大脳予備能(brain reserve) [100歳の美しい脳]
朝日新聞アスパラクラブ「ひょっとして認知症-PartⅠ」第530回『100歳の美しい脳(その11) たくさん本を読んで、手紙も書いて』(2012年9月19日公開)
Katzmanによる研究データは、シリーズ第57回『高齢シスターの脳は明せきだった・その1』において紹介しておりますのでご参照下さい。
大脳予備能(brain reserve)の話は、シリーズ第302回『確実に認知症を予防できる方法はまだない』のコメント欄においてもご紹介しております。
高教育歴がアルツハイマー病(AD)の症状発現に対する防御効果を有するということは、取りも直さず、高教育歴はADの「発症遅延」に関連するということになりますね。実際にそのような報告もされております(Roe CM et al:Cerebrospinal fluid biomarkers, education, brain volume, and future cognition. Arch Neurol Vol.68 1145-1151 2011)。この論文は、ネット上においても閲覧可能です(http://archneur.jamanetwork.com/article.aspx?volume=68&issue=9&page=1145)。
このように、認知予備能力(cognitive reserve;CR)が高い人ではADの発症が遅れることになります。
しかしながら、教育レベルや読み書きのレベルが高いと、いったんADになったときには進行が速いことが知られております。例えば、「若年発症、高教育歴、高血圧合併例では進行が速い」(Hirofumi Sakurai, Haruo Hanyu et al:Vascular risk factors and progression in Alzheimer's disease. Geriatrics and Gerontology International Vol.11 211-214 2011)という報告がされております。
2012年7月12日に三重県津市で開催された認知症学術講演会において、東京医科大学病院老年病科の羽生春夫教授が上記報告に関するスライドを提示され、「高教育歴は発症を遅らせるが、発症した時点では既に病理病変はかなり進行しているため、いったん発症するとその進行は速い。」と説明されました。
2012年8月3日付『やさしい医学リポート』において坪野吉孝先生は、「『生きる目的』が強い高齢者では、アルツハイマー病に特徴的な脳の病理学的変化が進んでいても、物忘れなどの認知機能の低下が少ない」ということが報告されている論文をご紹介されましたね。
私もこの論文には強い関心を持ちました。「人生に大きな目標をもっている人は、目標の少ない人に比べて、認知力低下の速度が30%遅かった。」と記載されていたことがとても印象に残っています。
シリーズ第58回『高齢シスターの脳は明せきだった(その2)』において私は、「生きがい尺度の高得点者は、低得点者よりもアルツハイマー病を発症せずにすむ可能性がおよそ2.4倍高かった」(Patricia AB et al:Effect of a Purpose in Life on Risk of Incident Alzheimer Disease and Mild Cognitive Impairment in Community-Dwelling Older Persons. Arch General Psychiatry Vol.67 304-310 2010)というデータもご紹介しております。この論文はウェブサイト(http://archpsyc.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=210648)において閲覧可能です。
高齢者の生きがいを高めるために介入を加えることは、認知症予防にも繋がるわけですから、しっかりと取り組む必要がある課題ですね。
群馬大学大学院保健学研究科の山口晴保教授は著書の中で、「教育歴」に関する重要な提言をされております。山口晴保教授の言葉を最後にご紹介して『ひょっとして認知症?』をひとまず閉じたいと思います。
