号 1515-1517 2013)のようです。
 余談になりますが、長谷川嘉哉医師が診療に携わるグループホームでは、入居者のご家族の方に「おじいちゃん・おばあちゃんの若いときの写真を1枚持ってきて下さい」とお願いをしているそうです。
 入居者の若かりし頃の写真を部屋に飾ると、そこで働くスタッフたちが自然とその写真を目にし、「この人も昔は普通の人だったんだ」と当たり前のことに気づきますので写真を飾っているそうです。
 長谷川嘉哉医師は、「私たちは、日頃から多くの認知症患者さんたちと接しています。どうしても、認知症のおじいさんやおばあさんを診ていると、最初からボケていたんじゃないかと思ってしまいそうになるのですが、当たり前のことですが、最初から認知症の人はいません。そのことをもっとはっきりとわかっておく必要があると感じています。その方の人生を感じることで、そこに敬意のようなものが芽生えてきます。そうすると、随分と介護のしかたも変わってくるものなのです。 」(一部改変)と語っています(長谷川嘉哉:増補版 患者と家族を支える認知症の本 学研メディカル秀潤社, 東京, 2012, p85)。

色平哲郎先生の思い出 [日々想々]

色平哲郎先生の思い出

 以前、朝日新聞社のアピタル連載を担当しておりましたときに、色平哲郎先生の書かれた『医のふるさと―認知症者が背負ってきた「ものがたり」』をご紹介させて頂いたことがあります。
 その色平哲郎先生を本日Facebookでたまたまお見かけし、本日、Facebookを通じてお友達になることが出来ました。
 以下に、その時の原稿内容をご紹介いたします。

朝日新聞アピタル「ひょっとして認知症-PartⅡ」第429回『臨時原稿 胃瘻について―平成26年度診療報酬改定』(2014年3月10日公開)
 平成26年3月5日に開催されました「平成26年度診療報酬改定説明会」資料(http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000039381.pdf)が厚生労働省のウェブサイトにおいて公開されております。

 いきなり話が脇道に逸れますが、先週の木曜日(3月6日)に私が担当しておりました患者さんの病状が悪化しました。特別な思いを抱く患者さんでしたので、急遽私は病院に駆けつけました。駆けつけた私の姿を見て当直事務をしておりました若手のNさんが「笠間先生、平成26年度診療報酬改定の胃瘻に関わる部分読まれましたか?」と声を掛けてきました。もう既に知っていることだろうなぁ…と思いつつ資料に目を通しました。しかし、資料には非常に大きな改定内容が記載されておりました。
 冒頭にて紹介しました資料のp133-135に胃瘻に関わる改定内容が記載されております。4月からいったい何が変更されるのでしょうか。

 資料の内容について私見を述べる前に、まずは胃瘻を巡る諸問題について復習しましょう。
 まずは酒井健司先生が本年3月3日に書かれました「診療報酬改定の思惑」をお読み下さい。Facebookコメント欄において私見を述べておりますが、私が一番強く主張したいのは、「胃ろうはすべて悪であると思うな」(http://apital.asahi.com/article/kasama/2013042600014.html)という視点です。
 次にシリーズ第278回「難しい早期診断と告知─胃ろうに関わる本末転倒」を読み返してみましょう。
 以下に重要な部分を抜粋(一部改変)して再掲いたします。
 「高山義浩先生は、『直観の濫用としての“胃ろう不要論”』において、『私は胃ろう推進論者ではありませんが、胃ろうを選択した方々が後ろめたさを感じることがないよう配慮したいと思っています。寝たきりでも、発語不能でも、それで尊厳がないと誰が言えるでしょうか? コミュニケーションできることは“生命の要件”ではありません。胃ろうを受けながら穏やかに眠り続けている…。そんな温室植物のように静謐な命があってもよいと私は思うのです。』と述べておられます。
 シリーズ第131回『終末期への対応─「胃ろうはすべて悪である」と思うな』において、『胃ろうは嫌だけど、経鼻経管栄養なら構わない』という全くもって不可思議な意向を述べる家族が多くなってきているという現状をご紹介しました。
 長尾和宏先生も2013年8月3日発行の日本医事新報において同様の指摘をされております。
 『この1年間で、老衰や認知症終末期の方への胃ろう造設は明らかに減っている。しかし、経鼻栄養や中心静脈栄養(IVH)は、むしろ増加し、人工的水分栄養補給(AHN)の総数としては決して減っていない。先日、テレビの某人気報道番組を観ていて腰を抜かした。高齢者への胃ろう造設に大反対されている先生の施設の様子が映されていたが、その施設にはたしかに胃ろうの方はいなくても、鼻から管を入れている患者が何人かおられたのだ。
 “これでは本末転倒だ!”と思った。経鼻チューブの苦痛があるからこそ、またIVHは非生理的で管理が大変だからこそ、便利な胃ろうに変わり普及したわけだ。しかしこの2~3年のマスコミ報道が正しく伝わらず、人工栄養法が逆行、退行しているのだ。』(長尾和宏:シリーズ「平穏死」③─水分、人工栄養補給を巡る混乱への対応. 日本医事新報No.4658 28-29 2013)」

