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VR認知症―『おはよう日本(NHK総合)』(2017.2.1放送), NHK WORLD NewsRoomTOKYO(February 14, 2017) [認知症]

『おはよう日本(NHK総合)』(2017.2.1)にて、VR認知症が報道!!

 AM7時からの『おはよう日本(NHK総合)』の放送です。
 https://youtu.be/DmlmTPPOK2o 

 VR体験会nagoya.JPG 
 今回の報道がレビー小体型認知症(レビー小体病)への理解が深まる啓発のきっかけになれば良いなと強く願っております!!

 おはよう日本で放送した特集「バーチャルリアリティーで認知症の症状を体験」は、News UpというWeb特集にも掲載されております。
 http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170202/k10010861871000.html

 今回の全国放送は、2017.1.18に放送されました『NHK-東海 NEWS・ほっとイブニング』(https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/videos/vb.100004790640447/706552282847787/?type=2&theater)に後日取材した映像を加えて再構成されたものです。
 『NHK-東海 NEWS・ほっとイブニング』のYuutube公開も2月1日より開始しました。
 https://youtu.be/DxU9-uAcQ8Q

 東海初の『VR認知症講演会』(in 名古屋「グループホーム正木のいえ」, 2017.1.9)の際に私が撮影した映像もどうぞご覧下さい。
 https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/videos/vb.100004790640447/706559129513769/?type=2&theater
 FB「友達限定公開」としておりましたが、2017.2.1に全国放送として報道されましたので、「公開」設定に変更しました。
 Yuutubeにても公開致しました。
 https://youtu.be/GCHz5nuHu9E

 「VR認知症」レビー小体病 幻視版 のための配布資料
 https://note.mu/hiiguchinaomi/n/n4461c1a1d047
 【藤本健一:DLBのパーキンソン症状に対する治療とケア. CLINICIAN No.648 513-518 2016】.JPG
出典:
 【藤本健一:DLBのパーキンソン症状に対する治療とケア. CLINICIAN No.648 513-518 2016】
 DLBとDLBD.jpg
 樋口直美さんが「VR認知症・レビー小体病 幻視版 のための配布資料」について解説され、ご自身の「幻視」についても語りました。
 直美さんが解説.JPG 

 来月公開の映画「話す犬を、放す」の熊谷まどか監督もスピーチされています。
 熊谷まどかさん.JPG
 映画の予告編はこちら↓
 http://hanasuinu.com/

 熊谷まどか監督と樋口直美さんの対談記事はこちら↓
 https://info.ninchisho.net/archives/15695

ウェブ版・VR認知症(NHK-東海 NEWS WEB・2017.1.18放送)─認知症をVRで体験
 認知症について理解を深めてもらおうと、いま、VR=バーチャルリアリティの技術を使って、認知症の人の世界を疑似体験する取り組みが始まっています。
 名古屋放送局の松岡康子記者が取材しました。
 ウェブサイトは↓
 http://www.nhk.or.jp/nagoya/websp/20170118_virtualreality/

 私は、『NHK-東海 NEWS・ほっとイブニング(2017.1.18)』(https://youtu.be/DxU9-uAcQ8Q)におきまして、「認知症のタイプによっては『幻視』の症状が出ることを知らない人が多いことから、バーチャルリアリティによる体験は、症状への理解や正しい診断につながると期待しています。」とコメントしておりますが、その詳細は以下をご参照下さい。
1)幻視関係のデータを整理しました。
 https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/710356272467388
2)レビー小体型認知症の最大の問題は、医師による誤診が多いということです。【医学博士・横浜市立大学医学部名誉教授 小阪憲司氏】
 https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/710432309126451

※NHK WORLD NewsRoomTOKYO
 「VR認知症」がNHK WORLD NewsRoomTOKYO(Mon.-Fri. 20:00-20:45 JST)の国際映像として報道されました(February 14, 2017)。
 http://www3.nhk.or.jp/nhkworld/newsroomtokyo/aired/20170214.html
 http://www3.nhk.or.jp/nhkworld/newsroomtokyo/
You Tube
 https://youtu.be/K4RdEa3NR9M

P.S.
 当日の懇親会の様子なども再度アップ致します。
 懇親会.JPG
 丸山社長、えっちゃん、いろいろご苦労様でした。
 丸山社長.JPG
 懇親会-丹野さんと恵津子さん.JPG  
 ケータリングのお料理美味しかったです。
 一升瓶サイズの赤ワイン、初めて見ました。私一人で半分以上飲んでしまいました。
 https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/701730946663254
 https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/706844582818557
 https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/701731386663210
 https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/701715129998169
 https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/701717183331297
 https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/701700576666291
 https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/701736876662661
 最後はオレンジで締めます!
 https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/705537732949242

P.S. 私がインタビューの中で伝えたかったこと
 バーチャルリアリティ(VR)のレビー小体型認知症版を通して、認知症に対する世間の誤解や偏見を解ければという思いがあって下河原さんはこの作品を樋口直美さんらとともに作成されたと聞いております。
 ついつい話題性が先行しがちではありますが、認知症専門医の立場からしますと、もう少し違った面で期待を寄せております。
 それが何かと言いますと、DLB(レビー小体型認知症)においては、レム睡眠行動異常症(RBD)、うつ状態、幻覚妄想状態は、記憶障害よりしばしば先行して出現します。初老期に幻覚妄想状態を初発したおよそ1/4~1/3(=40歳以上で幻覚妄想状態を初発した例の検討ではその26.1%が、65歳以上での初発例では36.4%がレビー小体病を有していた)が後にレビー小体病と診断されます(https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/698895886946760)。
 「幻覚・妄想」という言葉を聞きますと、統合失調症を思い浮かべる方が多く、患者さんは偏見を受けることをおそれて幻視が見えることを隠す傾向にあります。
 実際に医療機関を受診しても、レビー小体型認知症に精通していない医師ですと、「統合失調症」とか「うつ病」となどと誤診されてしまい、向精神薬が投与されることになります。
 しかしですね、実はあまり知られていないのですが、DLBの約半数(53.3%:8/15)においてAP(Antipsychotics:抗精神病薬)に対する薬剤過敏があり、薬の副作用で病状が悪化してしまうケースが多々あるのです
 こうした弊害が起こり得ることを、バーチャルリアリティ(VR)のレビー小体型認知症版を通して啓発するきっかけになってくれればと願っております。

◎関連サイト
DLBのパーキンソン症状に対する治療とケア
 http://www.eisai.jp/medical/clinician/vol63/no648/pdf/sp10_648.pdf
 DLBは幅が広い。ADに近いcommon formではパーキンソニズムを認めず、ドネペジルを10㎎ まで増量しても問題はない。その一方pure form やPDDに近い症例では、用量を増やすと振戦や動作緩慢が出現する例がある。ドネペジルの2件の二重盲検比較試験と2件の非盲検延長試験の解析で、錐体外路症状の悪化は認められなかった。この報告では解析対象281例中PD治療薬併用は57例(20.3%)で、common form が多かった。pure form やPDDでは別の結果となる可能性がある。表③に2件の二重盲検比較試験のまとめを示す。PD治療薬併用群では非併用群と比べてパーキンソン症状の有害事象発現が多く、開始時のHoehn &Yahr 重症度がⅢ度の症例は0~Ⅱ度の症例と比べて、5㎎ と10㎎ でパーキンソン症状の有害事象発現が多かった。DLBは幅が広いこと、薬の効果も副作用も出やすいことを考慮して、症例毎に適切な用量を選択する必要がある。
 (自治医大ステーション・ブレインクリニック)
 【藤本健一:DLBのパーキンソン症状に対する治療とケア. CLINICIAN No.648 513-518 2016】


 下河原さん、後片付けを終えてから懇親会に合流されました。
 準備、講演、取材、後片付けとお疲れ様でした。
 懇親会-下河原さん.JPG

臨床医にとって認知症治療で大切なことは何か(3)―抗認知症薬を処方する際の3つの悩み [認知症]

第85回 臨床医にとって認知症治療で大切なことは何か(3)―抗認知症薬を処方する際の3つの悩み【八千代病院神経内科・川畑信也部長】
 http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/series/kawabata/201701/549654.html

