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ADD(注意欠陥障害) [発達障害]

子供の発達障害 一人で悩まずに
 保護者同士、情報を交換 ■専門家に相談
 適切な教育支援 早く

 新年度が始まって約3カ月。小学校では保育園の段階では気付かなかった子供の発達障害が分かることも少なくない。もし、我が子に発達障害の疑いが生じたら、どうすればいいのか。保護者の体験談や専門家のアドバイスから基本的な対応を探った。

ほぼ毎月茶話会
 5月のある日。東京都調布市で発達博害やその疑いがある子供の保護者の茶話会が開かれた。同市の一般社団法人「発達心理ライフケア協会」がほぼ毎月開催しており、事前の申し込みは不要だ。代表の春日佳奈さん(45)は「特に低年齢の発達障害児の保護者は時間の工面が大変なので、参加しやすくしています」とにこやかに話す。
 出席者は11人。初参加の母親(49)は高校1年の次男にADD(注意欠陥障害)があるという。ADDは注意欠陥多動性障害(ADHD)のうち多動(じっとしていられないこと)がないタイプ。このため、次男が小学5年で不登校になるまで、障害に気付かなかった。

 …(中略)…
現れ方千差万別
 発達障害の現れ方は一人ひとり異なる。育てにくさを感じて親が気づくことも、集団内での様子から教員が気づくこともある。子育てに直面する母親は障害に詳しくなるが、父親や祖父母の理解が足りないことで母親の精神的負担が増すことも少なくない。それゆえ「母親が苦労や悩みを共有し、情報交換できる茶話会のような湯が必要」(春日さん)なのだという。
 発達障害がある子供の保護者を支援する団体は増えている。インターネットのほか、教育支援センターなど自治体の窓口で情報が得られることもあるので相談してみてもよいだろう。 (ライター仲尾匡代)

発達障がいファミリーサポートMarble・国沢真弓代表理事に聞く
国沢代表理事.jpg
――就学時健診では発達障害かどうかはわからないのですか。
 「発達障害があってもおとなしく知能テストを受けられる子は、知能に問題がない限り分からないでしょう。コミュニケーションが極端に難しければ面談の際に分かりますが、そうした子は幼稚園や保育園で判明していることが多いはずです」

――一口に発達障害と言っても、障害の現れ方は一人ずつ違いますね。
 「障害への対応は、医師や専門家、先輩保護者などの助言の中から我が子に合うものを選ぶ必要があります。すぐにベストを見つけるのは難しく、べターを選ぶぐらいの構えがよいでしょう」
 「発達障害のある子は困った子ではなく、困っている子です。周囲に理解がないと、叱られたり非難されたりして、自己肯定感が低くなりがちです。その状態がひどくなると、不登校引きこもりにもなりかねません」
 「それを避けるためにも、家庭と学校が連携をとりながら、適切な教育支援を受けることが大切。子供の障害と向き合い、支援を上手に活用すれば、社会で生きる力を育むことともできるのです」

▼発達障害
 自閉症スペクトラム障害(ASD)、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)や、これらに類する脳機能の障害。ASDは自閉症、アスペルガー症候群、その他の広汎性発達障害の3つに分類されていたが、最近では1つの連続した障害とみなされる。1人で複数の障害を併せ持つこともある。
 【2016年6月24日付日本経済新聞・くらし】

私の感想
 4月にご紹介した動画は印象的でしたね。
 https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/videos/vb.100004790640447/578924222277261/?type=2&theater

 ADD(注意欠陥障害)ってのは初耳だ。専門外の知識は新聞から得るに限る。基礎を新聞で学習したら、その次はネットで情報入手でしょうね。


大人の女性の注意欠陥障害(ADD)
 http://adhdadd.seesaa.net/
 ■ 5.洗濯ができない
 ■ 6.整理整頓が出来ない
 ■ 7.紛失対策(学生編)
 ■ 8.紛失対策(社会人編)
 ■ 9.時間感覚を養う
 ■ 10.スケジュール感覚を養う
 ■ 11.気分が変わりやすい
 ■ 12.気分の波
 ■ 13.料理ができない
 
