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よりよいケアを希求する「船」としてのビュートゾルフ [認知症ケア]

日本版ビュートゾルフ始動!─よりよいケアを希求する「船」としてのビュートゾルフ(構成/編集室 インタビュー/堀田聰子さん)

「日本版ビュートゾルフ」はゆるやかな理念共同体
 私は「日本版ビュートゾルフ」は、事業所の看板はどうあれ、ビュートゾルフのビジョンを共有する方々のたゆまぬ進化を指すものであってほしいと考えています。「玉ねぎモデル」に象徴される、利用者・患者の尊厳の保持、自立生活の支援を手がかりにした「すべての住民」が、「よりよい生活のなかでの経験」を「ともにつくり出して」いけるケアと地域づくりのムーブメント、ともいえるかもしれません。一人ひとり異なり、究極的には客観的にも主観的にもわからないQOL(Quality of life)を引き上げようとする実践者たちの、それぞれの地域におけるワクワクする営み全体、いわばゆるやかな理念共同体を、「日本版ビュートゾルフ」ととらえたいのです。

「暗黒の時代」を突き破った専門職の職業倫理
──そもそも、堀田さん自身はビュートゾルフのどの点に魅力を感じたのでしょうか。彼らとの出会いとともに教えてください。
 私がビュートゾルフの創業者・代表である地区看護師のJos de Blok(ヨス・デ・ブロック)さんとはじめて会ったのは、2010年初夏のオランダでした。中重度認知症で一人暮らしの方々の日常生活と、それを支えるしくみやネットワークの日蘭比較研究に協力してくださる在宅ケアの事業者を探していたのです。たくさんの在宅ケア組織を回るなか、「うちでは難しいけれど、ビュートゾルフなら一人暮らしの認知症の人でも最期まで支えているに違いない」と紹介されたのが彼らとの出会いでした。

よりよい実践の積み重ねは制度も動かす


看護師たちが学びあい、ケアに集中できる「枠組み」


わが町の玉ねぎを育むイノベーションを求めて
 先にお話ししたとおり、私は事業化には一貫して関心がなく、彼にもそのことを伝えていました。彼の言い分はよくわかったものの、2014年のビュートゾルフアジアの設立もあいまって複雑な心境になったことを覚えています。それまで重ねてきた対話が水泡に帰すのではないかという危惧もありました。
 とはいえ、ヨスさんやビュートゾルフのナースたちの日本への情熱的な貢献をもっともよく知る立場にもあったので、関心がありそうな方々にお声掛けして、ビュートゾルフとの協業に向けた個別の「お見合い」の場のセッティングも行っていました。


「本人にとっての最善」を問い続け、自由な発想を
──これから「日本版ビュートゾルフ」がどのような進展を見せるのか楽しみです。
 ビュートゾルフのチームでも、「なぜそれは患者にとっての支援になるの?」「何が本当に起きていることなの?」「私たちは正しいことをやってるの?」「なぜ私たちはいつもどおりにやっているの?」「もっと簡単なやり方はないの?」と、シンプルな問いが満ちています。「日本版ビュートゾルフ」が、患者・利用者・住民の一人ひとり異なり、また変化していく「本人にとっての最善」を自由な発想によって問い続け、そこで起きるイノベーションを持続可能なものにしていくことを期待しています。
 (2016年3月29日収録)
 【訪問看護と介護 vol.21 no.5 346-351 2016】

私の感想
 ビュートゾルフについては、NHK・Eテレ『シリーズ 認知症 “わたし”から始まる』の第2回放送(2013年7月2日)でも報道されており、その放送内容をアピタルにおいてご紹介しております。

朝日新聞アピタル「ひょっとして認知症-PartⅡ」第343回『介護と高齢者虐待─デイサービスを使い始めるのに抵抗感』(2013年12月14日公開)
 さて、これまでにもオランダにおいて実践されている種々の取り組みについてはご紹介してきましたね。
 シリーズ第174回『刻化する認知症患者の長期入院 在宅政策にシフトしたオランダ』においては、オランダの「ヘリアント(Geriant)」「アルツハイマーカフェ」などの試みをご紹介しました。2013年7月号のメディカル朝日(通巻第500号)においても、ヘリアント(Geriant)の話題が取り上がられておりますのでご紹介しましょう。
 「Geriantは、北オランダの人口60万人のエリアでサービスを提供しており、利用者3700人をスタッフ190人(うちケースマネジャー70人)で支える。認知症診断・ケースマネジメントチームは、在宅で老年精神看護を提供する看護師、老年医、精神科医、心理士、認知症コンサルタントなど各1~2人で構成される。」(遠矢純一郎:認知症ケアの先進地をゆく/前編─オランダの現状. Medical ASAHI Vol.42第7号・通巻500号 72-74 2013)
 さて、NHK・Eテレ『シリーズ 認知症 “わたし”から始まる』の第2回放送(2013年7月2日)は、『“在宅”を支えるケア~オランダからの報告~』(http://www.nhk.or.jp/heart-net/tv/calendar/2013-07/02.html)でした。番組においては、地域看護師が2006年に起業した在宅ケア組織「ビュートゾルフ(Buurtzorg)」が実践する家族支援の様子、2009年にアムステルダム郊外にオープン(改築)した認知症村(通称)と呼ばれるホーゲヴェイ(Hogewey)の様子が報道されました。
 ビュートゾルフでは、「認知症の人は、介護する家族が適切に対応すれば徘徊や暴力などの行動も現れず自宅で穏やかに過ごすことができる。そのため、家族ごと支援することに力を入れており、何かあれば24時間いつでも駆けつけますよ」という考え方で臨んでいるようです。
 そして一人の事例が紹介されました。リー・メイウィッセさん(91歳女性)は2年前にアルツハイマー病と診断されました。介護するのは近くに住む一人娘のアニタさんです。アニタさんは当初は、「母を厄介払いしているような感じがしてしまって…」とデイサービスを利用することに対して抵抗を感じていたようです。しかし、認知症ケースマネジャーのリース・ルッテル看護師から、「一歩下がっても良いんじゃないかしら」とアドバイスを受けます。その後、デイサービスを利用するようになり少し親子の距離を置いたこと、そしてアニタさんも認知症について詳しく教えてもらい余裕を持って対応できるようになったことで、リー・メイウィッセさんは穏やかに過ごす時間が増えて以前の明るさを取り戻していきました。
 「時には本人と家族の間で距離をとってもらう。それも本人が穏やかに過ごすための秘訣だ」とナレーションが流れました。
 ホーゲヴェイ(Hogewey)は介護保険で運用される入所型施設です。認知症村(通称)と呼ばれるホーゲヴェイもかつては収容型の施設でした。2009年に「普通の暮らし」をコンセプトとして生まれ変わった経緯であり、ユニークな試みとして世界中から注目されているようです。その特徴は、限られた空間のなかでもできる限り普通の暮らしを続けることであり、ここの住居は、田園型、都会型、旧植民地型、労働者型、アーティスト型、上位中産階級型、宗教型というオランダ人の典型的なライフスタイルに合わせてデザインされており、入所者は自分にあった暮らしを選ぶことができるそうです。150人あまりの認知症の人がこれまでの暮らしに近い環境で思い思いの時間を過ごしている様子が報道されました。
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