 認知症の治療を行う際、ガイドラインは必ずしも実臨床では役に立たないこと、臨床試験と現場の治療では異なることが多いことを述べてきました。今回は、実臨床では抗認知症薬の薬効評価が難しいこと、個々の事例によって抗認知症薬の効果は異なること、薬剤の効能・効果に記載された用量に必ずしもこだわる必要はないかもしれないことの3点について考えてみたいと思います。

【1】抗認知症薬の薬効を実臨床で評価できるのか
 いずれの抗認知症薬も認知症症状の進行抑制効果を期待して使用されているのだと思いますが、先生方が実際に処方されて「この患者さんは認知症が改善したな」と感じる事例はどれほどあるでしょうか。
 多くの場合、抗認知症薬を処方しても臨床像が良い方向に変化した事例を経験することは少ないのではありませんか。逆に多くの事例では抗認知症薬を服薬していても認知症症状は進行・悪化していく場合が多いと思います。だからこそ、「抗認知症薬は副作用ばかりで役に立たない」「害ばかりで処方する価値はない」と極論を述べる医師が出てくるのだろうと思います。
 抗認知症薬を評価する方法は、服薬前後での臨床像を観察するか、改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)に代表される神経心理検査を施行し得点の推移をみるかの2つです。アルツハイマー型認知症は、診断が正しければ必ず進行・悪化していく性質を持つ疾患であるという視点で見ると、抗認知症薬を服薬していてもある程度の期間を経ると認知症症状は進行・悪化していきます。ですから抗認知症薬の薬効を評価することは、実際には困難な場合が多いのです。
 一方、神経心理検査を使用した場合はどうでしょうか。図1は、ドネペジルを服薬しているアルツハイマー型認知症146人でのADAS-J cog.下位項目について1年後の変化を示したものです。ドネペジル服薬開始前に比して有意に改善していた下位項目は、呼称と構成、単語再認の3つです。しかし、最も改善している単語再認でも変化幅は0.5点にも届きません。実臨床で個々の患者さんにADAS-J cog.を施行した場合、評価は1、2点などであり、小数点以下の点数は出てきません。したがって実臨床では0.5点の改善効果を実感できないことになります。抗認知症薬の肩を持つ立場で述べると、現在の抗認知症薬はいずれも根治的な薬剤ではないことから、これくらいの効力しか発揮できないともいえます。さらに認知機能というある意味であやふやな領域を客観的に評価するためには、数字で結果を出せる神経心理検査あるいは生活機能や介護者負担を評価するしか方法がないのです。
 図1.JPG

 私は、常に述べていますがコリンエステラーゼ阻害薬は患者さんの行動や感情、言動を活発化させる働き、メマンチンはそれらを安定化させるあるいはやや抑制する働きをもつ薬剤と位置づけています。現象面では記憶や見当識に目立った改善を期待できないかもしれませんが、アルツハイマー型認知症に特徴的な自発性の低下や意欲の減退から日常生活で何もしなくなった患者さんがコリンエステラーゼ阻害薬の服薬で元気が出てきた、外出することが増えてきたなど、行動や感情などの変化がみられるだけでも抗認知症薬の役割はあると考えています。

【2】個々の患者さんで抗認知症薬の効果は異なる
 実臨床で目立った薬効を実感しにくい抗認知症薬ですが、患者さんによっては認知症症状が何年経てもあまり進行・悪化していないなと感じる場合があります。一方、規則正しく服薬していても1年前後で認知症症状がかなり進行・悪化してくる患者さんも見られます。認知症診療に長年携わっていますと、個々の患者さんで抗認知症薬の薬効は大きく異なるのではないかとの印象が浮かんできます。
 図2は、ドネペジル5mgあるいは10mgを服薬している患者さん191人について、1年後にMMSEがどのように変化していたかを調べた結果です。1年後に10点以上改善していた患者さんが1人います。逆に10点以上悪化していた患者さん1人います。2点悪化していた患者さんの数が最も多いのですが、20点の変化幅に幅広く患者さんの変化が分布していることがわかります。
 図2.JPG

 図3は、2年から5年後まで処方を継続できた患者さんの得点の変化を見たものです。年数を経るに従って青で示す改善を示す患者さんは減少し、代わって赤で示す悪化を示す患者さんの割合が増えていくことが観察されます。5年後を見ると、多くの患者さんは悪化の領域に分布していますが、29人中6人は開始時と比して不変あるいは1点、2点の改善を維持しています。患者さんによっては、神経心理検査を尺度にするとドネペジル服薬5年後でも改善を示す患者さんもいるのです。抗認知症薬の薬効は、患者さんによって大きく異なる可能性が高いように私は感じています(神経心理検査からの視点ですが)。
 図3.JPG

【3】必ずしも決められた維持量にこだわることはない
 抗認知症薬では、添付文書では維持量がそれぞれ設定されています。ドネペジルは、3mgから開始し5mgが維持量であり、高度に進展した場合には10mgに増量するという選択肢があります。リバスチグミンは18mg、ガランタミンは16mgあるいは24mgとなっています。私は、この維持量に必ずしもこだわる必要はないと考えています。
 図4は、リバスチグミン18mg維持群と13.5mg維持群での臨床効果を検討した結果を示したものです。貼付開始前に比してその後の時点でMMSEが1点以上増加していた場合を改善群、1点以上低下していたときには悪化群、変化が見られないときには不変群と分類し、3年後までの薬効を比較したものです。貼付開始1年後に限ると、18mg維持群と13.5 mg維持群で改善あるいは不変群の割合に大きな違いはないようです。2年後には13.5mg維持群でやや効果が減弱し、3年後には明らかに18mgに比して改善群は減少してきています。
 しかしながら、13.5mg維持群でも十分臨床効果は期待できるとも言えると思います。13.5mgよりも18mgに増量するほうが皮膚症状の発現する危険性が高いことを考えますと、13.5mgの維持でも十分臨床的な意義はあるように感じています。
 図4.JPG

 ドネペジルでも5mgに増量すると易怒性や不穏などの困った状態が出現あるいは増悪する事例を経験します。ドネペジルの副作用と考えるよりもコリンエステラーゼ阻害活性が過剰に発現しているリスポンダーと想定し、3mgへの減量を図ることで適度の活発化を期待できるのではないかと思います。
 実臨床では患者さんの病状に合わせて、決められた維持量にこだわることなく、適量をその患者さんの維持量としていくべきではないかと私は考えています。
 最後に誤解のないように述べておきますが、昨今の抗認知症薬は少量の方がよい、少量にすべきであると提唱している一部の医師とは全く意見が異なることを強調したいと思います。彼らの背景には抗認知症薬は害であるとの前提があるように思われます。したがって、なるべく抗認知症薬は使用しないほうがよいし、仮に処方する場合にはごく少量でよいとの意図があるようです。私は、抗認知症薬は可能ならばいわゆる維持量まで増加したほうがよいと考えていますが、患者さんの個々の状況で減量という選択肢もあるとの立場で診療を行っています。

 次回からしばらくは、今年の3月12日から施行される高齢者運転免許更新に関する改正道路交通法と臨床の現場あるいは臨床医の関わりについて再度考えていきたいと思います。
 川畑先生.JPG
 【日経メディカル・連載『プライマリケア医のための認知症診療講座』 2017/1/6】

D7 認知症当事者からの発信   当事者 認知症 Run伴 認知症ネットワークフォーラム in 三重  [認知症]

RUN Tomo-rrow MIE ─ 「D7~認知症当事者からの発信~」
 https://www.facebook.com/permalink.php?story_fbid=1722290838045231&id=1638195443121438

認知症ネットワークフォーラム in 三重    「D7~認知症当事者からの発信~」
D7パンフレット.JPG
日 時:2016年7月9日(土)
 開場13:00 開演13:30 終了15:45
場 所:アスト津4階アストホール(多目的ホール)
 〒514-0009 三重県津市羽所町700 
 TEL:059-222-2525(津駅下車徒歩2分)
定員
 定員270名【先着順】
内容
 D7~認知症当事者からの発信~
 ①RUN伴のご紹介
 ②認知症当事者7名のパネリストによる討議
 *座長:樋口直美さん(座長アシスタント:笠間 睦)
 *登壇者:佐藤雅彦さん(埼玉)、佐野光孝さん(静岡県富士宮市)、山田真由美さん(愛知)、中川誠治さん(三重)、曽根勝一道さん(大阪)、橋本佐千子さん(奈良)、井之坂友廣さん(大阪)