ADD(注意欠陥障害)の人は事務職は向きません
 http://edu.markelog.net/%E7%99%BA%E9%81%94%E9%9A%9C%E5%AE%B3/%E6%B3%A8%E6%84%8F%E6%AC%A0%E9%99%A5%E5%A4%9A%E5%8B%95%E6%80%A7%E9%9A%9C%E5%AE%B3adhd/add-jimujo/
 何度注意されても同じミスをします。
 事務系の職種で苦労している人は、ADDぽい人が多数いるようです。

 私が見てきた人でもそんな様子でした。
 •机の上がポストイットまみれになっている
 •何事も細かすぎるチェックリストが必要になる
 •それでも何度もミスをする
 •作業をしていると他の事が気になる
 •他の事をすると最初にしていた作業でもミスをする

大人の発達障害 病識 常同行動 [発達障害]

大人の発達障害

 2016年4月28日のNews ZERO(http://www.ntv.co.jp/zero/hataraku/2016/04/post.html)では、「大人の発達障害」が取りあげられました。
大人の発達障害.jpg
 以前から興味を持っている分野でしたのでしっかりと観ました。

 岩本友規さん、実名報道で勇気があります。
 「うつ病」も「認知症」も「発達障害」も、ともすれば「偏見」を持って見られやすい疾患です。こうした疾患を患っている方が、勇気を持ってカミングアウトし、しかも報道番組に出演し、そして啓蒙活動までやる!
 これはもう、「同じ疾患で悩んでいる仲間を救いたい」という気持ちしかありません。私も「うつ病」をカミングアウトした背景にはそんな気持ちがあったからです。そして、実名報道されても構わないと思っており、新聞社の取材も・・という話にはなり主治医の了解も得ました。しかし、それに躊躇する人が居ることもまた事実・・。この件はペンディングとなっております。

 岩本友規さんは、レノボ・ジャパンで、どんな商品が売れるのかを分析するアナリストの仕事をされているそうです。4年前に「ASD+ADHD」と診断されているそうです。
キャプチャ.JPG
 ADHDに関しては本年3月26日のFacebook(https://www.facebook.com/photo.php?fbid=563094167193600&set=pb.100004790640447.-2207520000.1461960534.&type=3&theater)でもご紹介しましたね。
 http://akasama.blog.so-net.ne.jp/2016-03-26-2
 岩本友規さん、4回の転職か・・。辛かったでしょうね。。。
 News ZEROの報道内容を観て私が感じたことは、自分自身の病気に「気づける人」・「気づけない人」の違いは何なのか?ということが1点。気づければ治っていく可能性があるからです。
 もう1点興味深いことは、発達障害と前頭側頭型認知症で同じ「常同行動」という行為が出現するという点です。

 前頭葉が何らかの関与をしているということなんだと思います。
 この、「病識」と「常同行動」に関して、アピタルの原稿から関連事項を拾い上げてみます。


朝日新聞アピタル「ひょっとして認知症-PartⅡ」第31回『認知症の代表的疾患─レビー小体型認知症 もの忘れを自覚することの多いレビー小体型』(2013年1月14日公開)
 もの忘れに関しても、DLBにおいては内省できることが多いことが報告されています。
 アルツハイマー病では、初期ですらもの忘れを自覚していないケースが多いです。一方、DLBでは、初期においてはもの忘れを自覚しているケースが多いのです。
 東京医科大学病院老年病科の羽生春夫教授は、疾患別の病識の有無について検討しており、「有意な認知機能障害を認めない老年者コントロールの病識低下度の平均+2標準偏差を超えるものを病識低下ありと定義すると、AD(アルツハイマー病)群の65%、MCI(軽度認知障害)群の34%、DLB(レビー小体型認知症)群の6%、VaD(血管性認知症)群の36%が該当し、AD群が最も多く、DLB群は最も少なかった。」(羽生春夫:老年期認知症患者の病識―生活健忘チェックリストを用い、介護者を対照とした研究―. 日本老年医学会雑誌 Vol.44 No.4 463-469 2007)と報告しております。

