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若手・中堅座談会:「2035年の医療を語る」 [医療]

シリーズ: 若手・中堅座談会
 「2035年の医療を語る」

インセンティブが重要?「医師にも成果報酬を」◆Vol.7
 「真のブレークスルーは起こらない」の声も
 https://www.m3.com/news/iryoishin/399567?dcf_doctor=true&portalId=mailmag&mmp=MD160228&dcf_doctor=true&mc.l=146245429


渋谷:
 今までの話では、先進医療は医療の進歩に必要だが、革新的なものに関われる医師は一部の人だけで、コモディティ化していく人もいる。今ある適正な医療技術で回していけば、それがアウトカムにも良いという意見が出た。それは正しいと思う。
 ただ、医療はある程度、革新的なものに取り組み、進化させていくことが絶対必要。そのバランスが重要。そういう場合に、皆はどちらにいたいか。大学にいたいのか、一般病院にいたいのか。それは偉くなりたいとか、欲望の話ではない。自分の達成感、人がやっていないことにチャレンジしようというのが達成感になると思う。どう考えるか。

杉原:
 僕は教科書に載るような仕事がしたい。そういう夢がある。その意味では最先端の開発の方にいたい。

渋谷:
 でも、一般病院の泌尿器科部長でも良いと言っていたが。

杉原:
 大学で一旗揚げて、部長になりたいですね。面倒な仕事を押し付けられる前に……。

渋谷:
 調子良いですね(笑)。公平先生は?

公平:
 ジェネラリストとスペシャリストだったら、やはりスペシャリスト。あと、クオリティも保つためには、ある程度大きい施設にいないといけない。それで自分の安心感と達成感が得られる。

渋谷:
 お二人は、自分で開業したいとは思わない?

杉原:
 ないですね。

公平:
 ないですね。40歳ぐらいまでで、何となく方向性が見えてくるんだと思う。

杉原:
 私は、医療の進歩について、「もう真のブレークスルーはないのでは」と思っています。抗生剤、麻酔、予防接種、CTといったレベルのブレークスルーとなる発明は出尽くしてしまい、今後は高額だが効果は限定的な治療しか生まれない。再生医療も遺伝子治療もロボット手術も、発達すればするほど高額すぎて皆保険制度にはなじみません。
 頂上をぐっと持ち上げるような医療の進歩は限界に来ています。底を上げるのではなくて、中央値を上げるような方向に移るべきだと感じています。一発で皆のOS(全生存期間)が改善する治療はもう無いと思います。

渋谷:
 技術進歩が価格破壊を起こせば別ですが。それに、今までと違って、単体のどこかのパーツが壊れるというよりも、(高齢者の病気の多くは)生活習慣や加齢のプロセスだから、ますますそういうことになりますね。医療自体がより生活に近いところになる。
 では、達成感について。診療報酬は(誰がやっても)値段が同じです。成果による報酬があるとやる気になりますか?

公平:
 例えば、専門医を取得して、部長になったり、重症例を診たりとか、そういうインセンティブが確実に付いていないと。今の状況では5年目、10年目、15年目であっても、報酬は変わらない。インセンティブがほとんどない状況です。大学ではアルバイトに行かないと収入が減る、大学に残ることがデメリットにならないようすべきです。成果主義というか、取得した専門医資格試験などが必ず給料に反映されるように。

伊藤:
 外科医は自分の腕がいいと言うのが、一番のモチベーションだと思います。それを評価して認定してくれる、専門医、認定医があるといい。

杉原 専門医は専門に集中させてほしいです。特に日本のドクターは雑用が多い。医師免許がないとできないことに特化してやらせてほしい。

吉野:
 外科医は忙しいことが多いですが、他の暇そうで、いつも医局でお茶飲んでいる先生と給料が同じというのは、「どうかと思うよね」という話はあります。

公平:
 眼科や耳鼻科など、診療科の保険点数の差によっても、大きく違う。そのことが病院の中でも、やる気をだいぶ変えていると思う。ベースの給料は一緒でも、外来患者数など、何か給料に反映させるものが必要です。

吉野:
 忙しいことと儲かることは、また別の話ですよね。すごく働いていてとても大変な科なのに、病院経営で見ると良くない、となってしまうこともある。

渋谷:
 忙しさとは別に、何を見てほしいですか。仕事の割に給料が悪いなら辞めて他に移ればいい。でも、 本当に患者のためになっていて、結果が出ているならきちんと評価されるべきですよね。

吉野:
 外科では、「患者が元気になってくれればありがたい、それがやりがい」と言ってやっている人だけが残っている。若い先生は「自分の生活を大事にしたい、そんなコスパ(コストパフォーマンス)の悪い科は嫌だ」となって、外科医はどんどん減っていると思う。

森田:
 値段は自由化しないといけないと思う。今は診療報酬で、在宅医療に誘導したりしているが、それをやったために“悪徳業者”が出てきた。利益誘導しているのだから、利益を取ろうとする人が出るのは当然です。それならば、利益誘導しなければいいと思う。需要があるのなら、価格を自由にすれば、ある程度お金を払う人は絶対に出てくる。経営がそれで成り立つ。

渋谷:
 確かに一律の診療報酬と価値がマッチしていないのは問題 。でも全てが市場原理のみでは、医療は成り立たない。そういうコンセンサスはある。

岡崎:
 渋谷先生の生きがいは何ですか?

渋谷:
 僕は、生まれたからには世の中の役に立ちたい、と思う。そして、いつも、自分がわくわくすることをやっていたい。志を共にできる人との出会いが全てで、「この人と一緒に仕事がしたいな」「楽しいな」と思う。そこで自分の力が発揮できたら最高です。

渋谷:
 岡崎先生は?

岡崎:
 自分は自分の手で患者に診断をつけて、治療していければ...実家の父も医師ですが、実家には帰ってくるなと言われています。地元で医師をするなら、地元の大学卒でないと厳しいようです。自分が東京大学で勉強できたのは、家族の助けがあり、とても恵まれていると思います。社会に対して還元しないといけない。そう考えています。
 将来的なことについては、進みたい科すら決まっておらず、具体的な将来が思い描きにくいのが正直なところです。最終的には、日本の医療・患者さんに最大限貢献したいので、幅広く世の中や医療のことを知らなければならないのは間違いないと思います。


【参加者プロフィール】(※所属は2015年11月末現在)
【司会】渋谷健司氏 東京大学大学院教授
 公平順子氏(静岡市立静岡病院所属、2000年卒)
 吉野美幸氏(新座志木中央病院、国境なき医師団に所属、2004年卒)
 杉原亨氏(東京医科大学病院所属、2005年卒)
 伊藤丈二氏(東京ベイ浦安市川医療センター所属、2006年卒)
 森田知宏氏(相馬中央病院所属、2012年卒)
 岡崎幸治氏(日本海総合病院所属、2015年卒)


 
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