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無診察処方─「いつもの薬がほしいだけ」は意外に怖い [医療]

「いつもの薬がほしいだけ」は意外に怖い【日経Gooday 2016/3/21】
 http://style.nikkei.com/article/DGXMZO98554460X10C16A3000000?channel=DF130120166093&style=1

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 病院の受付で「診察はいいから、いつもの薬だけください」と頼む人。気持ちは分かるが、これはNGだ。やわらぎクリニック副院長の北和也さんに、薬との上手なつきあい方を分かりやすく解説してもらいました。

 (病院受付にて)
患者さん
 「すみません。××ですが、いつもの薬がほしいんですけど」
受付スタッフ
 「では診察の順番をお待ちいただけますか?」
患者さん
 「いや、特に変わりはないんで診察は結構ですわ~。なんとか薬だけいただけないですかね?」
受付スタッフ
 「申し訳ありませんが、それはできないんです……」
患者さん
 「なんで? いつもの頭痛薬と胃薬をもらうだけなのに。痛っ、いたた……。怒ってたら頭が割れるように痛くなってくるわ。今日は過去最高に痛いわ~っ!」
受付スタッフ
 「……(絶対診てもらった方がいいやん!)」

 こんなやりとり、今までにされた方がおられるかもしれませんね(もちろんこんな激しくはないでしょうが……)。
 確かに、特に相談したいことがなければ、「いつもの薬がほしいだけなのに、なんでわざわざ診察室に入らないといけないのか」と、面倒くさく感じることがあるでしょう。時間がもったいないので、薬だけもらってさっさと帰りたいという気持ちは、とてもよく分かります。
 でも、これ、ダメなんです!
 「無診察処方」といって、医師法違反になってしまうのです。
 薬を処方する立場の私にも妻がいて、3姉妹の父親でもあるので、まだまだ警察の厄介になるわけにはいかないのでありますっ!

■なぜ毎回診察してもらわなければいけないの?
 「でも、毎回同じような診察で、いつもの薬をもらうだけなのに、なぜ診てもらう必要があるの?」
 その疑問はごもっともです。
 「何も変わっていないのに、何か処方が変わるわけ?」という気持ちですよね。よく分かります。特に、自覚症状の出にくい病気(たとえば高血圧や安定した糖尿病)や、薬でよく症状が抑えられている患者さんの場合、そう考えてしまうのも無理ないと思います。
 でもですね、これって時にはとても危ないことになるんですよ。「危ないこと」というのは、大きく分けて2つあります。

■危険【1】え、この症状、薬の副作用だったの?
 まず、飲んでいる薬の副作用が出ているのに、気づかずに見過ごしてしまう危険性です。薬の副作用がすでに出ているにもかかわらず、それに気付かずに、その薬をまた1~2カ月分出してもらったら……。これ結構怖くないですか?
 気付いた時にはどえらいことになって、取り返しのつかないことに……。なんてめっちゃイヤですよね?
 「いや、そんなことくらい普通自分で気付くって! 大丈夫!」という方もおられるかもしれません。でも実際は、結構気付かないものなんです。
 たとえば、「なんだか最近だるいな~」と思いつつ、「年のせいかな」で片づけてしまっていたところ、実はいつも飲んでいる薬の副作用だった、なんてことはあり得ることです。以下に、患者さんが「まさか薬の副作用だったなんて!」と驚かれたケースをご紹介しましょう。

■まさか薬のせいで! 男性なのに乳房が女性化
 心療内科に通院中の中年男性が、「最近お乳が張って痛い」と相談してきたので、いろいろとお話をうかがったところ、どうやら飲んでいる薬の副作用による「女性化乳房」が原因だということがわかったのです。
 患者さんは、2~3年くらい、誰にも相談せずに放っておいたのだそうです。