メモ:内省
 「記憶、見当識、思考、言葉や数の抽象化機能などは、日常生活を送っていく上でそれぞれがとても大切な機能である。しかし、暮らしのなかでは、これらの機能一つひとつがバラバラに役立っているわけではない。複数の知的道具あるいは要素的知能を組み合わせて使いこなす『何か』がなけれはならないはずである。それを知的主体あるいは知的『私』とよぶことにすると、そこに障害が及ぶのである。だから、認知症を病む人は、いろいろなことができなくなるという以上に、『私が壊れる!』と正しく感じとるのである。
 知的主体などという硬い言葉ではなく、もう少しうまい言葉が見つかればよいのだが、学者も苦労してこの『何か』を『内省能力』(ツット)、『本来の知能』(ヤスパース)、『知的人格』『知的スーパーバイザー』(室伏)などと名づけている。どれもが、個別の、記憶、見当識、言葉、数といった道具的、要素的知能を統括する、より上位の知的機能を何とか言い表そうと苦労しているのである。」(小澤 勲:認知症とは何か 岩波新書出版, 東京, 2005, pp141-143)

 認知症の介護においては、しばしばアパシー(自発性の低下・無関心)の存在が問題となります。
 アパシー(apathy)とは、無気力・無関心・無感動のため、周りがやるようにと促しても、本人は面倒だから、全然動こうとしないし気にもしない状態です。そして、このアパシーの存在ゆえに、認知症がうつ病と誤診されているケースもあります。
 なお、DLBでは、うつ病を有する頻度が比較的高いことも知られております。
 「Ballardら(1999)は病理診断されたDLB、AD各40例を比較し、DLBでは、初診時に幻視、幻聴、妄想、誤認妄想、うつ病を有する頻度がADに比べて高い」と報告しています(長濱康弘:レビー小体型認知症の臨床症候学と病態生理. Dementia Japan Vol.25 145-155 2011)。
 なおこの点に関して筑波大学臨床医学系精神医学の朝田隆教授は、「伝統的な精神科のうつに対する見方では、悲哀感、悲しみをもって『うつ』の本質とし、それに不安ややる気のなさを加えます。DLBの場合、精神科の伝統的なうつというよりは基本的にはアパシーです。周りは困っているが本人は何もしなくて当然とケロッとしているような患者さんが比較的多いですね。」と指摘しています(朝田 隆 et al:座談会─認知症の早期発見・薬物治療・生活上の障害への対策. Geriatric Medicine Vol.50 977-985 2012)。

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 2014年7月30日にホテルグリーンパーク津において開催されました第16回中勢認知症集談会特別講演会には、群馬大学大学院保健学研究科リハビリテーション学講座の山口晴保教授らが講師として来て下さいました。

 山口晴保先生は、「MCIとADの境界は、『病識の有無』だと思っています」と講演で述べられました。そして、SED-11Q(Symptoms of Early Dementia-11 Questionnaire)を用いた病識の評価に関する検討結果についてご紹介して下さいました。
判断基準
 医療機関においてはSED-11Qが11項目中3項目以上で認知症を強く疑い、地域の認知症スクリーニングでは11項目中4項目以上で受診を勧めるというのが目安だそうです。

SED-11Q【認知症初期症状11項目質問票】
①同じことを何回も話したり、尋ねたりする
②出来事の前後関係がわからなくなった
③服装などの身の回りに無頓着になった
④水道栓やドアを閉め忘れたり、後かたづけがきちんとできなくなった
⑤同時に二つの作業を行うと、一つを忘れる
⑥薬を管理してきちんと内服することができなくなった
⑦以前はてきぱきできた家事や作業に手間取るようになった
⑧計画を立てられなくなった
⑨複雑な話を理解できない
⑩興味が薄れ、意欲がなくなり、趣味活動などを止めてしまった
⑪前よりも怒りっぽくなったり、疑い深くなった

