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アルコール関連認知症 [アルコール関連認知症]

アルコール関連認知症

朝日新聞アピタル「ひょっとして認知症-PartⅡ」第50回『その他の認知症─アルコール関連認知症』(2013年2月11日公開)
アルコール関連認知症
 長期に多量の飲酒を続けることにより認知症を発症することがあり、それをアルコール関連認知症と呼んでいます。
 厚生労働省研究班の2008年の報告によれば、若年性認知症の原因疾患としては、脳血管性認知症(VaD)が最多で39.8%、次いでアルツハイマー型認知症(AD)の25.4%、以下、頭部外傷後遺症(7.7%)、前頭側頭葉変性症(3.7%)、アルコール関連認知症(3.3%)と続きます(池嶋千秋、朝田 隆:若年性認知症はどのくらいの患者数になるのか? 精神科治療学 Vol.25 1281-1287 2010)。
 厚生労働省のウェブサイト上の報告(http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/03/h0319-2.html)では、上記論文と若干数値が異なっており、アルコール性認知症(3.5%)と記載されております。

 ところで、アルコール性認知症という診断名は、現代の主な診断基準には存在しておりません(松下幸生:アルコール性認知症とコルサコフ症候群. 日本臨牀 Vol.69 Suppl10 170-175 2011)。
 それは、動物実験ではアルコールの神経毒性を示唆する結果が報告されているものの、ヒトにおいて認知症の直接原因になるという証拠は得られておらず、未解決の問題だからです。そういった背景もあり、アルコール関連認知症という別の基準が提唱されています。

 ウェルニッケ脳症(Wernicke脳症)は、ビタミンB1(チアミン)の欠乏によって生じ、外眼筋麻痺、運動失調、意識障害を三主徴とする急性脳症です。ただし、意識障害のみを示す場合もあります。
 ウェルニッケ脳症は、ビタミンB1の欠乏だけでも発症します。しかし、アルコールの多飲やインスタント食品の偏食による栄養の偏りなども発症の引き金となります。
 コルサコフ症候群(Korsakoff症候群)は、アルコール依存症例に合併し、Wernicke脳症後に生じることが多いため、Wernicke-Korsakoff症候群と言われることもあります。

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 「Korsakoff症候群は、アルコール乱用者のWernicke脳症のほぼ80%に続発し、即時記憶が強く障害される一方で、古いエピソード記憶は比較的保たれる。著明な前向性および逆行性健忘とアパシーが特徴的であり、最近の記憶の欠失に関連した作話症を時に認める。注意力や社会的礼節は保たれており、特に違和感なく通常の会話も成立するため、一見正常に見えることもある。」(池田賢一、髙嶋 博:栄養障害(ビタミン欠乏など)に関連する認知障害. Modern Physician Vol.33 27-29 2013)

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 私は、毎晩欠かさずにしっかりと晩酌をしておりますが、アルコール乱用者ではないと思います。
 因みに、胃ろうの患者さんが晩酌をすることもあるようです。
 仙台往診クリニックの川島孝一郎院長によると、「仙台往診クリニックで診療している在宅患者の中には、胃瘻から栄養を取りながら脱脂綿で少しずつ日本酒を口に運び、毎日晩酌をする終末期の患者さんが少なくない」(2013年2月10日発行日経メディカルNo.543 51-59)そうです。
P.S.
 胃ろうの患者さんでも、必要な栄養は胃瘻より摂取し、ごく少量のお楽しみ程度に「経口摂取」をされるという方は結構多いですよ。その辺りが、胃ろうの持つ大きな意義ではないでしょうか(=栄養管理をしたうえで、「お楽しみ」として好きなものをほんの少しだけ味わう!)。
 延命目的の胃ろうと栄養管理目的の胃ろうは、きちんと分けて議論する必要があります

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 興味深い事実もご紹介しましょう。
①アルコールは神経新生を阻害する(He J, Nixon K, Shetty AK et al:Chronic alcohol exposure reduces hippocampal neurogenesis and dendritic growth of newborn neurons. Eur J Neurosci Vol.21 2711-2720 2005)。
②断酒によりアルコールによって阻害されていた神経新生過程が再開することになり脳体積の回復や認知機能の改善をもたらす(Crews FT, Nixon K:Mechanism of neurodeneration and regeneration in alcoholism. Alcohol Alcohol Vo.44 115-127 2009)。
③アルコール関連認知症(alcoholic-related dementia;ARD)は、断酒を継続するかぎり認知症の進行は起きないという点で、ARDとADは大きな相違点がある。
【編集/朝田 隆 著/小宮山徳太郎:誤診症例から学ぶ─認知症とその他の疾患の鑑別 医学書院, 東京, 2013, pp125-139】

