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書評:『樋口直美:私の脳で起こったこと レビー小体型認知症からの復活. ブックマン社, 東京, 2015』 [レビー小体型認知症]

私の脳で起こったこと.jpg
初夏に読んだ樋口直美さんの本の書評を書きました。

タイトル:
 認知症専門医にこそお勧めの本だと感じました。

本文:
 まず最初に、著書の「はじめに」を一部改変して以下にご紹介します。

 「急速に変わりつつあるとはいえ、レビー小体型認知症は、まだ知名度の低い病気です。私は、内科、眼科、整形外科で『レビー…? どういう字を書きますか?』と訊かれました。
 正しく診断されていないだけで、実際には、認知症の約5人に1人がレビー小体型だと専門医は言います。生前にうつ病、パーキンソン病と誤診されていた人気俳優、ロビン・ウィリアムズもレビー小体型認知症でした。
 私も41才でうつ病と誤診され、約6年間、誤った薬物治療を受けました。自分でこの病気を疑い、文献を読み漁り始めたのが、49才。
 50才の秋、専門医に診断され、治療が始まったのは、翌年の夏。抗うつ剤で劇的に悪化した日から、丸9年という歳月がかかりました。」

 私は、日本認知症学会の専門医(指導医)です。
 詳細な記述を読み、私自身も非常に勉強になりました。

 多くの方が、「著者は、本当にレビー小体型認知症?」と疑問に感じることは当然のことだと思います。
 この辺りを説明するのは少し専門的な話をする必要があります。
 近年では呼称が、レビー小体型認知症(dementia with Lewy body:DLB)、認知症を伴うパーキンソン病(Parkinson's disease with dementia:PDD)さらにはパーキンソン病も含め,病理学的な観点からレビー小体病(LBD:Lewy body disease)、あるいはα-synucleinopathyといった包括的な呼称へと変化しつつあるのです。

 もう1点だけ専門的な話をさせて頂きます。
 「DLBを含むレビー小体病の初発病変の局在や、その後の進行形式・速度には大きなバリエーションがあり、さらに症状が出現した後、進行していく場合ばかりでなく、進行していかない場合もあります。現在われわれの知っているDLBは氷山の一角であり、自然経過のバリエーションがわかってくるのはもう少し先ではないかと思っています。」(山田正仁 他:座談会─認知症の早期発見・薬物治療・生活上の障害への対策. Geriatric Medicine Vol.50 977-985 2012)

 発症早期の何らかの対策が認知症への進展を食い止めたことが想定されます。これは、同じ病気を抱える方にとって大きな希望となります。
 私自身は、著書を読み進めながら専門誌を読み漁り、おそらく認知症への進展を食い止めた鍵は、腸内フローラないしはミトコンドリア機能の改善が鍵を握っていたのではないかと推察しております。
 まだ明確には証明されていない仮説ではありますが、「腸内フローラ悪化 → ミトコンドリア機能低下 → レビー小体病」という発症機序を想定している研究者もおられます。
 その仮説が正しければ、腸内フローラを改善する生活習慣、ないしはミトコンドリアの機能を向上させる試みなどに大きな期待が寄せられます。

 著者の樋口直美さんは、今でも、突然の認知機能の変動(「意識障害」とご本人はお話されております)と自律神経症状(血圧の変動など)、視空間認知機能障害、時間感覚の低下(https://note.mu/hiiguchinaomi/n/n8da1f271f912)などで苦慮され生活障害を抱えておられます。そのことは、今年7月に講演会でご一緒する機会があり、ご本人から直接お伺いしました。
 レビー小体型認知症(DLB)に関する正しい情報が普及することを願ってやみません。
 著書を隅々まで読み、私自身“目から鱗”のような情報がありました。DLBを発症する15年も前に「薬剤に対する過敏」が既に起きているなんて到底信じがたい話でした。まずは認知症学会の専門医が率先して正しい知識を身につけることが必要であると深く反省させられました


もっと詳しく勉強したい方は↓
 https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/628261997343483?pnref=story
 「腸内フローラ悪化 → ミトコンドリア機能低下 → レビー小体病」の根拠となる論文などを紹介しております。

まとめ
 http://akasama.blog.so-net.ne.jp/2016-05-29-1
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