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アルツハイマー型認知症FASTスケール [終末期医療]

アルツハイマー型認知症FASTスケール

 米国では,認知症患者さんに対して予後予測6カ月未満でホスピスへの入所を考慮しますがその際,FASTスケール(functional assessment staging scale)が用いられています.その基準のなかで,次のいずれかを過去1年間に有する者が対象とされており,「誤嚥性肺炎」「腎孟腎炎」「敗血症」「多発褥瘡」「抗菌薬投与でも発熱が再燃をきたす」という項目があげられています(表2).
アルツハイマー型認知症FAST.jpg
 当院でも,入院中に発生する感染症はほぼ一緒です.加えて,当院では中心静脈栄養管理を必要としている患者さんも多く,血管内カテーテル関連感染症も数多く経験します.稀ではありますが,褥瘡感染を含めた皮膚感染症(真菌感染も含む)や胆道系感染症にも遭遇します.
 【島崎貴治:療養病床で行う感染症診療. Gノート Vol.3 No.2(増刊) 総合診療力をググッと上げる! 感染症診療―実はこんなことに困っていた! 現場の悩みから生まれた納得のコツ 197-203 2016】

私の感想
 FASTの詳細は、以下でもご紹介しております。
 http://akasama.blog.so-net.ne.jp/upload/detail/m_FAST-5fac0.jpg.html
 http://akasama.blog.so-net.ne.jp/2016-02-01-2

 表2のiADL(instrumental ADL)については、以前私が連載しておりました朝日新聞社アピタルの医療ブログ「ひょっとして認知症?」において要点を解説しておりますので以下にご紹介致します。

朝日新聞アピタル「ひょっとして認知症-PartⅡ」第770回『軽度認知障害? それとも?─男性では買い物、女性では料理』(2015年2月20日公開)
 筑波大学大学院人間総合科学研究科病態制御医学専攻神経病態医学分野(臨床医学系神経内科)の玉岡晃教授は、「MCIの認知症への移行率は手段的日常生活動作の障害項目が多いほど高く、正常への回帰率は障害項目が少ないほど高かった。…(中略)…MCI例における攻撃性、抑うつ、意欲低下などは健常者に比して高率に認められることが報告されているが、特にアパシー(メモ参照)はADや認知症への移行の危険因子であることが明らかにされている」ことを論文(玉岡 晃:MCIの管理. 最新医学 Vol.66 2156-2165 2011)にて紹介しています。

メモ:アパシー
 アパシー(apathy)とは、無気力・無関心・無感動のため、周りがやるようにと促しても、本人は面倒だから、全然動こうとしないし気にもしない状態です。介護者から見ると、どうしてこれだけ動かないのかと不思議に感じます。
 
 前述の論文の中に「手段的日常生活動作」というあまり聞き慣れない言葉が出てきましたね。
 日常生活活動は基本的な身の回りADL(排泄、トイレ動作、食事、更衣、整容、入浴など)と、より高度な手段的ADLの2つに大別されます。
 独立行政法人国立長寿医療研究センター病院(愛知県)の鳥羽研二院長が、手段的ADL(Instrumental activities of daily living;IADL)に関して簡潔に説明していますのでご紹介しましょう(一部改変)。
 「手段的ADL(Lawton&Brody)は、独居機能に関連する買い物、金銭管理、交通機関の利用、服薬管理、電話の利用、料理、家事、洗濯の8項目である。男性では料理、家事、洗濯をもともとしない(できない)場合があり注意する。外来で認知症またはMCI患者に行った手段的ADL検査では、買い物、料理、服薬管理が早期に低下しており、認知症の早期発見に役立つことを報告した。男性では買い物、女性では料理ができないことが、初期認知症とMCIとの鑑別に役立つことが判明した。」(鳥羽研二:手段的ADLと基本的ADL. 日本臨牀 Vol.69 Suppl8 313-317 2011)
 生活障害チェックシートは、ウェブサイト上にもアップロードされております。pdfファイルのp8(http://www.seikatsusyogai.jp/files/guidebook.pdf)をご参照下さい。男性では、「料理(食事の支度)」「家事」「洗濯」については評価せず満点が5点であるのに対して、女性は満点が8点です(今井幸充、長田久雄:認知症のADLとBPSD評価測度 ワールドプランニング, 東京, 2012, p42)。
 アルツハイマー病患者のADL評価を目的として開発された評価尺度の一つにDisability Assessment for Dementia(DAD)という指標があります(Gélinas I, Gauthier L, McIntyre M et al:Development of a functional measure for persons with Alzheimer's disease: the disability assessment for dementia. Am J Occup Ther Vol.53 471-481 1999)。DADは、地域で生活するアルツハイマー病患者に対する適切な介入方法を選択する際の指標とすることを目的として開発されました。DADは10領域の40項目から構成されており、40項目のうち17項目は基本的ADL(basic ADL;BADL)、23項目はIADLから構成されています(飯島 節:Disability Assessment for Dementia;DAD、Alzheimer's Disease Cooperative Study-Activities of Daily Living;ADCS-ADL. 日本臨牀 Vol.69 Suppl8 471-474 2011)。
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