■まさか薬のせいで! 頭痛の薬で頭痛が悪化
 慢性頭痛に痛み止め(消炎鎮痛剤)を毎日内服していても頭痛がちっともよくならないと思っていたら、実は「薬物乱用頭痛」だった、ということもあります。
 薬物乱用頭痛は、鎮痛剤の使い過ぎによって起こる頭痛です。
 頭痛が起きるたびにロキソプロフェンなどの鎮痛剤を頻回に内服することで、さらなる頭痛を誘発していたわけです。
 「まさか、頭痛薬が頭痛を起こしていたなんて」と、患者さんはびっくりするわけです。

危険【2】薬の量や種類を変えるタイミングを逃してしまう!
 「薬だけもらって帰る」が危ない理由の2つ目は、「たとえ自覚症状がなくても、薬の種類や分量を変更する必要が生じている可能性がある」ということです。
 薬の中には、血中濃度が一定の範囲を超えると重い副作用が出てしまうため、毎回採血して血中濃度をチェックし、用量を調節しなければならないものもあります。
 一方、症状がなくなってくれば、薬の量を減らしたり、もっと効き目がマイルドな薬に変更する必要もあります。それは患者さんにとってもうれしいことですよね?

 無症状=診てもらわなくても大丈夫、というわけではないのです。
 ということで、いつもの薬がなくなったら、面倒でも、ぜひかかりつけの医師の診察を受けてください。そして、このまま今のお薬を飲んでいればいいのか、きっちり確認してみてくださいね!


北 和也.JPG
Profile
北 和也(きた かずや)
やわらぎクリニック副院長
2006年大阪医科大学卒。府中病院急病救急部、阪南市民病院総合診療科、奈良県立医科大学感染症センターなどで主に総合診療・救急医療・感染症診療に従事。手足腰診療のスキルアップのため、静岡県は西伊豆健育会病院整形外科への3カ月間の短期研修(単身赴任)の経験もあり。現在は、やわらぎクリニック(奈良県生駒郡)副院長として父親とともに地元医療に貢献すべく奮闘中。3姉妹の父親で趣味は家族旅行。

大腿部骨折―5日たつと危険 [医療]

大腿部骨折
 手術、24時間体制で
 リハビリ病院と密に連携

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 頸部骨折では折れた骨頭を外し、金属などでできた人工骨頭に置き換える手術が多い。臀筋(でんきん)というおしりの筋肉を切開し、そこから人工骨頭を入れてはめ込む。転子部は折れてもくっつきやすいため、通常は手術で太ももの横側を切り、金属製の板や太いネジ、クギなどを使って骨折部を固定する。
 
5日たつと危険
 大腿部は骨折したらできるだけ早く手術すべきだとされる。5日以上たつと手術しても歩きづらくなり、身体機能が衰えて死亡率が高まるという報告がある。同病院(=東戸塚記念病院)は心臓病や腎臓病など合併症がなければその日のうちに手術する。24時間以内の手術の割合は全体の7割という。
 頸部骨折では100歳以上であっても人工骨頭に置き換える。「手術せずにくっつくのを待つ場合に比べ、痛みに数カ月も苦しまなくて済む」(東戸塚記念病院・山崎謙院長)。
 一方、70歳以下ではネジで留める骨接合術や骨盤側にも部材を使う人工関節を選択する。活動的な人が人工骨頭にすると、ゆるみが出て再手術になる可能性があるためという。
 339例と九州地区で最も手術が多かった済生会熊本病院(熊本市)は、頸部骨折の手術で臀部ではなく、正面から人工骨頭を入れる術式を採用する。股関節の構造上、前からはめ込むのは難易度が高いが、安楽喜久・整形外科部長は「筋肉を切らずに済み、傷も小さくなる。寝たままでも消毒しやすい」と話す。

