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医療維新・中川俊男・日医副会長に聞く [医療]

医療維新・中川俊男・日医副会長に聞く
中川俊男.JPG

「診療報酬の遍在是正」がキーワード - 中川俊男・日医副会長に聞く◆Vol.1
 最大の成果は調剤医療費への歯止め
 https://www.m3.com/news/iryoishin/404481

――長期投薬は、「モラルハザードの是正」から、制限したとのことです(『「内服薬2種類以上、減少」で250点』を参照)。

 はい、その点が重要なポイントです。「90日処方が当たり前」というのは、医療としておかしい。中医協総会にも日医総研のデータを出しましたが、「長期投薬により、患者が服薬を忘れたり、中断したために、病状が改善しなかった」などの問題が生じています(『分割調剤や残薬調整、診療側と支払側で意見対立』を参照:https://www.m3.com/news/iryoishin/373053)。大病院から逆紹介で診療所に戻ってきても、患者さんが「60日処方」や「90日処方」 に慣れてしまっています。2カ月も、3カ月も受診しなくてもいい状況は問題。


――「30日超」の場合には、病状が変化した際の対応方法を患者に周知したり、分割調剤を検討するなどの対応が必要になります。

 「30日超」という言葉が入ったのは、画期的と評価しています。漫然と長期処方をするのではなく、それが本当に必要なのかを今一度、立ち止まって考えていただきたい。


――残薬問題についても対策が講じられ、処方せん様式も変更されました。残薬対策は必要ですが、疑義照会が増え、現場の業務が大変になる懸念もあります。

 その影響こそ、まさに検証が必要。残薬が多いのは、多剤投薬ではなく、処方日数が長いことが主たる原因だと私は思っています。

 そのほか薬関連では、院内処方に対する「外来後発医薬品使用体制加算」の新設も、注目点です。医薬分業から院内処方に戻す選択肢もあり得るという意味が込められています(『「後発品70%以上」、処方料3点加算』を参照)。


――「モラルハザードの是正」から改正された点は、他に何がありますか。

 回復期リハビリ病棟の疾患別リハビリテーションで、アウトカム評価が導入されたことです(『回復期リハビリでアウトカム評価を導入』を参照)。「回復期リハビリ病棟の中には、入院患者の9割以上に、1日平均6単位を超す疾患別リハビリを実施している病棟が約2割ある」といった実態は、やはりおかしい(『リハビリ、「アウトカム評価」重視へ』を参照)。その背景には、理学療法士数が多すぎるという現状があると考えています。





「7対1の基準」、見直すべきではなかった - 中川俊男・日医副会長に聞く◆Vol.2
 最患者減に伴い、7対1病床は自然に減少
 https://www.m3.com/news/iryoishin/404482

――「重症度、医療・看護必要度」の該当患者割合は、200床未満の病院については、2018年3月末までは、23%以上という経過措置が設けられました。

 経過措置を延長するかどうかは、次回改定に向けた議論次第です。


――7対1入院基本料から移行する場合、10対1入院基本料、あるいは地域包括ケア病棟入院料など、どこに移行するケースが多いと見ておられますか。

 地域の状況によって異なるため、一概には言えないと思います。


――7対1入院基本料は、基本的には看護師の配置に応じた点数設計です。この辺りは今後、何らかの見直しが想定されるのでしょうか。

 確かに、「看護師の数で、入院基本料が決まるのは問題」という声はありますが、「簡単に言わないでほしい」と私は思います。仮に例えば、「重症度、医療・看護必要度」ではなく、「重症度、医療必要度」に変更された場合、医師数という要件が出てくる可能性があります。さらに専門医などの要件が入るとしたら、より複雑になってしまう。病院経営においては、支出に占める看護師の人件費割合は大きい。他に代替案は見当たらず、現状では看護師の配置に応じた点数は妥当でしょう。





かかりつけ医は1人に限らず - 中川俊男・日医副会長に聞く◆Vol.3
 大病院の定額負担、「紹介が原則」周知が狙い
 https://www.m3.com/news/iryoishin/404484

――成人の場合、内科的な疾患でも複数罹患していたり、眼科や耳鼻咽喉科などに受診するケースもあり得ます。「かかりつけ医は1人」と限定するのは、難しいのでは。

 その通りです。成人の場合、「かかりつけ医は1人」という施設基準が入らないよう、注視していきます。





在宅専門診療所、原則は「認めず」 - 中川俊男・日医副会長に聞く◆Vol.4
 今後の注目点は消費増税の時期と対応
 https://www.m3.com/news/iryoishin/404485
 インタビュー 2016年3月13日 (日)配信聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長

