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人工知能が自閉症判別  共感 ミラーニューロン 島皮質 側坐核 [人工知能]

■人工知能が自閉症判別

 国際電気通信基礎技術研究所(ATR)は昭和大などと共同で、コミュニケーションなどに課題がある自閉症の人を、脳の磁気共鳴画像装置(MRI)の画像から見分ける人工知能(AI)技術を開発した。振る舞いからは分かりにくい診断を手助けできる。症状のメカニズム解明にも役立てたいという。人工知能が探し出した新たな判別方法を自閉症の74人とそうでない107人で試すと、85%の正答率で見極めた。
 【2016年4月16日付日本経済新聞・社会】

私の感想
 客観的な判断の指標がなかった分野ですので、極めて大きい意義を持つと思います。
 この技術を利用すれば、血液型のせいなのか、「天然」なのか、アスペルガーなのかなどがおよそ判定できるわけですね。


 関連事項を朝日新聞アピタル「ひょっとして認知症-PartⅡ」第796回 『感情に配慮したケアを─共感の神経細胞』(2015年3月18日公開)にて書いたことがありますので以下にご紹介いたします。

感情に配慮したケアを─共感の神経細胞
 さて、マルコ・イアコボーニは、ヒトが他人の感情を理解できる仕組みに関して、ミラーニューロン(メモ2参照)と扁桃核(扁桃体)の関連も交えて以下のように説明しています(一部改変)。
 「ミラーニューロンを含む脳領域と、感情と関連のある大脳辺縁領域とは、どうつながっているのか。ミラーニューロンにも辺縁領域にも解剖学的につながっていることが充分に立証されている唯一の領域が『島(とう:insula)』(メモ3参照)である。人間が他人の感情を理解できるのは、他人の微笑んだ顔や眉をひそめた顔を見て活性化するミラーニューロンのおかげだとする仮説を、この経路こそが裏づけてくれるのではないか。そして結果は、私の予測を実証した。被験者が顔を見ているあいだ、ミラーニューロン領域、島、そして大脳辺縁系の感情をつかさどる部分、とくに扁桃核は実際に活性化し、その活動は、見た表情を模倣している被験者において確実に高まっていたのである。これは明らかに、ミラーニューロン領域がある種の脳内模倣によって他人の感情の理解を助けているという仮説を裏づける結果だった。この『共感のミラーニューロン仮説』にしたがえば、他人が感情を表しているところを見るとき、私たちのミラーニューロンは、まるで私たち自身がその表情をしているかのように発火する。この発火によって、同時にニューロンは大脳辺縁系の感情をつかさどる脳中枢に信号を送り、それが私たちに他人の感じていることを感じさせる。」(マルコ・イアコボーニ:ミラーニューロンの発見「物まね細胞」が明かす驚きの脳科学 塩原通緒訳, 早川書房発行, 東京, 2011, pp147-151)
 なお、ヒトの脳においてもミラーニューロンが存在するということの根拠は以下の実験結果に基づいております。
 「ヒトの運動野に対して経頭蓋磁気刺激法(transcranial magnetic stimulation;TMS)を行うと、筋肉にその活動を示す運動誘発電位(motor evoked potential;MEP)が誘発されるが、例えば手の動きを観察している時にTMSを行うと、手を動かす筋肉に発生するMEPが大きくなる(Giacomo Rizzolatti, Maddalena Fabbri-Destro:Mirror neurons: from discovery to autism. Exp Brain Res Vol.200 223-237 2010)ことが示されている。」(村田 哲:ミラーニューロンの概要. 日本医事新報 No.4685 68-69 2014)

メモ2:ミラー・ニューロン
 愛知医科大学精神科学講座の兼本浩祐教授がミラー・ニューロンの魅力を分かりやすく語っておりますので一部改変して以下にご紹介します。
 「ミラー・ニューロン(物まねニューロン)とは、たとえば自分が果物を手に取る時に駆動されるのと同じ脳部位が、対面している他者(ないしは他の動物)が果物を手に取っても駆動される現象を言う。原始的なものでは、一羽の水鳥が物音に驚いて飛び立つと、一斉に他の水鳥も飛び立つ現象などもこのニューロンの働きなのではないかと言われている。こうした物まねニューロンの存在は、1996年にイタリアのパルマ大学のジャコモ・リゾラッティ(Giacomo Rizzolatti)らのグループによって発見されたものである。
 その後の追試によって、腹側運動前野だけでなく下部頭頂葉(Brodmannの7b野)にも同様の活動パターンを示す神経細胞があることを見出し、これをミラー・ニューロンと名づけた。
 この物まねニューロンの存在がにわかに脚光を浴びたのは、このニューロンの働きが、他人への感情移入の脳における基盤なのではないかと考えられたからである。自閉症やアスペルガー症候群における他人への共感性の問題をこのニューロンの機能不全によって説明しようとする試みなど、多岐にわたる発想へと展開していった。」(兼本浩祐:心はどこまで脳なんだろうか 医学書院, 東京, 2011, pp77-78)。
 余談にはなりますが、高機能自閉症、高機能広汎性発達障害などはアスペルガー症候群とほとんど同じ意味で用いられてきました。2013年5月に改訂された米国精神医学会の診断の手引(DSM第5版)においては、重い自閉症からアスペルガー症候群までを連続的に捉える「自閉症スペクトラム(連続体)障害」として一本化され、アスペルガー症候群という分類は消えております。

メモ3:島
 島(とう:insula)」についてTVで紹介されることなど絶対に無いものと私は思っていました。しかし、2012年1月29日放送の「NHKスペシャルヒューマン」(http://www.nhk.or.jp/special/detail/2012/0129/)においては、大変興味深く「皮質」のことが紹介されました。
 行われた実験は2006年にイギリスで行われたものです。
 実験の詳細は論文(Singer T, Seymour B, O'Doherty JP et al:Empathic neural responses are modulated by the perceived fairness of others. Nature Vol.439 466-469 2006)に記載されております。
 NHKスペシャルヒューマンにおいては、ナレーションで以下のような内容が伝えられました。
 「男性が女性に頬を平手打ちされるシーンを見てもらいます。
 他人が叩かれているのを見て活発に動いた脳活動部位は、『島皮質』でした。不快なものを見たときに反応する場所です。
 ヒトの脳には、他人の痛みを不快に思う仕組みがあるのです。
 しかし、上記の映像を見てもらう前に、『この男は、彼女にひどいことをしたんです。これは罰なんです。』と囁くと、島皮質の代わりに『側坐核(そくざかく)』という場所が活発に働きました。
 側坐核は、ヒトが快楽を得た時に活動する場所です。
 ヒトは、相手が悪い人だと思うと、その人が痛みを受けていても同情せず、天罰だと思って快感を覚えるのです。」
 こういった人間独自の脳の仕組みは、ヒトが「集団」として仲間とともに生きてきたが故に発達してきた脳機能と言えそうですね。
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