高齢化で患者が増加
 「片足立ちで予防を」
 厚生労働省などの統計によると、大腿部骨折の患者は2010年で約18万人。患者の大半は65歳以上で、高齢化に伴って30年には30万人に達すると推計されている。
 日本整形外科学会などがまとめた診療ガイドラインの策定委員長を務めた総合南東北病院(福島県郡山市)の松下隆外傷センター長は「骨粗しょう症でなければ、転んだ程度で大腿部は折れない。50歳を超えたら骨密度がどれぐらいかを測定し、自分の骨の状態を把握すべきだ」と強調する。
 早めに骨粗しょう症治療を始められれば、あごの骨の壊死(えし)などの副作用を伴うことがある強い薬を使うのを遅らせることができるという。松下センター長はスクワットと片足立ちを毎日行うことも推奨する。筋力を高めてバランスを調整する力も改善し、転倒などを防ぐためだ。「片足で3分以上立っていられれば問題はないとされる。自分のバランスカの測定と訓練を兼ね、取り組んでほしい」と話している。
 【2016年3月22日付日本経済新聞・特集】

専門医が推奨する「せん妄」の第一選択薬は? [医療]

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専門医が推奨する「せん妄」の第一選択薬は?

過活動型にはリスペリドン、またはクエチアピン
 日本総合病院精神医学会「せん妄指針改訂班」が、患者さんの背景別にせん妄治療の第一選択薬について調査したところ、内服可能な「過活動型せん妄」の患者さんに対しては多くの医師が非定型抗精神病薬のリスペリドンまたはクエチアピンを推奨していました。「低活動型せん妄」では、半数以上の医師が推奨する薬剤はありませんでした。研究グループは「多様な臨床像のせん妄治療の第一選択薬として、多くの専門医の合意を得られる薬剤とそうではない薬剤があることが示された」としています。

詳細は ↓
 https://medpeer.jp/news/article?id=198&from=top_news_detail

感染症 5分で判定―20年実用化 [医療]

感染症 5分で判定
 阪大・東芝、100分の1に短縮―20年実用化

 大阪大学と東芝はインフルエンザなどの感染症を従来の100分の1以下の5分で検査できる新しい技術を開発した。2020年に国内で検査装置を売り出す。コニカミノルタなども感染の初期段階から判定できる技術を確立した。感染直後に高い精度で発症の有無が把握できれば、二次感染を抑え患者を大幅に減らせるようになる。

 阪大と東芝は独自に開発したセンサーでウイルスの形状を見極めて5分程度で判別する。遺伝子を増幅する現在主流の方法では8時間ほどかかっていた。東芝はメディカル事業をキャノンに売却する方向。実用化した商品の販売会社は現時点では未定だが、検査に使う中核部分の半導体チップは東芝が生産する。
 細菌やウイルスによる感染症は自覚症状が出ないと病院に行かない例が多い。特に新興国などでは治療が遅れて重症になりがちだった。
 コニカミノルタと東京都医学総合研究所(東京・世田谷)などは妊娠の有無を判断する簡易検査技術を大幅に改良してインフルエンザの検査装置を開発した。高性能の蛍光色素を使ったチップを光学技術を応用した読み取り装置で判別。蚊が媒介するジカ熱やデング熱にも応用できるという。
 これまで発症後1~2日の患者しか判別できなかったが、12時間以内でも対応できる。17年度にも新興国向けに検査装置を実用化する。検査キットは1個1000円程度になる見込み。(以下省略)
【2016年3月15日付日本経済新聞・企業】

私の感想:
 これまでは症状が出て陽性反応が出るまでに8時間程度かかっていたのが近未来の2020年にはなななんと5分とは!
 これまでは、インフルエンザのような症状が出ても、陽性反応が出るまでに6~14時間程度を要していたため成人夜間応急診療所などを急いで受診せず翌日まで様子を見て・・ということがよく行われていました。しかし、「5分」で判断可能となると、普通感冒のように感じても、「冬場に熱が出たら取りあえず夜間でも応急診療所に行って確認を!」という状況になることが容易に想像されますね。受診者が多すぎて応急診療所のシステムが機能しなくなるのではないかと懸念されます。

医療維新・中川俊男・日医副会長に聞く [医療]

