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他者の感情を読み取る力 [脳科学]

他者の感情を読み取る力
 皆さん、「こころの理論」って言葉聞いたことがありますか?
 これに問題がありますと、「自閉症スペクトラム」ではないんだけど、社会生活に馴染めないという状況に陥る方が出てきます。
 たいへん興味深い領域ではないかと思われますので、以下に関連事項をご紹介しますね。

P.S.
自閉症スペクトラム
 http://www.kaien-lab.com/aboutdd/asd/


朝日新聞アピタル「ひょっとして認知症-PartⅡ」第515回『尿と便の困りごと―タクティールケアの根拠』(2014年6月10日公開)
 またオキシトシンの吸入によって、マカクザルが他者への報酬を考慮して意思決定を行う(=他者顧慮的選択)頻度が増加することも報告(Chang SW et al, 2012)されております(磯田昌岐:マカクザルを用いた社会脳研究の最近の進歩. BRAIN and NERVE Vol.65 679-686 2013)。

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コミュニケーション障害治療―愛情ホルモン点鼻(名大など臨床試験)
 愛情ホルモンともいわれる「オキシトシン」を、対人コミュニケーション障害の治療に用いる臨床試験が始まる。
 七週間にわたってオキシトシンを鼻から吸収させ、偽薬を与えた場合と比較する。効果は、他者の感情を読み取る力などを総合的に判定する。
【2014年10月31日付中日新聞・総合3面】


 私は、以上のようなことに関心が高いのでDaiGo(https://ja.wikipedia.org/wiki/DaiGo)のメンタリズムにも関心が高いんですよ。
 「他者の感情を読み取る力」と言いますか「社会的認知能力social cognition」&「こころの理論」に関しては、朝日新聞アピタル「ひょっとして認知症-PartⅡ」第12回『認知症の診断─もの忘れ検診』(2012年12月26日公開)の関連コメント(Facebookコメント)として言及しておりますので、以下に本文とともにFacebookコメントをご紹介致します。


朝日新聞アピタル「ひょっとして認知症-PartⅡ」第12回『認知症の診断─もの忘れ検診』(2012年12月26日公開)
 認知症の診断はどのようにして行われているのでしょうか。私が勤務する榊原白鳳病院の「もの忘れ検診」を例にとって説明しましょう。
 ところで、認知症の検診は、私が1996年7月9日に国内で初めて開設したものです。当初専門誌に投稿(笠間 睦:痴ほう専門ドックの開設. 脳神経 Vol.49 195 1997)した際には、「痴ほう専門ドック」と名付けていました。
 2004年12月24日、「痴呆」という呼称が「認知症」に改称されたのを契機に、「痴ほう専門ドック」を「もの忘れ検診」に改称しました。
 そもそも私が認知症の検診を開設した動機は、いたって単純なものでした。脳ドック受診者のアンケート調査を実施したところ、受診理由の3割が「認知症が心配なので」という動機であったからです。そこで、脳ドックから認知症の検診を分離独立させたのでした。
 榊原白鳳病院では、2010年4月より「もの忘れ検診」を実施しております。
 もの忘れ検診の検査項目は以下の4項目です。
 1)血液検査
 2)MRI検査
 3)認知機能検査:改訂長谷川式認知症スクリーニングテスト(HDS-R)および日本版/RBMT
 4)問診・診察
 以上の項目を約2時間かけて実施し、結果の説明をしております。検診費用は2万円(税別)であり非常に安価です。安価で実施できる理由には、脳血流検査を実施していないという要因もあげられます。

 まずは画像診断(CTないしはMRI)についてお話します。
 アルツハイマー病(AD)においては、内側側頭葉の萎縮に伴い、側脳室下角が拡大してきます。この所見は、比較的初期段階のADにおいても確認できるため、ADの画像診断上のポイントとなる所見です。

 アルツハイマー病研究会という盛大な研究会が毎年4月に東京で開催されています。その第九回学術シンポジウム(2008年4月5日)において、以下の報告がされました。
 認知症における重症度別脳萎縮出現率(MRIにて脳萎縮を認める%)は、軽度認知障害では15%、軽度アルツハイマー病では25%、中等度アルツハイマー病でも40%という報告でした。
 すなわち、初期アルツハイマー病の場合には、萎縮が確認されないケースが結構多いわけです。ですから、MRIだけではなく、認知機能検査の検査なども総合的に判断して、認知症であるかどうかを判定することになります。

