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アルツハイマー病研究会 第17回学術シンポジウム 第15回日本認知症学会教育セミナー [アルツハイマー病]

アルツハイマー病研究会 第17回学術シンポジウム(in グランドプリンスホテル新高輪)

 本年度は、熊本地震により九州からの参加予定者が来られなかったものの、1,324名の参加で大盛況でした。

プレナリーセッション1・アルツハイマー病診療のスキルアップを考える-この症例をどう診るか
①会場での参加者を対象としたアンケート調査-認知症初期集中支援チームへの参加について(トータライザーを使用してのアンケート集計結果)【演者:砂川市立病院・福田智子先生】
 すでに参加              :60名
 参加したいと思う           :140名
 依頼があれば考えてみたい       :235名
 参加はできないが専門医として協力したい:146名
 あまり参加したいとは思わない     :61名

 私は、「認知症専門医が、施設基準で認知症初期集中支援チームに参加したくても参加できない場合、サポート医を取得する意義はありますか?」と質問しました。



会場での参加者を対象としたアンケート調査-経過中に病名が変化した場合、伝えますか?(トータライザーを使用してのアンケート集計結果)【演者:東京都健康長寿医療センター・金田大太先生】
 初期診断に病名を追加         :301名
 診断名を変更して説明している     :221名
 診断名、変更なく進行に伴う症状と伝える:140名

 この事例は、アルツハイマー病だと初期診断していたがレビー小体型認知症であったというケースの紹介でした。こうした事例は、結構、「診断が間違っていました」とは言いやすいにも関わらず、「私の初期診断は間違っておりました」と正直に伝える方は221(+301)名という結果でした。
 私もごく最近、「軽度アルツハイマー病だと思っておりましたが進行が認められないので神経原線維変化型老年期認知症(SD-NFT)だと思います。ですから、今まで服薬してきました薬は効果が期待できませんので中止してみます」とお伝えしたことがありました。こうした診断名の変更は言いにくいですよね・・。




プレナリーセッション2「Living Well with dementia」
①認知症の人の視点を重視した生活実態調査と施策への反映方法に関する研究【演者:東京都健康長寿医療センター・粟田主一先生】
 この「Living Well with dementia(認知症と共によき人生を生きる)」という言葉には、「『認知症は我々自身のことである』という思いが込められています」と粟田主一先生はご講演でお話されました。
 粟田先生に「告知問題」でご質問したかったのですが質疑応答時間が設定されておらず非常に残念でした。しかし、懇親会で粟田先生と告知問題でじっくりと語り合うことができました。取りあえずその内容についてはちょっと書きにくい内容ですのでマル秘ということで・・。
 
本年度の研究会で最も注目されるセッションであるプレナリーセッション2「Living Well with dementia・希望を探す」(14:30~15:10)が予定を変更して繁田先生の講演前に開催されました。
 この研究会に当事者の方が参加されるのは初めてのことでありとても注目しておりました。そして、私の期待を裏切らない素晴らしい対談が行われました。

水谷佳子さん vs 竹内 裕様
 竹内 裕様は、自分の言葉で相手に伝えられなくなる「怖さ」を語られました。
 竹内裕様とは、懇親会会場でじっくりと語り合いました。そして、Facebookの友達申請もさせて頂きました。とっても明るい方です。
 竹内さんは、「お顔は覚えていてもお名前は忘れると思いますので、Facebookの友達申請の際には、『23日のアルツハイマー病研究会懇親会でお会いしました』とメッセージをお書き添え下さい」とお話されました。浴びるように飲む私のビールを何度も何度も注いで下さって気配りのできる方だなぁ・・と感じました。
 私のFacebookの顔は愛犬の顔だけど、竹内さん、友達リクエスト応じてくれるかな・・。

水谷佳子さん vs 丹野智文様
Q(水谷佳子さん):
 「認知症と診断された後の絶望は?」
A(丹野智文様):
 「(告知を受けた後)インターネットで調べたら、『若年認知症は進行が早く、2年後に寝たきり、10年後に亡くなる』と書いてあって・・。
 これから子どもを学校に行かせることができるかな・・。自分のことよりも家族のことを心配しました。」
Q(水谷佳子さん):
 「何で笑顔を取り戻せたの?」
A(丹野智文様):
 「家族会に行ったら、2年で寝たきりになってないし・・。書いてあること間違ってるんやなぁ~って思えて・・。
 (自分も)2年経ちましたが寝たきりになってないし・・(=現在、丹野智文様は診断後3年が経過)。
 家族会に行ったら、偏見を持たずに普通に接してくれるので、こうした人間関係が構築されるんだったら、認知症が進行してもいいかなぁ・・と思えるようになりました。

 私も、昨年「大うつ病」で苦しんでいたとき、「家族を食べさせる」ことだけには強いこだわりを持ちました。うつ病で仕事に通常の2~3倍も時間がかかっていたので本当に辛かった! 丹野智文さんの気持ち共感できます。