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 「典型的で重度のコルサコフ症候群の患者であっても、健忘は、エピソード記憶に選択的であるため、意味記憶や手続き記憶は保たれている。そのため、会話は通常どおり可能で、英語の和訳や調理など、病前に獲得した知識や能力には大きな問題がない。少し話をしただけでは記憶障害の存在はわからないであろう。」(吉益晴夫:記憶. 精神科 Vol.23 147-151 2013)

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 「臨床検査については、血中VB1(正常値20~50mg/ml)の低下を認める。ただし、血中VB1は測定に時間を要し、日常的に検査される項目でないため、VBlを検査するという認識を持つことが重要である。血中VB1値は血液脳関門のため、脳での値を必ずしも反映しておらず、血中VB1が正常範囲内でもWernicke脳症を発症する可能性があり注意が必要である。」
【上野亜佐子、米田 誠:Wernicke脳症に伴うdementia. 神経内科 Vol.80 95-100 2014】

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 「世界的な約四八万人、三〇年間の調査を集計した結果では、適量のアルコール(一日二二グラム。ビールは大瓶一本、日本酒は一合)は二型糖尿病を男性は一三%、女性は四〇%防ぎますが、飲みすぎると(一日六〇グラム以上。ビール大瓶三本、日本酒三合以上)逆効果になることがわかりました。酒は『百薬の長』なのでしょうか。最近、このくらいの量のアルコールを飲む人は、動脈硬化にもなりにくいという調査結果が報告されていますから、適量のアルコールを飲んで、健康に暮らしている人は動脈硬化が起こりにくく、その結果、認知症にもなりにくいということなのでしょう。」(中谷一泰:ストップ!認知症 しくみがわかれば予防ができる! 西村書店, 東京, 2014, pp59-60)

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 「最近マスコミなどでも話題の塩麹(しおこうじ)は、麹に水と塩を加えて発酵させたものです。味は、旨み成分をたっぷり含んだ塩のようなもので、どんな食材、料理にも使え、食材の旨みを引き出してくれます。このようなことから、『魔法の万能調味料』とも呼ばれています。
 また、味だけでなく、幅広い効能も発揮します。
 塩麹からは、発酵の過程でビタミンB1、B2、B6、ビオチン(ビタミンH)、ナイアシン、パントテン酸、イノシトールといったビタミン類が生み出されます。これらには、細胞の新陳代謝を高めたり、栄養素の分解を促進したりする働きがありますから、非常に高い疲労回復効果が期待できるのです。」(白澤卓二:食べ物を変えれば認知症は防げる 宝島社, 東京, 2014, pp59-60)

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7. 飲酒と認知
 まず、飲酒頻度と認知症の関係はApoE ε4の有無により異なる。ε4を有さない場合は月に1回程度の飲酒群において認知症の発症率は最低であるが、ε4を有する場合には飲酒頻度が増えるに従い認知症発症が増加した(Anttila et al., 2004)。
 飲酒量に関しては少量から中等量が認知機能には良いとされている。少量~中等量の飲酒が65歳以上の日系アメリカ人男性(Bond et al., 2001)と白人(Bond et al., 2003)における良好な認知機能と関連することが示された。禁酒者に比べて、数ドリンク(ドリンク数に関しては下記)の飲酒者は認知機能低下が40%少なく、この傾向はApoE ε4陽性者において強かったという(Carmelli et al., 1999)。55~88歳の男性733名と女性1,053名を対象にして飲酒量と認知機能8領域(言語性記憶、記銘、視空間構成、視覚記銘、注意、抽象化、概念形成)にて評価したところ、2~4ドリンクを飲酒する女性と4~8ドリンクを飲酒する男性にて認知機能が良好であった(Elias et al., 1999)。欧米では“one drink”はアルコール換算で約15gであり、適切な飲酒量は1~4drink程度、アルコール換算量で14~52gとされている(Elias et al., 1999)。本邦では“one drink”をアルコール量10gとすることが多い。これに従うと、適切な飲酒量はビール(アルコール含量5%)では欧米280~1,040ml、本邦190~700ml、ワイン(10%)では欧米140~520ml、本邦90~350ml、日本酒(14%)では欧米100~370ml、本邦70~250ml程度となる。

13. 限界と問題点
 以上に述べた方法論を実診療の場面において応用しようとする場合、具体的な血圧や血糖のコントロールレベルが示されていないこと、食事、運動、認知トレーニングを受け入れる許容範囲が個人により大きく異なる可能性があること、推薦される飲酒量の範囲が広いことなどが、今後も引き続き検討されるべき問題点であると思われる。
【福井俊哉:日常生活における認知障害の予防法. Dementia Japan Vol.28 319-328 2014】
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