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新モーガンフリーマン時空を超えて─不老不死は実現するのか [不老長寿]

新モーガンフリーマン時空を超えて
 不老不死は実現するのか
 生きるべきか死ぬべきか

 4月8日放送(PM10時~, NHK教育)の「新モーガンフリーマン時空を超えて」を録画で観ました。
タイトル.jpg
 http://www.nhk.or.jp/docudocu/program/3452/1988001/index.html
 この分野の最新の知見を勉強することができました。
 興味深かった点を列記しておきます。

1)ヴォルター・ロンゴ(南カリフォルニア大学・老年学者)は、ミトコンドリアを若がえらせる方法(=RAS2SCH9という2つの遺伝子をDNAから取り除く)を発見した。
 そして、通常6日の酵母の寿命を10倍以上伸ばした。これを単純に人間に当てはめれば、寿命を800歳以上に伸ばしたことになる。
 次にロンゴは、同じ手法をマウスを使って実験します。その結果、マウスでも寿命が2倍に伸びました。ロンゴは、「とても希望が持てる結果です。遺伝情報に関して言えば、ヒトとマウスは90%以上同じだからです。」と語ります。
 
2)ミチオ・カク(ニューヨーク市立大学, 理論物理学者)は、「永遠の命は決して実現できないものだという物理学上の法則はありません。永遠に生きる生命体は存在します。例えば“がん細胞”です。あれは永遠に増殖します。

ナレーション
 ロンゴは私たちの体内にあるエンジンを長く動かす研究に取り組んでいます。
 しかし、いくら寿命だけを延ばしても老化を抑えられなければ不十分です。
 オーブリー・デグレイ(老年学者)は老化との戦いに研究者人生を捧げてきました。彼はこう信じています。ほとんどの人は若々しいままで1000年は生きられる。そのために必要なのは生物学的な意味での清掃作業。
 グレッグ・フェイは低温生物学者です。彼は人間の肉体を冷凍保存し、今から数百年後に損傷無く蘇らせるための研究(ガラス化凍結法etc)をしています。
 ガラス化凍結法がさらに発達すれば、人間の肉体を生きたまま遠い未来まで保存することが可能になるかも知れません。
 人間の体全体を確実に冷凍保存する技術が必要です。腎臓のような比較的単純な器官だけで無く、最も複雑な器官“脳”も保存できなくてはなりません。
 オラフ・スポーンズ(インディアナ大学, 神経科学者)は、複雑に絡み合った脳の仕組みを解明しようとしています。スポーンズは“意識”はどこに存在するのかを突き止めつつあります。その謎が解けて初めて脳を複製して人の意識を取り出して機械に移植することができるのです。それが永遠の命を獲得する道になるかも知れません。
内側頭頂葉皮質.JPG
 スポーンズが最も重要なハブだと考えているのは、内側頭頂葉皮質、2つの大脳半球の間に位置する部分です。ここに人間の本質が宿っているとスポーンズは考えています。

3)オラフ・スポーンズ(インディアナ大学, 神経科学者)
 謎は徐々に解明されています。意識というものが脳のどの部分で生じるのかを突き止めることで、意識とはいったい何なのか、あるいは意識が生じるために不可欠な要素は何なのかといった疑問に答えられるはずです。
 意識を機械の中に移せるかどうかは疑問です。

ナレーション
 物理学者のヴェドラルは、ごく単純なルールで成り立つシステムから如何にして知性が生まれるかを研究しています。

4)ヴラトコ・ヴェドラル(オックスフォード大学, 物理学者)
 チェスは、いくつかの単純なるルールがあるだけですが、とても複雑な展開をみせるゲームです。
 ライフゲームは、2つか3つの単純なルールから、実に複雑なパターンが生まれることを示しています。生命も同じことです。
 処理能力で言えば、(脳は)現在のノートパソコンの100万倍の速度で情報を処理できます。つまり、一人の人間の脳を模倣しようと思ったら、ノートパソコンが100万台必要だということです。
 (現在のcomputer技術で知能を持った人工生命体を生み出すことは困難です。しかし、ヴェドラルは、“量子コンピューター”なら可能だと考えています。)
 量子コンピューターは、量子力学の原理を応用した未来の技術です。現在のコンピューターとは比較にならない処理速度が実現できます。