主催:認知症フレンドシップクラブ、RUN伴2016関西実行委員会
後援:三重県、津市


※たくさんの思い出をありがとう。感謝!!
①D7前夜祭
 坊主バーでウッチーこと竹内さんと再会
D7前夜祭.JPG
②D7の朝
 ウッチー、榊原白鳳病院3階病棟を視察 → その後、榊原温泉へ
 D7の朝.JPG

 マル秘!=日本三大名湯“榊原温泉”にもつかりました。
 榊原温泉.JPG

③D7の講演会の様子(動画)
https://note.mu/hiiguchinaomi/n/nf9d1494604ae
 撮影者:笠間 睦
②こちらは、主催者撮影の動画です(音質は、こちらの方がいいです。RUN伴のPV付)。
 https://www.youtube.com/watch?v=m36RncncPy4

④閉幕
集合写真.JPG
⑤D7・2次会
 バカ騒ぎしました! とてつもない盛り上がり!!
 D7二次会.JPG
⑥2016年7月11日付中日新聞で報道されました。
 D7中日新聞記事.JPG


急速進行性認知症 [認知症]

朝日新聞アピタル「ひょっとして認知症-PartⅡ」第672回『転倒防止─急速に進むプリオン病』(2014年11月14日公開)
 さて、急速に進行する「急速進行性認知症」(rapidly progressive dementia;RPD)の存在も知られております(Geschwind MD, Shu H, Haman A et al:Rapidly progressive dementia. Ann Neurol Vol.64 97-108 2008)。RPDの代表的疾患は、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)です。この論文の要旨は、ウェブサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18668637)においても閲覧可能です。
 かなり専門的な話にはなりますが概要をご紹介しておきます。
 2001年8月から2007年9月までにカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)に紹介されたプリオン病(代表は、CJD)または急速進行性認知症が疑われた症例は178例あったそうです。
 その原因は、「62%(111例)がプリオン病であった。プリオン病以外の疾患では神経変性疾患が26例(14.6%)と最も多く、自己免疫疾患が15例(8.4%)、感染性疾患が4例(2.2%)。…(中略)…神経変性疾患では、大脳皮質基底核変性症(CBD)8例、前頭側頭型認知症(FTD)7例、アルツハイマー病(AD)5例、レビー小体型認知症(DLB)4例、進行性核上性麻痺(PSP)2例」(浜口 毅、山田正仁:急速進行性認知症の鑑別診断. 最新医学 Vol.68 842-851 2013)という内訳であったそうです。
 なお、神経変性疾患以外の原因により「急速進行性認知症」を来す原因疾患としては以下のa~dのような原因疾患が挙げられます(シリーズ総編集/辻 省次 専門編集/河村 満 著/石原健司、中野今治:アクチュアル脳・神経疾患の臨床─認知症・神経心理学的アプローチ 中山書店, 東京, 2012, pp391-394)。
a)傍腫瘍性神経症候群あるいは自己免疫疾患としての脳炎または脳症:橋本脳症、電位依存性Kチャンネル抗体陽性辺縁系脳炎、Hu抗体陽性辺縁系脳炎など
b)感染症:AIDS白質脳症、進行性多巣性白質脳症など
c)腫瘍:中枢神経原発悪性リンパ腫、脳原発悪性腫瘍
d)てんかん:非痙攣性てんかん重積状態
 「傍腫瘍性神経症候群」についてはシリーズ第53回『その他の認知症 治療可能な認知症―甲状腺機能低下症』(http://apital.asahi.com/article/kasama/2013013100010.html)のコメント欄をご参照下さい。
 なお、体重減少も急速な認知機能低下の危険因子であることが報告されております(荒木 厚:認知症と栄養障害. Geriatric Medicine Vol.51 826-832 2013)。
 「414名のprobable ADの地域住民の15カ月の追跡調査では、AD(アルツハイマー病)発症後最初の1年で4%以上の体重減少があると急速な認知機能低下(6カ月でMMSEが3点以上の低下)が起こることがわかっている(Soto ME, Secher M, Gillette-Guyonnet S et al:Weight loss and rapid cognitive decline in community-dwelling patients with Alzheimer's disease. J Alzheimers Dis Vol.28 647-654 2012)。体重減少があった患者は体重減少がない患者と比べて、認知機能低下のハザード比は1.5(95%CI=1.04~2.17)であり、体重減少はADになってからも急速な認知機能低下の危険因子であるといえる。」(一部改変)


朝日新聞アピタル「ひょっとして認知症-PartⅡ」第48回『その他の認知症 クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)』(2013年2月9日公開)
⑤クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)
 クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt Jakob disease;CJD)と聞いてもピンとこない方がほとんどでしょうね。
 でも、「狂牛病」・「肉骨粉」・「全頭検査」と聞くと、数年ほど前に米国産牛肉の輸入停止により吉野家の牛丼が食べられなくなった例の一件を思い起こされるのではないでしょうか。
 CJDはプリオン病の一つです。プリオンとは、タンパク質から成る感染性因子です。プリオン病とは、正常なプリオンが何らかの原因により異常なプリオンに変わってしまい、その異常プリオンが脳などの神経組織に蓄積することによって発症する病気です。CJDにおいては、脳は隙間だらけのスポンジ状になってしまいます。
 ウシのプリオン病は、ウシ海綿状脳症(BSE、狂牛病)と呼ばれています。
 プリオン病は、元々はヒツジの伝染病でした。しかし、イギリスではヒツジの脳や肉骨粉をウシの飼料に使用したためウシに感染し、さらに狂牛病に感染したウシをヒトが食べたためヒトに感染してしまいました。
 CJDには4つのタイプがあります。原因不明の「孤発性」、狂牛病のウシを食べて発症する「変異型」、乾燥硬膜の移植によって起きた「医原型」、遺伝による「家族性」の4タイプです。
 最も多いのは、原因不明(特発性)の弧発性CJDです。最も多いと言っても、頻度はおよそ100万人に1人程度で非常に稀な疾患です。発病は50~70歳代が多く、40歳以下での発症は極めて稀です。これに対し変異型CJDは、10~30歳代という若年層で発症することが多いです。これまでに報告された変異型CJDの発症年齢は12~74歳で、平均発症年齢は29歳です。
 弧発性CJDの場合、発症すると認知症が出たり、身体がビクついたりします。一方変異型の場合には、認知症に先立ち手足の痺れ(しびれ)・疼痛などの感覚障害や、抑うつ・不安・無関心・自閉・錯乱などの精神症状が出現します。幸いにして日本国内での変異型CJDの発症は、2005年2月4日に報告された英国滞在歴のある一例だけですので、対策が充分に取られている現状(http://www.mhlw.go.jp/topics/0103/tp0308-1.html#32q1)においては過度に心配する必要はありません。
 弧発性CJDの症状をもう少し詳しく説明しましょう。初期には、倦怠感、ふらつき、物忘れ、視覚異常などの症状だけですので、「ストレス」「うつ状態」などと診断されることもあります。
 やがて、急速に進行する認知症症状とミオクローヌス(メモ1参照)が出現し徐々に寝たきり状態となります。その後、無動無言状態となり、1~2年程度(平均約14か月)で死に至る大変おそろしい疾患です。

メモ1:ミオクローヌス
 筋肉が、急に激しくぴくつくもので、音や光などで誘発されることもあります。健常な人でも眠りかけた時などには、「ビクッ」とするミオクローヌスは時折あります。
 弧発性CJDでは、発症後数か月以内にほとんどのケースでミオクローヌスが認められます。ただし、アルツハイマー病やレビー小体型認知症においてもミオクローヌスが認められることがあります。

