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まとわりつき・つきまとい・シャドーイング(Shadowing) [徘徊]

まとわりつき・つきまとい・シャドーイング(Shadowing)
 まとわりつき(つきまとい・シャドーイング)とは,介護者やそれ以外の人を極度に追って回ることである1)・徘徊の1つに分類されることもある2).まとわりつきの出現頻度は,軽度から中等度の認知症患者のうち67%に認められたという報告がある3).著者の診療上の経験(外来および認知症疾患治療病棟)では,ここまで高くはないように感じていたが,共同著者の介護現場からの意見では妥当な数字であり,多くの時間を取られるBPSDの1つであるらしい.
 まとわりつきに関する研究は,あまりなされていない.調べて回る行為の極端なもの2),不安の現れ(残存した能力による自分の将来への不安,1人取り残されるという恐怖など4))などと解釈されている.ある種の作業療法が,つきまといや繰り返す質問(Repetitive questioning;Godot症候群4・5))に効果を認めている6).
 まとわりつきや繰り返す質問(Godot症候群)は,悪化すると介護者の大きな負担となる.
(服部英幸編集 鵜飼克行著:BPSD初期対応ガイドライン ライフ・サイエンス, 東京, 2012, pp71-72)

私の感想
 私のところに通院するアルツハイマー病の患者さんの中にも、ご主人の姿が見えなくなると後を追いかけて外出し、その結果、ほとんど毎日のように「迷子」になってしまうという方がおられます。
 先々週土曜日の外来の際にそのお話(=「つきまとい」)を伺いました。
 この方のご家族は、ALSOKの開発したBLE(ブルートゥース・ロー・エナジー)を使用する小型の発信端末を既に導入されており(参照:2016年4月5日付日本経済新聞 企業・消費)、私は初めて「本物」の発信端末を見させて頂きました。
ALSOK.jpg
 詳細は↓
 https://info.ninchisho.net/archives/8662
 それとともに介護保険をこれまで利用しておりませんでしたが(ご本人がデイサービスの導入を嫌がっていたため)、介護保険を申請し、サービス利用を勧めていく予定です。


朝日新聞アピタル「ひょっとして認知症-PartⅡ」第738回『「つきまとい(シャドーイング)」への対応─少しずつ離れる対応』(2015年1月19日公開)
 認知症の方はしばしば介護者につきまといます。そして、介護者の姿が見えなくなると不安になって徘徊に至ってしまうこともあるため、介護者の方より近所へ外出すらしにくいといった訴えをしばしば耳にします。
 こういった「つきまとい」に対しては、いったいどのような対応をすれば良いのでしょうか。
 「つきまとい」に対しては、少しずつ離れるようにしていくのが有効であると指摘されております。以下にその記述をご紹介しましょう。
 「嫉妬妄想があるために介護者から離れることができない場合などを別にして、特に明らかな理由がない場合には少しずつ本人から離れるようにすればうまくいくことが多いようです。
 この症状のために一人でデイサービスに参加できるようになるまで半年かかった例がありますが、最後までどうしても一人で参加できなかった例は経験したことがありません。このような試行錯誤を繰り返すためには、もちろん介護者の根気強い協力に加えてサービスを提供するスタッフの理解が必要なことは言うまでもありません。」(本間 昭、六角僚子:認知症介護─介護困難症状別ベストケア50 小学館, 東京, 2007, p90)
 2013年8月8日に放送されましたNHK・きょうの健康『介護の負担を減らすために』(http://www.nhk.or.jp/kenko/kenkotoday/archives/2013/08/0808.html)の番組コメンテーターとして出演されました東京都立松沢病院の齋藤正彦院長(精神科)は、「離れる」ことをより現実化するデイサービス・ショートステイなどを活用することによって、「つきまとい」に起因する徘徊に対応できる場合もあると番組において解説されました。
 具体的な対応事例を千葉県にあるデイサービス「なごみの家」所長の西ケイ子・認知症看護認定看護師が論文報告しておりますので、以下にご紹介しましょう(西ケイ子:「在宅」を、「その人らしさ」を諦めないで. 訪問看護と介護 Vol.16 994-998 2011)。
 「他事業所から断られたNさんは、シャドーイング(介護者へのつきまとい)が強く、1日中職員の手を強く握って離しません。空いている手足で、職員に暴力を振るったり、動きがゆったりしている利用者をつつく・足を出す、不快や不安になると部屋に唾を吐く、すぐに声を荒げるという状態でした。
 手を握って離さないのは不安の表れとして受け入れ、1日中付き添いました。Nさんが好きな散歩・歌唱を何度も繰り返し行ないました。最初は職員と2人だけにこだわり、一緒に歌おうとする人を追い出していましたが、1か月後には拒まず、一緒に歌えるようになりました。さらに3か月後、徐々に職員と手をつながない時間が増え、皆に自分から声をかけたり風船バレーや体操をしたり、笑顔も表れるようになりました。」
 私が診療している事例においても、「買い物にも出掛けられず本当に困ります」と話される介護者の方がおられます。
 こんな時、他にはどんな対応方法が考えられるのでしょうか。
 例えば、姫路市では「認知症見守り訪問員」という独自の介護保険外のサービスを行っています。この試みがどのようなものかを姫路聖マリア病院地域連携室・室長の得居みのり老人看護専門看護師が報告しております。
 「見守り訪問員(認知症サポーターのなかで、認知症患者への接し方などについて追加研修を受講した人)が認知症高齢者の自宅に訪問し、家族に代わって認知症高齢者の話し相手となったり、見守り支援を行い、家族に休息してもらう事業です。」(得居みのり:認知症患者を取り巻く社会資源の活用. 看護技術 Vol.58 46-51 2012)
 このように、各地域で独自のサービスが考案・展開され、介護保険で不十分な部分を補い、認知症患者の介護者を支える仕組みがきめ細やかに整備されることが求められますね。
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