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認知症と自動車運転 [認知症と自動車運転]

 警察庁によると、七十五歳以上の人が起こした死亡事故は、2014年に471件発生。このうち181件で、免許更新時の検査で認知症の疑いがあるか、認知症の前段階である認知機能低下の恐れがあるとされた。七十五歳未満は統計自体がないが、事故を起こす危険性はあるとみられる。【2016年2月10日付中日新聞】

関連記事
http://www.osaka-ikuseikai.or.jp/titititi/titititi/titititi2501.pdf
社説:認知症と運転/公共交通の整備も必要だ【神戸新聞2015年6月18日】
 年を取るにつれ判断力や記憶力は低下する。誰もが避けては通れない道だ。車を運転する場合、ハンドル操作やブレーキの遅れが重大事故につながりかねない。
 改正道交法が成立し、75歳以上の高齢ドライバーに対する認知機能検査の強化が打ち出された。
 認知症が疑われる高齢者の交通事故が、検査を導入した2009年以降も後を絶たない実態がある。検査の強化はやむを得ないだろう。
 警察庁によると、交通事故による死者は昨年まで14年連続で減少している。ところが昨年、75歳以上のドライバーが起こした死亡事故は471件を数え、前年を13件上回った。うち181件は、免許更新時の検査で認知症、もしくは認知機能低下の恐れを指摘されたドライバーが起こした事故である。
 最近は、高速道路の逆走による事故が相次ぐなど深刻化している。
 改正法は、検査で認知症の恐れがあると判定された全ての人に、医師の診断書の提出を義務付ける。発症していたら運転免許の停止か、取り消しとなる。
 「認知症の恐れあり」とされても、過去1年間に信号無視などの違反がなければ、医師の診断なしで免許が更新できる現行制度に比べ、格段に厳しい基準と言える。
 認知症という特定の病名を挙げての免許制限を「差別」と批判する専門家もいる。ただ、惨事を防ぐには、ドライバーの自覚とともに危険な兆候を見落とさない、厳格なチェックシステムは必要だ。
 一方、タクシーや路線バスのない地域では、運転の機会を奪われれば、買い物や通院など日常生活にたちまち多大な影響が及ぶ。
 厚生労働省によると、25年には65歳以上の5人に1人が認知症と推計される。こうした高齢者の暮らしを支えるには、免許やマイカーがなくても自由に移動ができる公共交通機関の整備が欠かせない。
 兵庫県内では豊岡市が、路線バスの廃止された地域に、低料金の乗り合いタクシーを導入、住民の足として利用されている。都市部で検討されている次世代型路面電車(LRT)も整備を進めたい。
 利便性を損なわずに安全性を高めるには何を優先すべきか。高齢化、人口減少社会における公共交通の在り方を問い直す機会としたい。



 参考資料として、2013年8月26日に公開されました朝日新聞社・医療ブログ『ひょっとして認知症?』の第239回『注目される自動車運転の問題─運転のできるできないは判定が難しい』を以下にご紹介しましょう。

 MMSE(Mini-Mental State Examination)と運転能力の相関についても報告されています。
 「認知症ガイドラインは、軽度の認知症の場合、運転が可能か否かを明確に判定することはできないとしている。精神測定検査は認知機能障害の客観化には有用であるが、その結果と運転能力との相関は低く、MMSEとの相関係数は0.4~0.6にすぎない。臨床認知症尺度(Clinical Dementia Rating;CDR)の方が信頼性は高いが、検査に30~45分かかるため、診療所での実施には向かない。」(家庭医による運転適性の評価では認知機能の検査が鍵. 2012年3月15日号Medical Tribune Vol.45 No.11 50 2012)。
 ですから、改訂長谷川式認知症スクリーニングテスト(HDS-R)やMMSEといった簡易な認知機能検査では、運転能力の有無を判定することは困難ということになりますね。
 ただ、一方では以下のような指摘もありますので(一部改変)、MMSEの実施も一応の目安にはなりそうです。
 「CDR2以上ではきわめて危険であり、運転中止を強く勧告すべきであるとしている。一方、CDR0.5から1の段階では、他の危険因子の有無によって危険の程度は異なり、その中で最も重要なのは介護者(同乗者)による危険性の指摘であるとしている。その他の危険因子としては、違反歴、事故歴、走行距離の短縮、夜間などの運転回避、攻撃性や衝動性、MMSE24点以下などがあげられている。」(飯島 節:認知症と運転免許. Medical Practice Vol.29 795-798 2012)

Facebookコメント
 2014年5月某日の物忘れ外来には、「講習予備検査(認知機能の検査)」で判断力や記憶力が低いと評価され、物忘れ外来を受診するように言われた患者さんが他院よりの紹介にて来院されました。
 シリーズ第239回「注目される自動車運転の問題─運転のできるできないは判定が難しい」(http://apital.asahi.com/article/kasama/2013081400010.html)において述べましたように、「CDR2以上ではきわめて危険であり、運転中止を強く勧告すべきであるとしている。一方、CDR0.5から1の段階では、他の危険因子の有無によって危険の程度は異なり、その中で最も重要なのは介護者(同乗者)による危険性の指摘であるとしている。その他の危険因子としては、違反歴、事故歴、走行距離の短縮、夜間などの運転回避、攻撃性や衝動性、MMSE24点以下などがあげられている。」(飯島 節:認知症と運転免許. Medical Practice Vol.29 795-798 2012)と報告されておりますので、CDR(http://apital.asahi.com/article/kasama/2013030600003.html)などを施行致しました。

私がご本人およびご家族に説明した内容は以下です。
 HDS-R(http://apital.asahi.com/article/kasama/2012122500015.html)がカットオフ値以下であり、MRIで脳萎縮を認めます。症状と合わせて総合的に判断しますと、「初期のアルツハイマー型認知症」と思われます。薬を開始して、少しでも進行を遅らせるようにしましょう。
 CDRは、現段階では「1」と評価されます。車の運転は、自分だけの問題ではありませんので、運転免許の自主的な返納をされた方が良いと私は思います。
 以上の説明をした上で、アピタルシリーズ第239回『注目される自動車運転の問題─運転のできるできないは判定が難しい』をコピーしたものも参考資料としてお渡ししました。

P.S.
 ご家族のお話では、運転免許更新手続きの2日後に,運転免許センターからTELが入り、「更新は可能ですが、一度、きちんと検査してもらった方が良いですよ」と言われたものの診断書をもらってくるようにとは言われていないそうです。
 シリーズ第243回「注目される自動車運転の問題─75歳以上に課せられた認知機能検査」(http://apital.asahi.com/article/kasama/2013081500012.html)にてご紹介しましたように、「講習予備検査」の検査結果によって、受験者は第1分類(認知症のおそれがある者)、第2分類(認知機能が低下しているおそれがある者)、第3分類(以上のおそれがない者)に区分され、その場で書面にて本人に通知されます。
 第1分類に該当する者のうち、免許期間満了日までの1年間に信号無視・一時不停止などの基準行為をしていた場合や、更新後に基準行為をした場合は、臨時適性検査と呼ばれる専門医による診断か主治医の診断書の提出が求められます。臨時適性検査により、認知症と判明すれば、免許の取り消し・停止が行われます。
 この方は追突事故を最近起こしてはいるものの、基準行為は犯しておりませんので、「講習予備検査」の結果が第1分類であったのか第2分類だったのかは不明です。
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