 CJDは後頭葉、頭頂葉を好んで障害するために、視覚・視覚認知障害が初発症状となることが多いことが報告されています。
 昭和大学横浜市北部病院の福井俊哉教授は、「視覚・視覚認知障害の他に、着衣失行、構成障害、半側空間無視、失語、失行などが単独に、そして比較的急速に出現するため脳血管障害と間違われることも少なくない」(一部改変)と指摘しています(福井俊哉:症例から学ぶ戦略的認知症診断 南山堂発行, 東京, 2011, pp84-90)。
 CJDについて詳しく勉強されたい方は、以下のサイトなどをお読み下さい。
 難病情報センター・プリオン病(http://www.nanbyou.or.jp/entry/240
 水澤英洋:プリオン病─わが国の現状と最近の進歩─. 臨床神経 Vol.48 861-865 2008(http://www.neurology-jp.org/Journal/public_pdf/048110861.pdf

 「急速に進行する認知症」(rapidly progressive dementia;RPD)についても簡単にご紹介しておきましょう(Geschwind MD et al:Rapidly progressive dementia. Ann Neurol Vol.64 97-108 2008)。Abstractはウェブサイトにおいても閲覧可能です(http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ana.21430/abstract)。
 RPDの代表は、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)であり、他には、アミロイド血管症を伴うアルツハイマー病、レビー小体型認知症なども挙げられています

展望記憶 [認知症]

朝日新聞アピタル「ひょっとして認知症-PartⅡ」第7回『認知症の中核症状に関する理解を深めましょう─遂行機能障害(1)』(2012年12月18日公開)
 2番目は遂行機能障害(実行機能障害)です。
 実行機能(遂行機能)とは、「目標設定」、「計画立案」、「目標に向けての計画の実行」、「効果的行動」からなり、これらの機能が障害される遂行機能障害においては、目的をもった行動や動作の遂行が困難な状態となります。
 作業を順序立てて効率よく行うことができなくなるため、料理・掃除・仕事・後片付けなどの「段取り」が悪くなります。
 精神科医の小澤勲さん(故人)が料理を例に挙げて遂行機能障害(実行機能障害)について分かりやすく説明しておりますので以下にご紹介しましょう(一部改変)。
 「料理の完成、つまりは最終目標を目指して作業を始めるのだが、そのためには、そこに至るための計画を大まかであっても前もって立てておかねばならない。その計画を覚えておいて(展望記憶とよばれる メモ1参照)、作業を続け、節目節目でフィードバックをかけながら、つまり、現在の作業は確かに最終目標に向かって成功裏に進んでいることを見定めながら、ずれているようなら調整して、手順を進めていくことが必要なのである。
 これが彼らには難しい。一つひとつの作業なら見事にやってのける。お好み焼きをつくろう、ということになってキャベツを刻んでいただいたら、かなり重度の認知症の方でさえ見事な包丁さばきだった。しかし、はじめから料理を任せると、うまくいかないのである。ときには、まったく食することができないものになってしまうこともある。
 クリスティーンさん(メモ2参照)は食材や調味料などを使用する順番に並べておき、使用すると元に戻すようにしていると言われていたが、このような準備作業を思いつかない人の方が多い。だから、個々の行為の『つなぎ役』を買って出る人が必要になる。」(小澤 勲:認知症とは何か 岩波新書出版, 東京, 2005, pp134-135)

メモ1:展望記憶
 慶應義塾大学文学部心理学研究室の梅田聡准教授が展望記憶について分かりやすく説明しておりますので以下にご紹介します(一部改変)。
 「展望記憶(prospective memory)とは、未来に実行すべきことの記憶、すなわち『意図』の記憶を意味する。展望記憶では、日常生活において、ある行為を『タイミングよく』思い出すことが必要とされる。それに対して一般に臨床場面で広く用いられている記憶検査では、記憶障害の程度を調べるために、たとえば、単語や絵を覚えてもらい、その再生や再認の能力を調べる。こうした、いわば過去に起きた出来事の記憶は、回想記憶(retrospective memory)と呼ばれ、展望記憶と対立する概念として捉えられており、そのような一般的な記憶検査で展望記憶のパフォーマンスを測ることはできない。
 このような視点から日常生活を振り返ると、たとえば、お湯を沸かそうとしてつけた火をあとで止める、スーパーに行って複数の買い物をする、家族が帰ってきたら○○さんから電話があったことを伝える、食事が終わったら薬を飲むなど、単純な回想記憶ばかりでなく、展望記憶の能力が求められる場面が多いことがわかる。展望記憶の機能が低下すると、日常生活において『し忘れ』が増大し、結果として、家族や友人とのコミュニケーションを円滑に保つことが困難になる。展望記憶をうまく機能させることができてはじめて、安定した日常生活や他者とのコミュニケーションを確保することができる。
 Functional MRIを用いた脳機能画像研究などから、展望記憶の遂行に前頭前野の複数の部位が関与していることが明らかになった。
 Huppertらは健常者と認知症患者に対し、Rivermead Behavioral Memory Test(RBMT)に含まれる展望記憶と回想記憶を調べる課題を実施した(Huppert FA, Beardsall L:Prospective memory impairment as an early indicator of dementia. J Clin Exp Neuropsychol Vol.15 805-821 1993)。そして、軽度認知症患者と健常者の成績の差が回想記憶よりも展望記憶で顕著であることから、展望記憶課題の成績は認知症の初期段階の進行程度を検出する上で優れた指標になりうるとした。」(梅田 聡:忘れてはならない高次脳機能障害─展望記憶障害. 神経内科 Vol.76 345-349 2012)

「病識」と「病感」 [認知症]

本人が異変に気づく

 家族よりも本人が先に異変に気づくケースもあります。それまで健康に過ごしていた若年性認知症の人のほうが、高齢になって発症した人よりも、自分の異変に気づきやすいようですが、高齢の人でも、外出の際に目的地にたどり着けない、帰ってこられないといった経験をして、自ら受診を希望する人もいます。
 本人が 「異変」と感じているのは、必ずしももの忘れなどの典型的な症状ばかりではありません。「自分が自分でないような感じ」「物が見えていても、そこにないような感じ」などで、実際に本人が違和感があると感じていても、それをうまく説明できないことも多いようです。


語り 006

 妻が心配して、「どうなったのか」っていうことでね、何回も聞かれたかな。「どうしたの? どうなったの?」、そういうような言葉をたくさん言われましたね。それで、私が説明しようと思ってもですね、説明ができないわけですよ。「自分がどうなっているか、よくわからない」って言っても、妻もわからないわけですよね。
 私、それがもう本当に、「ここにおる○○は誰なのか」っていうような感じというかね……、そんなことです。非常に心細いですね。
                    本人04(プロフィール:p.611)
 【認知症の語り─本人と家族による200のエピソード. 健康と病いの語りディペックス・ジャパン, 東京, 2016, pp16-18】

私の感想
 「病識」と「病感」の言葉の使い分けになるんでしょうね。

朝日新聞アピタル「ひょっとして認知症-PartⅡ」第31回『認知症の代表的疾患─レビー小体型認知症 もの忘れを自覚することの多いレビー小体型』(2013年1月14日公開)
 もの忘れに関しても、DLBにおいては内省できることが多いことが報告されています。
 アルツハイマー病では、初期ですらもの忘れを自覚していないケースが多いです。一方、DLBでは、初期においてはもの忘れを自覚しているケースが多いのです。
 東京医科大学病院老年病科の羽生春夫教授は、疾患別の病識の有無について検討しており、「有意な認知機能障害を認めない老年者コントロールの病識低下度の平均+2標準偏差を超えるものを病識低下ありと定義すると、AD(アルツハイマー病)群の65%、MCI(軽度認知障害)群の34%、DLB(レビー小体型認知症)群の6%、VaD(血管性認知症)群の36%が該当し、AD群が最も多く、DLB群は最も少なかった。」(羽生春夫:老年期認知症患者の病識―生活健忘チェックリストを用い、介護者を対照とした研究―. 日本老年医学会雑誌 Vol.44 No.4 463-469 2007)と報告しております。