医療維新・中川俊男・日医副会長に聞く
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「診療報酬の遍在是正」がキーワード - 中川俊男・日医副会長に聞く◆Vol.1
 最大の成果は調剤医療費への歯止め
 https://www.m3.com/news/iryoishin/404481

――長期投薬は、「モラルハザードの是正」から、制限したとのことです(『「内服薬2種類以上、減少」で250点』を参照)。

 はい、その点が重要なポイントです。「90日処方が当たり前」というのは、医療としておかしい。中医協総会にも日医総研のデータを出しましたが、「長期投薬により、患者が服薬を忘れたり、中断したために、病状が改善しなかった」などの問題が生じています(『分割調剤や残薬調整、診療側と支払側で意見対立』を参照:https://www.m3.com/news/iryoishin/373053)。大病院から逆紹介で診療所に戻ってきても、患者さんが「60日処方」や「90日処方」 に慣れてしまっています。2カ月も、3カ月も受診しなくてもいい状況は問題。


――「30日超」の場合には、病状が変化した際の対応方法を患者に周知したり、分割調剤を検討するなどの対応が必要になります。

 「30日超」という言葉が入ったのは、画期的と評価しています。漫然と長期処方をするのではなく、それが本当に必要なのかを今一度、立ち止まって考えていただきたい。


――残薬問題についても対策が講じられ、処方せん様式も変更されました。残薬対策は必要ですが、疑義照会が増え、現場の業務が大変になる懸念もあります。

 その影響こそ、まさに検証が必要。残薬が多いのは、多剤投薬ではなく、処方日数が長いことが主たる原因だと私は思っています。

 そのほか薬関連では、院内処方に対する「外来後発医薬品使用体制加算」の新設も、注目点です。医薬分業から院内処方に戻す選択肢もあり得るという意味が込められています(『「後発品70%以上」、処方料3点加算』を参照)。


――「モラルハザードの是正」から改正された点は、他に何がありますか。

 回復期リハビリ病棟の疾患別リハビリテーションで、アウトカム評価が導入されたことです(『回復期リハビリでアウトカム評価を導入』を参照)。「回復期リハビリ病棟の中には、入院患者の9割以上に、1日平均6単位を超す疾患別リハビリを実施している病棟が約2割ある」といった実態は、やはりおかしい(『リハビリ、「アウトカム評価」重視へ』を参照)。その背景には、理学療法士数が多すぎるという現状があると考えています。





「7対1の基準」、見直すべきではなかった - 中川俊男・日医副会長に聞く◆Vol.2
 最患者減に伴い、7対1病床は自然に減少
 https://www.m3.com/news/iryoishin/404482

――「重症度、医療・看護必要度」の該当患者割合は、200床未満の病院については、2018年3月末までは、23%以上という経過措置が設けられました。

 経過措置を延長するかどうかは、次回改定に向けた議論次第です。


――7対1入院基本料から移行する場合、10対1入院基本料、あるいは地域包括ケア病棟入院料など、どこに移行するケースが多いと見ておられますか。

 地域の状況によって異なるため、一概には言えないと思います。


――7対1入院基本料は、基本的には看護師の配置に応じた点数設計です。この辺りは今後、何らかの見直しが想定されるのでしょうか。

 確かに、「看護師の数で、入院基本料が決まるのは問題」という声はありますが、「簡単に言わないでほしい」と私は思います。仮に例えば、「重症度、医療・看護必要度」ではなく、「重症度、医療必要度」に変更された場合、医師数という要件が出てくる可能性があります。さらに専門医などの要件が入るとしたら、より複雑になってしまう。病院経営においては、支出に占める看護師の人件費割合は大きい。他に代替案は見当たらず、現状では看護師の配置に応じた点数は妥当でしょう。





かかりつけ医は1人に限らず - 中川俊男・日医副会長に聞く◆Vol.3
 大病院の定額負担、「紹介が原則」周知が狙い
 https://www.m3.com/news/iryoishin/404484

