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アルツハイマー病の末期とは? [終末期医療]

アルツハイマー病の末期とは?

 この分野のトップランナーである東京大学大学院人文社会系研究科死生学・応用倫理センター 上廣死生学・応用倫理講座の会田薫子先生は、2011年3月19日発行の日本医事新報にて、「私も定義化に汲々としてきた」と述べられております。
 それ程難しいテーマだとご理解下さいね。
 以下にその記事をご紹介しますね。

朝日新聞アピタル「ひょっとして認知症-PartⅡ」第120回『終末期への対応 慢性疾患の終末期の定義化は難しい』(2013年4月24日公開)
 終末期の定義に関して、日本老年医学会の「高齢者ケアの意思決定プロセスに関するガイドライン─人工的水分・栄養補給の導入を中心として」作成に深く関わってきた東京大学大学院人文社会系研究科死生学・応用倫理センター 上廣死生学・応用倫理講座の会田薫子特任准教授(論文執筆当時の肩書きは、東京大学大学院人文社会系研究科グローバルCOE「死生学の展開と組織化」特任研究員)が書かれた印象的な記述がありますので以下にご紹介しましょう。
 「終末期医療の調査研究にあたる者にとって、終末期をどう定義するかは仕事の第一歩である。研究対象について焦点を絞ることと研究にかかわる概念を明確化することなしには、研究計画すら立てることができない。そのようなわけで、終末期医療の研究者としては、研究対象の定義化にはそれなりに時間を使ってきた。
 しかし、悪性疾患と異なり、慢性疾患の終末期の定義化は困難であり、数値で表現することは不可能かつ不適切との指摘もある。そこで、数値を使わずに疾患の進行段階で示すこともある。例えば、認知症の終末期の定義は、それがアルツハイマー型であればFASTの7-(d)の『座位維持能力の喪失』以降というのが海外学術誌上では標準的とみられる。一方、脳血管疾患型認知症の進行は様々なので、終末期の定義は非常に難しく、頭を悩ませる。
 しかし、先日、ある事例検討セミナーで会った看護師の一言にハッとさせられた。それは、脳梗塞を繰り返し、意思疎通困難・摂食嚥下困難で、概ね寝たきりで経鼻経管栄養法を受けていた患者の例であった。
 患者は経鼻経管を嫌がり、毎日引き抜いてしまう。主治医は予後は半年以上とみて、患者の家族に胃ろう造設を勧めたが、家族は反対した。この患者への人工的水分・栄養補給をどうするか。この患者は終末期にあるとみて終末期対応をするのが適切かどうか、どのようにしてそれを判断するのか、私は医療者のディスカッションを聞いていた。その中で、この看護師は言った。『終末期かどうかということよりも、この患者さんのために何が最善なのか、それを考えましょう』。
 患者にとって、今、何をするのが最善なのかを検討するためには、医学的判断と併せて、患者本人がどのような人なのかを知ることが非常に重要である。それなしには、このような場面で本人がどのような価値判断をするのか、どういう意向を示すのかを推察することは困難である。
 家族らとのコミュニケーションを通じ、本人にとって何が大切なのかを知ろうとする。そうして本人像に迫ることによって、患者本人にとっての最善を探り、それを実現しようと努力することは、予後予測によって終末期対応の是非を探ることとはまったく異なるアプローチである。
 終末期医療をめぐる議論では常にその定義が問題とされてきた。そして、慢性疾患においては定義化が困難なので、終末期医療の議論も論理的に進めることができないという指摘もあった。冒頭に述べたように、私も定義化に汲々としてきた。本末転倒ではなかったか。定義は重要だが、そもそも何のための定義なのか。当たり前のことをしっかり認識させていただいた。」(会田薫子:終末期医療を考えるということ. 2011年3月19日発行日本医事新報No.4534 1 2011)
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