メモ:内省
 「記憶、見当識、思考、言葉や数の抽象化機能などは、日常生活を送っていく上でそれぞれがとても大切な機能である。しかし、暮らしのなかでは、これらの機能一つひとつがバラバラに役立っているわけではない。複数の知的道具あるいは要素的知能を組み合わせて使いこなす『何か』がなけれはならないはずである。それを知的主体あるいは知的『私』とよぶことにすると、そこに障害が及ぶのである。だから、認知症を病む人は、いろいろなことができなくなるという以上に、『私が壊れる!』と正しく感じとるのである。
 知的主体などという硬い言葉ではなく、もう少しうまい言葉が見つかればよいのだが、学者も苦労してこの『何か』を『内省能力』(ツット)、『本来の知能』(ヤスパース)、『知的人格』『知的スーパーバイザー』(室伏)などと名づけている。どれもが、個別の、記憶、見当識、言葉、数といった道具的、要素的知能を統括する、より上位の知的機能を何とか言い表そうと苦労しているのである。」(小澤 勲:認知症とは何か 岩波新書出版, 東京, 2005, pp141-143)

 認知症の介護においては、しばしばアパシー(自発性の低下・無関心)の存在が問題となります。
 アパシー(apathy)とは、無気力・無関心・無感動のため、周りがやるようにと促しても、本人は面倒だから、全然動こうとしないし気にもしない状態です。そして、このアパシーの存在ゆえに、認知症がうつ病と誤診されているケースもあります。
 なお、DLBでは、うつ病を有する頻度が比較的高いことも知られております。
 「Ballardら(1999)は病理診断されたDLB、AD各40例を比較し、DLBでは、初診時に幻視、幻聴、妄想、誤認妄想、うつ病を有する頻度がADに比べて高い」と報告しています(長濱康弘:レビー小体型認知症の臨床症候学と病態生理. Dementia Japan Vol.25 145-155 2011)。
 なおこの点に関して筑波大学臨床医学系精神医学の朝田隆教授は、「伝統的な精神科のうつに対する見方では、悲哀感、悲しみをもって『うつ』の本質とし、それに不安ややる気のなさを加えます。DLBの場合、精神科の伝統的なうつというよりは基本的にはアパシーです。周りは困っているが本人は何もしなくて当然とケロッとしているような患者さんが比較的多いですね。」と指摘しています(朝田 隆 et al:座談会─認知症の早期発見・薬物治療・生活上の障害への対策. Geriatric Medicine Vol.50 977-985 2012)。

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 2014年7月30日にホテルグリーンパーク津において開催されました第16回中勢認知症集談会特別講演会には、群馬大学大学院保健学研究科リハビリテーション学講座の山口晴保教授らが講師として来て下さいました。

 山口晴保先生は、「MCIとADの境界は、『病識の有無』だと思っています」と講演で述べられました。そして、SED-11Q(Symptoms of Early Dementia-11 Questionnaire)を用いた病識の評価に関する検討結果についてご紹介して下さいました。
判断基準
 医療機関においてはSED-11Qが11項目中3項目以上で認知症を強く疑い、地域の認知症スクリーニングでは11項目中4項目以上で受診を勧めるというのが目安だそうです。

SED-11Q【認知症初期症状11項目質問票】
①同じことを何回も話したり、尋ねたりする
②出来事の前後関係がわからなくなった
③服装などの身の回りに無頓着になった
④水道栓やドアを閉め忘れたり、後かたづけがきちんとできなくなった
⑤同時に二つの作業を行うと、一つを忘れる
⑥薬を管理してきちんと内服することができなくなった
⑦以前はてきぱきできた家事や作業に手間取るようになった
⑧計画を立てられなくなった
⑨複雑な話を理解できない
⑩興味が薄れ、意欲がなくなり、趣味活動などを止めてしまった
⑪前よりも怒りっぽくなったり、疑い深くなった

※上記の11項目に関して、ご本人は病識が欠如しているため「該当しない」にチェックを入れるものの家族はそれを感じているため「該当する」にチェックを入れ、その差がMCIにおいては乖離しないものの、軽度AD&中等度ADにおいては有意に乖離(p<0.001)しているそうです。
 そして、「その結果を介護者に見せて、本人の自覚が乏しいことを理解してもらい、叱らないように指導することでBPSDを予防しましょう」と講演会で配布されました資料には記載されておりました。
 詳細は論文をご参照下さい。
 Maki Y, Yamaguchi T, Yamaguchi H:Symptoms of Early Dementia-11 Questionnaire(SED-11Q): A brief informant-based screening for dementia. Dement Geriatr Cogn Disord Extra Vol.3 131-142 2013
 Maki Y, Yamaguchi T, Yamaguchi H:Evaluation of Anosognosia in Alzheimer's Disease Using the Symptoms of Early Dementia-11 Questionnaire(SED-11Q). Dement Geriatr Cogn Disord Extra Vol.3 351-359 2013

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 認知症初期症状11項目質問票(SED-11Q)の評価用紙は山口晴保研究室のホームページ(http://www.orahoo.com/yamaguchi-h/)からダウンロード可能(山口晴保:認知症の本質を知り、リハビリテーションに活かす. MEDICAL REHABILITATION No.164 1-7 2013)。

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 「ところで、認知症の人には『自分は病気である』という自覚はあるのでしょうか?
 この『自分は病気だ』と自覚することを『病識』といいます。医師の中には、認知症の人には『病識がある』という人もいれば、『ない』という人もいます。
 私は『病識は低下している(一部ある)』という考えです。自分はどんな病気でどのような問題が生じているのかといった自覚は乏しくなっていますが、『何だかいつもと違う』という感覚はあると思っています。これを『病感』といいます。 」(山口晴保:認知症にならない、負けない生き方 サンマーク出版, 東京, 2014, p53)

認知症の中核症状に関する理解を深めましょう─記憶記銘障害 [認知症]

朝日新聞アピタル「ひょっとして認知症-PartⅡ」第6回『認知症の中核症状に関する理解を深めましょう─記憶記銘障害』(2012年12月17日公開)
 順次、以上5領域の症状について解説していきましょう。
 まず最初は記銘記憶障害です。物忘れには、良性健忘(老化による物忘れ)と悪性健忘(認知症による物忘れ)があります。両者はいったいどのように違うのでしょうか? 端的に言えば、部分的な物忘れか、全般的な物忘れかという違いです。
 例えば、旅行に行ってきたとします。1~2か所の訪問場所を思い出せないのが「老化による物忘れ」で、旅行に行ったことすら忘れてしまうのが「認知症による物忘れ」ということになります。
 両者の違いを以下にまとめます。

良性健忘(老化による物忘れ)
 電話の要件を忘れる
 昨晩、何を食べたか思い出せない
 物をしまった場所を忘れる
 忘れっぽくなったという自覚があり、メモなどの対策をとる
 ヒントを与えられると思い出せる
 時間や場所などの見当がつく

悪性健忘(認知症による物忘れ)
 電話があったことさえ忘れる
 食事をしたこと自体を忘れる
 物を整理したこと自体を忘れる
 物忘れの自覚に欠けることが多く、また、メモをつけても活用できない
 ヒントを与えられても思い出せない
 時間や場所などの見当がつかない
 新しい出来事を記憶できない

 見当識(けんとうしき)障害とは、人や周囲の状況、時間、場所など自分自身が置かれている状況などが正しく認識できない状態です。
 ところで、「物忘れ」って誰にでもありますよね。私も30歳を過ぎた頃から、よく知っている人の名前が出てこないという症状が増えてきました。若干、普通の人よりも早く症状が出現しているようです。おそらく毎晩大量に飲むアルコールが影響しているのだろうと察していますがなかなかやめられません。意志が弱いのでしょうね。