ミチオ・カク
 実用に至る量子コンピューターはまだ存在しない。
 コンピュータには人間のような想像力は無いのです。人間のように論理を飛び越えた発想も生み出せません

ナレーション
 当分の間、人間が量子コンピューターの奴隷になる心配はなさそうです。

モーガンフリーマン
 一般に科学と宗教は分けて考えられます。しかし、アインシュタインは宗教なき科学は不完全であり、科学なき宗教にも欠陥があると言いました。
 永遠の命を得るには、人間と神を融合させた不滅の宇宙コンピューターが必要になるかも知れません。

ナレーション
 アメリカの数理物理学者フランク・ティプラーは、人間と神と宇宙が一体になるときが来ると予測しています。彼はその瞬間を オメガポイントと呼んでいます。

5)フランク・ティプラー(チュレーン大学, 数理物理学者)
 オメガポイントとは宇宙の終わりの時です。もっと正確に言えば、私たちの子孫が地球の外に拡がり宇宙全体を飲み込むときのことです。
 無限の能力によってありとあらゆる人々が復活させられるでしょう。今いる地球がそっくりそのまま再現されるようなものです。しかし、一つだけ違う点があります。蘇ったらもう二度と死ぬ必要が無いことです。

ヴラトコ・ヴェドラル
 人間の価値観の多くは、命に限りがあるという原則に基づいています。

6)アレグザンダー・ローズ(ロング・ナウ協会 事務局長)
 もし寿命が延びたら、恋愛や結婚の形もガラリと変わるでしょう。今ですら多くの人が離婚するのです。1000年生きるとなれば何度、結婚と離婚を繰り返すことか

モーガンフリーマン
 神話の神々は、限りある命を羨んだと言います。生きられる時間に制限があるからこそ偉大なことも成し遂げられます。限りある命こそが私たちに人間らしさをもたらしているのかも知れません。  しかし死すべき運命を背負った私たちは、永遠の命に憧れ続けます。それもまた人間らしさなのです。


P.S.
※ガラス化凍結法
 http://www.bioverde.jp/%E3%82%88%E3%81%8F%E3%81%82%E3%82%8B%E3%81%94%E8%B3%AA%E5%95%8F/
 =霊長類のES / iPS細胞は,通常の凍結法では解凍後の生存率が非常に低いため,ガラス化凍結法が推奨されています。

※量子コンピューター
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%8F%E5%AD%90%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%94%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%BF

ガリヴァーの世界にみる不老長寿の願望と現実 [不老長寿]

 今夜10時のNHK教育、こんな番組、NHK教育で取り上げるなんて・・。
 意図が分からない・・。
冷凍.jpg

 朝日新聞アスパラクラブで私が書きました長寿社会への警鐘を以下にご紹介いたします。
朝日新聞アスパラクラブ「ひょっとして認知症-PartⅠ」第109回 『不老長寿は夢じゃない(1)』(2011年6月13日公開)
 皆さん昨晩9時はどのTV番組を観るかすごく悩まれたのではないでしょうか。
 元脳神経外科医の私としては「JIN」、子どもたちが観たいのは「マルモ」、元々の私のお気に入りは「行列」。しかし、昨晩だけはそんな迷いを捨てて、NHKスペシャルに見入ってしまいました。TV番組欄で「認知症」という文字を見かけると、ほとんど観てしまいますね。
 2011年6月12日放送のNHKスペシャル「寿命は延ばせる!」(http://www.nhk.or.jp/special/onair/110612.html)においては、話題の長寿遺伝子「サーチュイン遺伝子」に関して報道され、認知症予防との関連についても言及されました。

