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認知機能・覚醒度の変動のメカニズム 「意識」と「こころの理論」 [脳科学]

Part4 レビー小体型認知症の病理と病態生理
2-4 認知機能・覚醒度の変動のメカニズム

 覚醒や睡眠の調節には脳幹から上行する2つの主要な経路が存在する(図表2-5=https://www.facebook.com/photo.php?fbid=596655130504170&set=a.530169687152715.1073741826.100004790640447&type=3&theater)。第1は脚橋被蓋核・外背側被蓋核から視床へ投射する経路であり、第2は複数の脳幹モノアミン作動性ニューロン(青班核、縫線核、腹側中脳水道周囲灰白質、結節乳頭核)から前脳基底核、視床下部を経て前頭葉など大脳皮質へ投射する経路である。前者では、脚橋被蓋核・外背側被蓋核が、後者では前脳基底核ニューロンがアセチルコリン作動性であるが、DLBではADよりもアセチルコリン作動性ニューロン障害が強いことが知られている。したがって、DLBの覚醒度や注意力の障害には、これらアセチルコリン投射系の機能不全が関与している可能性がある。薬理学的には、コリンエステラーゼ阻害剤による治療によってDLBの認知機能の変動は改善することが示されている。
 しかし、機能解剖学的研究では必ずしも上述した仮説は証明されていない。安静時fMRIによる検討では、右半球における前頭葉─頭頂葉間の機能的結合の低下と認知機能の変動が関連することが示されている。SPECTによる検討では、特定の脳血流パターン(DLB cognitive motor pattern;小脳・基底核・補足運動野の血流高値、頭頂側頭葉の血流低値)と認知機能変動が相関することが示されているう。ただし、後者の研究では同じ脳血流パターンが認知機能障害、運動障害、注意機能障害とも相関しており、認知機能の変動に特異的というよりもDLBの臨床症状全般との関連をみている可能性もある。さらに同研究では、視床や中脳と認知機能の変動の相関はみられていない。したがって、DLBにおける認知機能・覚醒度の変動のメカニズム解明には、さらなる研究成果が待たれるところである。
【編/小阪憲司、著/長濱康弘:レビー小体型認知症の診断と治療─臨床医のためのオールカラー実践ガイド. harunosora, 川崎, 2014, pp199-201】

私の感想
 血圧(https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/596590583843958?pnref=story)と、ドパミン&アセチルコリン(https://www.facebook.com/photo.php?fbid=596564853846531&set=a.530169687152715.1073741826.100004790640447&type=3&theater)が絡みあって、認知機能の変動が起きるのではないかと現状では推察しております。

 「意識」と「心」は別問題です。
 「こころの理論」って興味深い分野ですよ。

朝日新聞アピタル「ひょっとして認知症-PartⅡ」第12回『認知症の診断─もの忘れ検診』(2012年12月26日公開)
 認知症の診断はどのようにして行われているのでしょうか。私が勤務する榊原白鳳病院の「もの忘れ検診」を例にとって説明しましょう。
 ところで、認知症の検診は、私が1996年7月9日に国内で初めて開設したものです。当初専門誌に投稿(笠間 睦:痴ほう専門ドックの開設. 脳神経 Vol.49 195 1997)した際には、「痴ほう専門ドック」と名付けていました。
 2004年12月24日、「痴呆」という呼称が「認知症」に改称されたのを契機に、「痴ほう専門ドック」を「もの忘れ検診」に改称しました。 (以下省略)