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認知機能障害と認知症の違い:
 「認知機能とは、意欲、注意、再認(recognition)、行為、記憶、情動、言語、判断、実行など、モジュール構造をなすさまざまな並列的能力の集合体を指す用語であり、それらはすべて、一次的には大脳、特に大脳皮質によって営まれている機能である。大脳基底核や、視床、あるいは小脳なども認知機能に深く関与してはいるが、認知機能において主役を務めるのは、なんといっても大脳皮質である。…(中略)…注意しなくてはならないのは、大脳皮質の機能障害というものは、必ずしも大脳皮質の一次性器質病変の存在を意味するものではないということである。また、認知機能障害というものは、必ずしもデメンチア(dementia:認知症)を意味するものではないということも、重要なポイントである。
 デメンチアといわれる病態は、単に認知機能障害があるというだけのことではなく、先にあげた認知機能を形成するさまざまなモジュールの能力の全般的な障害によって、それまで果たすことができていた社会的な役割を果たすことができなくなった状態のことである。
 たとえば、右半球の大きな脳梗塞によって、顕著な左半側空間無視という認知機能障害を生じても、通常それだけでデメンチアに陥ることはない。また、左大脳半球梗塞によって重度のウェルニッケ失語を生じた場合、重度の認知機能障害があるということはできるが、それだけでデメンチアが生じるわけではない。
 デメンチア患者では、しばしば健忘症がその臨床像の中心となることが多い。健忘症もまた明らかな認知機能障害ではあるが、健忘症だけではデメンチアとはいわない。単純ヘルペス脳炎後遺症において、数分前の出来事はまったく覚えていないというようなきわめて高度の健忘を生じた患者においても、知識に基づく判断はまったく正常であり、高度な計算問題や、幾何学の問題を容易に解いてしまうようなことはまれではない。」(シリーズ総編集/辻 省次 専門編集/河村 満 著/岩田 誠:アクチュアル脳・神経疾患の臨床─認知症・神経心理学的アプローチ 中山書店, 東京, 2012, pp2-7)【一部改変】

認知症になっても“役割”を持ちたい [認知症]

認知症になっても“役割”を持ちたい

 2015年12月14日に報道されましたNHK・総合『わたしが伝えたいこと~認知症の人からのメッセージ~』の第1部におきましては、それぞれの「絶望体験」が語られた一方で、役割を持つことで活き活きと過ごすことができるようになった当事者の方、そしてその方たちを支えるデイサービス「DAYS BLG!」(東京 町田市)の取り組み(活動)も紹介されました。
 非常に重要な視点が語られております。
 7月9日はアスト津におきまして当事者の方をお招きしての「RUN伴」主催の講演会が開催されますが、『わたしが伝えたいこと~認知症の人からのメッセージ~』の第1部のような構成になると良いですね。
 司会進行を務められるのは、樋口直美さんです。樋口さんもそのような構成を考えておられるかも知れませんね。私も万一の時(樋口さんの本を読んで頂けると分かりますように突然の体調不良が起こりうるご病気ですので、そうした万一の事態)に備えて司会者の横に座り必要があればアシストする予定です。基本的にすべて樋口さんが司会進行されますので私はお飾りみたいな感じです。樋口さんの卓越した司会進行技術を盗んでやろうかと狙ってますよ!(笑)

 さて、以前私が執筆担当しておりました朝日新聞社アピタルの医療ブログ「ひょっとして認知症?」におきまして、デイサービス「DAYS BLG!」の活動をご紹介したことがありますので以下に再掲致します。
 
朝日新聞アピタル「ひょっとして認知症-PartⅡ」第754回『第754回 認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)―(上)初めての国家戦略』(2015年2月4日公開)
 認知症の人への支援を強化する初の「国家戦略」である認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)が2015年1月27日に公表(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000072246.html)されました。
 その概略は、アピタルにおいても2015年1月27日に伝えられております。内容を詳しく知りたい方は、厚生労働省のウェブサイトの資料1(http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12304500-Roukenkyoku-Ninchishougyakutaiboushitaisakusuishinshitsu/01_1.pdf)および資料2(http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12304500-Roukenkyoku-Ninchishougyakutaiboushitaisakusuishinshitsu/02_1.pdf)にてお読み頂けます。厚生労働省のウェブサイトの資料1においては、新しい取り組みが「新」と表示されております。政府発表資料は読み解くのが難しいと感じられる方には、その要点を分かりやすく解説しているウェブサイト(http://tokuteikenshin-hokensidou.jp/news/2015/004069.php)もありますのでご参照下さい。

 2012年9月5日に公表された旧オレンジプラン(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002j8dh-att/2r9852000002j8ey.pdf)においては、シリーズ第203回「認知症と長寿社会(笑顔のままで)―認知症患者が入院を断られる現状」のFacebookコメント(2013年11月21日 17:45)においても記述(後述します)しておりますように多くの課題がありました。
 さて、今回発表されました「認知症施策推進総合戦略」(新オレンジプラン)によって今までの認知症施策の問題点はいったいどの程度解消されるのでしょうか。
 私が現実に困っている3つの問題からこの「認知症施策推進総合戦略」(新オレンジプラン)について考えてみたいと思います。

 1点目は、「認知症の行動・心理症状」(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia;BPSD)に対する対応に関して述べましょう。
 シリーズ第437回「患者の心の中を探る―上手なケアだけでは解決できないことがある」においてご紹介しましたように、「認知症の行動・心理症状(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia;BPSD)やせん妄を呈する入院患者の場合、幻覚や抑うつ、不安などの心理症状に対しては薬物療法は比較的有効であるが、暴力や暴言、ルート抜去、大声、徘徊などの行動症状に対しての有効性は低い(内海久美子、白坂和彦:総合病院におけるBPSDへの対応と課題. 老年精神医学雑誌 Vol.18 1325-1332 2007)」という現状があり、一般病院での対応には限界があります。特に困窮するのが点滴の自己抜去という問題です。
 点滴の自己抜去が目立つ患者さんの場合には、一般病院では対応が困難なこともあり入院を断られるケースが多いのも現状です。点滴の自己抜去の問題に関しては、シリーズ第310回「死を覚悟・治療や食事を拒む─手を焼く点滴の自己抜去」において対応等についても紹介しております。
 こうしたBPSDへの対応に関しては、前述の資料2の「行動・心理症状(BPSD)や身体合併症等への適切な対応─循環型の仕組みの構築」(9頁)においては以下のように記述されております。
 「介護現場の能力を高め、介護で対応できる範囲を拡げるためには、精神科や老年科等の専門科による、医療の専門性を活かした介護サービス事業者等 への後方支援と司令塔機能が重要であり、その質の向上と効率化を図ってい く。具体的には、精神科病院等が介護事業所等と連携する、あるいは地域の ネットワークに加わり、介護職員や家族、認知症の専門科ではない一般診療 科の医師等からの相談に専門的な助言を行ったり、通院や往診(通院困難な 場合)等により適切な診断・治療を行ったりすることが必要である。」
 BPSDが目立ち一般病院への入院が困難な事例に関して、精神科病院あるいは在宅医療がどう関与していくのか非常に大きな課題が突きつけられているのが現状であり、今後の大きな課題となっております。

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外来に通院できなくなった患者を自然に在宅に導き、最期を支える
 静岡県浜松市の医療法人社団心は、2つのクリニックを有する。あらゆる世代の患者が訪れる「坂の上ファミリークリニック」と、19床の有床診療所で、高齢の患者が多い「坂の上在宅医療支援医院」だ。ファミリークリニックは、厚生労働省が定める在宅療養支援診療所として、外来のほか訪問診療も行っている。
 日々の診療は朝8時から始まる。8時半のカンファレンスで、外来の予定や、訪問診療をする患者について話し合う。理事長の小野宏志氏をはじめ、勤務医、外来の看護師、訪問着講師、ケアマネジャー、訪問入浴、ヘルパー、医療事務も顔をそろえ、情報を共有する場だ。その後、おのおのが外来か訪問診療に出掛ける。担当割は、曜日や時間帯により異なる。常勤医5人、非常勤医9人で診療している。
 取材時、小野氏はまず車で5分の有床診に向かった。入院患者を回診するためだ。
 「どうですか。夜は眠れましたか」
 病室を回り、穏やかに声をかけて診察する風景は、通常の病院とさほど変わらない。国内の有床診は、一時期、件数が減少していたが、いわゆる2025年問題を前に、その役割が見直されている。
 「在宅の患者の症状が悪化した時、認知症があると大病院には入院できないことがあります。有床診はそうした際の受け皿です。簡単な急性期疾患のほか、がんの緩和ケア、レスパイトの入院も受け入れています」
【RECRUIT DOCTOR'S CAREER 2015年2月号(第35巻第2号)通巻408号 8-11 2015】

