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医療界の常識は、世間の非常識! [ひょっとして認知症?]

 2010年9月28日より4年半に渡って執筆した朝日新聞社・医療ブログ「ひょっとして認知症?」の最終回の原稿です。


2015.3.29公開
 http://apital.asahi.com/article/kasama/2015032000017.html
第807回 感情に配慮したケアを─(最終回)診察室ではメモをどうぞ
 認知症に関する知識が何もない暗闇の中では、「情報」という一筋の光はひときわ大きな力を発揮します。私自身、患者さん・ご家族の「正確な医療情報を知りたい」という気持ちをごくごく自然に共感できますので、医療情報公開というライフワークに精力的に取り組んできました。
 医療情報普及のためには、インターネットは極めて大きな力を発揮します。因みに、日本初のホームページ(HP)は、1992年9月30日に茨城県つくば市にある文部省高エネルギー物理学研究所計算科学センターの森田洋平博士によって発信されたそうです(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E6%9C%80%E5%88%9D%E3%81%AE%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8)。
 私がHPを開設したのは、その4年後の1996年6月23日です。1996年8月23日付朝日新聞・家庭面においては、「インターネットで気軽に痴ほう症診断」(http://www.inetmie.or.jp/~kasamie/19960823Asahi.jpg)というタイトルで私のHPが写真入りで紹介されました。
 私は当時、自身のHP(http://www.inetmie.or.jp/~kasamie/)において、いくつかの簡易認知機能検査をご家族が実施できるように分かりやすく解説して紹介しており、斬新な試みとして注目を集めました。その目的は、医療機関を受診したがらない患者さんのご家族に使ってもらい、それをきっかけとして早期の受診に繋がればと願い試みたことです。何度も述べておりますように、認知機能検査の結果を自己判断することは危険ですので、最終的には医療機関を受診しきちんと診断を受けることが大切です。
 ネットを活用して医療について分かりやすく情報提供していくことは非常に大切なことだと私は考えております。そして、診療現場において大切なことは、医師が話しやすい雰囲気を醸し出すことです。以前にも述べましたように、診察の最後に確認すべき「大切なひと言」、それはきっと「ご質問はないですか?」のひと言なのではないかと私は思っています。
 私が皆さんにお勧めすることは、診察室で「メモを取る」ことです。メモを自宅で読み返してみて疑問点が出てきたら、インターネットを活用して調べるのです。そして次回診察の折に質問して、自分自身の理解が間違っていないかどうかを確認し、病気に関する理解を深めていくのです。もし担当医師の電子メールアドレスを知っていれば、メールで質問することも可能でしょう。私も、担当患者さんの介護者の方より時折、電子メールにて相談を受けます。
 ご家族にメールのアドレスを伝えて、スムーズに情報交換していこうという試みを実践している医師は極めて稀ではありますが、洛和会京都新薬開発支援センター(http://www.rakuwa.or.jp/chiken/index.html)の中村重信所長(元・広島大学大学院脳神経内科教授)も実践されているようです。そのことが論文においても紹介されておりますので、以下にご紹介します。
 「患者さんの目の前では家族の方も言いにくいことがあるでしょうから、私は家族の方とメールアドレスを交換してメールでやりとりをしています」(中村重信:ガランタミンの1年の使用経験. Geriat Med Vol.50 611-620 2012)。

 NPO法人ささえあい医療人権センターCOML(http://www.coml.gr.jp/)の山口育子理事長は、医療現場にあふれる非常識について以下のように言及しており、インフォームド・コンセントの面においては、医療者から積極的に「メモを取って」と声を掛ける配慮が大切であると指摘しています(山口育子:コミュニケーション、本当に取れていますか? 意外!な患者のキモチ. 月刊保団連2012.5 通巻1098号 11-16)。
 「医療現場のコミュニケーションは非常に特殊です。一般社会と照らし合わせてみると、“非常識”がいっぱいまかり通っています。例えば、一般社会における人間関係の始まりは、あいさつや自己紹介です。しかし、医療現場ではそれらを飛び越えて『今日はどうされましたか?』と本題から入ります。
 さらに、『本日、○○先生は学会にご出席のためいらっしゃらないので、代診の先生が診てくださいます』といった具合に、組織の内部の人間に敬称をつけ、敬語で話すのが医療現場の常識です。一般社会では非常識どころか、あり得ない対応です。しかし、医療者はもちろん、私たち患者も疑問の声をあげるどころか、『そんなものだ』と受け止めてきました。そのような医療界の雰囲気が、患者側の緊張を高めてしまう一因にもなっていたのではないでしょうか。
 とても簡単にできる患者・家族へのサポートとして、説明する場面では、医療者から積極的に『この文書を差しあげますから、どうぞメモを取ってください』『メモが難しければ、大事な部分に○をつけたり、アンダーラインを引いたりしておくと、あとから読み返したときに参考になりますよ』という言葉掛けをしていただきたいのです。医療者が考えている以上に、患者・家族は説明の場面でペンを取り出しメモをすることを躊躇します。実は、とても勇気が必要な行動なのです。しかし、医療者から積極的に勧めてもらえれば、精神的なハードルがぐんとさがります。いますぐ始められる患者・家族へのサポートとして、ぜひともお願いしたいと思っています。」(一部改変)

 私が認知症診療に取り組み初めてからずっと継続している大切な取り組みがあります。それは毎月1回、患者さんおよび介護者の方に、「もの忘れニュース」という一枚の文書を渡していることです。
 第1回のもの忘れニュースは、1998年の1月に配布開始したものであり、それから17年間以上に渡って継続しており、2015年3月号にて通巻207号となっております。
 さて、「ひょっとして認知症?」を執筆担当してから、自身のHP(http://www.inetmie.or.jp/~kasamie/)において医療情報を発信することがほとんどなかったため、ホームページは開店休業状態となっておりました。時間に余裕ができましたら、ホームページ等を通して医療に関する情報発信をマイペースで地道に継続し、「医療情報公開」という夢を追って私なりに前向きに歩んでいきたいと思っております。
 患者さん・介護者にとって有益な認知症に関する情報を提供したいと願い、2010年9月28日よりこの「ひょっとして認知症?」のブログ更新に情熱を注いできました。長きに渡り筆者の連載におつき合い頂きましたことを、厚く御礼申し上げます。この辺りでひとまず「ひょっとして認知症?」の連載に幕を下ろしたいと思います。
 読者の皆様の日常的なケア、そして医療関係者の皆様の日常診療のお役に少しでも立つことができたのでしたら、筆者にとって望外の喜びでございます。
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