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認知症フォーラム第4回「脳外科医こそ活躍!認知症診療」 [認知症]

 認知症フォーラム第4回「脳外科医こそ活躍!認知症診療」(https://medqa.m3.com/doctor/forumDementiaTheme11.do)が本日より始まります。
 m3.comの会員でないと閲覧できませんので残念ですが・・。

 印象深い記述だけ抜粋してご紹介しますね。
 「脳外科医は瞬間的な判断や白か黒がはっきりしている世界に生きています。認知症診療では患者さんや家族の人となりに合わせ、長い目で見た対応が必要です。私は石井先生の教え通り「自分の親だったらどう思うか」という共感的な理解のもと、相手の立場に立った診療を心がけています。そのため、認知症疑いの患者さんでは、初診に45~90分かけてじっくりとお話を伺うようにしています。
 そんなに時間をかけられないよ!とお思いの先生も多いでしょう。診療科を問わず、より多くの医師が認知症診療に対応できるよう、船橋市立医療センターの唐澤秀治先生 が『物忘れスピード問診票・鑑別表』(http://www.funa-med.com/health_file/medical%20questionnaire.pdf)を作成されました。これを使えば、患者さんが診察室に初めて入る時点で、従来型の物忘れの有無の確認では無く原因疾患そのもののスクリーニングや進行パターンを迅速に把握することができます。かかりつけ医はもちろん、患者さんを取り囲む家族、包括支援センターの方、薬剤師、看護師、介護従事者にとっても有用であると思います。」


 早速、今朝、2時間ほどかけて私の印象・疑問点をフォーラムに投稿致しました。↓
 https://medqa.m3.com/doctor/showForumMessageDetail406722.do
スピード問診票─仮性認知症, 軽度認知障害, LPA
 安間芳秀先生、初めまして。榊原白鳳病院の笠間 睦と申します(一応、日本認知症学会の専門医です)。フォーラムでの諸議論、楽しみにしております。
 「物忘れスピード問診票・鑑別表」(http://www.funa-med.com/health_file/medical%20questionnaire.pdf)拝見致しました。
 4枚と絞りに絞ったツールだけでは「限界」があることは承知の上で、私の感じる問題点を実例も交えながら指摘してみたいと思います。

1 うつ病などの偽性認知症

 「最近は、うつ病と認知症との関連が注目されている。両者の関係を考える際に、まず鍵になるのは仮性認知症の概念である。以前から、認知機能障害が前景に立ち抑うつ症状が目立たない高齢者のうつ病は『仮性認知症(pseudo dementia)』と呼ばれ注目されてきた。従来、仮性認知症は抑うつ症状の改善後は認知機能も元通りに回復すると考えられてきたが、近年の縦断研究により、その一部は認知機能の低下が再発したり、あるいはそのまま認知症に移行したりするということが報告されるようになった。仮性認知症を呈した症例の追跡調査によれば、1年で3%、2年で12%、3年で57%、8年で89%と、経過が長くなるに従って認知症へ移行する割合が高くなることが報告されている。」【新井平伊、馬場 元:うつ病か? 認知症か? 臨床精神薬理 Vol.12 2240-2243 2009】
 https://medqa.m3.com/doctor/showForumMessageDetail382059.do

筑波大学臨床医学系精神医学の朝田隆教授:
 「伝統的な精神科のうつに対する見方では、悲哀感、悲しみをもって『うつ』の本質とし、それに不安ややる気のなさを加えます。DLBの場合、精神科の伝統的なうつというよりは基本的にはアパシーです。周りは困っているが本人は何もしなくて当然とケロッとしているような患者さんが比較的多いですね。」(朝田 隆 et al:座談会─認知症の早期発見・薬物治療・生活上の障害への対策. Geriatric Medicine Vol.50 977-985 2012)

 私は、「仮性認知症は抑うつ症状の改善後は認知機能も元通りに回復する」と考えておりますので、Fパターンに◎が付けられるべきと思います。
 「アパシー」であるのに「うつ」と誤診されてるため、うつ病などの仮性認知症がB&C&Eなどの悪化パターンを辿ってしまうのだと思います。


2 軽度認知障害
 「進行性でない」と言い切っておりますが・・。

 軽度認知障害(MCI)と診断された患者さんを追跡しますと、4年間で48%(1年あたり平均12%)が認知症を発症【Bowen J et al:Progression to dementia in patients with isolated memory loss. Lancet Vol.349 763-765 1997】
 MCIと診断された人はその後1年間に約12%が認知症となり、6年間で約80%が認知症になった【Petersen RC et al:Current concepts in mild cognitive impairment. Arch Neurol Vol.58 1985-1992 2001】

 「進行しない」のであれば、「海馬硬化症」などを念頭に置くべきではないでしょうか?
 あるいは、進行の遅い神経原線維変化型老年期認知症(senile dementia of the neurofibrillary tangle type;SD-NFT)などの可能性を考える必要があると思います。
 これらの疾患を見逃さないためには、経年的な認知機能検査の追跡が不可欠です。しかるに、かかりつけ医の先生が経年的な認知機能検査を実施して下さっているケースは稀です。そうした姿勢に欠けるため、「進行が遅いのでドネペジルが効いている」と思い込んでしまい、本来は必要の無いドネペジルがダラダラと続けられてしまっているという問題にも繋がっています。


3 「記憶障害」なのか「言語の障害」なのか
 かかりつけ医の先生からアルツハイマー型認知症(AD)疑いとして紹介されてくる患者さんの中に、時折、logopenic progressive aphasia(LPA)の方がおられます。
 LPAにおいては、自由会話や呼称における単語検索障害のために「喚語困難」が目立つ状況となりますので、改訂長谷川式認知症スクリーニングテスト(HDS-R)などを実施しますとカットオフ以下となり、画像診断の結果と併せてADと診断されてしまう場合も多いのではないかと思われます。
 私は、実際の紹介患者さんを診察した際に、エピソード記憶が保たれていることからADという診断に疑問を持ちました。
 「QAパターンをとり、No.1,5,7を含む場合には、意味性認知症の可能性もある」とは言及されておりますが、例えば、エピソード記憶の有無などをもっと重視して、AD診断の除外項目のようなものが併記されても良いのかなとは感じました。

P.S.
東北大学・目黒謙一先生:
 「エピソード記憶というのは『人から聞いた話の記憶』ではない。そのような話は、注意して聞いていなかったら誰でも忘れてしまいます。『自身の体験に基づく記憶』を忘れるかどうかが評価面において重要なのです。」【アルツハイマー病研究会・第15回学術シンポジウム」のトラックセッション4「治療学─認知症薬物治療のあり方─」の第4演題『認知症治療薬の薬効評価─脳科学と生活機能の統合的視点─ より】

 
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