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 今回のシリーズは、アピタル編集長より「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」が公表されましたので、何か笠間さんが感じるところを書かれませんかとの提案を受けてお届けする臨時原稿です。
 時を同じくして、NHK・EテレのハートネットTVにおいても認知症の話題が取り上げられており、2月3日の放送(http://www.nhk.or.jp/heart-net/tv/calendar/2015-02/03.html)では、日本認知症ワーキンググループ(https://www.facebook.com/ninchisyotoujisyanokai)という団体が設立されたことと、2014年7月に開催されました“認知症当事者研究・勉強会”での様子などが伝えられました。放送では、「(認知症当事者研究・勉強会において)認知症の人たちが口々に語ったのは、空白の期間の経験でした。初期の段階で診断されても、支援する体制がなく“早期診断・早期絶望”というべき厳しい現実があるというのです。」というナレーションが流れました。
 「早期絶望」とならないためには、若年性認知症の就労支援という課題の克服が極めて重要なんだろうと思います。しかし、現実に稼働している自治体はまだまだ少ないのが現状ですね。
 そんな中、今朝(2015.2.4)の中日新聞紙面におきましては、東京都町田市のデイサービス施設「DAYS BLG!(デイズ ビーエルジー)」が通所者が取り組むプログラムに有償ボランティア活動を積極的に取り入れている様子が伝えられましたね。記事内容の一部を以下にご紹介しましょう。非常に良い記事内容ですので、是非とも全文読まれることをお勧め致します。
 「(冒頭省略) 開設は2012年。理事長の前田隆行さん(38)が以前働いていた施設で、認知症の人たちから『働きたい』『社会の役に立ちたい』という希望を耳にしたことがきっかけだった。(中略) 介護保険サービスの中で、謝礼を伴う有償ボランティアが認められていなかったため、前田さんは厚労省に要望。最低賃金を下回るという条件で有償のボランティアが認められた。(中略) 自動車販売会社の洗車や、青果問屋からはタマネギの皮むきのほか、学童保育での子どもの遊び相手などの有償ボランティア活動を含め、午前と午後にそれぞれ三、四カ所の活動先を確保している。この中から、一日の通所者約十人が自分でやりたいことを選ぶ。ボランティア中の事故などを防ぐため、派遣先には必ず職員も同行する。(以下省略) 【佐橋 大】」

認知症と精神科医療 [認知症]

認知症と精神科医療

 私は精神科医ではありません。ですから、認知症における精神科入院医療の実態はあまり詳しく知りません。
 認知症の人におきましてBPSDが顕著となって介護が行き詰まったときに、精神神経科に入院を依頼することがあります。ただ、その後どうなったかを知ることは極めて稀です。
 しかしながら噂としては、寝かしつけられ薬漬けにされ、寝たきりになって・・という話は時折耳に入ってきます。ただそれが、一部なのか、大多数なのか例外的なのかその辺りがよく分からないんです。
 石川県立高松病院副院長の北村立(きたむら たつる)医師(精神科医)の活動をTVで拝見しておりますと、精神科入院医療の重要性を感じ取ることができます。
 一方、私の担当する榊原白鳳病院3F療養病床(ベット数:59)にも、精神科での治療を終えた認知症患者さんが何名か入院されております。たくさんの向精神薬が管から注入されています。それでも奇声を上げられております。在宅や施設での受け入れが困難な方がおられるのもまた一つの事実なんだと思います。やめたくてもやめられない向精神薬があるのも現実の姿です。
 精神科医療(認知症の入院医療)の暗部の部分は私には分かりかねますが、明るい部分は時折報道されます。
 以前、アピタルで記載した北村立医師などの活動を以下に振り返ってみたいと思います。
 

朝日新聞アピタル「ひょっとして認知症-PartⅡ」第159回『認知症のケア 向精神薬の使用は慎重に』(2013年6月2日公開)
 抗精神病薬も含めて向精神薬(メモ4参照)は、認知症治療の中では基本的には必然性のない薬です。近年では、抗精神病薬については安易な使用は控えるよう警鐘が鳴らされております。
 しかしながら、かかりつけ医や認知症専門医に対する調査では、通院中の認知症患者さんの実に95%以上に何らかの向精神薬が用いられている(繁田雅弘編 角 徳文著:実践・認知症診療─認知症の人と家族・介護者を支える説明 医薬ジャーナル, 大阪, 2013, pp85-89)ことが指摘されております。
 BPSDが目立つ患者さんを、安易に精神科病院に医療保護入院させずに地域で支えていくことは、もの忘れ外来に課せられた大きな責務であると私は考えております。したがって、認知症診療の第一線に立つ医師には、抗精神病薬をうまく使いこなす知識と経験が求められることになります。介護者のケアにも配慮しつつ、患者さんのQOL(生活の質)を損なわないよう、抗精神病薬の使用を最小限に留めようという姿勢が基本原則となります。
 2013年3月20日放送のハートネットTV『シリーズ認知症 “わたし”から始まる(1)―日本・脱病院の模索―』(http://www.nhk.or.jp/heart-net/tv/calendar/2013-03/20.html)においては、石川県立高松病院副院長の北村立(きたむら たつる)医師(精神科医)らが調査した再入院の現状についても報道されました。
 再入院した人の半数(50%)は、一人暮らしか二人世帯であり、さらにその4割が誰も頼る人がなく地域から孤立している状況であることが分かったそうです。北村立医師はこの状況について、「1対1というのは、夫婦でも子どもであっても煮詰まりやすい関係にあって、つながりが強いから、看たい気持ちも強いけど、排他的になって孤立していく」と解説しておりました。
 さらに再入院した人のうち、本来は治療の必要ない人が1割含まれたいたそうです。その主因は、「介護保険と本人の希望のずれ」であったそうです。例えば、「本人にとっては(施設で)することがないから『帰る』と言っているのに、それが施設側からすると、『帰宅願望が強い』となってBPSD扱いされてしまっている」と北村立医師は指摘しておりました。

メモ4:向精神薬
 向精神薬とは、中枢神経系に作用し、生物の精神活動に何らかの影響を与える薬物の総称であり、抗精神病薬、抗不安薬、抗うつ薬などが含まれます。


朝日新聞アピタル「ひょっとして認知症-PartⅡ」第178回『深刻化する認知症患者の長期入院 退院に向けてケア会議』(2013年6月21日公開)
 では、精神科病院における長期入院の解消に成果をあげている取り組みについてご紹介しましょう。
 2012年11月22日放送のクローズアップ現代(http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail_3278.html)では、「“帰れない”認知症高齢者 急増する精神科入院」と題して、増え続ける認知症高齢者の精神科病院への入院をどう解消するのかが大きな課題として取り上げられました。
 放送された内容で私が強く印象に残ったのは、石川県立高松病院副院長の北村立(きたむら たつる)医師(精神科医)らの取り組みです。
 北村立医師らは、4年前から退院を促すための様々な取り組みを始めているそうです。まず取り組んだことは、家族や介護施設が抱えている退院後の不安を解消するための退院に向けてのケア会議でした。ケア会議では、家族や介護施設の担当者が集まり、退院後の過ごし方について話し合われます。その中で北村立医師は、「(退院してみて)うまくいかなかったら、また入院すればいいんだし…。やってみないことには分からんから」と話しておりました。
 その他に北村立医師が取り組んでいることが、「早期治療」と「BPSDの予防」です。早期治療とは、医師自ら介護施設に出向き、認知症の行動・心理症状(BPSD)がひどくなる前に治療に取り組むものです。BPSDの予防とは、認知症と診断後に病院のスタッフが患者さんの自宅を訪問し、関係者に集まってもらいBPSDの原因を探りアドバイスする取り組みです。
 当日の番組コメンテーターを務めた敦賀温泉病院・玉井顯院長(精神科医)は、北村立医師らの取り組みを見て、認知症はチーム医療が一番大切であるがそれを実践していることが素晴らしく、生活の場を実際に見ているのでBPSDの原因が分かり対処方法を家族に伝えられるし、精神科病院は「最後の砦」なのでいつでも再入院できますよと保証する(バックアップ体制をしっかりする)ことで家族が安心し長く在宅で過ごすことができるのではないかと高く評価しておりました。
 北村立医師らの取り組みは、2013年3月1日付朝日新聞「認知症とわたしたち」においても取り上げられました。記事においては、「入院期間をなるべく短くしようと、病院は4年前から、家やグループホームヘ訪問看護を始めた。症状がひどくなったときには再入院させ、落ち着けばまた家へ帰す。抗精神病薬や睡眠薬などは最小限に抑える。患者の活動量が落ちれば看護は楽だが、寝たきりになって家へ帰れなくなる恐れもある。最近は、患者の半分近くは2カ月以内で退院できるようになった。」とその成果も報道されました。

