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痴呆予防ドック [脳ドック]

認知症診療にどっぷりつかり始めた頃の記事

 私が認知症診療にどっぷりとつかり始めた頃に掲載されました記事です(1997年5月19日付讀賣新聞─こちら医療情報室)。
 https://www.facebook.com/photo.php?fbid=588698167966533&set=a.530169687152715.1073741826.100004790640447&type=3&theater
 

 脳ドックのインフォームドコンセント(http://akasama.blog.so-net.ne.jp/2016-05-06)のためのアンケート調査を通して、脳ドックには「認知症を調べて欲しい」という受診動機(需要)が多いことを知った私は、認知症の検査に特化した脳検診を樹立する必要があると確信し、「痴呆予防ドック」(当時の名称)を開設しました。
 専門誌におきましては、「痴ほう専門ドック」という名称にて投稿いたしました。
脳神経-痴ほう専門ドックの開設.jpg P.S. 【1999年8月29日付讀賣新聞日曜版・いきいき健考人】  https://www.facebook.com/photo.php?fbid=606556889513994&set=a.530169687152715.1073741826.100004790640447&type=3&theater

脳ドックのためのインフォームドコンセント [脳ドック]

インフォームドコンセントと結果説明
脳ドック.jpg
(冒頭省略)
 脳ドック受診者に対する検査結果の説明では,後述するいくつかの視点に立って説明が行われるとともに,受診者の了解を得ながら,健康な社会生活の継続が可能となるように指導することが求められる.すなわち,受診者が健常者としてすべての検査結果を受容できるように丁寧に説明することが,受診者に対するインフォームドコンセントの基本となる.
 …(中略)…
4.認知機能検査の説明には精神的影響を配慮するという視点
 最近の脳ドックでは,脳卒中ばかりでなく認知症の発症を心配する受診者が急増しており,認知機能検査を希望する受診者が増えている.特に,高齢受診者においては軽度認知障害(mild cognitive impairment;MCI)に相当する受診者が増えつつあり,受診者の認知機能の低下について説明する場合には,その後の精神的影響を配慮すべきであり,精密検査や追跡の必要性を説明し,その方法についても納得を得て進める必要がある.
 …(中略)…
6.専門性の高い医師による説明指導であるという視点
 説明指導を担当する医師は,脳ドックの意義を理解し,予防医学の観点から脳ドックのガイドラインに準拠した適切な指導ができる専門性の高い医師として説明指導に責任を果たす.また,無症候性病変に対する医療介入には,先制医療としての側面があることを理解した上で,その利益と不利益について精通し,受診者に対する説明指導にあたることが必要である.
 (以下省略)
 【中川原譲二:脳ドックの基本―インフォームドコンセントと結果説明. Clinical Neuroscience Vol.34 395-397 2016】


 以上の記述を読まれてどう感じられましたか?
 私は、脳ドックを担当していました当時、このような問題点に関して、以下のような解決方法を採りました。
 認知症を心配して脳ドックを受けられる方の中には、脳動脈瘤の精査を希望していない方も結構おられることが私の実施したアンケート調査で分かっておりましたので、認知症の検査を脳ドックから分離すべきと考え、痴呆予防ドック(痴呆専門ドック)を1996年より導入しました。
 また、脳ドックを受けてから、脳動脈瘤を手術せずに経過観察することの精神的なデメリットも安易に予想されることですので、私は、デメリットを検診前に徹底して伝えるべきと考え、検診前に検診のメリットとデメリットを文書でお伝えしました。
 その結果、どうなったのか? 私は論文の中で、以下のように言及しております。

■患者の信頼を得るために不可欠な医療情報公開
 本年六月二十四~二十五日、第八回日本脳ドック学会総会が大阪で開催される。主題の一つは、脳ドックにおけるインフォームドコンセントである。
 津生協病院では一九九五年より脳ドック、一九九六年より痴呆予防ドック(痴呆専門ドック)を開始している。開設当初より検診前のインフォームドコンセントに留意してきたが、昨年六月より、検診前に検診の詳細を記載した文書を郵送している。それ以前はほとんど検診のキャンセルはなかったが、文書郵送後、脳ドックで二二・二%(二七件中六件)、痴呆予防ドックでは四六・六%(一七四件中八一件)ものキャンセルがあった。
 …(中略)…
 実に多くの七十歳以上の方が脳ドックを受診しているのが実情である。「限界」に関する事前の説明が不十分だからである。
 このように、医療情報公開は医療経営に影響する。しかし、積極的な情報公開は、医療訴訟の防止の面でも大変重要であるとともに患者からの厚い信頼を得るために不可欠であると私は考えている。
 【笠間 睦:外来カルテ開示に対する反響. 日本医事新報No.3912 1999年4月17日号 73-77 1999】

