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無診察処方─「いつもの薬がほしいだけ」は意外に怖い [医療]

「いつもの薬がほしいだけ」は意外に怖い【日経Gooday 2016/3/21】
 http://style.nikkei.com/article/DGXMZO98554460X10C16A3000000?channel=DF130120166093&style=1

薬だけ.JPG
 病院の受付で「診察はいいから、いつもの薬だけください」と頼む人。気持ちは分かるが、これはNGだ。やわらぎクリニック副院長の北和也さんに、薬との上手なつきあい方を分かりやすく解説してもらいました。

 (病院受付にて)
患者さん
 「すみません。××ですが、いつもの薬がほしいんですけど」
受付スタッフ
 「では診察の順番をお待ちいただけますか?」
患者さん
 「いや、特に変わりはないんで診察は結構ですわ~。なんとか薬だけいただけないですかね?」
受付スタッフ
 「申し訳ありませんが、それはできないんです……」
患者さん
 「なんで? いつもの頭痛薬と胃薬をもらうだけなのに。痛っ、いたた……。怒ってたら頭が割れるように痛くなってくるわ。今日は過去最高に痛いわ~っ!」
受付スタッフ
 「……(絶対診てもらった方がいいやん!)」

 こんなやりとり、今までにされた方がおられるかもしれませんね(もちろんこんな激しくはないでしょうが……)。
 確かに、特に相談したいことがなければ、「いつもの薬がほしいだけなのに、なんでわざわざ診察室に入らないといけないのか」と、面倒くさく感じることがあるでしょう。時間がもったいないので、薬だけもらってさっさと帰りたいという気持ちは、とてもよく分かります。
 でも、これ、ダメなんです!
 「無診察処方」といって、医師法違反になってしまうのです。
 薬を処方する立場の私にも妻がいて、3姉妹の父親でもあるので、まだまだ警察の厄介になるわけにはいかないのでありますっ!

■なぜ毎回診察してもらわなければいけないの?
 「でも、毎回同じような診察で、いつもの薬をもらうだけなのに、なぜ診てもらう必要があるの?」
 その疑問はごもっともです。
 「何も変わっていないのに、何か処方が変わるわけ?」という気持ちですよね。よく分かります。特に、自覚症状の出にくい病気(たとえば高血圧や安定した糖尿病)や、薬でよく症状が抑えられている患者さんの場合、そう考えてしまうのも無理ないと思います。
 でもですね、これって時にはとても危ないことになるんですよ。「危ないこと」というのは、大きく分けて2つあります。

■危険【1】え、この症状、薬の副作用だったの?
 まず、飲んでいる薬の副作用が出ているのに、気づかずに見過ごしてしまう危険性です。薬の副作用がすでに出ているにもかかわらず、それに気付かずに、その薬をまた1~2カ月分出してもらったら……。これ結構怖くないですか?
 気付いた時にはどえらいことになって、取り返しのつかないことに……。なんてめっちゃイヤですよね?
 「いや、そんなことくらい普通自分で気付くって! 大丈夫!」という方もおられるかもしれません。でも実際は、結構気付かないものなんです。
 たとえば、「なんだか最近だるいな~」と思いつつ、「年のせいかな」で片づけてしまっていたところ、実はいつも飲んでいる薬の副作用だった、なんてことはあり得ることです。以下に、患者さんが「まさか薬の副作用だったなんて!」と驚かれたケースをご紹介しましょう。

■まさか薬のせいで! 男性なのに乳房が女性化
 心療内科に通院中の中年男性が、「最近お乳が張って痛い」と相談してきたので、いろいろとお話をうかがったところ、どうやら飲んでいる薬の副作用による「女性化乳房」が原因だということがわかったのです。
 患者さんは、2~3年くらい、誰にも相談せずに放っておいたのだそうです。

■まさか薬のせいで! 頭痛の薬で頭痛が悪化
 慢性頭痛に痛み止め(消炎鎮痛剤)を毎日内服していても頭痛がちっともよくならないと思っていたら、実は「薬物乱用頭痛」だった、ということもあります。
 薬物乱用頭痛は、鎮痛剤の使い過ぎによって起こる頭痛です。
 頭痛が起きるたびにロキソプロフェンなどの鎮痛剤を頻回に内服することで、さらなる頭痛を誘発していたわけです。
 「まさか、頭痛薬が頭痛を起こしていたなんて」と、患者さんはびっくりするわけです。

危険【2】薬の量や種類を変えるタイミングを逃してしまう!
 「薬だけもらって帰る」が危ない理由の2つ目は、「たとえ自覚症状がなくても、薬の種類や分量を変更する必要が生じている可能性がある」ということです。
 薬の中には、血中濃度が一定の範囲を超えると重い副作用が出てしまうため、毎回採血して血中濃度をチェックし、用量を調節しなければならないものもあります。
 一方、症状がなくなってくれば、薬の量を減らしたり、もっと効き目がマイルドな薬に変更する必要もあります。それは患者さんにとってもうれしいことですよね?

 無症状=診てもらわなくても大丈夫、というわけではないのです。
 ということで、いつもの薬がなくなったら、面倒でも、ぜひかかりつけの医師の診察を受けてください。そして、このまま今のお薬を飲んでいればいいのか、きっちり確認してみてくださいね!


北 和也.JPG
Profile
北 和也(きた かずや)
やわらぎクリニック副院長
2006年大阪医科大学卒。府中病院急病救急部、阪南市民病院総合診療科、奈良県立医科大学感染症センターなどで主に総合診療・救急医療・感染症診療に従事。手足腰診療のスキルアップのため、静岡県は西伊豆健育会病院整形外科への3カ月間の短期研修(単身赴任)の経験もあり。現在は、やわらぎクリニック(奈良県生駒郡)副院長として父親とともに地元医療に貢献すべく奮闘中。3姉妹の父親で趣味は家族旅行。
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