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日本医師会雑誌 生涯教育3月号問題―勤労者のメンタルヘルス [うつ病]

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日本医師会雑誌 生涯教育3月号問題

 日本医師会雑誌2016年3月号に出題されている「生涯教育」10問より、知っておいても良いのではないかと思われる5問をセレクトしてお届け致します。
 医師対象のクイズに挑戦するのもたまには良いのではないでしょうか。

 さて、皆さん、どうでしたか? 比較的易しい問題もあれば難しい設問もあったかとは思います。正解を知るだけでは知識が深まりませんので、解説も加えますので参考にお読み下さいね。
 なお、正解に関しては、日本医師会雑誌 第144巻・第12号の記述などを元に私が下した判断であり必ずしも「正解」であるとは限りませんのでご了承下さい。

設問1-1:ストレスチェック制度で正しいのはどれか。1つ選べ。
正解:
 2
解説:
1. 制度趣旨
 この制度は人間や組織の心理にかかわるため,労使その他の関係者について「性悪説」を基本的な前提にすれば成立しなくなる.逆に,関係者間の信頼関係の向上を通じ,必要な情報が適切に拝受されるよう努めることで,職場環境の改善にもつながるよう設計されている.
2. 検査
 厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」(平成27年5月)(以下,SCマニュアル)32頁以下には簡略版の23項目が示されており,「心身のストレス反応」9項目(疲労,不安,抑うつ)+身体愁訴2項目(食欲・睡眠)の計11項目と,受検者を取り巻く環境にある「仕事のストレス要因(仕事の量的負担とコントロール度)」6項目+上司/同僚等の支援を指す「周囲のサポート」6項目の計12項目から成っている.
 これらの項目は,科学的に同趣旨との確認が可能な限り,実施者の判断や事業場内の衛生委員会等での審議を経て,別の質問内容をもって代えることもできるが,にわかには困難であろう.ただし項目の追加は容易なので,標準版調査票を基本に,その事業場の事情に応じた質問項目を加える方法が望まれる.
3.検査結果の取り扱い
 法第66条の10第2項によれば,実施者やその指揮下にある補助者や実施事務従事者に収集されたSC結果は,本人同意がなければ,高ストレスにより何らかのリスクがうかがわれる場合も含めて一切の例外なく,事業者側に伝えられてはならない.
 とは言え,実施(代表)者となった産業医が,直接・間接の面談等を通じてハイリスクを認識した受検者について,注意喚起ないし就業上の措置を事業者に勧告したり,検査後に継続的に面談を行うなどして経過観察を行うことは可能であり,こうした行為が,事情により健康配慮義務や注意義務の内容と解釈される場合もありうる.また,知りえたSC結果を踏まえて法定健診の一環として問診を実施し,その問診結果(≠SC結果)を事業者に伝達することにも特段の制約はない.
4.面接指導の申出
 SCの結果,高ストレスと判定された者のうち一定要件を満たす者,すなわち,
(1)厚生労働省が示す標準[基本的に,①仕事のストレス要因,②心身のストレス反応,③周囲のサポートのうち,②の点数が高いか,②が一定以上で(①と③が著しく高いこと:SC指針7(1)ウ(イ),SCマニュアル6(2)ウなど]に基づき事業者が個別に定めた基準を満たし,
(2)実施者が認め(SC規則第52条の15),
(3)労働者自らがそれを希望する場合(*実際には,その対応に職場の協力が必要と考えるか,たとえ事業者に知られてもその対応に事業者側の協力が必要と考えるか,その費用負担で面接指導の実施を望む場合などが多くなると思われる)(法第66粂の10第3項本文),
 事業者に対して,医師による面接指導を申し出る.
6.面接指導実施後の事後措置
 法第66条の10第4~6項により,面接指導の終了後,事業者はその結果を記録して保管すると共に,担当医から意見を聞き,それを踏まえて労働時間の短縮,配置転換などの事後措置を講じる義務を負う.
【三柴丈典:ストレスチェックの実施. 日本医師会雑誌 第144巻・第12号 2451-2454 2016】


設問1-5:職場におけるハラスメントで正しいのはどれか。1つ選べ。
正解:
 5
解説:
 パワーハラスメントは上司から部下に行われるものたけでなく,先輩・後輩間や同僚間,さらには部下から上司に対するものも含まれる.パワーハラスメントには,暴行や暴言,無視のほか,業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制なども含まれる.労働者の失敗を上司が叱責することは,適正な範囲内のものであればパワーハラスメントではないが,人格を否定するような叱責や執拗な叱責はパワーハラスメントに当たる可能性がある.
【水島郁子:ハラスメント. 日本医師会雑誌 第144巻・第12号 2480 2016】


設問2-1:抗うつ薬で正しいのはどれか。1つ選べ。
正解:
 5
解説:
 http://panic.sou-dan.net/treatment/medicine-3/
 日本ではパロキセチンやセルトラリン、フルボキサミン、エスシタロプラムの4種類がパニック障害の薬として認可されています。

うつ病:薬物療法については抗うつ薬が基本で,SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬),SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬),ミルタザピンなどが第一選択薬である.どれも有効率は40~60%くらいで,どれが優れているとは言えない.単剤での使用を原則とし,多剤併用はよほど信頼性の高いエビデンスがある場合を除き避けたい.
【野村総一郎:産業メンタルヘルスとさまざまな精神疾患. 日本医師会雑誌 第144巻・第12号 2433-2436 2016】


設問2-2:労働者のうつ病の原因となる可能性のあるストレスで誤っているのはどれか。1つ選べ。
正解:
 ②(仕事の自己裁量権や自由度が大きい)
解説:
 これは解説不要ですよね。


設問2-5:わが国のうつ病で正しいのはどれか。1つ選べ。
正解:
 ②で良いと思います。
解説:
1)性差
 http://akasama.blog.so-net.ne.jp/2016-02-22-1
 うつ病って、女性のほうが有病率が高いんですが、自殺率は圧倒的に男性のほうが高い。ホルモンの要因もありますが、一つは、男性は自殺するまで誰にも言えないのもあると思う。
2)日内変動
 http://seseragi-mentalclinic.com/depression-daily-variation/
3)50歳代男性のうつ病によると思われる自殺者は急激に増加しているか?
 これに関するダイレクトな記述は「日本医師会雑誌2016年3月号」には無く、また、ネット上でも見つけられませんでしたが、ネットにて以下の疫学データを見つけました。
▼年齢別の年次推移
 http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/2740.html
 年次別の各年齢層の自殺者数の推移を見ると、1997年から98年の急増期には、50歳代前後の中高年の自殺の急増が中心であった。20~40歳代の増加の寄与率(増加数総数に占める割合)が28.2%であるのに対して、50歳代だけで寄与率がそれを上回る32.4%であった。定年前の働き盛りの世代を経済ショックが直撃し、中高年の失業の増大によって生活不安が大きく拡大したことが主な要因と考えられる。
 2003年の対前年の年齢別自殺者数を見てみると、1998年の時とは異なり、50歳代の増加は目立っておらず(自殺者数自体は相変わらず50歳代が中心であるが)、むしろ、20~40歳代の増加が顕著である。20~40歳代の増加寄与率は69.6%と50歳代の4.5%を大きく凌駕している。


 以上、参考になりましたら幸いです。
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