水谷佳子さん vs 吉田美穂様
Q(水谷佳子さん):
 「生と死について」
A(吉田美穂様):
 「『何も考えずに能天気に毎日楽しく生きていけば良いじゃん』って言ってくれる方が多いのですが、『もっと深いところで悩んでいるんだよ!』って伝えたいです。」

③想いを汲むことから聴くことへ【演者:首都大学東京・繁田雅弘先生】
 「積極的にリハビリなどの治療をする方と、あきらめてリハビリをしない人では、予後(進行のスピード)が違うように感じます。FASTの『軽度』の期間が倍くらいなっているような気がします。」
 「病名告知はしてもしなくてもよい」

 繁田雅弘先生に直接質問したいことはありましたが、質疑応答時間がなく残念でした。
 「病名告知はしてもしなくてもよい」:私も敢えて告知にこだわらなくても、本人の気持ちを引き出せればそれで構わないのでは・・と感じておりましたので、繁田先生のこの言葉には共感する部分があります。


トラックセッション(分科会)
 私はトラックセッション2と3を行き来しました。
トラックセッション2:診断学-検査の限界と留意点を考える


認知症診断における機能画像(PET, SPECT)の限界と留意点【演者:近畿大学・石井一成先生】
 MRIのレビー小体型認知症(DLB)の正診率は、60%以下
 脳血流SPECTのDLB正診率は、60~80%
 「SPECTでDLBが疑われても、もっと感度の高いDATscanやMIBG心筋シンチが陰性で、DLBではないと診断するケースは結構あります。」

アミロイド・タウマーカー(画像・生化学)と病理診断との解離例【演者:東京都健康長寿医療センター・村山繁雄先生】
 タウの沈着がアミロイドβの沈着に先行した高齢者タウオパチーの事例
 複合病理があるとマーカーが有用ではないケースが多々出てきます。

 高齢者タウオパチーについてよくまとまっているサイト
 https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics/49/3/49_281/_pdf

 私は村山繁雄先生に、髄液検査&アミロイドPETの適応に関して、お尋ね致しました。
 村山先生は髄液検査の適応に関して、「後で腰痛が起きるとやっかいですから、腰の曲がっている概ね85歳以上の方には留意する必要があるでしょうね・・」と回答されました。
 なお、「進行がゆっくりだからといってアルツハイマー病ではない!(=SD-NFT etc)と安易に決めつけてはいけない。進行が遅いアルツハイマー病もあります。」とコメントして下さいました。

 この後、「トラックセッション3」に移動しました。
認知症に対する先制医療の現状と展望【演者:東京大学・岩田 淳先生】
 preclinical AD(発症前アルツハイマー病)の診断マーカーは、「アミロイドPET」と「髄液Aβ42」の低下。寝たきりの方では髄液Aβ42が随分と下がっていることがありますので判定には注意を要します。
 stable MCIとconverter MCIがアミロイドPETでおよそ判断できる
 preclinical ADと言っても、鋭敏な認知機能検査を経時的に実施していくと、徐々に低下していく様子が捉えられます。

 私の質問に対して岩田 淳先生は、「我々は『偽陽性』という表現は用いておりません。なお、アミロイドPETの感度を上げていけば、偽陽性は減っていくはずです。」と回答されました。

 なるほど、preclinical ADの病態(進行予測)がアミロイドPETを実施することによりおよそ判断できるわけだ!
 この後、再び「トラックセッション2」に戻り総合討論に参加しました。
※トラックセッション2診断学-総合討論


懇親会
 佐藤先生(三重大学)、木之下先生、水谷佳子さん、竹内裕さん、村山繁雄先生、粟田主一先生(挨拶順)とお話させて頂きました。
 その後、齋藤さんとの飲み会に行きました。
 AM3時に起床しましたので、約3時間かけて今回のアルツハイマー病研究会 第17回学術シンポジウムの学会紀をまとめました。

 今日は、AM10時からPM16時までみっちり勉強会(第15回日本認知症学会教育セミナー)に参加です。



第15回日本認知症学会教育セミナー【2016.4.24 10:00~16:00 in 砂防会館別館】
 90分講演×3演題としっかり勉強してきました。
 気にとまった内容をご紹介致します。

①認知症のイメージング検査の進歩【樋口真人】
 頭部打撲はタウの蓄積因子
 ミクログリアの活性化が過度になると悪玉ミクログリアとなる。
 神経炎症により、タウの蓄積が加速する。TSPO-PETにより神経炎症の状況が画像化できるようになってきた。


②アルツハイマー病の病態研究の進展:先天的因子を中心に【池内 健】
 遺伝性アルツハイマー病:1%未満
 80~89歳の健常高齢者の脳内アミロイド陽性率
  =E4陰性:16.0% vs E4陽性:75.0%
 APOEは現在、インターネットでも調べることが可能。

 映画『アリスのままで』:遺伝性アルツハイマー病の主人公、自分が壊れているのを感じてしまう切なさが描かれた映画だそうです。
 予告編はYuuTubeで閲覧可能です。
 https://www.youtube.com/watch?v=0cu794RqOA4