 日本静脈経腸栄養学会もこの問題(=本来、PEGの適応である症例に対してPEGが実施できなくなっている)を「由々しき問題」として捉えており、ガイドラインには以下のように記述されております。
【PART-Ⅰ・Q6:経腸栄養のアクセスはどのように選択するの?─PEGをめぐる議論と評価】
 「現在、経皮内視鏡的胃瘻造設術(Percutaneous Endoscopic Gastrostomy;PEG)の適応に関する議論が行われている。栄養状態が維持・改善できても、ADLやQOLの改善効果が期待できない超高齢者、遷延性意識障害、末期の認知症に対するPEGは、単なる延命治療でしかないという考え方がある。この考え方に基づいてPEGは施行すべきでない、という意見が強くなっていることは否定できないが、このような症例に対するPEGの適応については社会的な議論が必要である。このPEGに対する否定的な考え方のために『本来、PEGの適応である症例に対してPEGが実施できなくなっている』状況の方が重大である。PEGを用いた経腸栄養の適応である症例に対し、経鼻胃カテーテルを用いた経腸栄養が実施されることが多くなっている、あるいはポートを用いたTPN施行症例が増加している、という、栄養管理法の選択上、間違った状況が出現していることは由々しき問題である。
 考え方の基本は、栄養管理そのものの適応について正しい判断を下すことで、栄養療法実施経路としてPEGが適応であるのなら積極的にPEGを実施するべきである。
 超高齢者や遷延性意識障害、あるいは高度の認知症であっても、栄養療法の適応であると判断された場合には、PEGが最適な栄養投与経路であることが多い。現在、栄養療法の適応とPEGの適応とが混同して議論されているが、これらは分けて考えるべきであり、したがって、これらの症例においても、栄養療法という観点から適応と判断されたら、積極的にPEGを実施することを推奨する。
 また、PEGを造設したからといって、経口摂取を諦めるのではなく、嚥下機能評価や嚥下訓練を実施し、経口摂取への移行、あるいは併用を試みるべきであることを強調したい。」(日本静脈経腸栄養学会編集:静脈経腸栄養ガイドライン─第3版 照林社, 東京, 2013, p18)

 患者さんや家族の方とお話をしていて、「胃瘻=延命」と思い込んでおられる方が多いことには本当に驚かされます。そしてその結果として、「経鼻経管栄養」が増えてしまっていることがごく最近の悪しき傾向なのです。
 経鼻経管栄養を継続するためには「身体拘束」が必要となるケースも多く、「身体拘束ゼロ」(http://www.wam.go.jp/wamappl/bb05kaig.nsf/0/1a06bd1862325ece49256a08001e5e43?OpenDocument)とは相反する結果となってしまいます。
 「胃瘻造設術、胃瘻造設時嚥下機能評価加算」(資料p133)を読みますと、「胃瘻造設の必要性、管理方法、閉鎖の条件等を患者・家族に説明」することを求めております。
 しかし、患者さんや家族への説明はそれだけで十分なのでしょうか? 胃瘻に関してだけ説明し、他の選択肢のデメリットが医師より説明されないため、安易に「経鼻経管栄養」、「完全静脈栄養(高カロリー輸液)」が選択されてしまうという問題について私は何度も警鐘を鳴らしてきました。
 以下に記載しますのは、私からの提案です。
 患者さんおよび家族に説明する際には、次の「1」「2」についてもきちんと説明することを義務づけていただきたいと思います。
「1」 経鼻経管栄養の問題点:
 患者さんにとっては不快感を伴いますので管を自己抜去するリスクが高く、自己抜去を防止するためには身体拘束が必要となります。
「2」 完全静脈栄養(Total Parenteral Nutrition;TPN)の問題点:
 敗血症のリスクが高いため、長期間に及ぶ栄養管理手段としては不向きです。