コメント:
 要するに、「徹底してインフォームドコンセントを実施すると、医療経営に悪影響を及ぼすのでインフォームドコンセントは思うように進まない」と言いたかったわけです。
 なお、「七十歳以上の方が脳ドックを受診する意義は乏しい」と語っておりますが、現在の考え方は、「未破裂脳動脈瘤の予防的手術の適応年齢(余命が10~15年以上)なども考慮し、それだけの余命が期待できない方は脳動脈瘤が発見されても手術せずに経過観察することになるから脳ドックを受ける意義は乏しい!」と置き換えて解釈して下さいね。


 「脳ドック」の最新情報に関しては、「脳動脈瘤 新しい治療法」(http://akasama.blog.so-net.ne.jp/2016-04-20-2)にて言及しております。
 以下にその重要部分を再掲しますね。
脳動脈瘤 新しい治療法
 破裂すると、くも膜下出血などを引き起こす「脳動脈瘤」。血管内に金属製の筒を入れて瘤を小さくする新たな治療法が登場した。従来は治療が難しかった大きなものが対象だ。脳ドックの普及で、早めの治療が増える一方、不安を和らげる取り組みも出てきた。

脳ドックで発見増加
 脳動脈の瘤は、成人100人当たり3~5人にあるとされる。日本脳卒中学会が15年に出した指針では、直径が5~7㍉以上で治療を検討すべきだとしている。
 検査で見つかる瘤の半数は5㍉未満とされる。この大きさの破裂率は年0.36%にとどまるが、破裂の不安でうつ症状になることもある。
 日本脳ドック学会は、別の医師に意見を聞くセカンドオピニオンを勧めている。今後、治療法や破裂率などを説明するビデオを医療機関に配る予定だ。
 神戸市立医療センター中央市民病院の坂井信幸・脳神経外科部長は「瘤が見つかり、不安になるデメリットも知ったうえで脳ドック、を受けてぼしい」と話す。(石倉徹也)
 【2016年4月20日付朝日新聞・医療】

脳動脈瘤 新しい治療法 [脳ドック]

脳動脈瘤 新しい治療法
 血管内に筒 瘤への血流防ぐ

 破裂すると、くも膜下出血などを引き起こす「脳動脈瘤」。血管内に金属製の筒を入れて瘤を小さくする新たな治療法が登場した。従来は治療が難しかった大きなものが対象だ。脳ドックの普及で、早めの治療が増える一方、不安を和らげる取り組みも出てきた。

10ミリ以上の瘤が対象
 大阪府高槻市の女性(80)は2014年の暮れ、視界がゆがんだり、見るものが二重になったりするようになった。白内障の影響かと思ったが、眼科で「脳に何かある」と言われ、大阪医科大付属病原(大阪府高槻市)を受診。検査で、右目奥の血管に直径2センチ近い瘤が見つかった。脳に向かう動脈の曲がった部分にあり神経を圧迫していた。
 瘤が大きく、従来の方法では治療が難しいため、網目状の合金製のステント(筒)を瘤の近くの血管内に置く新しい治療法を受けることにした。細かい網目の筒が血管の壁となり、瘤への血流を減らす。足の付け根からカテーテル(管)を入れて筒を患部まで運ぶので頭を開く必要はない。
 治療から半年後。瘤はほぼ消え、視界も良くなった。「治療は数時間で終わった。瘤がなくなって安心です」と女性は話す。
 脳動脈瘤は破裂すると、くも膜下出血を起こす。年3万~4万人が発症し、3分の2が、死亡か重い後遺症が残るとされる。
 従来の治療法はそれぞれ一長一短がある。開頭して瘤の根元をクリップでとめる方法は確実に破裂を防げるが、神経に傷がつくと後遺症の心配がある。カテーテルを使って瘤にコイルを玉状に詰めるものは脳の奥でも対応できる半面、再発の恐れがある。血管を手術で塞ぐ方法は大がかりな手術が必要だ。瘤が大きいとこうしたリスクも高まる。
 新しい治療法は、これまで治療が難しかった首の内頸動脈にある10ミリ以上の大きな瘤が対象。昨年10月から保険適用になり、自己負担は10万~30万円程度。
 …(中略)…
 一方、瘤の中の血液が固まって小さくなるまで数カ月以上かかり、その間は破裂の危険性が残る。ステントの影響で血の塊が生じることを防ぐため、血液を固まりにくくする薬を長期間飲む必要もある。
 技術的にも難しく、治療は現在、全国l2施設に限定。日本脳神経血管内治療学会などは実習などの研修を受けた医師だけが治療を進めるよう求めている。

