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「徘徊=他者に害」決めないで [認知症]

「徘徊=他者に害」決めないで
 列車事故訴訟 最高裁判断を前に
 介護現場「認知症ケアに影響も」

 徘徊中に列車にはねられた認知症の男性の遺族が、鉄道会社から損害賠償を求められた裁判の行方が注目されています。一、二審では、徘徊は他人に害を及ぼす危険性がある行為との認識が示されましたが、そうなのでしょうか。3月1日に言い渡される最高裁判決を前に、徘徊について考えます。

 「いったん徘徊した場合には、どのような行動をするかは予測が困難であり(略)他者の財産侵害となり得る行為をする危険性があった」
 名古屋高裁は徘徊について判決でこう指摘した。名古屋地裁判決も、線路や他人の敷地に侵入したり、道路に飛び出したりする結果、「他人の生命、身体、財産に危害を及ぼす危険性」について言及している。
 最高裁判決でも、こうした見方が示されるのかどうか、心配する介護関係者は少なくない。
 …(中略)…
 「介護労働を生きる」(現代書館)などの著書があり、いまはデイサービスで認知症高齢者の支援をしているライターの白崎朝子さんは「最高裁の判決によっては、私たち介護職員は利用者を監禁し管理する『牢獄の看守』になるしかない。判決がケアの未来を決める」と話す。

閉じ込めず見守る
 認知症ケアに携わる人たちは、一般的に「徘徊」を「目的もなく、うろうろと歩きまわること」(大辞林)とはとらえていない。認知症の人の場合、理由があって外出した後に、その理由を忘れてしまったり、帰り道が分からなくなったりしているからだ。
 こうした意識から、自治体や団体の中には、「徘徊」の言葉を使わないようにする動きがある。
 福岡県大牟田市は、行方不明になった認知症の人を捜す想定で、2004年度から「徘徊SOSネットワーク模擬訓練」に取り組んできた。昨年、名称から「徘徊」を外し、「認知症SOSネットワーク模擬訓練」にした。認知症の本人からの「自分たちは、理由もなく何も分からず歩いているわけではない」という意見を踏まえた。
 …(中略)…
 厚生労働省の調査(14年4月現在)では、全市区町村のうち、関係機関で協力して行方不明の人を捜すネットワークがある自治体は3割強(616)。GPSの利用など他の方法も合わせると、約6割 (1068)が何らかの行方不明防止や見守りの取り組みをしていた。
 認知症介護研究・研修東京センターの永田久美子研究部長は「認知症の人が外を歩くことに、地域の住民や医療・介護の専門職、企業、行政がどう向き合うかが問われている。認知症の人が安心して外出できるまちは、誰にとっても暮らしやすいまちをつくることにつながる」と話す。地域の動きに、判決が与える影響は大きい。
(編集委員・清川卓史、友野賀世)
【2016年2月25日付朝日新聞・生活】
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