「教育歴については、いくつかの疫学研究で、教育歴が長いほど認知症リスクが低減することが知られています。例えば、中年期の肥満や高血圧のリスクを示したスウェーデンの疫学研究では、教育歴が1年長くなるごとに認知症のリスクが0.86倍と少し低くなることを示しています。ただ、例えば、教育歴が短いほど肥満の割合が高いとか、健康への配慮が少ないなど、背景にある別の因子が関与しているのかもしれません。教育歴は過去のことですから、こんなことを今さら言われても…となってしまいます。筆者の言いたいことは、教育歴の短い人ほどたくさん本を読んで下さい、手紙を書いて下さいということです。教育歴の長い方が認知症になりにくいのは、認知機能が比較的高いところから落ちていくので低くなるまでに時間がかかると解釈されます。はじめの位置が比較的低いほうにあると思われる方は、年々落ちていくスピードを緩める努力が必要です。それには、たくさん本を読んで知識を増やし、新しいことにどんどん挑戦して能力を伸ばすことが大切だと思います。」(認知症予防 ─読めば納得! 脳を守るライフスタイルの秘訣─ 協同医書出版社発行, 東京, 2010, p192)
人生、大きな目標が必要。
投稿者:きらきら星 投稿日時:12/09/19 10:49
高い目的意識。
誰もが、認知症にはなりたくないですよね。
「発明」して、「特許」をとることを目標にしたいですね。
一挙両得(笑)今、言い出したところです。
今後、コメントは表示されなくなっても、先生には届くのでしょうか。
それなら、いいですね。
Re:人生、大きな目標が必要
投稿者:笠間 睦 投稿日時:12/09/19 11:59
きらきら星さんへ
小さな目標であっても、達成に向けて努力し続けるという気持ちが大切なんだと思います。
私自身も、小さな目標を掲げて達成に向けて頑張っているつもりです。
> 今後、コメントは表示されなくなっても、先生には届くのでしょうか。
この点に関してはよく分かりません。
いずれにしても、今回のシリーズで『ひょっとして認知症? Part1』は終了しましたが、『ひょっとして認知症? Part2』がいずれ開始されますので、その時には活発なコメントをお待ちしております。
エンザイムBACE2
投稿者:フーニ 投稿日時:12/09/20 09:58
話題が逸れますが、Mayo Clinic の研究者達はアルツハイマーに対するエンザイムBACE2を見付けたと今月17日に発表しました。
BACE2はベータアミロイドを破壊すると言う事です。これでアルツハイマーの治療が出来る様に成ると良いですね。
興味のある方はこれがリンクです。
http://www.mayoclinic.org/news2012-jax/7087.html
又は
http://www.molecularneurodegeneration.com/content
Re:エンザイムBACE2
投稿者:笠間 睦 投稿日時:12/09/20 10:56
フーニさんへ
専門的な情報ありがとうございました。
「BACE」については今までこのブログでご紹介したことがありませんので、簡単に解説しておきます。
アルツハイマー病の主原因とされるAβ(アミロイドβタンパク)は、アミノ酸が40~42個程度つながったペプチドであり、β及びγセクレターゼの働きによりアミロイドβ前駆体タンパク質(Amyloid beta protein precursor;APP)から切り出されます。
APPの大部分は、αセクレターゼによって切断されアミロイドβタンパク産生に至りません。しかしながら、βセクレターゼ及びγセクレターゼによって切断されると37~43アミノ酸のAβが産生されます。
βセクレターゼの代表は、BACE1(β-site APP-cleaving enzyme1)です。BACEに関する詳細は、ウェブサイト(http://www.tmig.or.jp/J_TMIG/genome300/BACE.html)などをご参照下さい。
γセクレターゼ阻害剤・βセクレターゼ阻害剤という薬剤は、アルツハイマー病の根本的な治療、すなわち疾患修飾治療(disease-modifying therapy;DMT)の候補の1つとして期待されています。
いつもコメントをありがとうございました
投稿者:ミーたん 投稿日時:12/09/22 04:06
お忙しいのに精力的にブログを更新され、いつも丁寧に応えていただき本当に頭が下がります。たくさんの事を教えていただきました。私自身半分認知症状態での2年半でしたが、脳に良い刺激を与えていただきました。笠間先生はいつお休みになられているのかと心配になってしまいますが、どうぞお体を大切になさって、これからもいろいろ貴重な情報を教えてください。
誰か他の人の為に少しでも役に立ちたいと行動できる生き方が、結局は一番自分の為になっているのかもしれないと思うこのごろです。
Part2でもコメントをお待ちしております
投稿者:笠間 睦 投稿日時:12/09/22 07:21
ミーたんさんへ
ミーたんさんからの初コメントは、第306回(ノセボ効果)でしたね。
