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画像診断マーカーによるSCIからMCI/AD移行の予測 [主観的認知障害]

画像診断マーカーによるSCIからMCI/AD移行の予測
 SCIは、不安や抑うつ症状、人格傾向に影響を受けることが指摘されており、SCIを有することが、将来的にMCIもしくはADに移行することを必ずしも意味しない。SCI単独での認知症発症リスクとの関係は有意であるとしても、強いとはいえない。それでもSCIが重要な理由は、臨床場面で早期認知機能低下を検出しえる他の指標に乏しいことがある。認知機能障害が客観的検査で同定できない段階でも、本人にはその自覚があり愁訴として表現される可能性がある。このような段階を臨床の中で、最初に見出すための現実的な手段として、SCIを重視せざるを得ない。van Nordenらは、SCIと海馬容積の関係に注目し、503名の被験者においてMRIを施行し、抑うつ症状と自質病変の影響を除外したうえで、これらの関係について評価を行っている(van Norden AG, Fick WF, de Laat KF et al:Subjective cognitive failures and hippocampal volume in elderly with white matter lesions. Neurology 2008 Vol.71 1152-1159)。客観的な認知・記憶機能は保たれた被験者で、主観的な認知・記憶障害の訴えと海馬容積減少との間で関連性が見出された。
SCI群と非SCI群に関してFDG-PETを用いて比較を行ったところ、SCIを有する老齢者で有意な糖代謝低下を、海馬傍回、側頭-頭頂葉、下前頭葉、紡錘状回で認めた。特に海馬傍回における糖代謝低下はSCIに関連が強く、この部位での糖代謝低下の有無により、SCIの有無を75%の正確さで判別することができるし、また、SCI群は非SCI群と比較して、2倍以上の頻度で海馬傍回糖代謝異常を認めることが報告されている(Mosconi L, De Santi S, Brys M et al:Hypometabolism and altered cerebrospinal fluid markers in normal apolipoprotein E E4 carriers with subjective memory complaints. Biol Psychiatry 2008 Vol.63 609-618)。Scheefらは、31名のSCIと56人の健常者にFDG-PETを施行し、約3年後に認知機能の経時的変化の検討を行った(Scheef L, Spottke A, Daerr M et al:Glucose metabolism, gray matter structure, and memory decline in subjective memory impairment. Neurology 2012 Vol.79 1332-1339)。SCI患者群では右楔前部の糖代謝低下と右内側側頭葉の糖代謝亢進を認めている。右側頭葉内側部の代謝亢進については、前出のMosconiらの報告と矛盾するが、SCIにおいては、その初期の段階では、代償的に神経活動が亢進するのかもしれない。経時的観察においてSCIはエピソード記憶機能の有意な低下を認め、その記憶機能低下は初回観察時の右楔前部の糖代謝低下と有意な関連を示した。彼らは、このことから、SCIがADの最初期の兆候であり、FDG-PETがSCIにおける早期のAD病理を示しうることを主張している。
【安野史彦:SCI・MCI. 精神科 Vol.22 410-417 2013】

SCIの概念は多様 [主観的認知障害]

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 SCIの概念は多様であり、あいまいで一貫性を欠くが、この総説では、①認知機能または記憶能力を自己評価したうえで、以前より悪化したという自覚があること、②客観的な認知機能または記憶機能の低下を認めない状態として定義する。この定義に従うと、SCIはFunctional Assessment Staging(FAST)の分類では、stage2:「名前を覚えるとか、物の置き場所を思い出すことなどの能力に関する主観的な障害がある一方で、Mini Mental State Examination(MMSE)のような認知機能検査で正常範囲にあることから定義される状態」に相当する。SCIの状態をAD病理過程中におけるMCIの前駆状態として見なした場合、15年間程度持続し、その病態は経年的に悪化するとされている【Reisberg B, Prichep L, Mosconi L et al:The pre-mild cognitive impairment, subjective cognitive impairment stage of Alzheimer's disease. Alzheimers Dement 2008 Vol.4 Suppl1 s98-108】

主観的認知障害 [主観的認知障害]

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 最近では、MCIの前段階として主観的認知障害(subjective cognitive impairment;SCI)の概念もいわれるようになった。SCIとは主観的には記憶障害があるが、その記憶障害は一般人口との比較ではなく個人の以前の状態との低下を意味する。もちろん判断力や社会生活障害が認められていない状態のことである。
40歳代以降の多くの人は、20~30歳代の自分と比較して記憶力が低下していることを体験している。このような客観的な指標において記憶障害を明瞭にすることができない状態でも、その人の若いときの記憶力と比較すれば、明らかに記憶力は低下しているものであり、このような状態を主観的認知機能障害と呼ぶ【武田雅俊:長寿社会における認知症─認知症の社会的側面. 内科 Vol.109 738-745 2012】
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