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産業医が見た「うつ職場のリアル」 [うつ病]

20160215AERA-2.jpg産業医が見た「うつ職場のリアル」
 コミュニケーションがなく、働く人が孤立する職場が増えている。メンタル不調を抱える人も多い。いま、職場で何が起きているのか。現場を知り尽くす、産業医の3人が語り合った。【構成 編集部・高橋有紀】

裁量権ないまま24時間縛られる
阿部眞雄
 私は、現在18社ほど産業医をやっていて、最近は学校も担当しています。先生たちがメンタルを崩すケースも多いので。
海原純子
 私は男女雇用機会均等法ができた頃にクリニックをやっていたんですが、その頃から女性のストレス性疾患がすごく増えた。主に女性を20年ほど診てきましたが、高学歴の人でも自分の精神的なことってあまり知らない。これは教育をしなくちゃいけない、と大学で女性学や心身医学の基礎、健康教育などを教えました。ここ15年ほどは、企業のメンタルに関する現状を見てきました。
大室正志
 僕はそのもう少し後の世代で、産業医科大学という産業医を養成する大学を出て、臨床研修後、産業医の専門家を養成するプログラムを修了し、今は外資系など30社ほどの産業医をしています。

なんで生きてるのか
海原
 企業でメンタル部分の相談を受けていて、2008、09年頃から、ガラッと変わった感じがあります。リーマン・ショック後、社内のコミュニケーションが減り、妙に孤独感、不安感が強い人が増えた。若い人や正社員でも将来が不安。社内で挨拶もない、居心地が悪い、足を引っ張られるんじゃないかとビクビクしているんです。
大室
 外資系では、将来性のリスクは、本人もある程度織り込み済みです。例えば外資の金融の人が「お前今日でクビ」と言われても、ショックではあるけどまあ織り込み済み、と。それが、家族主義を掲げていたような日本の会社がリストラを始めたりして、今までそういったことを一切意識していなかった人が不安にさらされるようになったのが2000年代。
阿部
 コンピューター一台あれば仕事ができる時代になり、孤立労働になってしまった。仮面をかぶって、不安の中で、周りの顔色をうかがいながら仕事をしている。40、50代でメンタル不調になる人は、もういわゆるうつ病じゃなくて、適応障害でもなくて、なんで生きてるのかみたいな、そんな不安を持っている人が多い。ストレスチェック制度の義務化はいい時に始まったと思います。職場をコミュニケーションの場として考え直すきっかけになるんじゃないか。

上司がにこやかがカギ
海原
 やっぱり役職が下の者は上の顔色を見ます。上司がにこやかで気分よくやっているところはメンタル不調が少ない。あと給料も、ある種アイデンティティーみたいなところがあるので、特に男性の場合は給料が下がると自分の価値が下がったと感じて、落ち込みの原因になることも。特に最近感じます。

男性は悩みを語れない
大室
 メンタル失調の原因は複合要因。親の介護や離婚問題、40代からはプライベート要因も重なりやすい時期。そのあたりの中間管理職は要注意ですね。
海原
 男性は、紛らわすことで済ませちゃう人も。
大室
 酒、タバコ、ギャンブルとか(笑)。
海原
 ちょっとどこか痛くても薬飲めばいいとか、30代まではそれで乗り越えられても、40代になるとどうしようもなくなる。相談する人もいないし、弱みも見せられないし。
大室
 言語化する時も、男女の差があります。男性は、この頭痛はいつからどんな頻度で起きているという事象は雄弁に語れる。でも「なぜこの頭痛が起きていると思うか?」というような話はしない傾向があるので、こちらから聞く必要があります。うつ病って、女性のほうが有病率が高いんですが、自殺率は圧倒的に男性のほうが高い。ホルモンの要因もありますが、一つは、男性は自殺するまで誰にも言えないのもあると思う。
阿部
 女性は管理職も相談に来ますね。最初は部下や同僚の話をしにきて、何回か会っているうちに、自分の話がワーッと出る。それで2、3回泣いて帰ると、すっきりしたって。男性の管理職はほとんど来ない。
海原
 女性によくあるのは120%病。男の人が100やるなら120やらないと認めてもらえないから、120%で頑張って過剰適応になる。「下駄をはかされて管理職になった」なんて言われると、下駄じゃないと証明しなくちゃいけない。私自身もそうでした。病院で当直のとき、男性ドクターたちは、入院患者がいっぱいだと救急車を断るんです。当然ですよね。手一杯なんだから。私ともう1人の先輩女性ドクターは、過剰適応状態で無理しても救急を全部受け入れていた。