 「このサーチュイン遺伝子、万人が持っていますが、普段は眠っていて働きません。しかし、働かせる簡単な方法も分かってきました。」とホームページにて紹介されていましたので、放送を観る前に事前に予習してみました。
 「サーチュイン遺伝子のスイッチをオンにするには、2つの方法がある。」と2010年11月20日放送の「世界一受けたい授業」の「授業復習」(http://www.ntv.co.jp/sekaju/onair/101120/03.html)に記載してありました。
 「1つは、カロリーを減らすこと、2つ目は定期的に運動することです。日本人の男性が一日にとる食事のカロリーの平均は、2100kcal、女性は平均1700kcalです。これを約800kcalに抑えると、効果が出るだろうと言われています。これを続けなければならないわけではなくて、1週間に1回、10日に1回、1カ月に1回でも効果があるという研究者もいます。」
 この情報がどこまで正しいのか? どこまで解明が進んだのかを勉強すべく、楽しみに夜の21時を待ちました。

 ただ、NHKスペシャルを観る前の私は、1735年にイギリスの風刺作家ジョナサン・スウィフトが著した『ガリヴァー旅行記』において紹介されている寓話の一節を思い出し、長寿遺伝子が同定されても・・と懐疑的な見方をしていました。
 その寓話は、東京女子医科大学東医療センターの大塚邦明教授が書かれた著書(100歳を可能にする時間医学 NTT出版, 東京, 2010)の「はじめに」において紹介されています。

 「ガリヴァーは、イギリスに戻る途中、ラグナグ王国に立ち寄りました。そこに少数の不死の人間(ストラルドブラグ人)がいることを聞き、是非会ってみたいと願いました。ガリヴァーは、『自分がストラルドブラグ人のように不死であったなら、いかにも輝かしい人生を送ることができるであろう』と、心をときめかしました。しかし、ガリヴァーがそこに見たものは、思いもかけないのストラルドブラグ人の実態でした。『不老』ではないため、老齢につきまとう悲惨な姿ばかりが目についた。人間としての尊厳を保つことができず、老いさらばえたままの悲惨な生涯を送っていた。200歳を超えた一人の老人は、死ぬことができないという前途を悲観し、不機嫌で愚痴っぽく、頑固で気むずかしく、歯も欠け頭髪も抜け、忘れっぽく、味わうこともできず、ただ飲み食いをしているというばかりであった。そして、国中の人々から、疎まれ軽蔑されていた。」


長寿の悲喜こもごも
投稿者:あぽろ 投稿日時:11/06/13 15:32
 私の親類には100歳を越した老人が数人います。
元気で100歳ならいいですがベッドで寝たままの百歳です。子ども達は次々親より先に亡くなったようです。
 親より先に亡くなるのは親不孝と言いますが、仕方ありません。孫やひ孫の世話になっているようです。
 お婆ちゃんは孫やひ孫のお嫁さんに時々体を拭いてもらっています。
 もう一人のお婆ちゃんは特老に入所して居られます。
 誰も尋ねて行きません。子どもも次々身体を壊して、外孫はなじみが無いので田舎へ帰っても来ません。
 親類周りでは「年金が入ることが唯一の貢献」などとやっかみを言われて居たりします。
 そんな方ばかりでもなく100歳を過ぎても家族の中で草みしりをしたり、花の世話をして過ごしてらっしゃる方も居ます。
 長生きも人それぞれです。


Re:長寿の悲喜こもごも
投稿者:笠間 睦 投稿日時:11/06/13 16:04
あぽろさんへ
 コメント拝見しました。
 私も、昨晩のNHKスペシャルを観るまでは、「ストラルドブラグ人のような悲惨な超高齢社会」をイメージしておりましたので、あぽろさんの抱く感覚と同じように感じていました。
 しかし、昨日の放送は、長寿だけではなく老化の防止にも貢献するという話でありました。
 昨年から今年にかけて、健康な百寿者を多く拝見してきました。代表的な方は、シリーズ第45回『日野原先生の講演を聴いてきた』でご紹介しましたね。

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