その後、「フェルラ酸」(第464回)、「命の期限を何をもって決めるのか?」(第468回)、「日本人の宗教観」(第494回)など印象的なご質問をいくつか頂きました。
満足な回答になっていなかったかも知れませんが、私に分かる範囲で回答させて頂きました。
『ひょっとして認知症? Part2』が開始されましたら、またコメントをお待ちしております。
小さな目標
投稿者:まるタン 投稿日時:12/09/22 10:24
笠間先生へ
いつも必ず返信してくださる事を、なかば期待して(私の場合)
拙いコメントにも丁寧に答えていただき本当に感謝感激です。
ブログに出会ってから日常生活に大きな変化があっても冷静に対処することができるようになりました。
まだまだこれからも続きそうですが、パート2を追いかけながら元気に、私なりの小さな目標にむけて愛犬とガンバリます。
先生もお身体大事になるべく長~~くブログが続きますように・・と期待しております。
ここまで、ありがとううございました。
Re:小さな目標
投稿者:笠間 睦 投稿日時:12/09/22 14:47
まるタンさんへ
お彼岸でしたのでお墓参りに行っており返信が遅くなってしまいました。
まるタンさんこそ、多くのコメントを頂き、ありがとうございました。
Part1でのまるタンさんの総コメント数は、数えてみたら66回でした。間違いなくトップ3に入っているはずです。
やはり「愛犬」「サッカー」という共通の話題に関心が強かったのが大きいのでしょうね。
今は、Part2に向けての充電中です。
P.S
時々「誤字」のある、あわてん坊のまるタンさんのコメントが何とも言えず暖かみがあり素敵に感じています。
また、パート2でお会いします。
投稿者:音とリズム 投稿日時:12/09/26 08:57
パート1終了ご苦労様でした。パート2でもまたお世話になります。それまで、心身共にご自愛ください。
まるタンさんも無理せずお元気でお過ごしください。
Re:また、パート2でお会いします
投稿者:笠間 睦 投稿日時:12/09/26 09:46
音とリズムさんへ
パート1では多くのコメントをお寄せ頂きありがとうございました。
パート2での再会を楽しみにしております。
パート2では、「アメリカの認知症ケアの動向 認知症になり英語を忘れる」(タイトル未定)という原稿もご紹介する予定です。
愛着障害
投稿者:笠間 睦 投稿日時:12/09/26 09:54
充電期間中ですので、久しぶりに、認知症とは無関係の本を読んでいます。
今読んでいるのは、精神科医で作家の岡田尊司先生が書かれた『愛着障害』です。
私が興味深く感じた記述をごく一部ご紹介しましょう。
「新生児のときから、すでに愛着の形成は始まっているが、まだそれは原初的な段階にある。生後六か月くらいまでであれば、母親を少しずつ見分けられるようになってはいるものの、母親が他の人に変わっても、あまり大きな混乱は起きない。新しい母親に速やかになじんでいく。ただし、この段階でも、母親が交替すると、対人関係や社会性の発達に影響が及ぶこともわかっている。結ばれ始めた愛着がダメージを受けると考えられる。
六か月を過ぎるころから、子どもは母親をはっきりと見分け始める。ちょうど、人見知りが始まるころだ。それは、愛着が本格的に形成され始めたことを意味している。生後六か月から一歳半くらいまでが、愛着形成にとって、もっとも重要な時期とされる。この『臨界期』と呼ばれる時期を過ぎると、愛着形成はスムーズにはいかなくなる。実際、二歳を過ぎて養子になった子が、養母になかなか懐こうとしないということはよくある。また、臨界期に母親から離されたり、養育者が交替したりすると、愛着が傷を受けやすいのである。」(岡田尊司:愛着障害─子ども時代を引きずる人々 光文社, 東京, 2011, pp24-25)
認知症からの回復
投稿者:梨木 投稿日時:12/09/26 21:50
パート1最後の内容が希望あるもので嬉しいです。
先程NHKの「ためしてガッテン」見終わったばかりで、明るい気持ちになっています。テーマはアルツハイマー新予防と回復プロジェクト。
認知症の方への取り組みについては、いろいろ読んだことありましたが、せいぜい現状維持・悪化予防・周辺症状の軽減と受け止めていました。でもこれは古い認識だったみたいです。
料理(創造的作業)と短時間の昼寝と運動で、医師もびっくりする程の記憶健常状態への回復…すばらしい!(16人/18人)
予防はやはり(前にこのブログでも読んだ気がしますが)糖尿病が関係していましたね。生活習慣病なら、自分の努力で少し変えられる気がします。運動嫌いの私でも、やらなきゃ!って気になりました。
P.S.