 初期のアルツハイマー病(AD)では、海馬傍回が最も早く萎縮することが分かってきております。しかし海馬傍回の体積は小さく、CT・MRI などの画像写真では視覚的には評価が困難です。そこで考案されたのがブイエスラド(voxel-based specific regional analysis system for Alzheimer's disease;VSRAD)という早期アルツハイマー病診断支援のためのソフトウェアです(元・埼玉医科大学国際医療センター/核医学科の松田博史教授らが監修されており、エーザイ株式会社が無料提供しています)。
 VSRADではMRI画像を利用し、小さな海馬傍回の体積の萎縮度を正常脳と比較して数値化(Zスコア)します。すなわちZスコアは、被験者画像と健常者平均画像を統計比較した結果、平均値からどれだけの標準偏差分だけ離れているかを示す値です。Zスコア「2」とは、平均値から標準偏差の2倍を超えたものという評価となり、「5%の危険率で統計学的有意差をもってADの疑い有り」と判定されます。
 すなわち、Zスコアが2.0を超えているときには、ADの可能性が高いと判断されるわけですね。Zスコアの数値が境界付近にある場合には、経過を追ってZスコアの変化を見ていくことも必要となるケースがあります。
 Zスコア0~1:海馬傍回の萎縮はほとんど見られない
 Zスコア1~2:海馬傍回の萎縮がやや見られる
 Zスコア2~3:海馬傍回の萎縮がかなり見られる
 Zスコア3~ :海馬傍回の萎縮が強い

 ただし画像検査の結果だけで判断すると誤診に繋がります。画像検査は、あくまでも臨床診断の補助的役割という位置づけなのです。
 八千代病院(愛知県安城市)神経内科部長の川畑信也医師は、物忘れ外来を受診しMRI検査を受けた151名の解析では、VSRADのZスコアが2以上を示していた80名の中に健常者が3名(3.7%)含まれていたと報告しています。逆に、VSRADのZスコアが1未満を示していた29名の中にアルツハイマー型認知症患者が18名(62.1%)も含まれていたことを報告しております。また、VSRADの対象は50~86歳までの患者さんであることにも注意する必要があると述べています(川畑信也:日常臨床からみた認知症診療と脳画像検査─その意義と限界 南山堂, 東京, 2011, pp5-10)。

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社会的認知能力―人や社会との適切なかかわり
 社会において適切な行動をとり、ほかの人がどのように感じているかを読み取る能力を社会的認知能力social cognitionと呼ぶ。人の表情をみてその感情を読み取る(感情の認識recognition of emotions)、人のこころの動きの一般的なルール(こころの理論theory of mind)を理解する能力である。障害されると、社会から受け入れられる範囲を超えた不適切な態度をとることになり、友人や家族の反対を無視する行動や安全を無視した決断など、社会的な基準に適さない行動がみられる。
 認知症(DSM-5)では、社会から受け入れられる範囲を越えた態度をとる。衣服、政治、宗教、性的な会話などで皆に関心がない話題にこだわる、友人や家族の反対を無視する行動、安全を無視した決断(気候や社会的状況に不適切なもの)など、社会的な基準に鈍感な行動がみられる。
 軽度認知障害(DSM-5)では、行動や態度の微妙な変化、しばしばパーソナリティ変化とされるもの、たとえば社会的にしてはいけないことに気づくとか、ひとの表情をみて察するとかということが障害される。また、共感が乏しくなるとか、過度に内向き、外向きとなるとかといったことが、ときどきみられる。あるいは微妙なアパシーや不穏などもみられる。
 社会的認知能力は次のように評価される(DSM-5)。
●情動の認識recognition of emotions:
 強い情動を示している顔の絵をみてそれを理解する。
●心の理論theory of mind:ひとのこころや経験の状況を推し量る能力。写真をみせて、このカバンをなくした女の子はどこを探したらよいか、とか、この男の子はどうして悲しんでいるのか? といった質問をする。
【三好功峰:認知症─正しい理解と診断技法 中山書店, 東京, 2014, pp35-36】
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こころの理論
 この年齢の子どもたちの特徴の一つは、子どもたちだけの間で自由に遊ぶことが可能になることだ。また、他者の気持ちをうかがえることも一つの特徴になっている。こうした特徴は、プレマックとウッドロウにより提唱された「こころの理論」として研究が進んでいる。
ハルちゃん.jpg
 そこで、こころの理論の特徴的なテストである、誤信念課題を実施してもらった。このテストでは、図6-5(誤信念課題)のように、場面に登場する人物の一人が、この場面でどのように思っているのかを、子どもたちに推量してもらうのである。その結果、正答率は、4歳児では約30%、5歳児は約60%であったが、6歳児では80%に上昇した。4歳の頃は他者のこころを推察することが難しいようであるが、6歳になるとそれがほぼ可能になることを示している。
 【苧阪満里子:もの忘れの脳科学 講談社, 東京, 2014, pp153-154】
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