※上記の11項目に関して、ご本人は病識が欠如しているため「該当しない」にチェックを入れるものの家族はそれを感じているため「該当する」にチェックを入れ、その差がMCIにおいては乖離しないものの、軽度AD&中等度ADにおいては有意に乖離(p<0.001)しているそうです。
 そして、「その結果を介護者に見せて、本人の自覚が乏しいことを理解してもらい、叱らないように指導することでBPSDを予防しましょう」と講演会で配布されました資料には記載されておりました。
 詳細は論文をご参照下さい。
 Maki Y, Yamaguchi T, Yamaguchi H:Symptoms of Early Dementia-11 Questionnaire(SED-11Q): A brief informant-based screening for dementia. Dement Geriatr Cogn Disord Extra Vol.3 131-142 2013
 Maki Y, Yamaguchi T, Yamaguchi H:Evaluation of Anosognosia in Alzheimer's Disease Using the Symptoms of Early Dementia-11 Questionnaire(SED-11Q). Dement Geriatr Cogn Disord Extra Vol.3 351-359 2013

P.S.
MCI段階で留まっているのかADに進展したのかを判断する基準は、「生活自立能力」の有無!
 「生活自立能力」については、シリーズ第73回『軽度認知障害─軽度認知障害から認知症への進展』をご参照下さい。

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 認知症初期症状11項目質問票(SED-11Q)の評価用紙は山口晴保研究室のホームページ(http://www.orahoo.com/yamaguchi-h/)からダウンロード可能(山口晴保:認知症の本質を知り、リハビリテーションに活かす. MEDICAL REHABILITATION No.164 1-7 2013)。

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 「ところで、認知症の人には『自分は病気である』という自覚はあるのでしょうか?
 この『自分は病気だ』と自覚することを『病識』といいます。医師の中には、認知症の人には『病識がある』という人もいれば、『ない』という人もいます。
 私は『病識は低下している(一部ある)』という考えです。自分はどんな病気でどのような問題が生じているのかといった自覚は乏しくなっていますが、『何だかいつもと違う』という感覚はあると思っています。これを『病感』といいます。」(山口晴保:認知症にならない、負けない生き方 サンマーク出版, 東京, 2014, p53)


朝日新聞アピタル「ひょっとして認知症-PartⅡ」第461回『患者の声が聞こえていますか?─残っているものを大切に』(2014年4月11日公開)
 NHK・Eテレにおいては、2013年7月1日・2日・3日・15日・25日の5回にわたって、『シリーズ 認知症 “わたし”から始まる』が放送されました。7月15日の第4回放送は『自分らしく生きよう─アニメ映画「しわ」が描く当事者の世界―』(http://www.nhk.or.jp/heart-net/tv/calendar/2013-07/15.html)がテーマであり、NPO町田つながりの開「DAYS BLG!」(デイサービス施設)にアニメーション映画『しわ』の監督であるイグナシオ・フェレーラスさんを招いて映画の上映会が開催されました。インパクトが強い放送内容でしたので、皆さん印象深く覚えておられるのではないでしょうか。
 池田英材さんをはじめとする認知症当事者の方たちも、自分自身の姿と重ね合わせながら、映画『しわ』を観た感想を述べておられました。
 フェレーラス監督は番組のなかで、「私は以前から、年をとっても、病気になっても、人は変わらないと思っていました。病気ばかりに気をとられると、どうしても失われるものにこだわってしまいます。私は、むしろ残っているものを大切にしょうと思いました。この映画で表現したかったことは、認知症になってもその人らしさが残り、変わらない部分が必ずあるということなのです。」とこの映画に込めた思いを語りました。
 エスポアール出雲クリニック(島根県)の高橋幸男院長は、「成書には、もの忘れを自覚しないのがアルツハイマー型認知症の特徴と記載されているが、これは誤りである。認知症を認めたくないという強い思いがあり『否認』機制が働いて、表面的にもの忘れを否定したりすることはよくあるが、アルツハイマー型認知症の初期はもちろん中期でも、もの忘れごときは十分自覚しわかっている」と述べています(高橋幸男:認知症をいかに本人と家族に伝えるか. 治療 Vol.89 2994-3000 2007)。
 そして、認知症の症候学に詳しい滋賀県立成人病センター老年内科の松田実部長は、論文(松田 実:認知症の症候論. 高次脳機能研究 Vol.29 312-320 2009)において、「アルツハイマー型認知症(AD)で『早期に病識が失われる』という記載は、『取り繕い』を『病識のなさ』と混同していることから起こる誤謬(ごびゅう)である。『ADで病識が失われるというのは誤りである。ADの初期はもちろん中期でも、もの忘れごときは十分自覚しわかっている』という高橋(2007)の意見に筆者は賛同する。もちろん、患者の病態はさまざまであり、病識のレベル、その深さや内容も問題となるであろうから、一概には結論ができる話ではない。」(http://www.jstage.jst.go.jp/article/hbfr/29/3/312/_pdf/-char/ja/=現在リンクは無効)と指摘しています。
 また松田実部長は、前述の論文において、「『病識のなさ』と『取り繕い』を同一視すべきではない。病識の有無と取り繕いとには、直接的関連はない。少なくとも、病識がないから取り繕うのではない。むしろ、自身の異常に気づいているからこそ取り繕っていると考えられる場合もある(ボーデン 2003)。」とも述べています。


