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町の小さな診療所が病院になるまで 急患もコロナ患者も [新型コロナウイルス]

町の小さな診療所が病院になるまで 急患もコロナ患者も
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 https://news.yahoo.co.jp/articles/44f50c5437f1542823dc7ed2a6d6d67b69e8540c

 新型コロナウイルスの感染が広がり、収束が見通せない日本。医療逼迫(ひっぱく)の事態に備えて、昨年春から奔走してきた、民間の小さな医療機関がある。
 埼玉県三芳町のふじみの救急病院は、24時間365日の救急診療で地域医療を支えながら、重症のコロナ患者も受け入れる。PCR検査場の設置をいち早く公表し、設備を拡充。その検査数は約9カ月間で5万件にのぼる。
 「感染拡大をくい止めるため、意味のある戦略的な検査を」――。院長の鹿野晃さん(47)は訴える。
 県から帰国者・接触者外来の指定を受けた昨年3月。ふじみのは「診療所」だった。人口10万人あたりの一般病床数が全国で最も少ない埼玉県で、「地域医療を担いたい」と、鹿野さんが24時間対応の救急クリニックを開業して1年半になる頃、国内で感染が広がった。
 「救急医としていま立ち上がらなければ、一生後悔する。地域のためにも、コロナ患者受け入れに全力を尽くしたい」。院長から相談を受けた当初、看護部長の板垣光純さん(43)には戸惑いもあった。患者に長時間接する看護師らの感染リスク、PCR検査の負荷、風評被害。感染者を受け入れることで、ほかの患者の足が遠のくことは目に見えていた。
 だが、苦労して開業したばかりなのに「潰れたら、そのときは裸一貫やり直す」と言う院長の決意に腹をくくった。「どこかが担わなければ」
 スタッフ総勢35人の小所帯で、未知のウイルスに向きあった。コロナ疑いの患者が院内の設備に手を触れず移動できる動線をつくり、PCR検査場を屋外に設置。ホームセンターで入手したフレームとビニールで、飛沫(ひまつ)防止の間仕切りをつくった。フェースシールド代わりのゴーグルを買いに走った。
 看護師の松本高宏さん(38)は「心の準備は必要だった。でも、怖さより使命感が勝った。普段から話を聞いてくれる風通しの良さもあって、ここでしかできないことがある、と思った」と振り返る。
 4月初旬に「コロナ患者が入院できる一般病床は県内に47床のみ」とニュースが報じると、クリニックは駐車場にプレハブの仮設病室をつくった。約1カ月で計19床のコロナ患者用ベッドを用意した。
 「感染は低温、低湿度で広がる。冬が正念場だ」。院長の鹿野さんは危機感を抱き、準備を進めてきた。
 隣接する休耕地など約3千平米を借り上げ、専用のCTを備えた発熱外来と、ドライブスルーにも対応する大規模なPCRセンターを整備。迅速に結果を確認するため、検査会社を誘致した。
 スタッフの数は3倍近くに増やし、独自に同額の危険手当を支給している。
 「科の垣根なく、みんなで負担して、みんなで分け合う。ワンチームで力を合わせたい」と板垣さんは言う。9月以降、全職員が週に1回のPCR検査を受けている。自費検査にあたり、全額が院負担だ。
 12月には、コロナ患者用のベッドを38床に倍増し、重症者の受け入れを始めた。ICU(集中治療室)やHCU(高度治療室)などの設備を整え、「病院」になった。
 医療法では診療所の病床数は19床以下と定められている。診療所で入院を受け入れられるのは中等症患者までだった。
 鹿野さんは言う。「スキルを持った医師や看護師がいて、乗り越えようという意志がある。困難な挑戦だが、重症者を診ないという選択はなかった」
 ふじみのが担ってきたPCR検査の数は、約9カ月間で5万件にのぼる。「新型コロナウイルスは発症前から感染性がある。疑いのある人を一刻も早く検査につなげ、結果を確認し、陽性者の隔離や治療を開始することが重要だ」。PCR検査場の設置を昨年春に公表すると、症状があっても検査を受けられないという人たちが、昼夜問わず、県外からも訪れた。
 今やPCR検査には民間企業も参入し、検査自体は比較的容易に受けられる。だが「信頼性があり、無症状者でもすぐ自宅療養につながる検査でなければ、感染拡大防止にはほとんど意味がない」と指摘する。
 1月第2週に実施したPCR検査3655件の陽性率は10・8%。検査件数の約3割を占めた自費検査――症状がなく濃厚接触者でもない人たちの陽性率は5%だった。
 厚生労働省は、新型コロナウイルスの感染可能期間が発症2日前から発症後7~10日間程度、との考えを示している。「療養や治療の開始まで、症状を自覚してから5、6日かかるようでは遅い。感染力の最も高い期間に出歩いてしまう」と鹿野さんは訴える
 「本気で医療現場の逼迫と感染拡大をくい止めるなら、戦略をもって、高齢者施設や医療機関など重症化リスクの高い場所、クラスターが発生しやすい場所での定期的な行政検査を徹底すべきだ。家庭内感染も外から持ち込まれるのだから」
 病院では、この年末年始も発熱外来を開き、重症患者を受け入れた。多くの患者が快方に向かう一方で、回復を見込めず、本人と家族が延命治療を望まずに亡くなる場合もある。
 それでも患者の苦しさが少しでも和らぐよう、医療従事者たちは手を尽くす。最後まで寄り添い、モバイル端末越しに家族の声を届ける。
 鹿野さんは悔しさをにじませる。「コロナが蔓延(まんえん)していなければ感染することもなく、寿命はもっとあったかもしれない。そう考えると、いま起きていることは人災なのかもしれません」
 1月半ば、鹿野さんは新型コロナウイルスに感染した。PCR検査で陽性が判明。すぐに外来診療を別の医師に引き継ぎ、2週間の自宅療養に入った。
 感染経路について、日常生活で思い当たることはない。病院では認知症患者の呼吸管理など、手探りの対応が増えていたという。
 自宅療養期間中は、開始から2日後が最も苦しかった。高熱と激しい悪寒や倦怠(けんたい)感、頭痛が4日間続いた。熱が下がった後は咳がひどく出るようになり、体重は5キロ減った。「軽症でも急変する可能性のある病気。医学の知識があっても強い恐怖感があった」と振り返る。
 回復し、25日から職場に復帰している。「症状があるのに医療の手の届かない人たちの不安はどれほどか。患者さんの思いに、これまで以上に寄り添っていきたい」(川村直子)


詳細は朝日デジタルをお読み下さい。
 https://www.asahi.com/articles/ASP1Y1T6YP1MUQIP01W.html
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