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D7への思い─改めて『告知』について考えてみたい [日々想々]

https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/601568503346166
D7への思い─改めて『告知』について考えてみたい―「早期診断・早期絶望」にならないためには何が求められているのか?」(https://www.facebook.com/photo.php?fbid=601360306700319&set=a.530169687152715.1073741826.100004790640447&type=3&theater)に寄せられた樋口直美さんからのご指摘(https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/601462810023402?pnref=story):

樋口直美さんのご意見
 私は、医師にも、「わからない。(特に初期であるほど)」ということを前提にして欲しいです。

Re(私の返信):
 私自身が経験した「誤診例」に関して、以前、アピタルで記述(言及)したことがあります。
 探すのは大変ですが、見つけたらFacebookにてアップ致します。


誤診、それは認知症診療の世界では約20%!

 NINCDS-ADRDAによって策定されたアルツハイマー病の診断基準については、シリーズ第19回『認知症の代表的疾患─アルツハイマー病 アルツハイマー病の臨床診断』において少しだけ触れておりますね。有用な診断基準であることは間違いないのですが、20%以上の非AD疾患をADと誤診していることも事実ではあります。
 アルツハイマー病の臨床診断は決して簡単ではない(誤診が結構多い!)という事実はこの機会にきちんと覚えておいて下さいね。
 東京大学大学院神経病理学の岩坪威教授が「誤診」が多いことについて最近のデータも交えて報告しておりますので以下にご紹介します。
 「1984年に米国国立神経疾患・脳卒中研究所(National Institute of Neurological and Communicative Disorders and Stroke;NINCDS)とアルツハイマー病関連疾患協会(Alzheimer's Disease and Related Disorders Association;ADRDA)によって策定されたアルツハイマー病(Alzheimer's disease;AD)の診断基準(McKhann G, Drachman D, Folstein M et al:Clinical diagnosis of Alzheimer's disease: report of the NINCDS-ADRDA Work Group under the auspices of Department of Health and Human Services Task Force on Alzheimer's Disease. Neurology Vol.34 939-944 1984)はその後の臨床、研究において幅広く使用されてきた。その最大の理由としては、magnetic resonance imaging(MRI)はおろかcomputed tomography(CT)スキャンすら臨床現場に登場して日が浅かった時代に、主に臨床症状から診断することで感度81%、特異度70%(Knopman DS, DeKosky ST, Cummings JL et al:Practice parameter: diagnosis of dementia(an evidence-based review). Report of the Quality Standards Subcommittee of the American Academy of Neurology. Neurology Vol.56 1143-1153 2001)を達成していたことであろう。検査所見や画像所見も取り入れられてはいたが、それらの役割はあくまで副次的項目である上、それらの結果が『正常』である事が条件とされていたため、あくまで他疾患の除外が目的とされていた。この基準はその後30年近く使用され続けており、もちろん現在でも有用である事に変わりはない。
 前述のようにNINCDS-ADRDA基準による診断の確度は高く見積もっても80%であり、20%以上の非AD疾患をADと誤診している事になる。実際、NINCDS-ADRDA基準でADと診断された患者にアミロイドPETを実施した場合、実に16%の『AD』患者で検出感度以上のAβ沈着のないことが示されている(Johnson KA, Sperling RA, Gidicsin CM et al:Florbetapir(F18-AV-45)PET to assess amyloid burden in Alzheimer's disease dementia, mild cognitive impairment, and normal aging. Alzheimer's & dementia: the journal of the Alzheimer's Association PubMed PMID:23375563 2013)。」(岩田 淳、岩坪 威:アルツハイマー病の新しい診断ガイドライン─オーバービュー. Dementia Japan Vol.27 307-315 2013)


