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【救急】口腔内の痒みと腹痛の女児 適切な対応は? [アナフィラキシー]

【救急】口腔内の痒みと腹痛の女児 適切な対応は? 【2021.2.18 エムスリー・今日のクイズ】
 今日のクイズータイトルの画像.JPG
問題
 小麦アレルギーの9歳の女児。口腔内の痒みと腹痛を主訴に、母親に連れられて救急外来を受診した。30分程前に祖母が誤って原材料に小麦を含むお菓子を与えてしまったらしい。現在は口腔内の痒み、口唇のしびれと腹部の強い持続痛を訴えているが、バイタルサインは正常であった。
この女児にまず検討すべき対応として、最も適切なのはどれか。
 A:抗ヒスタミン薬内服
 B:アドレナリン筋注
 C:ステロイド筋注
 D:アドレナリン静注
 E:モニター装着し処置室で経過観察 

解答と解説
【正解】
 アドレナリン筋注
【解説と参考文献】
 日本アレルギー学会によるアナフィラキシーガイドラインによると、アナフィラキシーとは「アレルゲン等の侵入により、複数臓器に全身性にアレルギー症状が惹起され、生命に危機を与え得る過敏反応」と定義されている。アナフィラキシーの診断基準は2006年にアメリカ国立アレルギー・感染症研究所から発表されたもの1)が広く知られており、参照いただきたい。皮膚所見に加え気道閉塞(Airway)、喘息(Breathing)、ショック(Circulation)、消化器症状(Diarrhea:下痢、嘔吐、腹痛など)を伴う場合、とするDr.林のアナフィラキシーのABCD2)が簡便で覚えやすいが、皮膚所見を伴わない場合も経験するため注意が必要だ。
 アナフィラキシーへの対応の第一は迅速なアドレナリン投与で、0.01mg/kg(max:成人0.5mg、小児0.3mg)を大腿部中央の前外側、または臀部へ筋注する。末梢血管、心臓、気管支への作用で呼吸・循環症状を改善させるが、アドレナリンの作用は肥満細胞や好塩基球に存在しているβ-2受容体にもおよび、ヒスタミンや他の炎症メディエーターの分泌を抑える作用がある。つまりアナフィラキシー反応を早期に収束させる特効薬でもあるのだ。
 本症例では抗原曝露の病歴に加え、粘膜症状および腹部症状を認める点、及び2臓器以上で症状を呈している点からアナフィラキシーと判断し、アドレナリン筋注(B)を迅速に行う。抗ヒスタミン薬、ステロイド(C)は症状緩和のため補助的に使用されるが、二相性反応の予防としてはその根拠に乏しく、ルーチンでの使用は推奨されていない3)。抗ヒスタミン薬は皮膚症状への緩和に有効で、有効な血中濃度を速やかに得るために内服でなく静注(A)で投与する。ステロイドは作用発現までが遅く、急性アナフィラキシーでは効果が期待できない。蕁麻疹等のアナフィラキシーの皮膚症状が揃わないから、と経過観察(E)するのはNGである。炎症鎮火のタイミングをみすみす見逃してしまうことになる
【参考文献】
1)J Allergy Clin Immunol. 2006 Feb;117(2):391-7.
2)寺沢 秀一、島田 耕文、林 寛之. 研修医当直御法度[第6版], 三輪書店;2016. p.77-81
3)J Allergy Clin Immunol. 2020 Apr;145(4):1082-1123.


私の感想
 この程度の症状で、「アドレナリン筋注」まで要するのかなぁ~と少し意外に感じました。
 そこで、「アナフィラキシーガイドライン」を読んでみました。
 https://anaphylaxis-guideline.jp/pdf/anaphylaxis_guideline.PDF
 アドレナリンの適応.JPG
 14頁の「アドレナリンの適応」には、「過去の重篤なアナフィラキシーの既往がある場合や症状の進行が激烈な場合はグレード2(中等度)でも投与することがある。」と記載されておりますね。
 新型コロナウイルスワクチンの医療従事者に対する先行接種が2021.2.17に始まりました。アナフィラキシーに備えて、アドレナリン自己注射製剤「エピペン[レジスタードトレードマーク]」についての知識を深める必要がありそうですね。
 http://www.hiroshima.med.or.jp/pamphlet/256/7-2.html
 エピペン.JPG

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