SSブログ

地域医療構想にみる医療保障をつくる視点

地域医療構想にみる医療保障をつくる視点
(冒頭省略)

「地域医療構想」と「地域包括ケアシステム」
 地域医療構想策定ガイドラインによれば、「効率的かつ質の高い医療提供体制を構築するとともに、地域包括ケアシステムを構築することを通じ、地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するため、医療法を始めとする関係法律について所要の整備等を行うものとされ、この中で医療計画の一部として『地域医療構想』が位置付けられるとともに、その実現を目的に『協議の場』を構想区域ごとに設置する」(一部省略)こととなった背景がある。
 このことは、「地域医療構想」を把握するには、医療提供体制の再編はもちろんのこと、地域包括ケアシステムの構築に象徴される内容にまで理解を広げていく必要があることを示している。
 日本の医療保障、介護保障のあり方を変えるためのキーワードとして使用されているのが「川上の改革」「川下の改革」である。「川上の改革」と称されている中身は医療提供体制の再編ということになる。2014年10月から病床機能報告制度を開始し、病床機能の機能分化による再編または縮小を図り、各都道府県が病床再編計画を「地域医療構想」として策定することになった。各都道府県で2016年度中の策定を目指している。協議の場として2次医療圏あるいは構想区域ごとに「地域医療構想調整会議」が各地で開催されている現状にある。
「川下の改革」と称されるのは地域包括ケアシステムの構築である。「川上の改革」において病床再編を進め、押し出されてくる患者・利用者の受け皿となる体制づくりを地域で整理して準備を進めるものである。そのため、医療提供体制の再編を象徴する「地域医療構想」と、医療・介護の地域での受け皿づくりを意味する地域包括ケアシステムは、現在進められている大掛かりな改革の「車の両輪」として整理することができる。

地域で考え行動する
 「地域医療構想」の策定作業が投げかけていることは重要である。医療提供体制の再編に関して、本来必要な地域で考え、体制をつくっていくというボトムアップの視点が各地域で薄れていたことは否めない。そして、何より病床削減という事態だけでなく、地域包括ケアシステムの構築といった点からも在宅医療・在宅介護の体制づくりが喫緊の課題となっている。そのためには、地域住民を巻き込んで現状の共通認識を図り、専門職のファン・サポーターを獲得し、未来を一緒に描いていくような動きが不足している。ようやく各地でそのような動きを共同で形成するチャレンジが始まった。医師をはじめ専門職の仕事が厳しい状況にある。だからこそ、こうした動きがいっそう必要になるのではないだろうか。
 なお、「地域医療構想」の病床削減案に関して、「現在稼働していない病床を削減するものであればよいのではないか」といった意見を耳にされたことはないだろうか。そのような意見にも一定の理解を示すことができるが、大事なことは稼働していないから削減するよりも、なぜ現在稼働していないのかという原因の究明をすることが先決であろう。おそらく、根底には医師や看護師不足など医療労働者の人員不足が起因となっているのではないだろうか。「地域医療構想」によって医師不足や看護師不足が固定化されるとすれば、本末転倒な議論といえるのではないだろうか。むしろ、必要なことは医療従事者の確保という課題に取り組むことであり、様々な仕掛けを政策展開として積極的に選択することが求められている。
 (以下省略)
 【長友薫輝:地域医療構想にみる医療保障をつくる視点. 月刊保団連2016年5月号 No.1219 4-9 2016】
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。