朝日新聞アピタル「ひょっとして認知症-PartⅡ」第73回『軽度認知障害 軽度認知障害から認知症への進展』(2013年3月7日公開)
 さて、軽度認知障害(MCI)と診断された患者さんを追跡しますと、4年間で48%(1年あたり平均12%)が認知症を発症します(Bowen J et al:Progression to dementia in patients with isolated memory loss. Lancet Vol.349 763-765 1997)。また、Petersenらは、MCIと診断された人はその後1年間に約12%が認知症となり、6年間で約80%が認知症になったと報告しています(Petersen RC et al:Current concepts in mild cognitive impairment. Arch Neurol Vol.58 1985-1992 2001)。
 コンバートとは、MCIからADなど認知症へと進展することであり、その率がコンバート率です。
 2012年2月18日名古屋で開催された「デメンシアコングレスJAPAN 2012」には、東京大学大学院神経病理学の岩坪威教授が来られ講演されました。J-ADNI主任研究者である岩坪威教授は、J-ADNIにおける最新のコンバート率についても言及し、1年間の経過観察期間中に29.6%がコンバートし、従来の報告よりも随分と高率であったと報告されました。

 因みに認知症をめぐる大規模疫学研究として有名な「ボルチモア老化縦断研究」によれば、「軽度認知機能障害(MCI)からアルツハイマー病にコンバートするまでに要する期間の中央値は4.4年であった」(飯島 節:ボルチモア老化縦断研究. 日本臨牀 Vol.69 Suppl8 587-593 2011)ことが報告されています。
 MCI段階で留まっているのかADに進展したのかを判断する基準は、「生活自立能力」の有無です。学術的にはコンバートの判定は、Mini-Mental State Examination(MMSE)、Clinical Dementia Rating(CDR;メモ1参照)、ウェクスラー記憶検査改訂版(Wechsler Memory Scale-Revised;WMS-R)の論理記憶(メモ2参照)という3つの認知機能検査を総合的に勘案して評価されます。
 しかし、MMSE、CDR、WMS-Rだけでは決め手に欠けるケースがあることも事実です。ですから、生活自立能力の有無を正確に判断するためにも、本人の家に行き、実際の生活の様子を確認するという視点が重要となってきます。
 
