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認知症の人を介護する家族支援としての認知症カフェの意義 [認知症ケア]

認知症の人を介護する家族支援としての認知症カフェの意義
 介護老人保健施設健寿荘:増井玲子、佐藤友美、吉田留美、中西敏子、川野京子、帆秋孝幸
【増井玲子、佐藤友美、吉田留美 他:認知症の人を介護する家族支援としての認知症カフェの意義. 認知症ケア事例ジャーナル Vol.8 No.3 209-217 2015】

抄録
 われわれは、レビー小体型認知症の女性A氏と主介護着である夫が認知症カフェを利用することで、本人と家族の心境や生活が変化したことを経験した。A氏の夫は介護中心の生活で社会との接点が少なくなり介護に行き詰っていたが、認知症カフェでの他者交流や活動の経験から、こころの負担を軽くし、妻の潜在能力に気づき、自分自身の新しい人生を再構築することができた。この経過から、認知症の人を介護する家族支援における認知症カフェの意義を考察する。

1. はじめに

2. 倫理的配慮

3. 認知症カフェYの紹介

4. 事例紹介

5. 経過

6. 考察
 (中略)
 夫は、認知症カフェの場で認知症ケアの方法や利用できるサービスなどのさまざまな情報を得ることができ、なによりも気軽に相談ができるようになった。これらの結果は、認知症の人と家族の会が調査した「認知症カフェのあり方と運営に関する調査研究事業報告書」で示された「認知症カフェの要素7つと認知症カフェの10の特徴」におおむね包含されている効果と考える。一方、A氏の夫の変化には、これまで示されていない新しい側面があった。そこで、A氏夫妻の利用の経過から、家族支援としての認知症カフェの意義を以下の3点にまとめた。
 ①家族が認知症の人本人の潜在能力に気づく場
 A氏が包丁を足元に落としたことをきっかけに、炊事をはじめとする家事はすべて夫が担うようになっていた。少しずつセルフケアにも介助が必要となり、入浴、排泄の介助などすべてを夫が1人で行っていた。その結果、さまざまな工夫はしながらも「なにもさせない」と語った過度の密着した介護状態になっていたことが推測された。認知症カフェでの活動時、夫はA氏がトランプや料理をスタッフやほかの利用者と笑いながら行うようすを少し離れて見守った。ゲームの理解や場を楽しむこと、包丁を使えたということだけでなく、自分がしたいことをはっきりと意思表示することも含めた潜在能力への気づきがあった。このように、本人の活動のようすを家族が実際にみて理解できるということは、認知症カフェの大きな特徴といえる。
 (中略)
 ②気軽に通え、家族自身のこころの負担を軽くできる場
 認知症カフェ利用開始当初のA氏の夫は、本当はたいへんな介護状況にあるのではないかと思われていたものの、ぐちを吐露することもなかった。松本のいう「過剰適応の介護」「孤立した介護」(松本一生:家族と学ぶ認知症;介護者と支援者のためのガイドブック. pp61-63, 金剛出版, 東京, 2006)であったと考えられた。しかし同性(男性)の介護者が認知症カフェに参加するようになったことで、それまでこころに秘めていた介護の苦悩を語ることができた。それをほかの家族と共有したことで、A氏の夫の肩の力が抜けた印象があった。また、ほかの家族が配偶者に対して大きな声を出した場面で「もっと優しくしないと」と声をかけることができたことは、介護する側・される倒を客観視することにつながった。A氏の夫自身、「Dさんに言いながら、自分に言っているんだ」と言っている。
 (中略)
 ゆとりをなくした介護は、燃え尽き症候群、介護うつ、虐待の危険をはらんでいる。それらが、認知症カフェで語ることや他者のケアのあり様をみることで防止可能であると思われた。松本(松本一生:家族と学ぶ認知症;介護者と支援者のためのガイドブック. pp61-63, 金剛出版, 東京, 2006)は、高齢者は一般に、①身体の衰えとともに起こる喪失感、②友人や家族をなくすことによる喪失感、③社会的な役割を失うことによる喪失感におそわれ影響を受けると述べている。認知症の人の介護者は、A氏の夫のようにある朝起きたときに「あなたは知っている人だけどだれ?」と言われたというようなポーリン・ボス(ポーリン・ボス[訳・和田秀樹、森村里美]:認知症の人を愛するということ;曖昧な喪失と悲しみに立ち向かうために. pp8-14, 誠信書房, 東京, 2014)のいう「さよなら」のない別れ、別れのない「さよなら」という“あいまいな喪失”にも苦しんでいる。そういったなかで、同じような立場の人と語り合うことや傾聴する専門職に語ることで少しでもこころの整理ができるのではないかと考える。
 ③介護する家族自身が人生を再構築できる場
 A氏の夫は、認知症カフェ来店時は必ずほかの利用者の名前をよび、声をかけていた。車いすを押す介助をするなど、ほかの利用客のために手を貸すことが多くあった。さらに、C氏の夫に対しては、話を開き、介護の工夫を伝えていた。これらの行動は、“妻を支える”という役割から、社会のなかで人を助けるという新しい役割となったと考える。
 (中略)
 A氏の夫は、認知症カフェヘの参加をきっかけに、「同じように認知症の介護で困っているほかの人に情報を伝えたい」という新しい社会的役割を見いだした。これは、認知症カフェでの人との出会いや活動によって得られた結果である。介護家族にとって、閉塞的な介護中心の生活だけでなく、社会とつながることがいかに重要かを示唆しているといえる。このように、介護家族が社会参加をして変容していく姿がほかの認知症カフェでも示されている(牧野史子:ケアラー支えるために. 老年精神医学会誌 Vol.25 No.9 975-983 2014)。

7. まとめ

〈謝辞〉

【文献】
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