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病室に写真を飾ることのもう一つの意義 [日々想々]

朝日新聞アピタル「ひょっとして認知症-PartⅡ」第700回『転倒防止─「施設で最期を」が最多』(2014年12月12日公開)
 2013年6月28日付朝日新聞においては、2013年3月に20歳以上の5千人を対象として厚生労働省が実施した「国民の意識調査」の速報値(6月27日開催の厚労省検討会にて報告)が報道されました。記事によると、認知症になった時に終末期を過ごしたい場所は、特別養護老人ホームや老人保健施設といった施設が最も多かったそうです。私は、自宅でもなく病院でもなかった状況を知り、国民が介護施設に対して抱く期待と理解が深まりつつある現状を感じました。
 日本福祉大の二木立教授は、厚生労働省の人口動態統計に基づく死亡場所別の死亡数百分率の推移(2000年から2011年)を紹介し、「自宅での看取りに過度に期待しないという認識はリアルだと思います。事実、病院での死亡割合(%)は2005年をピーク(79.8%)にして漸減(ただし実数は増加)しつつありますが、自宅での死亡割合はほとんど一定だからです。」(一部改変)と述べております(二木 立:今後の死亡急増で「死亡場所」はどう変わるか? 2012年12月22日発行日本医事新報No.4626 26-27 2012)。
 土岐内科クリニック(http://brain-gr.com/tokinaika_clinic/)の長谷川嘉哉医師(日本神経学会専門医、日本老年病学会専門医)は、在宅での看取りが増えない現状に関して、著書の中で次のように語っています(一部改変)。
 「当院では『在宅死』の希望をかなえることを目指していますが、開業10年で約200名の方を在宅で看取らせていただきました。
 2006年にようやく『在宅療養支援診療所』という制度も生まれ、在宅医療を積極的に行う診療所を登録しようという動きが進んでいますが、全国で約1万件の診療所が登録をしているものの、そのうち年間10人以上の在宅看取りを行った診療所はわずか200件という状況です。
 当院もその中に含まれたことは、ある意味自信になりましたが、今後は登録している『在宅療養支援診療所』のレベルアップが望まれるところではないでしょうか。」(長谷川嘉哉:増補版 患者と家族を支える認知症の本 学研メディカル秀潤社, 東京, 2012, p75)
 在宅療養支援診療所に関する地域の情報をお探しの方は、「在宅療養支援MAP」のウェブサイト(http://www.tcs-cc.co.jp/maps/shienmap/index.html)から入って地域の診療所を探し、そこで「詳細」をクリックすれば、「対応地域」・「対応療法」・「対応疾患」などを確認することができます。以前はWAM NET(ワムネット;http://www.wam.go.jp)において、「医療」→「在宅医療でさがす」を順にクリックし、在宅療養支援診療所を検索することができましたが現在この機能は使えなくなっており非常に残念です。
 なお、在宅療養支援診療所・機能強化型在宅療養支援診療所の要件は、ウェブサイト(http://24.iryoujimu1.com/entry15.html)にてご覧頂けます。厚生労働省の調査では、12,487件の診療所が在宅療養支援診療所として届出を済ませている(平成22年7月1日現在)ものの、実際には在宅患者の看取りを行っていない診療所が6,046件あり、一般の診療所が看取りまで支えているのが現状(太田秀樹:在宅療養支援診療所の現状と課題. 日医雑誌 第142巻・第7号 1515-1517 2013)のようです。
 余談になりますが、長谷川嘉哉医師が診療に携わるグループホームでは、入居者のご家族の方に「おじいちゃん・おばあちゃんの若いときの写真を1枚持ってきて下さい」とお願いをしているそうです。
 入居者の若かりし頃の写真を部屋に飾ると、そこで働くスタッフたちが自然とその写真を目にし、「この人も昔は普通の人だったんだ」と当たり前のことに気づきますので写真を飾っているそうです。
 長谷川嘉哉医師は、「私たちは、日頃から多くの認知症患者さんたちと接しています。どうしても、認知症のおじいさんやおばあさんを診ていると、最初からボケていたんじゃないかと思ってしまいそうになるのですが、当たり前のことですが、最初から認知症の人はいません。そのことをもっとはっきりとわかっておく必要があると感じています。その方の人生を感じることで、そこに敬意のようなものが芽生えてきます。そうすると、随分と介護のしかたも変わってくるものなのです。 」(一部改変)と語っています(長谷川嘉哉:増補版 患者と家族を支える認知症の本 学研メディカル秀潤社, 東京, 2012, p85)。
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