――成人の場合、内科的な疾患でも複数罹患していたり、眼科や耳鼻咽喉科などに受診するケースもあり得ます。「かかりつけ医は1人」と限定するのは、難しいのでは。

 その通りです。成人の場合、「かかりつけ医は1人」という施設基準が入らないよう、注視していきます。





在宅専門診療所、原則は「認めず」 - 中川俊男・日医副会長に聞く◆Vol.4
 今後の注目点は消費増税の時期と対応
 https://www.m3.com/news/iryoishin/404485
 インタビュー 2016年3月13日 (日)配信聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長

――在宅関連では、在宅専門診療所の新設が注目点です(『「在宅患者95%以上」が在宅専門診療所』を参照)。これは専門診療所の積極的な評価なのか、あるいは既に専門診療所があるため、一定の要件を課し、ルール作りをすることが目的なのでしょうか。

 「在宅専門診療所は、原則的にはノー」が基本スタンス。ただし、「かかりつけ医」が外来診療の延長上で在宅医療に取り組むには、限界があります。それを補完する機能が必要なために在宅専門診療所を認めたのです。

 在宅専門診療所については、今まで現場の医療者が構築してきた地域医療のネットワークを崩さないように、いろいろな開設要件を設けてもらいました。モラルハザードが起きないようにするためです。中でもポイントは、「外来診療が必要な患者への対応のため、協力医療機関を2カ所以上確保すること、または地域医師会から協力の同意を得ていること」という要件です。医療機関の多くは地域医師会の会員ですから、結局は地域医師会の意に反した在宅専門診療所の運営は難しいでしょう。在宅医療では、「患者紹介ビジネス」が問題になり、前回の2014年度改定では療養担当規則までも変更しました。在宅専門診療所については、引き続き慎重に対応していきます。



今年4月からスタートする患者申出療養制度について、中川副会長は「混合診療の拡大ではない」と説明。


――そのほか在宅関連では、前回改定で引き下げられた「同一建物・同一日」の在宅時医学総合管理料(在総管)の見直しが行われました。これで問題は解決できたとお考えですか。

 在総管は「1人」「2~9人」「10人以上」という区分になりましたが、これには反対でした。「10人以上」については、何十人でもまとめて訪問することに、「お墨付き」を与えるようなものだからです。

 どのように運用されるかは、実際にやってみないと分かりません。ただ行政は今、どんな高齢者施設・住宅があるかを把握しきれていないのが現状。施設・住宅への検証調査を行おうとしても、無届では送付先がないわけです。在宅関連の検証調査においては、この辺りも課題になります。


――今改定で、特に影響が大きく、今後の検証が必要と思われる部分はどこでしょうか。

 最大のポイントは、7対1入院基本料の見直し。そのほか、在宅専門診療所、調剤報酬の関連です。


――今改定の議論では、保険外併用療養制度を見直し、「選定療養」の類型を追加する議論もありました(『「治療に関係ない検査」で自費徴収を検討』を参照)。

 厚労省が、「選定療養」についても、「保険導入の可能性が生じることがあり得る」と提案したので、見直しに異議を唱えたわけです。「選定療養」は保険適用にはならない区分。将来、保険導入を目指すなら「選定療養」であり、この区分を見直すなら、保険外併用療養制度の全体の枠組みの議論をしなければいけません。


――今改定では、費用対効果評価も試行的に導入されます。その項目は4月以降に決定する予定です(『費用対効果評価、既収載は8品目程度が対象』を参照)。

 費用対効果評価は、新規収載の医薬品や医療機器は対象外。また厚労省の説明によると、「費用対効果が見合わないから、保険適用はしない」などの使い方は今はしないとのこと。「高すぎる価格のものを抑える」のが目的と理解しており、これにより試行的な導入を了承したのです。これらの条件は守っていただきたい。


――最近では、分子標的薬などで高額な新薬が上市されています。

 確かに、新薬でも費用対効果評価を行うべきという議論が出てくる可能性も否定できません。費用対効果評価をどこまで適用するかについては、冷静な判断が必要。例えば、中医協総会でも言いましたが、生涯医療費という観点を踏まえて評価すべきであり、仮に薬価が高い新薬でも、治療期間中の医療費だけでなく、その新薬で完治すれば、生涯医療費は安くなることも考えられます。