「認知症になり英語を忘れる」って、母語を忘れるということなら、どこの国でも同じなのではないですか。それとも移民のお話なのかと思ったり。いずれ又。
Katzmanによる研究データは、シリーズ第57回『高齢シスターの脳は明せきだった・その1』において紹介しておりますのでご参照下さい。
大脳予備能(brain reserve)の話は、シリーズ第302回『確実に認知症を予防できる方法はまだない』のコメント欄においてもご紹介しております。
高教育歴がアルツハイマー病(AD)の症状発現に対する防御効果を有するということは、取りも直さず、高教育歴はADの「発症遅延」に関連するということになりますね。実際にそのような報告もされております(Roe CM et al:Cerebrospinal fluid biomarkers, education, brain volume, and future cognition. Arch Neurol Vol.68 1145-1151 2011)。この論文は、ネット上においても閲覧可能です(http://archneur.jamanetwork.com/article.aspx?volume=68&issue=9&page=1145)。
このように、認知予備能力(cognitive reserve;CR)が高い人ではADの発症が遅れることになります。
しかしながら、教育レベルや読み書きのレベルが高いと、いったんADになったときには進行が速いことが知られております。例えば、「若年発症、高教育歴、高血圧合併例では進行が速い」(Hirofumi Sakurai, Haruo Hanyu et al:Vascular risk factors and progression in Alzheimer's disease. Geriatrics and Gerontology International Vol.11 211-214 2011)という報告がされております。
2012年7月12日に三重県津市で開催された認知症学術講演会において、東京医科大学病院老年病科の羽生春夫教授が上記報告に関するスライドを提示され、「高教育歴は発症を遅らせるが、発症した時点では既に病理病変はかなり進行しているため、いったん発症するとその進行は速い。」と説明されました。
2012年8月3日付『やさしい医学リポート』において坪野吉孝先生は、「『生きる目的』が強い高齢者では、アルツハイマー病に特徴的な脳の病理学的変化が進んでいても、物忘れなどの認知機能の低下が少ない」ということが報告されている論文をご紹介されましたね。
私もこの論文には強い関心を持ちました。「人生に大きな目標をもっている人は、目標の少ない人に比べて、認知力低下の速度が30%遅かった。」と記載されていたことがとても印象に残っています。
シリーズ第58回『高齢シスターの脳は明せきだった(その2)』において私は、「生きがい尺度の高得点者は、低得点者よりもアルツハイマー病を発症せずにすむ可能性がおよそ2.4倍高かった」(Patricia AB et al:Effect of a Purpose in Life on Risk of Incident Alzheimer Disease and Mild Cognitive Impairment in Community-Dwelling Older Persons. Arch General Psychiatry Vol.67 304-310 2010)というデータもご紹介しております。この論文はウェブサイト(http://archpsyc.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=210648)において閲覧可能です。
高齢者の生きがいを高めるために介入を加えることは、認知症予防にも繋がるわけですから、しっかりと取り組む必要がある課題ですね。
群馬大学大学院保健学研究科の山口晴保教授は著書の中で、「教育歴」に関する重要な提言をされております。山口晴保教授の言葉を最後にご紹介して『ひょっとして認知症?』をひとまず閉じたいと思います。
