「出るから検査はしない」風潮一変、同時検査が可能に【時流◆ツインデミックに備える】 けいゆう病院・菅谷憲夫氏に聞く(中編) [新型コロナウイルス]
「出るから検査はしない」風潮一変、同時検査が可能に【時流◆ツインデミックに備える】
けいゆう病院・菅谷憲夫氏に聞く(中編)
https://www.m3.com/clinical/news/844407?pageFrom=conference
【時流◆ツインデミックに備える】第2弾は、世界保健機関(WHO)重症インフルエンザ治療ガイドライン委員を務める菅谷憲夫氏(神奈川県警友会けいゆう病院感染制御センター、同院小児科参事)へのインタビューを紹介している。第2回は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と季節性インフルエンザ同時流行を見据えた検査体制について。(取材・まとめ:m3.com編集部・軸丸靖子)
「キット2つで同時に検査」が可能になった
(省略)
検査控えの風潮一転、「感染症診療の基本」に立ち返る
(省略)
「日本の対策は成功している」と誤解している人が多い
現在の日本の人口あたりCOVID-19感染者数および死亡者数は、台湾、ベトナム、タイ、シンガポール、韓国といったアジア諸国よりもかなり高くなっています。中国をもとっくに上回ってしまいました。これらのアジア諸国は徹底的にPCR検査をやってきた国々です。日本のCOVID-19対策は成功しているとか、抑え込んでいるといったことは、とても言えない状況です。にもかかわらず、「日本の対策は成功している」と誤解している人が政治家を中心にして多いと感じています。
マスクをはじめとする日本国民の自粛は、集団防衛、あるいは社会防衛としてかなり有効だとは思いますが、Go To トラベルやGo To イートをやり過ぎれば、この効果も消えてしまいます。
COVID-19変異ウイルス、D614Gの出現
(省略)
偽陽性の問題は必ず解決する
――新しく可能になった検査で、懸念される点はありますか。
インフルエンザ迅速診断は、発症48時間以内に鼻咽頭から採取した検体を使えば、rt-PCRと比べても90%以上の感度がありますが、COVID-19抗原検査にはrt-PCR検査より感度が落ちるという問題があります。仮に「COVID-19抗原検査陰性」という結果であっても、状況や症状からCOVID-19が否定できない患者では、「やはりPCR検査も行いましょう」という判断を現場の医師がしなければなりません。COVID-19陽性者との濃厚接触歴があったり、高齢者である場合は、抗原検査の陰性結果で安心するのではなく、さらなる検査に進む必要があると考えています。
もう一点、抗原検査については、偽陽性を指摘する声が若干あると聞いています。迅速診断キットですから「偽陰性」があることを臨床医はすべて十分承知していますが、「偽陽性」は困るのです。インフルエンザならまだしも、COVID-19での偽陽性は隔離の問題がありますから、できるだけ出てほしくありません。
COVID-19抗原検査で偽陽性が出るというのは、当局からの要請もあって、おそらくは感度を無理に上げているためでしょう。今はまだ登場したてで、データが十分でないため致し方ない面はあります。インフルエンザの迅速診断キットも、そうした試行錯誤を経て信頼性を勝ち得てきました。抗原検査のキットもいずれ必ず最適値が見つかり、信頼できる検査になると考えています。
https://www.m3.com/clinical/news/844407?pageFrom=conference
【時流◆ツインデミックに備える】第2弾は、世界保健機関(WHO)重症インフルエンザ治療ガイドライン委員を務める菅谷憲夫氏(神奈川県警友会けいゆう病院感染制御センター、同院小児科参事)へのインタビューを紹介している。第2回は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と季節性インフルエンザ同時流行を見据えた検査体制について。(取材・まとめ:m3.com編集部・軸丸靖子)
「キット2つで同時に検査」が可能になった
(省略)
検査控えの風潮一転、「感染症診療の基本」に立ち返る
(省略)
「日本の対策は成功している」と誤解している人が多い
現在の日本の人口あたりCOVID-19感染者数および死亡者数は、台湾、ベトナム、タイ、シンガポール、韓国といったアジア諸国よりもかなり高くなっています。中国をもとっくに上回ってしまいました。これらのアジア諸国は徹底的にPCR検査をやってきた国々です。日本のCOVID-19対策は成功しているとか、抑え込んでいるといったことは、とても言えない状況です。にもかかわらず、「日本の対策は成功している」と誤解している人が政治家を中心にして多いと感じています。
マスクをはじめとする日本国民の自粛は、集団防衛、あるいは社会防衛としてかなり有効だとは思いますが、Go To トラベルやGo To イートをやり過ぎれば、この効果も消えてしまいます。
COVID-19変異ウイルス、D614Gの出現
(省略)
偽陽性の問題は必ず解決する
――新しく可能になった検査で、懸念される点はありますか。
インフルエンザ迅速診断は、発症48時間以内に鼻咽頭から採取した検体を使えば、rt-PCRと比べても90%以上の感度がありますが、COVID-19抗原検査にはrt-PCR検査より感度が落ちるという問題があります。仮に「COVID-19抗原検査陰性」という結果であっても、状況や症状からCOVID-19が否定できない患者では、「やはりPCR検査も行いましょう」という判断を現場の医師がしなければなりません。COVID-19陽性者との濃厚接触歴があったり、高齢者である場合は、抗原検査の陰性結果で安心するのではなく、さらなる検査に進む必要があると考えています。
もう一点、抗原検査については、偽陽性を指摘する声が若干あると聞いています。迅速診断キットですから「偽陰性」があることを臨床医はすべて十分承知していますが、「偽陽性」は困るのです。インフルエンザならまだしも、COVID-19での偽陽性は隔離の問題がありますから、できるだけ出てほしくありません。
COVID-19抗原検査で偽陽性が出るというのは、当局からの要請もあって、おそらくは感度を無理に上げているためでしょう。今はまだ登場したてで、データが十分でないため致し方ない面はあります。インフルエンザの迅速診断キットも、そうした試行錯誤を経て信頼性を勝ち得てきました。抗原検査のキットもいずれ必ず最適値が見つかり、信頼できる検査になると考えています。