メモ1:Clinical Dementia Rating(CDR)
 CDRは臨床認知症尺度と呼ばれ、記憶、見当識、判断力と問題解決、地域社会活動、家庭生活および趣味・関心、介護状況の6項目から構成されます(http://www.inetmie.or.jp/~kasamie/CDR.jpg)。
 それぞれの項目について患者およびその家族などから聞き取り調査を行い、5段階で重症度を判定します。
 5段階とは、CDR0(正常)、CDR0.5(軽度認知障害Mild Cognitive Impairment;MCI)、CDR1(軽度認知症)、CDR2(中等度認知症)、CDR3(重度認知症)です。
 具体的なCDRの判定方法は、先ずは各6項目のそれぞれの項目ごとに5段階で重症度(CDR0~3)を評価します。各項目を評価した後に、最終的には1つの段階に当てはめます。
 記憶が1次項目であり、残りの項目は2次項目となります。1次項目の評点と2次項目のうち3つ以上が同じ評点であれば、CDRは1次項目の評点になります。ただし、1次項目の評点よりも、2次項目の評点が高いか低い場合、3つ以上同じ2次項目の評点がCDRの評点となります。

メモ2:ウェクスラー記憶検査改訂版の論理記憶
 MCIの診断には、WMS-Rの論理記憶が標準的に用いられます。これは、検者が話す短い物語を聞いて、直後にそのまま再生する即時再生と、30分経過してから再度再生してもらう遅延再生があります。「会社の食堂で/調理師として/働いている/北九州の/上田恵子さんは、/…」と25の部分に分かれている文章を聞きながら暗記してもらい、被検者が再生した文章を25点満点で採点します。二つの物語で合計50点になります(山口晴保:認知症の正しい理解と包括的医療・ケアのポイント第2版 協同医書出版社, 東京, 2010, p226)。
 Logical memoryⅡ(論理記憶Ⅱ;遅延再生)の最高得点は、50点です。J-ADNIにおけるMCIの診断基準の一つとして、教育年数16年以上の方の場合には、Logical memoryⅡが「8点あるいはそれ以下」という条件があります。


朝日新聞アピタル「ひょっとして認知症-PartⅡ」第39回『認知症の代表的疾患─前頭側頭葉変性症 バナナとミルクばかり食べる女性』(2013年1月31日公開)
 群馬大学脳神経内科学の岡本幸市教授がバナナ・レディという著書の紹介を専門誌においてされました。
 「エピソード1では、本書のタイトルになっている女性の症状が詳細に述べられている。口数の減少、悲哀感のない抑うつで発症し、次第に脱抑制的な異常行動、特に過剰にミルクとバナナを摂取するようになったが、診察では知能や記銘力は驚くほど正確であった。9年の経過で死亡され、剖検所見も記載されている。FTDの典型的な症例の全経過を理解するのに有用な症例であり、なぜ患者がバナナを過剰に摂取するのかについても合理的に説明されている。」(岡本幸市:バナナ・レディ─前頭側頭型認知症をめぐる19のエピソード. Clinical Neuroscience Vol.29 352 2011)
 岡本幸市教授が書評で紹介したepisode1(バナナ・レディ、偏食)の冒頭は次のような記載で始まります。
 「牧師であるヘンリーの妻ドーンは、病気になる前は有能で社会的に洗練され、音楽の才能にも恵まれており、教会の受付として働いていた。彼女はヘンリーが受けもつ教区で重要な役割を演じており、イギリス女王がカナダを訪れた際にもてなしたこともある。ドーンが奇妙な行動をとり始めたのは50代後半のことであった。彼女は教会に集まった人々の隅で、誰とも話さず立っているようになり、行事の間中、2階に上がってピアノを弾いていることもあった。彼女は客のもてなしや教区の仕事をしなくなり、ある日は、何の説明もなく、1時間も早く仕事から家に帰ってしまった。…(中略)…症状が始まってから2年後に神経学的診察を受けることになった。…(中略)…真夜中に起きて、眠るための運動としてよく街へ出かけた。不眠対策の一つとして、主にスコッチで『寝酒』を始めたので、ヘンリーは彼女の見えないところにボトルを隠さなければならなかった。かかりつけ医が睡眠促進に、酒ではなくホットミルクとバナナをとることを勧めたのをきっかけに、ドーンは一度に5~6本のバナナを食べ始めた。その後、他の食物は胃を悪くすると言い張って、1日3~4リットルのミルクと数束のバナナによる食事療法を始めた。彼女は教区事務所にいるヘンリーに一日に何度も電話してきて、自分のための十分なミルクとバナナがあることを確認した。彼は、ドーンに新たな問題、すなわち夜尿症が生じたため、夜にミルクを飲むことを制限した。しかし、彼女は通りを歩きながら、ミルクをもらいトイレを使わせてもらうために、隣近所のドアを叩いてまわった。…(中略)…私が最初にドーンに会ったとき、彼女は快活で、話好きで、見当識も正常で、『認知症』的なところは全くなかった。しかし彼女の話は幾分まとまりに欠け、本題から離れやすく、的はずれな部分があった。やや躁的にもみえたが、無関心で洞察を欠いているところもあった。神経心理学者は常同性と集中力欠如に気づいたが、知能や記銘力は驚くほど正常であった。彼女はトレイルメイキング(数と文字とを交互に結んでいくテストで、注意と集中力を必要とする)を除けば、通常の前頭葉検査は良好な成績であった。…(中略)…ドーンの病気は悪化したが、徘徊や過度のミルクとバナナの摂取はトラゾドンの服用によってやや改善していた。しかしその後、頻繁で強迫的なトイレ使用といった新たな症状が加わった。」