脳ドックで発見増加
 脳動脈の瘤は、成人100人当たり3~5人にあるとされる。一般に高血圧や喫煙、大量に飲酒する人に多い。頭痛やめまいなどの自覚症状は少ない。
 日本脳神経外科学会が約6千人を対象に実施した調査によると、破裂の危険性は、3~4㍉の瘤と比べ、7~9㍉は約3倍、25㍉以上は約76倍高かった。全体の破裂率は年約1%だった。日本脳卒中学会が15年に出した指針では、直径が5~7㍉以上で治療を検討すべきだとしている。
 …(中略)…
 未破裂の瘤の治療件数は約1万6千件(14年)で10年前の1.5倍に増加。脳ドックの利用増が背景にあると見られる。ドックは健康保険の対象外で、費用は5万円前後が多い。
 検査で見つかる瘤の半数は5㍉未満とされる。この大きさの破裂率は年0.36%にとどまるが、破裂の不安でうつ症状になることもある。
 日本脳ドック学会は、別の医師に意見を聞くセカンドオピニオンを勧めている。今後、治療法や破裂率などを説明するビデオを医療機関に配る予定だ。
 神戸市立医療センター中央市民病院の坂井信幸・脳神経外科部長は「瘤が見つかり、不安になるデメリットも知ったうえで脳ドック、を受けてほしい」と話す。(石倉徹也)
 【2016年4月20日付朝日新聞・医療】

私の感想
 私が人生で初めて受けました取材記事は、『インフォームド・コンセント―脳ドックにも採り入れ準備』(1994年6月9日付朝日新聞・第2三重)というタイトルの記事です。私が35歳の時です。もうかれこれ20年以上前のことなんですね。
 この記事には、「『脳ドック』は八八年に札幌市の病院で開設され、現在、全国の百近い病院で実施している」と書かれています。
 この札幌市の病院というのが、新さっぽろ脳神経外科病院(http://www.snh.or.jp/)です。
 理事長・院長先生のお顔、見覚えがある方も多いのではないでしょうか。
中川俊男.JPG

 中川俊男先生と私は、1992年8月1日号の週刊現代「日本の名医200人―成人病に挑む70人(脳卒中部門は6名)」において運命的な出会いをしておりました。
日本の名医200人.jpg

 この時の名医の条件は4点でした。
 ①患者の話をよくきいてくれる
 ②病気を臓器別に診ず、多臓器にわたって人間を丸ごと診てくれる
 ③医療情報が豊富である
 ④自分の手におえない患者はすぐ他院で紹介してくれる(患者離れがよい)
 まあ私の場合は、バランス良く①~④の条件を満たしておりましたので、当時の論文も加味して選出されたのかも知れません。
 その後、私が脳ドック学会で、「脳ドックのためのインフォームドコンセント」というタイトルで講演した際に、「受診前に詳細な説明をすると受診者数は減少する」と報告しましたら、中川俊男先生が所属されておりました教室のボスから、「笠間先生がスライドにて提示されている脳動脈瘤手術のmorbidity(手術合併症率)、mortality(手術死亡率)の数字が問題だ(そんなに高率じゃない)!」と質問(指摘)を受けたことが懐かしい思い出として残っております。
 中川俊男先生は、きっと私のことが大嫌いだったと思いますよ(笑)。
 いずれにしても私は、「未破裂脳動脈瘤の予防的手術の適応年齢(余命が10~15年以上)なども考慮し、それだけの余命が期待できない方は脳動脈瘤が発見されても手術せずに経過観察することになるから脳ドックを受ける意義は乏しい!」&「脳動脈瘤手術のmorbidity(手術合併症率)、mortality(手術死亡率)の数字をきちんと情報提供受けてから脳ドックを受けるべきだ!」と主張しましたので、脳ドック推進派グループからの強い反感をかったのでしょうね。
 「長期的な再出血率が血管内治療で高い傾向がある」(石原秀行、鈴木倫保:脳卒中治療ガイドライン2015改訂のポイント―くも膜下出血. 日本臨牀 Vol.74 677-680 2016)ことも示されてきており、器材の改良はまだ続くものと考えられますが、脳血管内治療との比較の中で、開頭クリッピングの利点も明確になってきているようです。
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