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医療現場のメンタルヘルスの課題と取り組み [ストレスチェック制度]

医療現場のメンタルヘルスの課題と取り組み

抄録:
 医療関係者のメンタルヘルスには,彼らが患者から受ける様々な影響,彼ら個人のストレス要因,医療現場という職場の特殊性などが関係する。メンタルヘルス不調を含めた職域のストレス関連疾患対策ではこれらストレス要因を多面的に検討し,国の示した様々な手引きや指針などを参考にしながら,疾病性ではなく事例性を中心に対応することとなる。医療関係者のメンタルヘルス対策に適切に取り組むことは,医療関係者自身のメンタルヘルスの保持増進を進めることになると同時に,彼らの精神的に安定した対応により患者や医療機関にとっても好ましい結果に結びつく。
 …(中略)…

Ⅳ. 医療現場という職場組織におけるストレス要因
…(中略)…
 まず,医療現場が特殊性の高い対人支援業である点である。患者の命を預かる専門職でありミスが許されないため,対人ストレス要因が強い。仕事の困難さは患者や疾患の質(ステージや予後など)と量(患者数など)に大きく左右され,ここまでやればよいという目標が設定しにくい場合も多く,熱心に取り組めば取り組むほど仕事に際限がない状態に陥る。また仕事の成果も客観的には捉えにくく,患者の主観的評価が影響する場合がある。医療職に不満の矛先を向ける外罰的な患者が存在する場合もあり,それが自己評価の低下に結びつくこともある。職場内の良好な人間関係は職業性ストレスの重要な緩衝要因であるが,医療職は特殊技能集団で組織所属意識が乏しいことから,不平や不満なども個人で抱え込んで孤立してしまう傾向がある。転職機会の多い医療職の場合,上司や同僚の心理的支持が少ないことで容易に転職を選ぶことにもなる。
 医療関係者の医療現場におけるストレス要因を増す要因として,患者同様に医療関係者を取り巻く社会状況がある。医療環境の変化として,診療現場のIT化(電子カルテなど)や医療技術・機器の急速な進歩,高齢化社会の到来に伴う国民医療費の削減政策,医療訴訟の増加などが挙げられる。病院経営で苦しむ病院経営者や管理監督者も多く,心理的余裕は減少し,特定個人への業務の集中や心理的サポートの減少が生じている。このような中,医療現場のハラスメントが最近注目されている。看護職場のハラスメントについては別稿を参照願いたいが,医療関係者でハラスメントは増えおり,様々なハラスメントは労働者の就労意欲に悪影響を与え,労働生産性は低下し,職場全体のメンタルヘルスにも悪影響を与える。組織全体として危機感を持ってハラスメント対策を行うことが必要である。
 以下省略
 【井上幸紀:医療現場のメンタルヘルスの課題と取り組み. 精神科治療学 Vol.31 95-100 2016】
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