「教育歴については、いくつかの疫学研究で、教育歴が長いほど認知症リスクが低減することが知られています。例えば、中年期の肥満や高血圧のリスクを示したスウェーデンの疫学研究では、教育歴が1年長くなるごとに認知症のリスクが0.86倍と少し低くなることを示しています。ただ、例えば、教育歴が短いほど肥満の割合が高いとか、健康への配慮が少ないなど、背景にある別の因子が関与しているのかもしれません。教育歴は過去のことですから、こんなことを今さら言われても…となってしまいます。筆者の言いたいことは、教育歴の短い人ほどたくさん本を読んで下さい、手紙を書いて下さいということです。教育歴の長い方が認知症になりにくいのは、認知機能が比較的高いところから落ちていくので低くなるまでに時間がかかると解釈されます。はじめの位置が比較的低いほうにあると思われる方は、年々落ちていくスピードを緩める努力が必要です。それには、たくさん本を読んで知識を増やし、新しいことにどんどん挑戦して能力を伸ばすことが大切だと思います。」(認知症予防 ─読めば納得! 脳を守るライフスタイルの秘訣─ 協同医書出版社発行, 東京, 2010, p192)
人生、大きな目標が必要。
投稿者:きらきら星 投稿日時:12/09/19 10:49
高い目的意識。
誰もが、認知症にはなりたくないですよね。
「発明」して、「特許」をとることを目標にしたいですね。
一挙両得(笑)今、言い出したところです。
今後、コメントは表示されなくなっても、先生には届くのでしょうか。
それなら、いいですね。
Re:人生、大きな目標が必要
投稿者:笠間 睦 投稿日時:12/09/19 11:59
きらきら星さんへ
小さな目標であっても、達成に向けて努力し続けるという気持ちが大切なんだと思います。
私自身も、小さな目標を掲げて達成に向けて頑張っているつもりです。
> 今後、コメントは表示されなくなっても、先生には届くのでしょうか。
この点に関してはよく分かりません。
いずれにしても、今回のシリーズで『ひょっとして認知症? Part1』は終了しましたが、『ひょっとして認知症? Part2』がいずれ開始されますので、その時には活発なコメントをお待ちしております。
エンザイムBACE2
投稿者:フーニ 投稿日時:12/09/20 09:58
話題が逸れますが、Mayo Clinic の研究者達はアルツハイマーに対するエンザイムBACE2を見付けたと今月17日に発表しました。
BACE2はベータアミロイドを破壊すると言う事です。これでアルツハイマーの治療が出来る様に成ると良いですね。
興味のある方はこれがリンクです。
http://www.mayoclinic.org/news2012-jax/7087.html
又は
http://www.molecularneurodegeneration.com/content
Re:エンザイムBACE2
投稿者:笠間 睦 投稿日時:12/09/20 10:56
フーニさんへ
専門的な情報ありがとうございました。
「BACE」については今までこのブログでご紹介したことがありませんので、簡単に解説しておきます。
アルツハイマー病の主原因とされるAβ(アミロイドβタンパク)は、アミノ酸が40~42個程度つながったペプチドであり、β及びγセクレターゼの働きによりアミロイドβ前駆体タンパク質(Amyloid beta protein precursor;APP)から切り出されます。
APPの大部分は、αセクレターゼによって切断されアミロイドβタンパク産生に至りません。しかしながら、βセクレターゼ及びγセクレターゼによって切断されると37~43アミノ酸のAβが産生されます。
βセクレターゼの代表は、BACE1(β-site APP-cleaving enzyme1)です。BACEに関する詳細は、ウェブサイト(http://www.tmig.or.jp/J_TMIG/genome300/BACE.html)などをご参照下さい。
γセクレターゼ阻害剤・βセクレターゼ阻害剤という薬剤は、アルツハイマー病の根本的な治療、すなわち疾患修飾治療(disease-modifying therapy;DMT)の候補の1つとして期待されています。
いつもコメントをありがとうございました
投稿者:ミーたん 投稿日時:12/09/22 04:06
お忙しいのに精力的にブログを更新され、いつも丁寧に応えていただき本当に頭が下がります。たくさんの事を教えていただきました。私自身半分認知症状態での2年半でしたが、脳に良い刺激を与えていただきました。笠間先生はいつお休みになられているのかと心配になってしまいますが、どうぞお体を大切になさって、これからもいろいろ貴重な情報を教えてください。
誰か他の人の為に少しでも役に立ちたいと行動できる生き方が、結局は一番自分の為になっているのかもしれないと思うこのごろです。
Part2でもコメントをお待ちしております
投稿者:笠間 睦 投稿日時:12/09/22 07:21
ミーたんさんへ
ミーたんさんからの初コメントは、第306回(ノセボ効果)でしたね。
その後、「フェルラ酸」(第464回)、「命の期限を何をもって決めるのか?」(第468回)、「日本人の宗教観」(第494回)など印象的なご質問をいくつか頂きました。
