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優しさをどう指導するか・・ [認知症ケア]

 大阪大学大学院医学系研究科・精神医学分野の数井裕光先生が、2016年4月24日に開催されました第15回日本認知症学会教育セミナー(in 砂防会館別館)におきまして『認知症診療のトピックス:BPSDの包括的治療』というタイトルでご講演されました。
 その際に私は、数井裕光先生に対して、私が日頃から悩んでいることを質問してみました。

 「亡くなられた京都大学の小澤先生が『認知症ケアはやさしさがあればできますよ』と言われているのですが、優しさって指導することが難しいですよね。下手に指導したら個人の人格否定になりかねませんし・・。でも『私が優しくないからケアが上手くいかないのかな・・』って悩んでいる介護者・ケアスタッフもおられますので、何か数井先生の感じるところがありましたらアドバイス頂けますと幸いです。」という質問内容です。
 難問とは感じつつも、何でも知っている数井先生なら、もしかしたら良いアドバイスを頂けるかな・・と期待を込めて質問してみたのです。

 数井先生は、「時間に余裕がないと優しくなれないから、認知症ちえのわnetなどで基礎を身につけ時間に余裕を持って介護していけばその分優しくなれるのではないでしょうか」と回答して下さいました。
 「認知症ちえのわnet」におきましては、さまざまなBPSD対応法の奏功確率が公開されております。
 http://orange.ist.osaka-u.ac.jp/

 数井先生、アドバイスありがとうございました。
 以下に、「やさしさがあればできますよ」の引用元を提示致します。


朝日新聞アピタル「ひょっとして認知症-PartⅡ」第374回『その人はどう生きたかをきっかけに─ある日、玄関に便があった』(2014年1月14日公開)
 『とにかく外へ出ない、出たがらない人で、人と会うのもお嫌なんですね。外に出ないのだからデイヘの送り出しは難しい。とりあえずヘルパーさんに入ってもらったのですが、居室は椅子がひっくり返ったりして家具が散乱していることがしょっちゅう。トイレはウォシュレットに手をかけてしまうため、水浸しです。そのAさんのところに通ったうちのヘルパーさんの報告を受けていたらこんな話がありました。
 ある日、玄関に便があった。ヘルパーさんは、Aさんに何も言わないでそれを片づけてきたと言うのです。散乱している家具もそうです。ヘルパーさんはそれを元通りにし、水でびしょびしょのトイレは拭いてくる。そうやって淡々と元通りにしていたら、Aさんがだんだん心を開いてくれるようになったというのです。
 ああ、そうなんだ、これって考えてみるとすごいなと思いました。玄関に便があって、それを誰かに詰問されたら、Aさんは自分ではないと言ったり、動揺したりするでしょう。ですが、ヘルパーさんが何も言わないで静かに片づけ、まるで何事もなかったかのように生活が元通りになったら、Aさんにとっては気持ちのなかでゆれがないわけですよね。それは、認知症の人にとっては気持ちの上でとても楽なのだろうなあと思ったのです』

 当初ヘルパーに対して拒否的な態度だったAさんが、あるヘルパーに対しては心を開いていった。その理由を聞いていて気づいたのが、『気持ちのゆれをつくらない介護』だったという。生活基盤が安定すれば、認知症の人も穏やかに暮らせるのではないか、と伊藤さんは考えた。
 頑なだったAさんの心を開いたのは、一人のヘルパーの配慮あるケアだった。しかしこれは多分にそのヘルパーの資質にもよる。では、訪問介護に入るヘルパー全員が『ゆれをつくらない介護』をするにはどうしたらいいか。伊藤さんはこのとき、『一日が何事もなくふつうに過ぎていけるように支援するという最低限のケア』を考えたという。」(小澤 勲、土本亜理子:物語としての痴呆ケア 三輪書店, 東京, 2004, pp266-268)
 実は、伊藤美知さんが通所施設を開くにあたって相談したのが「れんげの里」施設長である柳誠四郎さんでした。そして、その柳さんの紹介で精神科医の小澤勲さん(故人)のもとを訪れた際に、小澤勲先生は伊藤さんに対して、認知症のケアは「やさしさがあればできますよ」(小澤 勲、土本亜理子:物語としての痴呆ケア 三輪書店, 東京, 2004, p260)と話されております。
 伊藤さんはAさんの事例を通して、「小澤先生が最初におっしゃった『やさしさがあればできますよ』という言葉は、もしかしたら、このことかなと思ったんです。ゆれがないように支援するというのは、すごいやさしさなのではないかな、と。こじつけかもしれませんが、そう思ったのです」(小澤 勲、土本亜理子:物語としての痴呆ケア 三輪書店, 東京, 2004, p268)と語っておられます。
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