――患者申出療養制度も、この4月からスタートします。

 患者申出療養制度ですが、「混合診療の拡大」と誤解している人がいます。この制度は、あくまで「評価療養」の「先進医療B」の一形態。先進医療は、「医療機関発」ですが、患者申出療養制度の場合は「患者発」という違いにすぎません。「患者さんが申し出てきた医療について、誰が安全性や有効性を判断するのか」という指摘がありますが、臨床研究中核病院や国の組織で検討する仕組みになっています。そもそも今回は入口を開けただけで、それほど件数は増えてこないと思っています。多くは「先進医療B」で対応できるでしょう。

ジカ熱、昨年以降本邦2例目  [医療]

岡崎の女性 ジカ熱
 ブラジルで感染か

 厚生労働省は11日、ブラジルから帰国した愛知県の30代女性がジカウイルス感染症(ジカ熱)と診断されたと発表した。女性はブラジルで蚊に刺されたと話しており、厚労省は現地で感染したとみている。中南米で流行が始まった昨年以降、日本で感染者が確認されたのは、川崎市の男子高校生に続いて2人目。
 ジカ熱は、妊婦が感染すると、先天的に頭の小さい「小頭症」の子どもが生まれる可能性が指摘されている。厚労省は、この女性が妊娠しているかどうかは明らかにしなかった。
 愛知県岡崎市によると、女性は市内在住という。
 厚労省の発表では、女性はブラジルに約2週間滞在し、2月22月に帰国した。
3月7日に発疹や38度台の発熱、関節痛の症状が出た。発疹が全身に広がったことから10日に医療機関を受診し、医師が疑い例として自治体に報告。国立感染症研究所で血液や尿を調べた結果、感染が確認された。自宅で療養中で、すでに熱は下がり、状態は安定しているという。
 日本は現在、ウイルスを媒介する蚊の活動期ではないため、厚労省は「国内で感染が拡大するリスクは極めて低い」としている。
 ジカ熱の潜伏期間は2~13日とされているが、期間を過ぎて発症することや、症状に気付かないこともあるという。厚労省は「流行地域から帰国後に発疹、発熱などの症状が出たら、潜伏期間を過ぎていても早く受診し、医師に渡航歴を伝えてほしい」と、呼びかける。
 性交渉による感染も疑われており、流行地域から帰国した男性は症状の有無にかかわらず、妊娠中のパートナーと性行為をする際にはコンドームを使うことを勧めている。(竹野内崇宏)
 【2016年3月12日付朝日新聞・社会】

ジカ熱
 https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/541431922693158

P.S.
 デング熱が流行した一昨年の夏は、コートで蚊に刺されるとすごく嫌な気分になったことを記憶しております。
 今回のジカ熱の場合、デング熱よりも本人の症状は軽いとは言え、「小頭症」の子どもが生まれる可能性(ブラジル:ジカ熱感染の妊婦の3割で小頭症が発生)を考えますと、デング熱よりも恐ろしいですよね。男性だってギラン・バレー症候群という難病発症の危険性があります。
 虫除けスプレーを顔に振りかける訳にもいかないし・・。

ギラン・バレー症候群
 http://health.goo.ne.jp/medical/10850400
 http://www.nanbyou.or.jp/entry/1558

インフルエンザ─診断・治療・感染力 [医療]

インフルエンザB

 https://askdoctors.m3.com/topics/unanswered?message_id=15371179

 参考になりましたら幸いです。
 来年以降のために、基本的な知識を整理して下さいね。

> 私も日曜の夜から気持ちが悪く、もし、私もインフルエンザなら水曜で、4日目になります。

 抗インフルエンザ薬は、発症48時間以内、可能な限り36時間以内に投与開始しないとその効果は保証されません。
 もし日曜日の発症でしたら、今から抗インフルエンザ薬を服用しても、効果は期待できません。