Facebookコメント
 2013年6月15日に放送されましたNHK・Eテレ/チョイスでは、「もし認知症とわかったら」(http://www.nhk.or.jp/kenko/choice/archives/2013/06/0615.html)に関連するチョイスがいくつか示されました。
 私が一番印象に残ったのが、若狭町福祉課地域包括支援センターの髙島久美子さんらが取り組んでいる試みです。
 髙島さんは、若狭町に住む65歳以上の人を年1回訪ねており、戸別訪問により認知症の早期発見に努めております。さらに、家族だけではなくご近所の方に対しても認知症ケアについてアドバイスし、認知症の行動・心理症状(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia;BPSD)を未然に防止することに精力的に取り組まれておりました。
 若狭町では、これらの取り組みによって、認知症患者の入院数(平成24年人口比)が福井県の周辺自治体の約5分の1であったという成果をあげているそうです(嶺南認知症疾患医療センター調べ)。
 町ぐるみで認知症対策に取り組むことにより、BPSDを未然に防止し精神科病院への入院を減らした具体的な事例と言えますね。

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 事例を紹介しよう。90歳の母親を60代後半の娘さんが一人で介護していたケースである。娘さんが急性の心筋梗塞で入院することなり、その日から誰が母親の介護をするかが問題となった。関与していた初期集中支援チームは、残された母親にはほとんど清神症状がないのに、なんと認知症疾患医療センターの民間精神科病院に入院させて、支援終了としてしまったのである。地域の介護施設でショートステイをつなげたり、工夫次第でいくらでも地域生活を継続できていたかも知れないケースである。
 精神科病院は「地域にとって困った存在」を強力に引き寄せ、入院させてしまうことでその存在を目の前から消し去ってくれる。地域で対人的支援を行っている人にとっては大変に便利な施設である。とりあえず「困った人」を引き受けてくれて、問題が解決してしまうので、一回利用すると癖になってしまう。 しかし利用したことによる副作用は極めて大きく、こうした「便利な施設」が地域にあるために、「工夫すれば地域で支えることができる人」がみな精神科病棟に吸い込まれてしまうことにもなりかねない。こうした「便利な施設」があると地域で対人支援を行っている人々が支援方法を工夫することがなくなるので、多様な人を地域で支える仕組みが育たないのである。
 結局、現在の日本では精神科病床が過剰に存在しているために地域力が育たず、いつまでたっても精神障害者を地域で支えられない状態がつくられてしまっているのである。
 さらに、この精神科病院の吸引力のために、私たちは普通に生活していると精神障害がある人と接する機会が奪われてしまい、国民全体の精神障害に関する理解も深まらないのだ。いわば、過剰な精神科病床の存在のために大きな社会的損失が生じているのである。真の共生社会の実現のためには、精神科病床は適正数まで強制的に減少させる必要があると考えられる。
 病床削減の方法としては、厚生労働省の審議会「長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策に係る検討会」で検討されていた「病床転換型居住系施設」は極めて問題の大きい、危険な施策である(厚生労働省:長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策に係る検討会 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000almx.html#shingi141270)。単なる看板の書き換えに終わってしまう可能性が高いことと、日本と同じような精神科医療状況にあるベルギーで、似たような施策を行い、20年以上の社会実験の末に完全に失敗に終わったからである。
【上野秀樹:認知症の人の支援─初期集中支援チームと精神科医療供給体制. 公衆衛生 Vol.78 683-688 2014】


朝日新聞アピタル「ひょっとして認知症-PartⅡ」第179回『深刻化する認知症患者の長期入院 専門病院と介護老人施設の連携をスムーズに』(2013年6月22日公開)
 最後に、石川県立高松病院副院長の北村立医師が論文で報告している理念をご紹介して本稿を閉じたいと思います(一部改変)。
 「在宅や介護老人施設などで対応困難なBPSDが発生した場合、可及的速やかに対応でき、かつ人権擁護の観点から法律的な裏づけがあるのは精神科病院しかないと思われる。したがってBPSDの救急対応も精神科病院の大きな役割として強調されるべきである。
 石川県立高松病院ではBPSDに対する救急・急性期治療の重要性を認識し、早くからそれを実践してきている。具体的には認知症医療においても365日24時間の入院体制を合言葉に、『必要なときに即入院できる』体制を作り上げてきた。
 さて、今後爆発的な増加が予想される認知症の人をできるかぎり地域でみていくためには、BPSDの24時間の対応体制の整備が必要なのは明らかであるが、わが国にはそのような報告は筆者らの知る限りない。
 当院のような365日24時間受け入れ可能な精神科専門医療機関が地域にあれば、多少重症のケースであっても、介護老人施設でぎりぎりまで対応できる可能性が示されている。施設が困ったときにただちに対応すれば信頼が得られ、状態が安定すれば短期間で元の施設に受け入れてもらうことが可能となり、専門病院と介護老人施設の連携がスムーズとなる。
 成人の精神科医療と同様、高齢者に認められる急性一過性の激しい精神症状は、適切に対応すれば容易に消退するものであり、これこそが精神科における認知症急性期医療の重要性を示すものである。また、筆者らの臨床経験からいえば、家族の心配や介護負担感を増やさないようにするには、初診時から365日24時間いつでも受け入れることをあらかじめ保証することが重要である。家族が困ったときにすぐ対応すれば、介護者は余裕をもって介護に当たることが可能であり、近年問題となっている介護者のメンタルヘルスを保つうえでもきわめて有益と考える。」(北村 立 他:石川県立高松病院における認知症高齢者の時間外入院について. 老年精神医学雑誌 Vol.23 1246-1251 2012)

糖尿病性認知症 [認知症]

糖尿病と認知症
https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/595552310614452 
 生活習慣病の中でも,糖尿病とADとの関連がもっとも注目されており,基礎的ならびに臨床的な研究成果が蓄積されつつある。一般に,糖尿病は,動脈硬化や脳梗塞などの血管病変に加えて,糖毒性や酸化ストレス,AGE(advanced glycation end-product)などによる代謝性病変,さらに高インスリン血症,インスリン抵抗性,インスリンシグナル伝達の障害がADの病理過程を促進するメカニズムとして推定されている。
 高齢者では,これらの循環障害,代謝異常,変性過程が混在し,いわゆる“合わせ技”として認知症の発症を早めているものと推察される。その中でも,糖代謝異常が認知症の発症に深く関与している病型があり,われわれはこれを“糖尿病性認知症”と呼んでいる。
 本症は有意な血管性病変を認めることは少なく,臨床的にはADと診断されていることが多いが,ADの特徴的な脳画像所見,すなわち海馬の萎縮や頭頂側頭葉の血流低下を呈することも少ない。臨床的にはやや高齢,糖尿病のコントロールが不良,近時記憶障害よりも注意・集中力の障害が目立ち,進行はやや緩やか,という特徴をもつ(図)。また,アミロイドPETは陰性のことが多く,タウPETでは軽度の集積がみられることから,糖毒性と関連した“タウオパチー+非特異的神経細胞障害”が背景病理として推察され,われわれは臨床診断のためのガイドラインを提唱している(表)。
 2型糖尿病を伴う認知症のうち,約10%程度が本症に相当するものと考えられる。
 …(中略)…

健康寿命の延伸に向けて
 生活習慣病関連認知症のうち究極の臨床病型が糖尿病性認知症であり,糖尿病の適切な治療や管理が,認知症の改善や進行抑制,さらには発症予防にもつながる可能性が高い。最近,英国を含む海外からの報告によると,この20年間で認知症患者は約24%減少しているという。この背景には教育歴の向上や血管性病変の減少,さらには血管性危険因子や生活習慣の改善が寄与しているらしい。したがって,糖尿病を含む生活習慣病の観点から認知症の病態解明や治療法の開発,さらには予防まで可能となり,生活習慣病対策がより現実的なアプローチとして期待される。デイサービスの有効活用が認知症の進行抑制にもつながることから,生活習慣からの対応は健康寿命の延伸につながるものと期待される。
 【羽生春夫:認知症. 成人病と生活習慣病 Vol.46 521-525 2016】

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