回復のためのリソース
阿部
 派遣とか協力会社が多くかかわっていると、いろんな立場の人が職場にいる。
海原
 人もしょっちゅう入れ替わって、全然誰かわからない。
大室
 昔の会社は終身雇用で、家族のように面倒を見るかわりに、ズケズケ本人に対して言った。今は基本的には成果で見て、本人の人格には介入しない。今の上司はパワハラを気にして、「お前のそのコミュニケーションだと嫌われる」「あなたのそういう性格は良くない」なんて言えない。結局、起きた事例だけを注意する。本人はいつまで経ってもコミュニケーションのフォームが変わらない。
海原
 会社が教えてくれないなら、仕事をする人自身が、自分の性格傾向や、ものを伝える方法を学ぶ必要がある。自分で自分の傾向を知り対策を考えなければならない時代です。
阿部
 大学では、就職課がそれをやる場合もありますね。
海原
 性格診断をするエゴグラムとかやってみると、意外に自分で見えていないものに気づくんです。客観的な視点で、助言できる環境が必要です。
阿部
 最近は4者面談をします。部下、上司、保健師と私。産業医は月に数回しか行かないけど保健師さんはずっと社内にいる。私が保健師と今の状況を確認しながら、上司と部下に何が問題かをそれとなく伝える。あとは2人に任せて、我々はフェードアウト。そうするとうまくいくケースがあります。いったんメンタル不調になってしまうと認知がゆがんで対話もできなくなってしまうので、その前に休職者を出さないことが一番大切です。「私はここにいていいんだ」という感覚をつくっていく。そうすると休む人も少なくなる。
大室
 自分の会社に起きていること、労働環境を冷静に見極めることも大切です。
海原
 回復の方法をいろいろつくっておくのも大事。ちょっと何か言われた程度ならアルコールでよくても、グサグサに自尊心が傷ついたらサポートが要る。ダメージのグレードに合わせて回復のためのリソースを利用できることはスキルです。リソースを用意しないのは、武器がなく戦っている状態。それに、複数のリソースを組み合わせないと、ストレスって乗り切れません。趣味とか、友達とか。
大室
 何も考えずに身体だけを動かす、編み物とか写経とかも心を整理するにはいい。いろいろなリソースの中で自分に合うものを探してほしい。手助けする上司も、部下が悩んでいるときに、ゴルフに誘うか飲みに誘う、球種が二つしかない人が多い(笑)。
阿部
 本人と労働をつなげる役割が産業医。精神科の先生は時間がないので、3分診療も結構あります。薬だけで終わりとか、診断書も本人の言う通りに書いちゃう。まだ復帰できないのに、本人の希望で復帰可と書いてあったり。
海原
 本当にひどい時、ありますね。絶対にこの人働けないよね、という状態なのに「復帰可」。どうしようと思ったり。
大室
 主治医は会社に対して医師法上の責任を負っているわけではなくて、目の前にいる患者さんがクライアントですから。
海原
 従業員は企凛にとって非常に重要なリソース。働く人がうまく仕事ができて、気持ちよく生きる手助けができれば、絶対に企業の収益になる。ダメにして辞めさせるよりもね。産業医がうまく機能して、両方の利益になれるといい。調子が悪かったから休んで、また出てきてダメなら辞めてください、じゃなく。より気持ちよく働いてもらって、企業の収益を上げるにはどうすればいいか。そういう視点を企業側は持ちたいですね。
【2016.2.15 No.7 AERA 22-24】


P.S.
> 40、50代でメンタル不調になる人は、もういわゆるうつ病じゃなくて、適応障害でもなくて、なんで生きてるのかみたいな、そんな不安を持っている人が多い。

 私もそんな感じでした。


> うつ病って、女性のほうが有病率が高いんですが、自殺率は圧倒的に男性のほうが高い。ホルモンの要因もありますが、一つは、男性は自殺するまで誰にも言えないのもあると思う。

 私は、昨年の春、東京出張から帰ってしばらくしてから妻に、「名古屋駅の新幹線ホームでふわ~と飛び込みそうな感覚に襲われた」ってことを打ち明けました。
 それを昨日、昼食に行ったとき、久しぶりに妻に話しました。=「まだあれから1年経っていないんやね~~。。。」
 そしたら妻は、「1年間あなたをよくお世話したわ」ってさらっと言い放ちました。
 私は妻に自殺をほのめかすことを話すことができたので回復に向かって一歩一歩踏み出せたのかも知れませんね。
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