検査:
 インフルエンザの迅速診断では、早ければ発症後6時間程度で十分に陽性になるという意見もありますが、発熱後12時間以降(14時間程度かかる)になるという意見もあります。
 ですから、6時間以内に検査して陰性であっても、インフルエンザは否定されておらず、12時間以上経過してから再検査する必要があります。

感染力:
 インフルエンザ発症1日前から発症数日間はヒトに感染させるリスクを持っています。

治療効果:
 タミフルの服薬により、インフルエンザの症状が21時間ほど早く収まるという効果が期待できます。

P.S.
 熱が出る一日前から感染力がある状況ですので、なかなか感染予防対策は難しいのが現状です。
 インフルエンザを早期診断する(=最大で6時間ほど陽性診断が早まることもある)機器を置いている医療機関の一覧は以下です。
 http://influlab.jp/
 上記サイトの医療施設「検索」にて調べられます。

若手・中堅座談会:「2035年の医療を語る」 [医療]

シリーズ: 若手・中堅座談会
 「2035年の医療を語る」

インセンティブが重要?「医師にも成果報酬を」◆Vol.7
 「真のブレークスルーは起こらない」の声も
 https://www.m3.com/news/iryoishin/399567?dcf_doctor=true&portalId=mailmag&mmp=MD160228&dcf_doctor=true&mc.l=146245429


渋谷:
 今までの話では、先進医療は医療の進歩に必要だが、革新的なものに関われる医師は一部の人だけで、コモディティ化していく人もいる。今ある適正な医療技術で回していけば、それがアウトカムにも良いという意見が出た。それは正しいと思う。
 ただ、医療はある程度、革新的なものに取り組み、進化させていくことが絶対必要。そのバランスが重要。そういう場合に、皆はどちらにいたいか。大学にいたいのか、一般病院にいたいのか。それは偉くなりたいとか、欲望の話ではない。自分の達成感、人がやっていないことにチャレンジしようというのが達成感になると思う。どう考えるか。

杉原:
 僕は教科書に載るような仕事がしたい。そういう夢がある。その意味では最先端の開発の方にいたい。

渋谷:
 でも、一般病院の泌尿器科部長でも良いと言っていたが。

杉原:
 大学で一旗揚げて、部長になりたいですね。面倒な仕事を押し付けられる前に……。

渋谷:
 調子良いですね(笑)。公平先生は?

公平:
 ジェネラリストとスペシャリストだったら、やはりスペシャリスト。あと、クオリティも保つためには、ある程度大きい施設にいないといけない。それで自分の安心感と達成感が得られる。

渋谷:
 お二人は、自分で開業したいとは思わない?

杉原:
 ないですね。

公平:
 ないですね。40歳ぐらいまでで、何となく方向性が見えてくるんだと思う。

杉原:
 私は、医療の進歩について、「もう真のブレークスルーはないのでは」と思っています。抗生剤、麻酔、予防接種、CTといったレベルのブレークスルーとなる発明は出尽くしてしまい、今後は高額だが効果は限定的な治療しか生まれない。再生医療も遺伝子治療もロボット手術も、発達すればするほど高額すぎて皆保険制度にはなじみません。
 頂上をぐっと持ち上げるような医療の進歩は限界に来ています。底を上げるのではなくて、中央値を上げるような方向に移るべきだと感じています。一発で皆のOS(全生存期間)が改善する治療はもう無いと思います。

渋谷:
 技術進歩が価格破壊を起こせば別ですが。それに、今までと違って、単体のどこかのパーツが壊れるというよりも、(高齢者の病気の多くは)生活習慣や加齢のプロセスだから、ますますそういうことになりますね。医療自体がより生活に近いところになる。
 では、達成感について。診療報酬は(誰がやっても)値段が同じです。成果による報酬があるとやる気になりますか?