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 FTDの症状を、1.前頭葉そのものの機能低下による症状、2.後方連合野への抑制障害による症状、3.辺縁系への抑制障害による症状、4.大脳基底核への抑制障害による症状に分けて述べる。

1. 前頭葉そのものの機能低下による症状
1)病識の欠如
 病識は病初期より欠如しており、病感すら全く失われていると感じられることが多い。さらに、自己を意識させるだけでなく、社会的環境のなかでの自己の位置を認知させる能力、すなわち“自己”を主観的意識を保持しながら比較的客観的な観点から認識する能力(self-awareness)が障害されている。このような障害を「心の理論」から説明しようという試みもある。心の理論は、自己および他者の動きを類推する、すなわち他者の心的状態、思考や感情を類推する機能と定義される。FTDの臨床診断基準(表)でも重視されている、社会的対人行動の障害、自己行動の統制障害、情意鈍麻、病識の欠如の背景にある共通の心的機構を心の理論の障害として捉える研究がある。
2)自発性の低下

2. 後方連合野への抑制障害による症状
1) 被影響性の亢進ないし環境依存症候群
 FTDでみられる被影響性の亢進ないし環境依存症侯群environmental dependency syndromeは、前方連合野が障害され後方連合野への抑制が外れ、後方連合野が本来有している状況依存性が解放された結果、すなわち外的刺激あるいは内的要求に対する被刺激閾値が低下し、その処理は短絡的で反射的、無反省になったものと理解できる。日常生活場面では、介護者が首をかしげるのをみて同じように首をかしげる反響ないし模倣行為、相手の言葉をそのままおうむ返しにこたえる(反響言語)、何かの文句につられて即座に歌を歌いだす、他患への質問に先んじて応じる、視覚に入った看板の文字をいちいち読み上げる(強迫的音読)、といった行為であらわれる。
2)転導性の亢進、維持困難
 ある行為を持続して続けることができないという症状である。これも、後方連合野が本来有している状況依存性が解放された結果、注意障害あるいは注意の維持困難が出現したものと考えられる。