朝日新聞アピタル「ひょっとして認知症-PartⅡ」第349回『それって本当に認知症?─専門医でも見逃す認知症』(2013年12月20日公開)
 私は開業医の先生向けの認知症講演会では、「認知症専門医が見逃した認知症」というスライドを複数入れて、専門医であっても初期段階のアルツハイマー型認知症は見逃すケースが多々ありますので細心の注意を払って診察する必要がありますよ!と啓蒙するとともに、私自身の反省材料としてきました。
 しかしながら、細心の注意を払っていてもやはり誤診してしまうことはあります。そういった自験例をご紹介しましょう。
【症例】
 70歳代後半・女性
【病歴】
 X-2年、語想起障害にて発症。開業医にてアルツハイマー型認知症と診断され、以降はドネペジルによる治療を受けてきた。
 X年、榊原白鳳病院を初診。初診時の改訂長谷川式認知症スクリーニングテスト(HDS-R)は8点であった。HDS-Rの点数から判断すると比較的進行したアルツハイマー型認知症と思われたため、ドネペジルを5mgから10mgに増量してみたものの明確な改善効果は確認されなかった。効果が認められなかったため、ドネペジルは5mgの維持量に戻して継続した。
 X+1年になると焦燥(メモ1参照)が目立ってきたため、メマンチン(http://apital.asahi.com/article/kasama/2013040200011.html)の併用を開始した。メマンチン投与により穏やかとなり、HDS-Rも8→9点とほんのわずかではあるものの改善した。
 X+3年のHDS-Rは、6点であり進行速度は比較的穏やかであった。
 シリーズ第14回『認知症の診断─素人判断は難しい』において述べましたように、典型的なアルツハイマー型認知症であれば、通常はHDS-Rが年間2.5点程度悪化していくのですがこのケースにおいては3年間で2点しか悪化しておりません。
 不思議に感じて脳の断層撮影を再検査してみました。すると、3年前と比べて左側頭葉の萎縮が顕著になっておりました。
【最終診断】
 進行性非流暢性失語(Progressive non-fluent aphasia;PNFA)

メモ1:焦燥
 焦燥とはイライラして落ち着かない状態を指し、しばしば、徘徊、暴言・暴力、大声、拒絶、常同行為となって表出されます。
 焦燥は認知症患者さんの約半数が呈するとされております。抗うつ薬の副作用として焦燥が悪化しているケースもあります。
 焦燥に対しては、非定型抗精神病薬(リスペリドン、クエチアピン、オランザピンなど)やアセチルコリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン)あるいはメマンチンで改善したとの報告もされております。また、バルプロ酸、カルバマゼピンの有効性も報告されておりますが、エビデンスとしては確立されておりません。
 焦燥への対応を以下に列記します。
 a)不快な刺激を除去する(室温・照度の調整、騒音を減らす)
 b)身体的不具合(便秘・疼痛・掻痒感など)への対応
 c)好きな音楽などで落ち着ける環境を作る
 d)分かりやすい言葉・文章を使ってコミュニケーションを図る
 e)安心感を与える接し方(ゆっくりと穏やかな対応など)


朝日新聞アピタル「ひょっとして認知症-PartⅡ」第359回『それって本当に認知症?─「誤診症例から学ぶ」』(2013年12月30日公開)
 細田益宏医師および古田光医師の報告にみられるように、精神疾患と認知症の鑑別が非常に難しいケースは歴然と存在します。私も精神神経科(メモ4参照)での臨床経験がありませんので、精神疾患と認知症の鑑別に難渋するケースがあるのは紛れもない事実です。
 私のような精神疾患の診療を苦手とする認知症専門医にとって非常に有益な本が出版されております。その著書名は、『誤診症例から学ぶ─認知症とその他の疾患の鑑別』です。
 この著書の編集を担当した筑波大学医学医療系臨床医学域精神医学の朝田隆教授が序文において非常に印象的なことを述べておられますので一部改変して以下にご紹介しましょう(朝田 隆編集:誤診症例から学ぶ─認知症とその他の疾患の鑑別 医学書院, 東京, 2013, ppvii-viii)。
 「医学雑誌『精神医学』には、ケースレポートのみならず『私のカルテから』という人気の高い投稿カテゴリーもある。系続的な臨床研究にはないレアケースの報告や、ある種の精神疾患に思いがけない薬剤が効果を奏したという内容の論文が寄せられる。そのような論文の中には、若い精神科医が筆頭著者になった誤診例や危うく誤診しそうになったケースの報告も少なくない。数年来、同誌の編集委員を務めさせていただく中でこうした諸ケースには、どうも共通するものがありそうだと感じるようになっていた。
 少なからぬ精神科の教授たちが、若い精神科医は神経学的所見を取らなくなっていると指摘されるのを聞くことがあるが、そのようなことがこうした例の背景にあるのかもしれない。
 私は認知症を専門にしているが、患者さんの団体などから認知症に絡んで精神科医療に対する意見やコメントを受けることも少なくない。その中で何度も言われて強く記憶に残るものがある。若年性認知症の診断に関して『当初うつ病と診断されて2年通った後に、実はアルツハイマー病ですと言われました。この年月をどうしてくれるの?』というものである。
 以上のような現実があるだけに、好むと好まざるとにかかわらず、多くの精神科医には器質性精神疾患・症状性精神疾患と機能性精神疾患を鑑別する能力が求められる。
 東日本大震災以降、がぜん注目されているものに失敗学がある。その根本は『失敗にはいくつかのパターンがある』という考えである。老年期精神疾患の鑑別の難しさと重要性を学ぶには、正統的な教科書スタイルというよりも痛恨の誤診症例を振り返って、失敗に至るパターンを学習することが効果的ではなかろうかと考えた。以上のような思いがあって本書を企画した。
 本書の題名には敢えて『誤診症例』という言葉を用いた。その理由を、偉大な先達の言葉を拝借してここに説明しておきたい。
 『誤診という言葉はかなりどぎつい響きをもっている。医者はみなこの言葉をはなはだしく忌み嫌う。学会報告でも“貴重な一例”とか“診断に困難をきたした症例”という演題はあっても、“誤診例”という報告はまず見当たらない。(中略)医者の間ではこの言葉をもう少し使ってもよいのではないか。あるいはその意味の取違いがないようにしておくとよい。(中略)診断とは必要なあらゆることを知り尽くそうとする終わりのない努力である』(山下 格:誤診のおこるとき─早まった了解を中心として. 精神科選書3, 診療新社, 1997)」