 少々専門的な記述にはなりますが、「2」の静脈栄養に関して補足しておきます。
 「経腸栄養が禁忌で、静脈栄養の絶対適応とされるのは、汎発性腹膜炎、腸閉塞、難治性嘔吐、麻痺性イレウス、難治性下痢、活動性の消化管出血などに限定される。」(日本静脈経腸栄養学会編集:静脈経腸栄養ガイドライン─第3版 照林社, 東京, 2013, p15)
 「4週間以上の長期にわたる経腸栄養を施行する場合はPEGの適応であり、PEGを選択することを推奨する。」(同上, p17)

 患者さんが「自己決定」に基づいて自らの治療方針を決めるためには、以上述べてきましたようなメリット及びデメリットがきちんと医師より説明されることが不可欠の条件となります。
 ごく最近私は、アルツハイマー病やレビー小体型認知症で通院中の患者さんを対象として、終末期になったときに自身が受けたい医療についてアンケート調査を実施しております。その最新結果については、私が管理するウェブサイトにおいて公開しておりますのでご参照下さい。3月5日までに14名の意向調査を終えております。
 経口摂取困難となった際の治療手段として胃瘻を希望されたのは1名でした。末梢点滴を第一希望としたものの、「点滴が困難な状況(←不穏などのため)であれば胃瘻を希望する」と回答された方が2名おられました。
 認知症が初期の段階において、終末期の治療方針について本人と向き合って説明している医師は極めて少ないのが現状ではないかと思われます。私もごくごく最近まで、この領域には踏み込めておりませんでした。
 今後は、今回実施しました意向調査の結果を治療方針に反映させ、本人が望む医療が実現できるよう取り組んでいきたいと考えております。

【追伸】
 胃瘻に関わる平成26年度の診療報酬改定において、私が驚いた項目がもう1つあります。それは「胃瘻抜去術」(2,000点)という新設の技術料です。冒頭にてご紹介しました資料のp134に記載されております。
 「抜去術」と漢字で書きますと難しそうな技術に思えるかも知れませんが、管の種類によっては引き抜くだけのとても簡単な操作であり1分も要しません。
 このような技術に対してなぜ2,000点(2万円)もの高い点数が評価されるようになったのかは私には理解しかねます。
 おそらく、狙いは「経済誘導」なんでしょうね。。。

胃瘻抜去術―2,000点
 平成26年3月5日に開催されました「平成26年度診療報酬改定説明会」資料(http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000039381.pdf)が厚生労働省のウェブサイトに公開されおり、そのpdfファイルのp134に記載されております。

 最初にこの「胃瘻抜去術」という文字を見たときには、私は信じられない気持ちでした。
 そうまでして、本気で「PEG抑制」に取り組みだしたということですね。

P.S.
 この「胃瘻抜去術―2,000点」の新設で私がもっとも懸念することは、誤嚥の心配が残っている状況であるにも関わらず、「本人のQOLのために、一度経口摂取に挑戦してみましょう」と医師から誘導的な説明を受けて、じっくりと(慎重に)試行錯誤せずに胃瘻を抜いてしまうという状況です。
 そして、やはり食べられませんでしたので、もう一度胃瘻を造設しますという“事の顛末”です。
 胃瘻抜去術(2,000点)プラス胃瘻造設術(6,070点)という二度おいしい丸儲けを医療機関ができ、しかも患者さんは内視鏡を飲まないといけないという身体侵襲を受ける悪夢が容易に想像されてしまうわけです(←私の妄想力をもってすると)!
◎アピタル『ひょっとして認知症?』の再開第1回にてご紹介しましたように、私の座右の銘は「妄想は力なり!」です。

 こんな診療報酬おかしいと思いませんか?! 今からでも遅くないので、こんな胃瘻抜去術(2,000点)の新設(創設)なんて撤回すべきです!!
 あるいは短期間に胃瘻を再造設した場合には、胃瘻抜去術(2,000点)の算定は取り消すという付記事項が必要なのでは…と私は思います。

