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脳動脈瘤 新しい治療法 [脳ドック]

脳動脈瘤 新しい治療法
 血管内に筒 瘤への血流防ぐ

 破裂すると、くも膜下出血などを引き起こす「脳動脈瘤」。血管内に金属製の筒を入れて瘤を小さくする新たな治療法が登場した。従来は治療が難しかった大きなものが対象だ。脳ドックの普及で、早めの治療が増える一方、不安を和らげる取り組みも出てきた。

10ミリ以上の瘤が対象
 大阪府高槻市の女性(80)は2014年の暮れ、視界がゆがんだり、見るものが二重になったりするようになった。白内障の影響かと思ったが、眼科で「脳に何かある」と言われ、大阪医科大付属病原(大阪府高槻市)を受診。検査で、右目奥の血管に直径2センチ近い瘤が見つかった。脳に向かう動脈の曲がった部分にあり神経を圧迫していた。
 瘤が大きく、従来の方法では治療が難しいため、網目状の合金製のステント(筒)を瘤の近くの血管内に置く新しい治療法を受けることにした。細かい網目の筒が血管の壁となり、瘤への血流を減らす。足の付け根からカテーテル(管)を入れて筒を患部まで運ぶので頭を開く必要はない。
 治療から半年後。瘤はほぼ消え、視界も良くなった。「治療は数時間で終わった。瘤がなくなって安心です」と女性は話す。
 脳動脈瘤は破裂すると、くも膜下出血を起こす。年3万~4万人が発症し、3分の2が、死亡か重い後遺症が残るとされる。
 従来の治療法はそれぞれ一長一短がある。開頭して瘤の根元をクリップでとめる方法は確実に破裂を防げるが、神経に傷がつくと後遺症の心配がある。カテーテルを使って瘤にコイルを玉状に詰めるものは脳の奥でも対応できる半面、再発の恐れがある。血管を手術で塞ぐ方法は大がかりな手術が必要だ。瘤が大きいとこうしたリスクも高まる。
 新しい治療法は、これまで治療が難しかった首の内頸動脈にある10ミリ以上の大きな瘤が対象。昨年10月から保険適用になり、自己負担は10万~30万円程度。
 …(中略)…
 一方、瘤の中の血液が固まって小さくなるまで数カ月以上かかり、その間は破裂の危険性が残る。ステントの影響で血の塊が生じることを防ぐため、血液を固まりにくくする薬を長期間飲む必要もある。
 技術的にも難しく、治療は現在、全国l2施設に限定。日本脳神経血管内治療学会などは実習などの研修を受けた医師だけが治療を進めるよう求めている。

脳ドックで発見増加
 脳動脈の瘤は、成人100人当たり3~5人にあるとされる。一般に高血圧や喫煙、大量に飲酒する人に多い。頭痛やめまいなどの自覚症状は少ない。
 日本脳神経外科学会が約6千人を対象に実施した調査によると、破裂の危険性は、3~4㍉の瘤と比べ、7~9㍉は約3倍、25㍉以上は約76倍高かった。全体の破裂率は年約1%だった。日本脳卒中学会が15年に出した指針では、直径が5~7㍉以上で治療を検討すべきだとしている。
 …(中略)…
 未破裂の瘤の治療件数は約1万6千件(14年)で10年前の1.5倍に増加。脳ドックの利用増が背景にあると見られる。ドックは健康保険の対象外で、費用は5万円前後が多い。
 検査で見つかる瘤の半数は5㍉未満とされる。この大きさの破裂率は年0.36%にとどまるが、破裂の不安でうつ症状になることもある。
 日本脳ドック学会は、別の医師に意見を聞くセカンドオピニオンを勧めている。今後、治療法や破裂率などを説明するビデオを医療機関に配る予定だ。
 神戸市立医療センター中央市民病院の坂井信幸・脳神経外科部長は「瘤が見つかり、不安になるデメリットも知ったうえで脳ドック、を受けてほしい」と話す。(石倉徹也)
 【2016年4月20日付朝日新聞・医療】

私の感想
 私が人生で初めて受けました取材記事は、『インフォームド・コンセント―脳ドックにも採り入れ準備』(1994年6月9日付朝日新聞・第2三重)というタイトルの記事です。私が35歳の時です。もうかれこれ20年以上前のことなんですね。
 この記事には、「『脳ドック』は八八年に札幌市の病院で開設され、現在、全国の百近い病院で実施している」と書かれています。
 この札幌市の病院というのが、新さっぽろ脳神経外科病院(http://www.snh.or.jp/)です。
 理事長・院長先生のお顔、見覚えがある方も多いのではないでしょうか。
中川俊男.JPG

 中川俊男先生と私は、1992年8月1日号の週刊現代「日本の名医200人―成人病に挑む70人(脳卒中部門は6名)」において運命的な出会いをしておりました。
日本の名医200人.jpg

 この時の名医の条件は4点でした。
 ①患者の話をよくきいてくれる
 ②病気を臓器別に診ず、多臓器にわたって人間を丸ごと診てくれる
 ③医療情報が豊富である
 ④自分の手におえない患者はすぐ他院で紹介してくれる(患者離れがよい)
 まあ私の場合は、バランス良く①~④の条件を満たしておりましたので、当時の論文も加味して選出されたのかも知れません。
 その後、私が脳ドック学会で、「脳ドックのためのインフォームドコンセント」というタイトルで講演した際に、「受診前に詳細な説明をすると受診者数は減少する」と報告しましたら、中川俊男先生が所属されておりました教室のボスから、「笠間先生がスライドにて提示されている脳動脈瘤手術のmorbidity(手術合併症率)、mortality(手術死亡率)の数字が問題だ(そんなに高率じゃない)!」と質問(指摘)を受けたことが懐かしい思い出として残っております。
 中川俊男先生は、きっと私のことが大嫌いだったと思いますよ(笑)。
 いずれにしても私は、「未破裂脳動脈瘤の予防的手術の適応年齢(余命が10~15年以上)なども考慮し、それだけの余命が期待できない方は脳動脈瘤が発見されても手術せずに経過観察することになるから脳ドックを受ける意義は乏しい!」&「脳動脈瘤手術のmorbidity(手術合併症率)、mortality(手術死亡率)の数字をきちんと情報提供受けてから脳ドックを受けるべきだ!」と主張しましたので、脳ドック推進派グループからの強い反感をかったのでしょうね。
 「長期的な再出血率が血管内治療で高い傾向がある」(石原秀行、鈴木倫保:脳卒中治療ガイドライン2015改訂のポイント―くも膜下出血. 日本臨牀 Vol.74 677-680 2016)ことも示されてきており、器材の改良はまだ続くものと考えられますが、脳血管内治療との比較の中で、開頭クリッピングの利点も明確になってきているようです。
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