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脳ドックのためのインフォームドコンセント [脳ドック]

インフォームドコンセントと結果説明
脳ドック.jpg
(冒頭省略)
 脳ドック受診者に対する検査結果の説明では,後述するいくつかの視点に立って説明が行われるとともに,受診者の了解を得ながら,健康な社会生活の継続が可能となるように指導することが求められる.すなわち,受診者が健常者としてすべての検査結果を受容できるように丁寧に説明することが,受診者に対するインフォームドコンセントの基本となる.
 …(中略)…
4.認知機能検査の説明には精神的影響を配慮するという視点
 最近の脳ドックでは,脳卒中ばかりでなく認知症の発症を心配する受診者が急増しており,認知機能検査を希望する受診者が増えている.特に,高齢受診者においては軽度認知障害(mild cognitive impairment;MCI)に相当する受診者が増えつつあり,受診者の認知機能の低下について説明する場合には,その後の精神的影響を配慮すべきであり,精密検査や追跡の必要性を説明し,その方法についても納得を得て進める必要がある.
 …(中略)…
6.専門性の高い医師による説明指導であるという視点
 説明指導を担当する医師は,脳ドックの意義を理解し,予防医学の観点から脳ドックのガイドラインに準拠した適切な指導ができる専門性の高い医師として説明指導に責任を果たす.また,無症候性病変に対する医療介入には,先制医療としての側面があることを理解した上で,その利益と不利益について精通し,受診者に対する説明指導にあたることが必要である.
 (以下省略)
 【中川原譲二:脳ドックの基本―インフォームドコンセントと結果説明. Clinical Neuroscience Vol.34 395-397 2016】


 以上の記述を読まれてどう感じられましたか?
 私は、脳ドックを担当していました当時、このような問題点に関して、以下のような解決方法を採りました。
 認知症を心配して脳ドックを受けられる方の中には、脳動脈瘤の精査を希望していない方も結構おられることが私の実施したアンケート調査で分かっておりましたので、認知症の検査を脳ドックから分離すべきと考え、痴呆予防ドック(痴呆専門ドック)を1996年より導入しました。
 また、脳ドックを受けてから、脳動脈瘤を手術せずに経過観察することの精神的なデメリットも安易に予想されることですので、私は、デメリットを検診前に徹底して伝えるべきと考え、検診前に検診のメリットとデメリットを文書でお伝えしました。
 その結果、どうなったのか? 私は論文の中で、以下のように言及しております。

■患者の信頼を得るために不可欠な医療情報公開
 本年六月二十四~二十五日、第八回日本脳ドック学会総会が大阪で開催される。主題の一つは、脳ドックにおけるインフォームドコンセントである。
 津生協病院では一九九五年より脳ドック、一九九六年より痴呆予防ドック(痴呆専門ドック)を開始している。開設当初より検診前のインフォームドコンセントに留意してきたが、昨年六月より、検診前に検診の詳細を記載した文書を郵送している。それ以前はほとんど検診のキャンセルはなかったが、文書郵送後、脳ドックで二二・二%(二七件中六件)、痴呆予防ドックでは四六・六%(一七四件中八一件)ものキャンセルがあった。
 …(中略)…
 実に多くの七十歳以上の方が脳ドックを受診しているのが実情である。「限界」に関する事前の説明が不十分だからである。
 このように、医療情報公開は医療経営に影響する。しかし、積極的な情報公開は、医療訴訟の防止の面でも大変重要であるとともに患者からの厚い信頼を得るために不可欠であると私は考えている。
 【笠間 睦:外来カルテ開示に対する反響. 日本医事新報No.3912 1999年4月17日号 73-77 1999】

コメント:
 要するに、「徹底してインフォームドコンセントを実施すると、医療経営に悪影響を及ぼすのでインフォームドコンセントは思うように進まない」と言いたかったわけです。
 なお、「七十歳以上の方が脳ドックを受診する意義は乏しい」と語っておりますが、現在の考え方は、「未破裂脳動脈瘤の予防的手術の適応年齢(余命が10~15年以上)なども考慮し、それだけの余命が期待できない方は脳動脈瘤が発見されても手術せずに経過観察することになるから脳ドックを受ける意義は乏しい!」と置き換えて解釈して下さいね。


 「脳ドック」の最新情報に関しては、「脳動脈瘤 新しい治療法」(http://akasama.blog.so-net.ne.jp/2016-04-20-2)にて言及しております。
 以下にその重要部分を再掲しますね。
脳動脈瘤 新しい治療法
 破裂すると、くも膜下出血などを引き起こす「脳動脈瘤」。血管内に金属製の筒を入れて瘤を小さくする新たな治療法が登場した。従来は治療が難しかった大きなものが対象だ。脳ドックの普及で、早めの治療が増える一方、不安を和らげる取り組みも出てきた。

脳ドックで発見増加
 脳動脈の瘤は、成人100人当たり3~5人にあるとされる。日本脳卒中学会が15年に出した指針では、直径が5~7㍉以上で治療を検討すべきだとしている。
 検査で見つかる瘤の半数は5㍉未満とされる。この大きさの破裂率は年0.36%にとどまるが、破裂の不安でうつ症状になることもある。
 日本脳ドック学会は、別の医師に意見を聞くセカンドオピニオンを勧めている。今後、治療法や破裂率などを説明するビデオを医療機関に配る予定だ。
 神戸市立医療センター中央市民病院の坂井信幸・脳神経外科部長は「瘤が見つかり、不安になるデメリットも知ったうえで脳ドック、を受けてぼしい」と話す。(石倉徹也)
 【2016年4月20日付朝日新聞・医療】
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