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人形が現れて一緒に勉強をしたり遊んだりする [自閉症スペクトラム障害]

問題
 https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/662259137277102

■解説
 http://medical.nikkeibp.co.jp/mem/doctors/mediquiz/answer.jsp

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 「人形が現れて一緒に勉強をしたり遊んだりする」という訴えからは、幻聴や幻視の可能性が考えられる。
 思春期の小児が幻聴を訴えた場合に最初に鑑別に挙げるべき疾患は、統合失調症である。統合失調症の症状は、急性期に起こる妄想や幻覚といった陽性症状と、消耗期に生じる活動低下、会話の鈍化、社会的引きこもり、自傷行為といった陰性症状の大きく2つに分けられる。妄想や幻聴は「悪口を言われている」「死ねという声が聞こえた」のように自分が攻撃されている内容が多い。
 心的外傷後ストレス傷害(PTSD)は命が脅かされるような出来事、戦争、天災、事故、犯罪、虐待などの経験の後に幻覚や幻視(フラッシュバック)を来す。フラッシュバックでは外傷を来したときの体験や目撃した内容を追体験することがある。
 後頭葉てんかんでは、光が見えるといった視覚発作が見られる。また薬物中毒でも幻覚、幻聴が認められる。
 本患者は幼児期から強いこだわりがあり、小学校入学後も1人になることが多く、医師の話を遮って自分の好きな恐竜について一方的に話すなど、発達の偏りがある点から、自閉症スペクトラム障害(アスペルガー障害)が強く疑われた。アスペルガー障害を生じた患児は、社会にうまく適応できないときなどに二次的に幻覚・妄想様の症状を訴えることがある。だが、その多くは現実の厳しさから逃避し、願望を充足するような内容である。
 本症例も、友達が少ないことに加え、小学校5年生時に学習面の壁に突き当たり、成績が低下したころから症状が表れていた。加えて、幻覚・妄想の内容が「一緒に勉強をしてくれる」「遊んでくれる」など、患児自身の願望を満たすものであることからアスペルガー障害による幻覚・妄想様状態と考えられた。
 アスペルガー障害に伴う二次的な幻覚・妄想様状態であれば、まず児が何に不適応を起こしているのか、何をストレスに感じているのかを探ることが先決である。その上で、児や家族がその症状に困っていなければ、投薬なしで経過を観察することが可能である。症状を苦痛に感じている場合は、少量の抗うつ薬や抗精神病薬の投与を行うことで改善が見込まれるケースが多い。
 非定型抗精神病薬のリスペリドンとアリピプラゾールは2016年、「小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性」への適応が承認された。ただし、これらの薬剤の対象年齢は原則として、リスパダールは「5歳以上18歳未満」、エビリファイは「6歳以上18歳未満」。また、リスパダールは「15kg以上20kg未満の患者」と「20kg以上の患者」で投与量が異なることに注意が必要となる。本症例でもまずはこれらの薬剤を投与した。
 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、二次的なうつ気分や社会不安障害を来している場合、そして強迫的症状がある例で使用する。幻覚・妄想様状態にはリスペリドンやオランザピンといった非定型抗精神病薬の少量投与が有効である。ベンゾジアゼピン(BZ)系薬は不安症状に用い、カルバマゼピンとバルプロ酸は気分の高揚や落ち込みといった気分障害に用いる。
 なお、これまでアスペルガー障害、自閉性障害、レット障害、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害は、広汎性発達障害のサブカテゴリーとして分類されていたが、米国精神医学会による最新の診断基準(DSM-5)では、レット障害を除く全ての障害名を自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)とし、知的障害を伴い、言葉のない児から対人間のニュアンスの取りづらい従来のアスペルガー障害までを含む広い概念として提唱している。
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