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社会的認知能力―人や社会との適切なかかわり
 社会において適切な行動をとり、ほかの人がどのように感じているかを読み取る能力を社会的認知能力social cognitionと呼ぶ。人の表情をみてその感情を読み取る(感情の認識recognition of emotions)、人のこころの動きの一般的なルール(こころの理論theory of mind)を理解する能力である。障害されると、社会から受け入れられる範囲を超えた不適切な態度をとることになり、友人や家族の反対を無視する行動や安全を無視した決断など、社会的な基準に適さない行動がみられる。
 認知症(DSM-5)では、社会から受け入れられる範囲を越えた態度をとる。衣服、政治、宗教、性的な会話などで皆に関心がない話題にこだわる、友人や家族の反対を無視する行動、安全を無視した決断(気候や社会的状況に不適切なもの)など、社会的な基準に鈍感な行動がみられる。
 軽度認知障害(DSM-5)では、行動や態度の微妙な変化、しばしばパーソナリティ変化とされるもの、たとえば社会的にしてはいけないことに気づくとか、ひとの表情をみて察するとかということが障害される。また、共感が乏しくなるとか、過度に内向き、外向きとなるとかといったことが、ときどきみられる。あるいは微妙なアパシーや不穏などもみられる。
 社会的認知能力は次のように評価される(DSM-5)。
●情動の認識recognition of emotions:
 強い情動を示している顔の絵をみてそれを理解する。
●心の理論theory of mind:ひとのこころや経験の状況を推し量る能力。写真をみせて、このカバンをなくした女の子はどこを探したらよいか、とか、この男の子はどうして悲しんでいるのか? といった質問をする。
【三好功峰:認知症─正しい理解と診断技法 中山書店, 東京, 2014, pp35-36】

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こころの理論
 この年齢の子どもたちの特徴の一つは、子どもたちだけの間で自由に遊ぶことが可能になることだ。また、他者の気持ちをうかがえることも一つの特徴になっている。こうした特徴は、プレマックとウッドロウにより提唱された「こころの理論」として研究が進んでいる。
 そこで、こころの理論の特徴的なテストである、誤信念課題を実施してもらった。このテストでは、図6-5(http://www.inetmie.or.jp/~kasamie/GoSinnennKadai.jpg)のように、場面に登場する人物の一人が、この場面でどのように思っているのかを、子どもたちに推量してもらうのである。その結果、正答率は、4歳児では約30%、5歳児は約60%であったが、6歳児では80%に上昇した。4歳の頃は他者のこころを推察することが難しいようであるが、6歳になるとそれがほぼ可能になることを示している。
【苧阪満里子:もの忘れの脳科学 講談社, 東京, 2014, pp153-154】

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 通常、脳の老化は前頭前野から始まります。
 前頭前野には、神経細胞の細胞体が集まった「灰白質」という部分と、そこから伸びる神経線維が集まっている「白質」という部分があります。この白質は加齢とともに薄くなっていくことがわかっているのですが、これにはミエリンの減少を伴います。
 神経細胞の間で信号を伝え合う軸索の被膜部分がなくなることで、信号がうまく伝わらなくなり、神経細胞が死んでいってしまうわけです。
 このような白質の変化が起きるのは、加齢によって脳の血流が落ちることが原因だと見られています。
 …(中略)…
 高齢者が「物忘れ」をするようになる理由は、前頭前野に加齢とともに起きる変化によって説明できるのです。
 一方、年を取ると、海馬にも老化が起きます。正確に言うと、海馬の入り口にあたる「嗅内野」から障害が発生し始めて、海馬に広がっていくのです。
 海馬は記憶をつかさどる部位としてよく知られており、数週間から数カ月にわたって記憶を保持し、その後、一生残るような長期記憶をつくる役割を持っています。ちなみに、海馬でつくられた長期記憶を保持するのは、大脳皮質の側頭連合野です。
【髙島明彦:淋しい人はボケる─認知症になる心理と習慣 幻冬舎, 東京, 2014, pp64-65】