③認知症診療トピックス:BPSDの包括的治療【数井裕光】
 SINPHONI-2(正常圧水頭症に対するシャント効果を、対照群をおき前向きに検証した初の研究):生活の自立度が1段階改善した患者さんの割合は、早期手術群が65%、3か月待機した手術群は5%であった。
 「認知症ちえのわnet」:さまざまなBPSD対応法の奏功確率が公開されている。
 http://orange.ist.osaka-u.ac.jp/

 SINPHONI-2と認知症ケアについて質問させて頂きました。
 「SINPHONI-2では、長期予後(=1年後)としては、歩行障害以外は早期手術群と3か月待期手術群で大きな差はなくなるが、歩行障害のことを考えると、待期のリミットは(=可逆性という面においては)3か月程度がギリギリですかね」と回答して頂けました。
 認知症ケアの面では、BPSDの話が講演の中でありましたので、難題かな・・とは感じつつ以前から疑問に思っていたことを思い切って質問してみました。
 私の質問内容は、「亡くなられた京都大学の小澤先生が『認知症ケアはやさしさがあればできますよ』と言われているのですが、優しさって指導することが難しいですよね。下手に指導したら個人の人格否定になりかねませんし・・。でも『私が優しくないからケアが上手くいかないのかな・・』って悩んでいる介護者・ケアスタッフもおられますので、何か数井先生の感じるところがありましたらアドバイス頂けますと幸いです。」という難しい質問です。何でも知っている数井先生なら答えてくれるかな・・と期待を込めて質問してみました。
 数井先生は、「時間に余裕がないと優しくなれないから、認知症ちえのわnetなどで基礎を身につけ時間に余裕を持って介護していけばその分優しくなれるのではないでしょうか」と回答して下さいました。数井先生、アドバイスありがとうございました。
 以下に、「やさしさがあればできますよ」の引用元を提示致します。


朝日新聞アピタル「ひょっとして認知症-PartⅡ」第374回『その人はどう生きたかをきっかけに─ある日、玄関に便があった』(2014年1月14日公開)
 『とにかく外へ出ない、出たがらない人で、人と会うのもお嫌なんですね。外に出ないのだからデイヘの送り出しは難しい。とりあえずヘルパーさんに入ってもらったのですが、居室は椅子がひっくり返ったりして家具が散乱していることがしょっちゅう。トイレはウォシュレットに手をかけてしまうため、水浸しです。そのAさんのところに通ったうちのヘルパーさんの報告を受けていたらこんな話がありました。
 ある日、玄関に便があった。ヘルパーさんは、Aさんに何も言わないでそれを片づけてきたと言うのです。散乱している家具もそうです。ヘルパーさんはそれを元通りにし、水でびしょびしょのトイレは拭いてくる。そうやって淡々と元通りにしていたら、Aさんがだんだん心を開いてくれるようになったというのです。
 ああ、そうなんだ、これって考えてみるとすごいなと思いました。玄関に便があって、それを誰かに詰問されたら、Aさんは自分ではないと言ったり、動揺したりするでしょう。ですが、ヘルパーさんが何も言わないで静かに片づけ、まるで何事もなかったかのように生活が元通りになったら、Aさんにとっては気持ちのなかでゆれがないわけですよね。それは、認知症の人にとっては気持ちの上でとても楽なのだろうなあと思ったのです』

 当初ヘルパーに対して拒否的な態度だったAさんが、あるヘルパーに対しては心を開いていった。その理由を聞いていて気づいたのが、『気持ちのゆれをつくらない介護』だったという。生活基盤が安定すれば、認知症の人も穏やかに暮らせるのではないか、と伊藤さんは考えた。
 頑なだったAさんの心を開いたのは、一人のヘルパーの配慮あるケアだった。しかしこれは多分にそのヘルパーの資質にもよる。では、訪問介護に入るヘルパー全員が『ゆれをつくらない介護』をするにはどうしたらいいか。伊藤さんはこのとき、『一日が何事もなくふつうに過ぎていけるように支援するという最低限のケア』を考えたという。」(小澤 勲、土本亜理子:物語としての痴呆ケア 三輪書店, 東京, 2004, pp266-268)
 実は、伊藤美知さんが通所施設を開くにあたって相談したのが「れんげの里」施設長である柳誠四郎さんでした。そして、その柳さんの紹介で精神科医の小澤勲さん(故人)のもとを訪れた際に、小澤勲先生は伊藤さんに対して、認知症のケアは「やさしさがあればできますよ」(小澤 勲、土本亜理子:物語としての痴呆ケア 三輪書店, 東京, 2004, p260)と話されております。
 伊藤さんはAさんの事例を通して、「小澤先生が最初におっしゃった『やさしさがあればできますよ』という言葉は、もしかしたら、このことかなと思ったんです。ゆれがないように支援するというのは、すごいやさしさなのではないかな、と。こじつけかもしれませんが、そう思ったのです」(小澤 勲、土本亜理子:物語としての痴呆ケア 三輪書店, 東京, 2004, p268)と語っておられます。
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