受診抑制への懸念 認知症ドライバーと告知問題 [認知症]
受診抑制への懸念 認知症ドライバーと告知問題
https://medqa.m3.com/doctor/showForumMessageDetail405538.do
「認知症JR事故」の判決結果は、列車事故に留まらず、多岐方面にわたる認知症関連事故にとって非常に重要な判例となってきます。
この裁判におきまして、家族の監督責任が問われるような判決結果が出れば、「認知症と診断されていたから賠償責任を問われたのではないか? こんなことになるのだったら、医療機関も受診せず、介護保険も申請せずひっそりと家族で看ていればよかった…」って考えてしまう介護者も増加しかねない(=認知症の人の受診抑制に繋がってしまう)のではないかと懸念しております。「社会的介護」の後退に繋がりかねませんよね。
鉄道事故なら、事業者が進入防止策を徹底するなど対策はまだ打てます。しかし、徹底した「進入防止策」を取れない自動車事故が大きな問題となってきます。
また、認知症の人が加害者となる「認知症ドライバー」の問題に対しては、何とか対策を打っていかなければなりません。
私は2年前に、認知症の通院患者全員に対してマイルドな告知を実施し、終末期医療に対する意識調査を実施しました。調査の結果、ご本人が終末期医療として経腸栄養を希望したのは皆無であったことを、一昨年の日本認知症学会学術集会において報告しております。
私の物忘れ外来におきましては、初期の段階できちんとご本人に病状を伝え、運転の危険性を説明することにより、認知症の人が納得されて運転免許の返納に応じてくれています。
【参考文献】
『入院高齢者診療マニュアル』【編者:神﨑恒一 著:笠間 睦:認知症患者の胃瘻. pp278-280, 文光堂, 東京, 2015】
おわりに
最後に、認知症の告知問題について言及する。ADにおいては病名告知に積極的に取り組む医師は少ないのが現状であり、まして予後と終末期の治療方針について初期の段階で説明している医療機関は極めて例外的な存在である。繁田は、告知の折に終末期(看取り)に関して説明を受けたのは11.5%(「少し説明があった」を含めても19.8%)に過ぎないと報告している(繁田雅弘編著:実践・認知症診療─認知症の人と家族・介護者を支える説明 pp39-48, 医薬ジャーナル, 2013)。
現在筆者は榊原白鳳病院の物忘れ外来において、全例告知を前提としたAD患者の終末期医療に対する意向調査を実施している。事前に詳細な説明をすると、経腸栄養を希望する患者は6.9%(2/29)と少ないことを第33回日本認知症学会学術集会において報告している。概要はウェブサイト(http://www.inetmie.or.jp/~kasamie/SinryouHousyuuH26enquete.pdf)において閲覧可能であるので是非ともご参照いただきたい。
今後は、意向調査の結果を治療方針に反映させ、本人が望む終末期医療の実現に向けて取り組みを進めたいと考えている。
https://medqa.m3.com/doctor/showForumMessageDetail405538.do
「認知症JR事故」の判決結果は、列車事故に留まらず、多岐方面にわたる認知症関連事故にとって非常に重要な判例となってきます。
この裁判におきまして、家族の監督責任が問われるような判決結果が出れば、「認知症と診断されていたから賠償責任を問われたのではないか? こんなことになるのだったら、医療機関も受診せず、介護保険も申請せずひっそりと家族で看ていればよかった…」って考えてしまう介護者も増加しかねない(=認知症の人の受診抑制に繋がってしまう)のではないかと懸念しております。「社会的介護」の後退に繋がりかねませんよね。
鉄道事故なら、事業者が進入防止策を徹底するなど対策はまだ打てます。しかし、徹底した「進入防止策」を取れない自動車事故が大きな問題となってきます。
また、認知症の人が加害者となる「認知症ドライバー」の問題に対しては、何とか対策を打っていかなければなりません。
私は2年前に、認知症の通院患者全員に対してマイルドな告知を実施し、終末期医療に対する意識調査を実施しました。調査の結果、ご本人が終末期医療として経腸栄養を希望したのは皆無であったことを、一昨年の日本認知症学会学術集会において報告しております。
私の物忘れ外来におきましては、初期の段階できちんとご本人に病状を伝え、運転の危険性を説明することにより、認知症の人が納得されて運転免許の返納に応じてくれています。
【参考文献】
『入院高齢者診療マニュアル』【編者:神﨑恒一 著:笠間 睦:認知症患者の胃瘻. pp278-280, 文光堂, 東京, 2015】
おわりに
最後に、認知症の告知問題について言及する。ADにおいては病名告知に積極的に取り組む医師は少ないのが現状であり、まして予後と終末期の治療方針について初期の段階で説明している医療機関は極めて例外的な存在である。繁田は、告知の折に終末期(看取り)に関して説明を受けたのは11.5%(「少し説明があった」を含めても19.8%)に過ぎないと報告している(繁田雅弘編著:実践・認知症診療─認知症の人と家族・介護者を支える説明 pp39-48, 医薬ジャーナル, 2013)。
現在筆者は榊原白鳳病院の物忘れ外来において、全例告知を前提としたAD患者の終末期医療に対する意向調査を実施している。事前に詳細な説明をすると、経腸栄養を希望する患者は6.9%(2/29)と少ないことを第33回日本認知症学会学術集会において報告している。概要はウェブサイト(http://www.inetmie.or.jp/~kasamie/SinryouHousyuuH26enquete.pdf)において閲覧可能であるので是非ともご参照いただきたい。
今後は、意向調査の結果を治療方針に反映させ、本人が望む終末期医療の実現に向けて取り組みを進めたいと考えている。
2016-02-26 03:52
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