メモ4:精神神経科
 「最近になってわが国でも厚生労働省により、神経精神科とか精神神経科という標榜科名が廃止」(朝田 隆編集:誤診症例から学ぶ─認知症とその他の疾患の鑑別 医学書院, 東京, 2013, p2)されております。詳細はウェブサイト(http://www.med.or.jp/nichinews/n200305l.html)などでご覧頂けます。


朝日新聞アピタル「ひょっとして認知症-PartⅡ」第402回『さまざまな「急速に起きる健忘」― 一過性てんかん性健忘にも種類』(2014年2月11日公開)
 脳ドックなどを受けますと、無症候性脳梗塞が見つかるケースは多々あります。
 無症候性脳梗塞は、欧米では潜在性脳梗塞(silent cerebral infarction;SCI)と呼ばれており、韓国での報告では、40代2.4%、50代6.6%、60代14.7%、70代25%にSCIが認められたことが報告されております。なお、脳ドックを受診した健常成人(平均60歳)における無症候性脳梗塞の頻度は、60歳代から急激に増加し、70歳代以降では35%にも達するものの全体の頻度は約14%で、久山町の剖検による頻度12.9%とほぼ一致していることも報告されております(斎藤 勇:無症候性脳血管障害. 日本医師会雑誌・生涯教育シリーズ56─脳血管障害の臨床 S203-213 2001)。
 したがって70歳以上の方がCT・MRI検査を受けますと、およそ3人に1人の割合で「あなたは脳梗塞があります」と医師より告げられることになるわけですね。
 「無症候性脳梗塞」に関してもう少し詳しい情報を知りたい方は、大阪医療センターのウェブサイト(http://www.onh.go.jp/seisaku/circulation/kakusyu115.html)などご参照下さい。
 しかしながらここで注意しておくべきことがあります。隠れ脳梗塞による一過性てんかん性健忘かも…と思っていたら、そうではない場合もあるということです。2012年4月21日に開催されたアルツハイマー病研究会第13回学術シンポジウムにおいて、東京都健康長寿医療センター放射線診断科の徳丸阿耶部長は、「治りにくいてんかん性健忘として、海馬硬化症(メモ5参照)の存在を忘れてはならない」ことを指摘しました。

メモ5:海馬硬化性認知症(hippocampal sclerosis dementia;HSD)
 海馬硬化症は、てんかん・認知症などとの関連が示唆されている疾患です。高齢初発のてんかん患者さんを診察したときには、海馬硬化症も念頭におく必要があります。
 病変が海馬に限局しているときには、症状は記憶障害だけです。しかし病変が拡がってくると、その症状はアルツハイマー病と類似した症状を呈してきます。
 軽度認知障害、認知症疑いでMRIを施行した3,500例のうち、2%程度で「海馬硬化症」が確認されるそうです。海馬硬化症においては、MRI上は海馬の萎縮所見が目立つため、安易にアルツハイマー病と誤診される可能性があり注意が喚起されております(村山繁雄:認知症におけるMRI診断の可能性. 医学のあゆみ Vol.235 No.6 619-626 2010)。
 海馬は、低酸素や虚血に対して特に脆弱な部位です。心不全・呼吸不全などの内科疾患が重篤化した場合や、麻酔・手術などの際に脳が低酸素状態にさらされた場合に、海馬の神経細胞が脱落し海馬硬化症が生じうるのではないかと考えられています。
 海馬硬化症の画像診断の特徴として、両側ないしは片側の海馬の萎縮と、MRIでのT2強調画像やFLAIR画像でのシグナル上昇が指摘されています。
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