朝日新聞アピタル「ひょっとして認知症-PartⅡ」第462回『患者の声が聞こえていますか?─もっと聞いてほしいを受け止めて』(2014年4月12日公開)
 認知症においては、失語が徐々に目立ってきますのでやがて意思疎通に支障を来してきます。
 ところで皆さん、以前ご紹介しました二つのエピソードは強く印象に残っておられるのではないでしょうか。
 一つ目のエピソードは、シリーズ第220回『認知症と長寿社会(笑顔のままで)─感情を伴った記憶は残っている』において紹介しましたデボラ・ダナー(感情を専門とする心理学者)にまつわる話です。
 ダナーが最高の幸福に包まれた思い出話をしたところ、数年前から寝たきりで言葉をめったに口にしなかった重度アルツハイマー病の人が「誰も話を聞いてくれんから、話をせんのだ」とダナーに話したというエピソードですね。
 二つ目は、シリーズ第218回『認知症と長寿社会(笑顔のままで)─問いかけや訴えを傾聴する』において紹介しました一人の認知症女性患者さんの初診日のエピソードです。
 介護者であるご主人が、「何で自分の思っていることをちゃんと伝えてくれないのか?」と指摘した際にその女性の口から出てきた言葉は、「だってあなたが私の話を遮るじゃない! もっと聞いて欲しいのに…。だから喋らなくなるのよ。」でしたね。
 この2つのエピソードに共通することは、介護者が本人の話をきちんと聞かなかったために本人が話すことをやめてしまったという状況です。
 茨城県立医療大学保健医療学部看護学科の北川公子教授は、「繰り返したずねられると、周囲の人は、認知症の人を避ける、あるいは受け流すような応対をしやすい。このような対応は認知症の人の不安や焦燥感、疎外感を助長し、認知症の人はますます繰り返しの問いかけをするようになり、やがて失望して話しかけることそのものをやめてしまう、という悪循環に陥りかねない。短い時間でも、1人ひとりの問いかけや訴えを『傾聴』し、その内容を書き残したり、いっしょに作業をするなどして、認知症の人の記憶力や所在なさを補う必要がある。」(認知症ケア基本テキスト─BPSDの理解と対応 ワールドプランニング, 東京, 2011, p48)と指摘しております。
 大阪市社会福祉研修・情報センターの沖田裕子スーパーバイザーは、「本人交流会を特別養護老人ホームとかグループホームでやってみたことがあるが、施設の方も『こんなにしゃべれるとは思わなかった』とびっくりしていました。聞かれないからいつも喋っていないだけで聞き続けているとお話して下さるんですよね。高齢の認知症患者さんにおいても本人の思いを聞き出すことが大切!」と語っておられます。

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 楽しみな先生(=認知症学会専門医ではないのですが[←資格が多すぎて更新が困難なので]、私よりもずっと奥深く認知症基礎領域に携わっておられます)が榊原白鳳病院に常勤として赴任されてきました。
 お昼休みに(=食事をたべながら)、認知症&BPSD関連の話題についてお話しておりましたら、扁桃体(Amygdala:アミグダラ)の話題から波及して「『物盗られ妄想』と『心の理論』との関わり」という話題にまで話が展開(飛躍)してしまいました。
 あまりにも話が面白すぎて、食事が喉を通りませんでした(笑)。

P.S.
 今から職場での上映会『ジストニア』に出席します。

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 「感情を伴う出来事の記憶は覚えやすいことはわれわれでもよく経験することで、情動による記憶の増強効果と呼ばれている。この情動喚起によるエピソード記憶の増強効果には扁桃体が関与することが知られているが、エピソード記憶が著明に障害されるADにおいてもこの増強効果が残っていることが複数の研究で明らかになっている。ただし、この増強効果の程度は患者によって異なり、扁桃体の萎縮が軽度のAD患者ほど、この増強効果がより維持されている可能性が示唆されている。
 …(中略)…
 Nakatsukaら(Nakatsuka M, Meguro K, Tsuboi H et al. Content of delusional thoughts in Alzheimer's disease and assessment of content-specific brain dysfunctions with BEHAVE-AD-FW and SPECT. Int Psychogeriatr Vol.25 939-948 2013)はADの妄想と扁桃体との関連を検討した。27例の妄想を有するAD患者と、この27例とMMSEで認知機能障害の程度をマッチさせた、妄想を有しない27例のADとの間で脳血流を比較し、さらに妄想の内容と局所脳血流との関連を調べた。その結果、右扁桃体の脳血流低下と『(自分の家にいるにもかかわらず)自分の家ではない』と感じる妄想との間に有意な関連を認めた。右扁桃体の機能低下により不安や恐怖が高まり、自分の今いる家が安心できる場所でないと感じる。患者の言う家とは『安心できる場所』の表象であると著者らは解釈している。」(數井裕光、吉山顕次、武田雅俊:アルツハイマー病における扁桃体萎縮と症候. Clinical Neuroscience Vo.32 662-664 2014)
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