公平:
 例えば、専門医を取得して、部長になったり、重症例を診たりとか、そういうインセンティブが確実に付いていないと。今の状況では5年目、10年目、15年目であっても、報酬は変わらない。インセンティブがほとんどない状況です。大学ではアルバイトに行かないと収入が減る、大学に残ることがデメリットにならないようすべきです。成果主義というか、取得した専門医資格試験などが必ず給料に反映されるように。

伊藤:
 外科医は自分の腕がいいと言うのが、一番のモチベーションだと思います。それを評価して認定してくれる、専門医、認定医があるといい。

杉原 専門医は専門に集中させてほしいです。特に日本のドクターは雑用が多い。医師免許がないとできないことに特化してやらせてほしい。

吉野:
 外科医は忙しいことが多いですが、他の暇そうで、いつも医局でお茶飲んでいる先生と給料が同じというのは、「どうかと思うよね」という話はあります。

公平:
 眼科や耳鼻科など、診療科の保険点数の差によっても、大きく違う。そのことが病院の中でも、やる気をだいぶ変えていると思う。ベースの給料は一緒でも、外来患者数など、何か給料に反映させるものが必要です。

吉野:
 忙しいことと儲かることは、また別の話ですよね。すごく働いていてとても大変な科なのに、病院経営で見ると良くない、となってしまうこともある。

渋谷:
 忙しさとは別に、何を見てほしいですか。仕事の割に給料が悪いなら辞めて他に移ればいい。でも、 本当に患者のためになっていて、結果が出ているならきちんと評価されるべきですよね。

吉野:
 外科では、「患者が元気になってくれればありがたい、それがやりがい」と言ってやっている人だけが残っている。若い先生は「自分の生活を大事にしたい、そんなコスパ(コストパフォーマンス)の悪い科は嫌だ」となって、外科医はどんどん減っていると思う。

森田:
 値段は自由化しないといけないと思う。今は診療報酬で、在宅医療に誘導したりしているが、それをやったために“悪徳業者”が出てきた。利益誘導しているのだから、利益を取ろうとする人が出るのは当然です。それならば、利益誘導しなければいいと思う。需要があるのなら、価格を自由にすれば、ある程度お金を払う人は絶対に出てくる。経営がそれで成り立つ。

渋谷:
 確かに一律の診療報酬と価値がマッチしていないのは問題 。でも全てが市場原理のみでは、医療は成り立たない。そういうコンセンサスはある。

岡崎:
 渋谷先生の生きがいは何ですか?

渋谷:
 僕は、生まれたからには世の中の役に立ちたい、と思う。そして、いつも、自分がわくわくすることをやっていたい。志を共にできる人との出会いが全てで、「この人と一緒に仕事がしたいな」「楽しいな」と思う。そこで自分の力が発揮できたら最高です。

渋谷:
 岡崎先生は?

岡崎:
 自分は自分の手で患者に診断をつけて、治療していければ...実家の父も医師ですが、実家には帰ってくるなと言われています。地元で医師をするなら、地元の大学卒でないと厳しいようです。自分が東京大学で勉強できたのは、家族の助けがあり、とても恵まれていると思います。社会に対して還元しないといけない。そう考えています。
 将来的なことについては、進みたい科すら決まっておらず、具体的な将来が思い描きにくいのが正直なところです。最終的には、日本の医療・患者さんに最大限貢献したいので、幅広く世の中や医療のことを知らなければならないのは間違いないと思います。


【参加者プロフィール】(※所属は2015年11月末現在)
【司会】渋谷健司氏 東京大学大学院教授
 公平順子氏(静岡市立静岡病院所属、2000年卒)
 吉野美幸氏(新座志木中央病院、国境なき医師団に所属、2004年卒)
 杉原亨氏(東京医科大学病院所属、2005年卒)
 伊藤丈二氏(東京ベイ浦安市川医療センター所属、2006年卒)
 森田知宏氏(相馬中央病院所属、2012年卒)
 岡崎幸治氏(日本海総合病院所属、2015年卒)


 

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