Facebookコメント
認知症の母へのまなざし
 「天草出身の母は、生前、酒乱でさんざん手を焼かされた父と、懐かしそうに語り合っている。脳梗塞の後遺症でしびれた手を父になでてもらい、『おいしか酒ば用意して、待っとりますけん』と笑いかける。
 ホームの食事を母が平らげた直後、『どもネ』と父はまた現れる。俺にできることがあったら言ってくれ、と父が言うと、『がんばらんば(がんばろうよ)って言ってください』と母は返す。そんなやり取りが、息子ペコロスの慈しみに満ちた視点で描かれている。
 他人は、ペコロスの母のこうした言動を幻覚、幻聴と呼ぶ。しかしそれは一面的な見方なのかもしれない。この家族が生きてきた歳月と、関係性で紡がれた『ものがたり』を、母は現実として生きている。
 私たち医師は、認知症の人、一人ひとりで背負ってきた『ものがたり』を、どのくらい読み解こうとしているだろうか。読み解けているのだろうか。
 他者の生活史を知るには、普通いうところの医学知識とはまた別の、広い教養と感受性が必要な気がしてならない。日本の医学教育濫觴(らんしょう)の地、長崎で、そんなことを考えた。」(色平哲郎:医のふるさと―認知症者が背負ってきた「ものがたり」. 日経メディカル2014年3月号 通巻556号 121 2014)

P.S.
 色平哲郎先生は、私が尊敬する医師の一人です。
 東大理科1類中退後に世界を放浪し、京大医学部に入学され、2008年からはJA長野厚生連・佐久総合病院地域医療部地域ケア科医長を務められております。

ウソ発見器に注意 性格診断テストに仕込まれたワナ [日々想々]

ウソ発見器に注意 性格診断テストに仕込まれたワナ
(シューカツ都市伝説を斬る!)
 【2016/4/7 3:30日本経済新聞 電子版】
 http://www.nikkei.com/article/DGXMZO98987810Z20C16A3000000/

 リクルート、ライフネット生命などの人事責任者として20年以上、累計で2万人を超える就活生を面接してきた「プロ人事」、曽和利光さん。「学生は、根拠のない思い込みで失敗している」という曽和さんが、面接官の本音を語ります。第8回は「性格診断テストに仕組まれたワナ」です。
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 「性格診断テスト」は、志望企業にエントリーする時や、1次面接の前後など、選考の初期に企業が実施する一種の適正テストです。リクルートが提供しているSPI(Synthetic Personality Inventory)や日本エス・エイチ・エルの「玉手箱」などが有名ですね。

