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オキシトシン 対人コミュニケーション障害 タクティールケア 愛着形成  [脳科学]

朝日新聞アピタル「ひょっとして認知症-PartⅡ」第515回『尿と便の困りごと―タクティールケアの根拠』(2014年6月10日公開)
 タクティールケアの有効性を裏づける科学的根拠として、体内におけるオキシトシンの関与などが指摘されております。日本スウェーデン福祉研究所(http://www.jsci.jp)の木本明恵看護師は、「タクティールケアを通して肌に触れることにより、皮膚にある触覚の受容体が刺激され、知覚神経を介して脳に伝達され、脳の視床下部から血液中にオキシトシンが分泌される。血流によってオキシトシンが体内に広がることにより、不安感のもととなるコルチゾールのレベルが低下し、安心感がもたらされる。」と作用機序について言及しております(木本明恵:認知症高齢者に寄り添うタクティールケア. 老年精神医学雑誌 Vol.22 62-69 2011)。
 またオキシトシンの吸入によって、マカクザルが他者への報酬を考慮して意思決定を行う(=他者顧慮的選択)頻度が増加することも報告(Chang SW et al, 2012)されております(磯田昌岐:マカクザルを用いた社会脳研究の最近の進歩. BRAIN and NERVE Vol.65 679-686 2013)。
 医療法人社団二山会宗近病院の八木喜代子ゆうなぎ病棟師長は、夕暮れ症候群を呈し帰宅願望の目立っていた患者さんに対して、タータン人形を抱いてもらい、手のタクティールケアを毎日行ったところ、安心感が得られ不眠が解消した事例があったと報告しております(八木喜代子:認知症患者へのダイバージョナルセラピー・園芸療法・タクティールケア. 精神科看護 Vol.39 No.11 24-30 2012)。
 認知症を患った高齢女性にタータン人形などのドールセラピーを行うと、子育てという役割の賦与により認知症の行動・心理症状(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia;BPSD)が顕著に改善することは確かによく経験されます。
 ちょっと高額ではありますが、近年では、ドールセラピーにおいてアザラシ型介護ロボット「パロ」(http://www.daiwahouse.co.jp/release/20101021153530.html)を活用している施設もあるようです。

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コミュニケーション障害治療―愛情ホルモン点鼻(名大など臨床試験)
 愛情ホルモンともいわれる「オキシトシン」を、対人コミュニケーション障害の治療に用いる臨床試験が始まる。山末英典東京大医学部准教授と岡田俊名古屋大医学部准教授、それに金沢大、福井大のグループが三十日発表した。
 対象は、かつてアスペルガ一障害といわれた病気が主体。現在は自閉スペクトラム症と総称される。他人の気持ちを表情などから読み取ることができず、コミュニケーションが苦手。多くが男性で、百人に一人以上いるが、有効な治療法はない。オキシトシンは脳から分泌されるホルモンで、出産時に陣痛誘発のために使われている。最近、授乳の促進や他者との信頼関係の強化、さらに親子のきずなを強める働きがあることが分かってきた。
 金沢大の棟居俊夫特任教授と福井大の小坂浩隆特命准教授らは、これまで自閉スペクトラム症の人にオキシトシンを投与し、症状の改善を確認した。東大の小規模な試験でも効果があると分かった。男性に対しては目立った副作用は報告されていない。
 今回は四つの大学で計百二十人の成人男性患者を募集する。七週間にわたってオキシトシンを鼻から吸収させ、偽薬を与えた場合と比較する。効果は、他者の感情を読み取る力などを総合的に判定する。
 研究グループでは「薬として認められるための第一段階。将来は女性や子どもにも使えるようにしたい」と話している。
【2014年10月31日付中日新聞・総合3面】

関連事項
母親から子どもへの愛着形成
 子どもの母乳頭吸啜を介して母親の下垂体からのプロラクチンの分泌が促進されます。これで母乳分泌は促進され、同時にオキシトシンが分泌促進され、母乳を乳腺腺胞から放出します(射乳反射)。さらにプロラクチンは母性増強、オキシトシンは精神安定作用を有しています(堺武男:母乳分泌の意義.周産期医学Vol.31 517-520 2001)。このように子どもが母乳を吸啜することは、母親から子どもへの愛着を強める効果があります。出産後7週目頃に生じる母親のうつ症状(産後うつ)が哺乳していないことと関係があるのは、出産後6~8週目の哺乳を維持するためのホルモン分泌機構が「うつ」の発症を予防しているのではないかと考えられています(Miriam HL:Effect of breastfeeding on the mother. Pediatric clinics of north America Vol.48 143-157 2001)。クラウス(Klaus, M.H.)とケネル(Kennell, J.H.)は、出産後2~3日の間に母子が一緒に過ごした時間について研究を行いました(Klaus MH, Kennell JH:母と子のきずな.竹内徹他訳 医学書院,1991)。接触の長いグループの母親は、子どもを頻繁に愛撫し、目と目を見合わせることが多く、子どもがおどろいた時など、すぐに抱きあやし、母乳哺育も順調で長く続きました。このグループの2歳時点の調査では、母親の子どもへのしゃべりかけ方に違いがみられました。長く接触したグループの母親は、表現豊かな語らいを多く使い、問いかけることも多かったが、接触の短かったグループの母親は、子どもに命令口調をとることが多かった。このことは出産直後の母親と子どもの接触を長くすることに母乳哺育は適しており、このことは母親から子どもへの愛着の形成に意味があることを示しています。
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