3. 辺縁系への抑制障害による症状
1)脱抑制、「我が道を行く行動」
 反社会的あるいは脱抑制的といわれる本能のおもむくままの行動は、前方連合野から辺縁系への抑制がはずれた結果と理解できる。店頭に並んだ駄菓子を堂々と万引きする、あるいは検査の取り組みに真剣さがみられず(考え不精)自分の気持ちのままに答える、診察中に鼻歌を歌う、関心がなくなると診察室や検査室から勝手に出て行く(立ち去り行動)などの表現をとる。社会的な関係や周囲への配慮がまったくみられず、あやまちを指摘されても悪びれた様子がなく(患者本人に悪気はない)、あっけらかんとしている。

4. 大脳基底核への抑制障害による症状
1)常同行動
 自発性の低下や無関心が前景に立つ前にほぼ全例で認められる。ADとの鑑別にも重要な症状である。日常生活では、常同的周遊(roaming)や常同的食行動異常が目立つことが多い。
 絶えず膝を手でこすり続けたり、手をパチパチと叩いたりするような反復行動がみられることもある。
2)食行動異常
 FTDにおいては、食欲や食習慣、食の嗜好の変化が顕著である。特に初期のうちからみられるのは、食欲の亢進と嗜好の変化である。嗜好の変化としては、チョコレートやジュースなど甘いものを毎日大量に食べる行動がしばしばみられる。続いて、十分に咀嚼せずに嚥下するため食事速度が早くなるといった食習慣の変化や、決まった少品目の食品や料理に固執する常同的な食習慣が出現する。
【福原竜治、池田 学:前頭側頭型認知症の精神症状. 精神科治療学 Vol.28 1615-1619 2013】

ADHD(小児&青年)の治療薬服用% [発達障害]

クイズに挑戦してみました

 ADHD(小児&青年)の治療薬服用%
 キャプチャ.JPG


 正解は、
 ADHD服薬率.JPG

 意外ですね。
 こんなにも服薬率が高いのですね。
 でも、受診したケースが母数なのでしょうから、受診していない未治療のケースが相当多いのだと思います。

AD/HD専門医インタビュー [発達障害]

AD/HD専門医インタビュー
 AD/HDは子ども特有の疾患だと考えられていましたが、幼少期にAD/HDの症状に気づかれず、診断を受けないまま大人になり、社会生活に困難を抱えている方も少なくありません。成人のAD/HDとは、「成人になってから発症する疾患」ではなく、「成人になってから気づかれた疾患」だと言うことができます。
 AD/HDとは、Attention-Deficit/Hyperactivity Disorderの略で、注意欠如・多動性障害の総称です。脳機能の不全によって生活上にさまざまな困難を抱える、発達障害の一種です。AD/HDの特徴として、「不注意」「多動性」「衝動性」の3つが挙げられますが、成人では、とくに「不注意」が多くみられると言われています。
 Yさんのように、『注意力にかける、忘れ物が多い』(不注意)といった特徴が顕著にみられ、しかもそれが子どものころからずっと続いているような場合はAD/HDの可能性があります。
 AD/HDの特性をうまく活かして社会に適応している方もいれば、ご自身がAD/HDだと気づかないままつらい思いをしている方もいます。AD/HDとうまく付き合っていくために大切なのは、まず「気づくこと」、そしてAD/HDの特徴を「よく理解すること」です。
 AD/HDは治療のできる疾患ですし、服用により症状を改善する薬もあります。Yさんのように、治療を始めてから、忘れ物が減った、物事の段取りができるようになった、とご自身の変化を実感されている方がたくさんいます。ある患者さんは、「先生、違う人生ってあるんですね!」と明るい笑顔でおっしゃいました。幼少期からAD/HDの症状に悩み続け、ずっと生きづらさを感じてきた方だからこその言葉だと、強く印象に残っています。
 AD/HDは適切な治療によって改善が期待できる疾患です。仕事や日常生活で生きづらさを感じている方は、ぜひ一度、専門医に相談してください。自分自身の特性に気づき、理解することから、一緒に始めていきましょう。
 【都立小児総合医療センター顧問・市川宏伸先生】

P.S.
 この資料の作成はヤンセンファーマ株式会社です。
 2016年3月26日のFacebookにも関連事項をご紹介しておりますのでご参照下さい。
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