■ライスケールに注意
 単なる性格テストと軽視しないほうがいいかもしれません。ある企業の場合、会社をすぐにやめてしまった人の回答を分析して、それと似通っている回答をした学生を採らない、といった使い方をしているケースもあります。それほど性格診断テストが重要視されてきているということでしょう。
 判断基準もわからないまま、機械的に自分の性格が判断されるわけですから、不安になるのもわかります。そんな学生が適性テストを受けると、「なんとなく良いほうの性格」、いいかえると「社会的な望ましさ」に寄った回答を選ぼうとするのが自然だと思います。しかし、そこに落とし穴があります。
 たとえば、ありがちなのが「自分はウソをついたことがない」という質問です。社会規範からいって望ましいと思われる「はい」という回答をしがちですね。しかし、そんなことはほとんどありえないので、逆に「ウソポイント1点」が加算されてしまいます。ほかにも、「人を嫌いになったことがない」など、性格診断テストの中には、いくつかライスケール(ウソ測定器)が紛れ込んでいます。
 「この学生は自分の性格を盛っていないか」「答えていることが信用できるか」を判断するのです。その数値が一定値を過ぎると、「回答の精度に問題あり」と判断されて、そのほかの回答を含め結果全体に「信用できない」といった烙印(らくいん)が押されてしまいます。
 また学生は、受けたい企業の「求める人物像」を想像し、合格するために回答をあわせようという努力をする傾向があります。「この会社はベンチャー企業だ。だからきっと、元気で自由な発想力のある人がほしいに違いない」という思い込みです。しかし、実際に企業が求める人物像がどんなものか、把握するのは至難の業です。
 ベンチャー企業だからといって、「自由闊達」で、「進取の気性に富む」自分を演じようとすると落とし穴にはまります。ベンチャー企業はその起業の過程では挑戦的だったかもしれませんが、一度目標を定めると、あとは強烈なリーダーシップのもとで真っすぐ進むことが要求されます。求められる仕事は意外に保守的で、ルーティンに耐えられる粘り強さが要求されるケースが多いのです。
 「自分は知的好奇心が旺盛だと思う」。おもわず「はい」を押してしまいますよね。しかし、実は「知的好奇心旺盛」は要注意です。裏返せば飽き性、一つのことをコツコツやれない、入ってもらってもすぐやめるととらえられる可能性もあります。
 こうした定性的な選択肢は、いかようにも解釈が可能です。「明るい性格」といえば聞こえがいいですが、葬儀場で明るく「ご愁傷さまです」と言われても困りますよね。「あきらめが悪い」のはイメージが良くないですが、「忍耐力がある」と判断されるかもしれない。「常識には縛られないほうだ」といえば格好良いですが、「扱いづらい」ととらえる人もいる。
 こうした質問は、他の回答との関連性で「正解」になったり「不正解」になったりします。「好奇心旺盛」的な答えが多すぎると「好ましくない」と判断される。つまり、自分で制御するのは難しいのです。もっと言えば、企業の求める人物像に自分をあわせることは不可能に近いのです。
 数学や常識問題は多少、対策本などで勉強したほうがいいかと思いますが、性格診断は、むしろ本は読まないほうがいいでしょう。一つ一つの質問の回答で性格傾向を判断するわけではなく、他の回答と比べながら、実際には何を測っているのか受験者に悟られないように作ってあります。虚心坦懐(きょしんたんかい)な気持ちで、正直に答えるのが一番です。というよりそれしか方法はありません。自分を演じようとすると、その他の質問で矛盾がないか考えすぎてしまい隘路(あいろ)に迷い込んでしまいます。テストはこうした矛盾をするどく突いてきます。

■ますます増える傾向か
 この適性検査は今後、増えていくでしょう。SPIや玉手箱だけでなく、さまざまな会社から雨後のたけのこのように出てきています。
 最近の流れとして、ビッグデータや人工知能(AI)を使った採用手法が注目を集めています。人間の判断はどうしてもブレが生じてしまいます。採用に限らず人事評価でも、上司が自分に似たタイプの人の評価を高くしてしまう傾向がある、というのが研究でも証明されています。そのため、採用に科学的な尺度を入れよう、という動きがさかんになっているのです。私も、面接をたくさんやるくらいだったら、適性検査の精度を上げた方がいいと思います。
 性格診断で落とされる、というのはまれなケースだと思いますが、応募数の多い企業の場合は、やむなく「足切り」の手段にするところもあるようです。必要以上に性格診断を恐れず、ただし矛盾に陥らないように、自分の直感に従って回答しましょう。
 

ピンピンコロリ [日々想々]

 「ピンピンコロリ」は関心の高い話題だと思います。いったいどの程度の方がコロッと亡くなることができるのか・・。
 そのことを「ひょっとして認知症-PartⅡ」第806回(=最終回の1つ手前)にて言及しておりますのでご紹介いたします。


朝日新聞アピタル「ひょっとして認知症-PartⅡ」第806回 『感情に配慮したケアを─ピンピンコロリ、確率はわずか』(2015年3月28日公開)
 多くの方が願望する「ピンピンコロリ」の希求ですが、シリーズ第223回「親がアルツハイマー病、私の将来はどうかな!─『ありふれた疾患』であり『明日はわが身』」において述べましたように、95~99歳での認知症有病率は77.7%という現状があります。ですから、「ピンピンコロリ」を達成するには、認知症対策がひとつの大きな鍵を握ります。
 厚生労働省のウェブサイトにアップロードされております資料(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000011wl9.html)の冒頭部分には、仙台往診クリニック(http://www.oushin-sendai.jp/index.html)の川島孝一郎院長の「障害期間・要介護が増加して、そして緩やかに最期を迎える。これが日本人の9割以上に達します。急死率はわずか5%くらいでございますので、ピンピンコロリと亡くなるのではない。」という発言が記述されております。
 私が市民向け講演会の最後にいつも話していることがあります。それは、信濃毎日新聞取材班が77回にわたって連載したルポルタージュをまとめた一冊「認知症と長寿社会─笑顔のままで」のエピローグ(認知症と長寿社会─笑顔のままで 講談社現代新書, 東京, 2010, pp256-259)において提言されております以下の記述です。
 「『老い方』を考えてみたい。敗戦からはい上がり、高度経済成長を実現してきた日本人の多くは、高い生産性を求められてきた。それを支えてきた価値観が『社会の役に立つ』という生き方だった。
 他人を頼らない。死ぬ時は迷惑をかけず、苦しまず─。長寿社会の底流をなす『ピンピンコロリ』の希求も、その延長線上にある。
 だが、老いてもなお自立なのか。急増する認知症が問いかけるのは、長寿社会をつくり上げてきた価値観の転換ではないのか。『誰かの世話になって生きていく』。この当たり前の覚悟を受け入れたとき、長き老いを支え合う仕組みや社会的資源がもっと必要だ、ということにも気づく。」