満足な回答になっていなかったかも知れませんが、私に分かる範囲で回答させて頂きました。
『ひょっとして認知症? Part2』が開始されましたら、またコメントをお待ちしております。
小さな目標
投稿者:まるタン 投稿日時:12/09/22 10:24
笠間先生へ
いつも必ず返信してくださる事を、なかば期待して(私の場合)
拙いコメントにも丁寧に答えていただき本当に感謝感激です。
ブログに出会ってから日常生活に大きな変化があっても冷静に対処することができるようになりました。
まだまだこれからも続きそうですが、パート2を追いかけながら元気に、私なりの小さな目標にむけて愛犬とガンバリます。
先生もお身体大事になるべく長~~くブログが続きますように・・と期待しております。
ここまで、ありがとううございました。
Re:小さな目標
投稿者:笠間 睦 投稿日時:12/09/22 14:47
まるタンさんへ
お彼岸でしたのでお墓参りに行っており返信が遅くなってしまいました。
まるタンさんこそ、多くのコメントを頂き、ありがとうございました。
Part1でのまるタンさんの総コメント数は、数えてみたら66回でした。間違いなくトップ3に入っているはずです。
やはり「愛犬」「サッカー」という共通の話題に関心が強かったのが大きいのでしょうね。
今は、Part2に向けての充電中です。
P.S
時々「誤字」のある、あわてん坊のまるタンさんのコメントが何とも言えず暖かみがあり素敵に感じています。
また、パート2でお会いします。
投稿者:音とリズム 投稿日時:12/09/26 08:57
パート1終了ご苦労様でした。パート2でもまたお世話になります。それまで、心身共にご自愛ください。
まるタンさんも無理せずお元気でお過ごしください。
Re:また、パート2でお会いします
投稿者:笠間 睦 投稿日時:12/09/26 09:46
音とリズムさんへ
パート1では多くのコメントをお寄せ頂きありがとうございました。
パート2での再会を楽しみにしております。
パート2では、「アメリカの認知症ケアの動向 認知症になり英語を忘れる」(タイトル未定)という原稿もご紹介する予定です。
愛着障害
投稿者:笠間 睦 投稿日時:12/09/26 09:54
充電期間中ですので、久しぶりに、認知症とは無関係の本を読んでいます。
今読んでいるのは、精神科医で作家の岡田尊司先生が書かれた『愛着障害』です。
私が興味深く感じた記述をごく一部ご紹介しましょう。
「新生児のときから、すでに愛着の形成は始まっているが、まだそれは原初的な段階にある。生後六か月くらいまでであれば、母親を少しずつ見分けられるようになってはいるものの、母親が他の人に変わっても、あまり大きな混乱は起きない。新しい母親に速やかになじんでいく。ただし、この段階でも、母親が交替すると、対人関係や社会性の発達に影響が及ぶこともわかっている。結ばれ始めた愛着がダメージを受けると考えられる。
六か月を過ぎるころから、子どもは母親をはっきりと見分け始める。ちょうど、人見知りが始まるころだ。それは、愛着が本格的に形成され始めたことを意味している。生後六か月から一歳半くらいまでが、愛着形成にとって、もっとも重要な時期とされる。この『臨界期』と呼ばれる時期を過ぎると、愛着形成はスムーズにはいかなくなる。実際、二歳を過ぎて養子になった子が、養母になかなか懐こうとしないということはよくある。また、臨界期に母親から離されたり、養育者が交替したりすると、愛着が傷を受けやすいのである。」(岡田尊司:愛着障害─子ども時代を引きずる人々 光文社, 東京, 2011, pp24-25)
認知症からの回復
投稿者:梨木 投稿日時:12/09/26 21:50
パート1最後の内容が希望あるもので嬉しいです。
先程NHKの「ためしてガッテン」見終わったばかりで、明るい気持ちになっています。テーマはアルツハイマー新予防と回復プロジェクト。
認知症の方への取り組みについては、いろいろ読んだことありましたが、せいぜい現状維持・悪化予防・周辺症状の軽減と受け止めていました。でもこれは古い認識だったみたいです。
料理(創造的作業)と短時間の昼寝と運動で、医師もびっくりする程の記憶健常状態への回復…すばらしい!(16人/18人)
予防はやはり(前にこのブログでも読んだ気がしますが)糖尿病が関係していましたね。生活習慣病なら、自分の努力で少し変えられる気がします。運動嫌いの私でも、やらなきゃ!って気になりました。
P.S.
「認知症になり英語を忘れる」って、母語を忘れるということなら、どこの国でも同じなのではないですか。それとも移民のお話なのかと思ったり。いずれ又。