――在宅関連では、在宅専門診療所の新設が注目点です(『「在宅患者95%以上」が在宅専門診療所』を参照)。これは専門診療所の積極的な評価なのか、あるいは既に専門診療所があるため、一定の要件を課し、ルール作りをすることが目的なのでしょうか。

 「在宅専門診療所は、原則的にはノー」が基本スタンス。ただし、「かかりつけ医」が外来診療の延長上で在宅医療に取り組むには、限界があります。それを補完する機能が必要なために在宅専門診療所を認めたのです。

 在宅専門診療所については、今まで現場の医療者が構築してきた地域医療のネットワークを崩さないように、いろいろな開設要件を設けてもらいました。モラルハザードが起きないようにするためです。中でもポイントは、「外来診療が必要な患者への対応のため、協力医療機関を2カ所以上確保すること、または地域医師会から協力の同意を得ていること」という要件です。医療機関の多くは地域医師会の会員ですから、結局は地域医師会の意に反した在宅専門診療所の運営は難しいでしょう。在宅医療では、「患者紹介ビジネス」が問題になり、前回の2014年度改定では療養担当規則までも変更しました。在宅専門診療所については、引き続き慎重に対応していきます。



今年4月からスタートする患者申出療養制度について、中川副会長は「混合診療の拡大ではない」と説明。


――そのほか在宅関連では、前回改定で引き下げられた「同一建物・同一日」の在宅時医学総合管理料(在総管)の見直しが行われました。これで問題は解決できたとお考えですか。

 在総管は「1人」「2~9人」「10人以上」という区分になりましたが、これには反対でした。「10人以上」については、何十人でもまとめて訪問することに、「お墨付き」を与えるようなものだからです。

 どのように運用されるかは、実際にやってみないと分かりません。ただ行政は今、どんな高齢者施設・住宅があるかを把握しきれていないのが現状。施設・住宅への検証調査を行おうとしても、無届では送付先がないわけです。在宅関連の検証調査においては、この辺りも課題になります。


――今改定で、特に影響が大きく、今後の検証が必要と思われる部分はどこでしょうか。

 最大のポイントは、7対1入院基本料の見直し。そのほか、在宅専門診療所、調剤報酬の関連です。


――今改定の議論では、保険外併用療養制度を見直し、「選定療養」の類型を追加する議論もありました(『「治療に関係ない検査」で自費徴収を検討』を参照)。

 厚労省が、「選定療養」についても、「保険導入の可能性が生じることがあり得る」と提案したので、見直しに異議を唱えたわけです。「選定療養」は保険適用にはならない区分。将来、保険導入を目指すなら「選定療養」であり、この区分を見直すなら、保険外併用療養制度の全体の枠組みの議論をしなければいけません。


――今改定では、費用対効果評価も試行的に導入されます。その項目は4月以降に決定する予定です(『費用対効果評価、既収載は8品目程度が対象』を参照)。

 費用対効果評価は、新規収載の医薬品や医療機器は対象外。また厚労省の説明によると、「費用対効果が見合わないから、保険適用はしない」などの使い方は今はしないとのこと。「高すぎる価格のものを抑える」のが目的と理解しており、これにより試行的な導入を了承したのです。これらの条件は守っていただきたい。


――最近では、分子標的薬などで高額な新薬が上市されています。

 確かに、新薬でも費用対効果評価を行うべきという議論が出てくる可能性も否定できません。費用対効果評価をどこまで適用するかについては、冷静な判断が必要。例えば、中医協総会でも言いましたが、生涯医療費という観点を踏まえて評価すべきであり、仮に薬価が高い新薬でも、治療期間中の医療費だけでなく、その新薬で完治すれば、生涯医療費は安くなることも考えられます。


――患者申出療養制度も、この4月からスタートします。

 患者申出療養制度ですが、「混合診療の拡大」と誤解している人がいます。この制度は、あくまで「評価療養」の「先進医療B」の一形態。先進医療は、「医療機関発」ですが、患者申出療養制度の場合は「患者発」という違いにすぎません。「患者さんが申し出てきた医療について、誰が安全性や有効性を判断するのか」という指摘がありますが、臨床研究中核病院や国の組織で検討する仕組みになっています。そもそも今回は入口を開けただけで、それほど件数は増えてこないと思っています。多くは「先進医療B」で対応できるでしょう。
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