朝日新聞アピタル「ひょっとして認知症-PartⅡ」第223回 『親がアルツハイマー病、私の将来はどうかな!─「ありふれた疾患」であり「明日はわが身」』(2013年8月10日公開)
 鳥取大学医学部脳神経医科学講座脳神経内科学分野の中島健二教授は、「わが国の65歳以上の方の認知症の有病率は、人口の急速な高齢化に伴い年々増加しており、1990年代後半から2000年代にかけ8%を上回る報告がなされ、最近では10%を超える報告もあります。有病率が上昇した背景には、人口の高齢化のほか、認知症に対する一般の注目度が高まり、早期に医療機関を受診する方が増加したことなども一因と考えられます。」と指摘しております(中島健二 他:座談会─高齢者のアルツハイマー型認知症治療における課題と展望. Geriat Med Vol.49 815-824 2011)。
 実は、2009~2010年度に認知症の有病率等に関する調査が小自治体中心に実施されております(朝田 隆:認知症の実態把握に向けた総合的研究. 厚生労働科学研究費補助金[長寿科学総合研究事業]総合研究報告書、2011)。2011年8月に発行されましたメディカル朝日(Medical ASAHI 2011 August 19-20)は、このデータを以下のように紹介しております(一部改変)。
 「筑波大学臨床医学系精神医学の朝田隆教授らは、最近全国7カ所(宮城県栗原市、茨城県利根町、愛知県大府市、島根県海士町、大分県杵築市、佐賀県伊万里市黒川町、新潟県上越市)で、65歳以上住民を対象として晩発性認知症の疫学を調査した。訪問調査員と専門医による診察を基本としてMRIによる撮像を実施する3次調査も行うことで高い精度の診断と評価を目指した。…(中略)…2008年の日本の人口に準拠して推定された65歳以上の住民における認知症有病率は12.4~19.6%(平均で14.4%)であった。…(中略)…認知症有病率は65~69歳以降、5歳刻みにほぼ倍増し、85~89歳では3人に1人の割合になっていくことが分かった。」
 前述のデータにおいては、95~99歳の認知症有病率は77.7%となっております。認知症はまさに「ありふれた疾患」であり「明日はわが身」と捉え、認知症介護者の気持ちに共感しながら対応を模索していくことが喫緊の課題なのです。調査においては、100~104歳の認知症有病率に関しては報告されておりませんでしたので直接朝田隆教授にお伺いしたところ、朝田隆教授の印象としては、「100~104歳の認知症有病率は少ないだろう」とのご意見でした。

新車販売「増税特需頼み」 [日々想々]

新車販売「増税特需頼み」
 駆け込み期待 苦境映す
 シニア層にも車離れ
 15年度は6.8%減

 日本自動車販売協会連合会(自販連)は1日の記者会見で、2016年度の国内新車販売は「消費増税前の駆け込み需要がなければ厳しい」との見方を示した。15年度は2年連続で減少したが「消費者の財布のひもが緩む要因はほかにない」と述べるなど、3年ぶりのプラスへ向けた頼みの綱は消費増税だけという。クルマ離れが若者だけでなくシニアにも広がりつつあり、このままでは縮小に歯止めがかからない。
 【2016年4月2日付日本経済新聞 企業・消費―ビジネスTODAY】
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