SSブログ

「何のため」、「誰のため」の治療か [認知症]

FAST.jpg認知症のひとの生き方に寄り添う支援 ─地域ネットワーク構築と多職種連携による実践─
「何のため」、「誰のため」の治療か
 胃ろうなどの医療技術の進歩が“天寿”よりも“長寿”を追求するなか、意思決定が困難となった高度認知症患者さんにおいては、最期は家族の意思が反映されることが多い。認知症の治療は「何のため」、「誰のため」に行われるのか?
 近年、抗認知症薬が多数発売され、認知症治療は大きな進歩を遂げている。しかし、その一方で、治療開始1年後の抗認知症薬の服薬継続率は半数に満たないとの報告1)がある。理由の多くが「よくならないから」であり、治療の意義を説明されていないことが推察される。治療により進行を遅らせることによって得られる時間の意義を考える必要がある。認知症は進行に伴い、現実見当識が低下し、思いを伝えることができなくなる。ここが“がん”との大きな違いである。認知症では“がん”以上に時間がなく、進行した後も本人の望む生活が送れるように、早期診断・治療のもと、得られた限られた時間のなかでひととなりや思いを把握することが求められる。
 すなわち、単に症状の進行を先延ばしにするだけの治療ではなく、避けられない病気の進行や寿命と向き合い、最期まで本人らしい生き方に寄り添うための治療や支援が求められる。

私の感想:
 「最期まで本人らしい生き方に寄り添うための治療や支援が求められる。」とは言いましても、病状の進行とともにご本人の意欲が低下(アパシー)してきますので趣味などに取り組んでもらおうと思ってもなかなか・・。その辺りが認知症ケアの難しい部分でもあります。

 治療に関しては、エムスリーの認知症フォーラム「認知症薬の効果に疑問」におきまして私見を述べております(2016.1.29)ので参考にして下さい。
 https://medqa.m3.com/doctor/showForumMessageDetail356671.do

タイトル:
 17% vs 13% & 著効例は3%程度

本文:
 ドネペジル(商品名:アリセプト[レジスタードトレードマーク])の有効率に関して、添付文書(http://www.eisai.jp/medical/products/…/PI/PDF/ART-D_T_PI.pdf)を読んで今一度、抗認知症治療薬の有効性について復習しましょう。
 =「最終全般臨床症状評価において5mg群はプラセボ群と比較して有意に優れていた。『改善』以上の割合は5mg群17%、プラセボ群13%、『軽度悪化』以下の割合は5mg群17%、プラセボ群43%であった。」

 奈良市においては、かかりつけ医300人を対象としてアンケート調査が実施されており(渡邉浩文:認知症の地域ケアにおけるケアと医療の連携に関する研究. 平成23年度 認知症介護研究・研修東京センター研究事業 報告書, 2012)、65人(21.7%)から回答が得られております。
 「認知症の治療上の問題点はどのようなことがあると考えているかについて尋ねた結果では、52.8%のかかりつけ医が『薬の効果がはっきりしない』と答えています。
 【本間 昭:認知症の人のために専門医ができること. 老年精神医学雑誌 第24巻増刊号-Ⅰ 133-138 2013】

 「アメリカにおけるdonepezil23mg徐放製剤試験では、10mg群に対して23mg群でSIBに明らかな優越性が認められ、重篤な有害事象では両群の間に有意差はないという結果であった。この結果からは、23mgが最大限の治療効果を発揮するとは言えないまでも、少なくとも10mgよりは治療効果として優れていると言える。」(一部改変)
 「高度ADに適応が拡大されて以後、本邦において行われたdonepezil特定使用成績調査(本間 昭:高度のアルツハイマー型認知症に対するドネペジル塩酸塩10mg/日投与の安全性および有効性. Geriatr Med Vol.51 439-467 2013)では、10mg投与開始後24カ月時の全般改善度において、有効に不変を加えた56.5%で維持効果が認められ、高度AD患者の半数以上で2年間の進行抑制効果がみられた。調査前の罹病期間が長いほど有効率は低下する傾向がみられたが、10年以上の罹病者でも11.8%に改善効果がみられたことは注目に値する。
 前述のように、高度ADに対する抗認知症薬の有効性は実証済みであるが、臨床の現場では治療効果が実感できない症例にしばしば遭遇する。明らかな治療効果が実感できなくても、副作用の問題がなければ、donepezilの投与を2年間は試みる価値がある。経過中、適宜memantineの併用を考慮する。2年間経過しても明らかな改善や抑制効果が得られず、2~4週間程度の休薬により明らかな増悪がなければ、抗認知症薬投与の有効性は低いと考えられ、投与の中止を検討してよいものと考える。」
【由井寿美江、萩原朋美、天野直二:アルツハイマー型認知症の重症例に対する症状改善薬の使用法について. 精神科治療学 Vol.28 1551-1555 2013】

 私がかつて、ドネペジルの発売当初に調べました著効率(=「著効」の定義は、服薬開始後3か月の時点でHDS-RないしはMMSEが4点以上の改善しており、家族の印象としも「改善」を実感できている事例)は3%でした。
 療養病床などに入院しドネペジルが投薬中止になることはしばしばありますね。この場合、中断により悪化する率(=再開を余儀なくされる割合)も3%に近い数字かな・・と感じております。

私の持論:
 アルツハイマー病は、進行性疾患であり「治療」が果たす役割は極めて限定的です。ケアが最も重要なのです。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:健康

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。