アルツハイマー病の告知をどうするか [アルツハイマー病]
朝日新聞アピタル「ひょっとして認知症? PartⅡ」第20回・『認知症の代表的疾患─アルツハイマー病 アルツハイマー病の診断には時間がかかる』(2013.1.3公開)
じゃあ、たった1回の診察で「アルツハイマー病です」と診断されたらおかしいってことになるの?
はい。より正確に診断するためには、少なくとも6カ月は経過観察することが大切なんですよ。
しかし、家族によっては、初診に至るまでの詳細な経緯をメモ書きして持参されますので、それを読んで、「緩やかな発症と持続的な進行」を確認できれば、初診時にアルツハイマー病と診断が下されるケースは多々あります。
アルツハイマー病と診断されますと、次には「告知」をどうするかという問題が出てきます。
認知機能が中等度以上に低下している場合には、告知の意義が乏しい場合がほとんどです。それはご本人の病識が欠如していることが多いからです。
しかしながらごく初期の若年性アルツハイマー病の場合には、職場の配置換えや休職のタイミングなどをどうしたいかなど、本人の意向を確認しなければ、周囲には決めがたい重要な事柄が多々ありますので告知した方が望ましいと思われます。また、任意後見制度などの問題も絡んできます。
一方で、アルツハイマー病の安易な告知に警鐘を鳴らす意見もあります。群馬大学大学院保健学研究科の山口晴保教授は、「米国でアルツハイマー病と診断された地域在住高齢者の平均余命は、男性4.2年、女性5.7年と記載されています。本邦では、あなたの病気は認知症ですよ。死なない病気だから心配ありませんなどと無責任に本人に告知する医師がいるのが現状です。現時点では根治療法の確立していないアルツハイマー病の告知は、ガンの告知と同様に慎重でなければならない場合が多いと思います。」(認知症の正しい理解と包括的医療・ケアのポイント第2版 協同医書出版社, 東京, 2010, pp240-242)と指摘しております。
認知症と自殺に関する統計は少ないのが現状です。医療法人愛生会総合上飯田第一病院老年精神科の鵜飼克行部長は、「自殺企図の頻度は、疾患別では、アルツハイマー型認知症5.9%、脳血管性認知症5.4%と報告されている」(服部英幸編集 鵜飼克行著:BPSD初期対応ガイドライン ライフ・サイエンス, 東京, 2012, pp63-64)と報告しております。
私は、2004年7月から8月にかけて、アルツハイマー病患者さんの介護者39名を対象として意識調査を実施しました。その結果、39名中34名の方が、「自分自身が認知症になった場合に告知を希望する」と回答していました(住田裕子:認知症の告知の問題. 老年精神医学雑誌 Vol.22 138-142 2011)。しかし、患者さん本人に告知されているケースは34名中8名に過ぎませんでした。
アルツハイマー病においては、自分自身が患者であるならばきちんと病名を知りたいけれど、家族の立場としては患者さん本人には知らせたくないという難しい問題も抱えているのです。
2016-04-06 04:34
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