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「医療事故調査制度」の医療事故に該当しますか? [医療事故調査制度]

 「m3.com」の「Doctors Community」の「医療事故・訴訟」で質問しました。

タイトル:
 「医療事故調査制度」の医療事故に該当しますか?

質問内容:
 療養病床の勤務医です。
 「医療事故調査制度」が始まり5か月が経過しました。療養病床とはいえ、決して「医療事故」とは無縁ではありません。
 さて、『法律家と医師が解明する・動き出す医療事故調査制度』という本に「医療事故調査制度の特徴」(pp9-13)という記述があります。
 以下に抜粋致します。

医療事故調査制度の特徴
特徴1:
 医療機関の自主調査が原則で医療事故調査・支援センターが助ける
特徴2:
 客観的公平な調査であるべきで、法的責任や行政処分につながらない
特徴3:
 当該医療機関による報告と調査が義務化されている
=この法律で言う「医療事故」という用語、その定義は医療法第6条の10と厚生労働省令(2015(平成27)年5月8日厚生労働省令第100号「医療法施行規則の一部を改正する省令」)(☞p.89 資料2)で次のように決められた。
 要するに、①医療開始前の時点で、②医療途中で死ぬことが予期できたこと、③家族に説明するか、診療録に記載するか、当該医療従事者からの事情聴取で判明した、ときには「医療事故」に該当しないことになる。
 こうした「医療事故」該当の有無の判断が、病院等の管理者に委ねられているという難点があるものの、医療事故に該当するとなれば、必ず医療事故調査・支援センターに事故報告し、かつ自主調査を行わねばならないと法律化された意義は大きい。
【編/医療と法ネットワーク 法律家と医師が解明する・動き出す医療事故調査制度. SCICUS, 東京, 2015, pp9-13】

 そこで質問なのですが、上記の文面を読みますと、医療開始前の時点で起こり得ることを想定し家族に説明し診療録に残せば「医療事故」には該当しない旨が記載されております。
 となりますと、例えば療養病床で起こり得るような医療事故(?)と言えば、ア)CVC挿入に伴うトラブル、イ)転倒→骨折に伴うトラブル、ウ)窒息?→急変などが代表的なものになりますので、例えば、入院した時点で、偶発的にある一定の割合で起こり得る事項に関してはきちんとインフォームドコンセントを取っておき診療録に記載すれば、仮にウ)のようなトラブルが起きた際にも、ご家族には、「夜間は一人のスタッフが約20名の患者さんの対応にあたりますので、全員の患者様に対して、滞りなく吸痰することには限界があります。そうした背景もあり、発見された時点ではすでに呼吸が停止しておりました。」という事実説明を行い、家族から「医療過誤ではないのか?(=看護師の「目配り」不足?)」と追求されても、「起こり得る偶発的な危険性に関しては入院時に説明したとおりです」と回答し、医療事故には該当しないと判断すれば良いのでしょうか?
 アドバイス頂けましたら幸いです。


 寄せられましたコメントは以下をご覧下さい(登録会員でないと閲覧できません)。
 https://community.m3.com/v2/app/messages/2503351


医療事故調査制度の特徴 「医療事故」の定義 [医療事故調査制度]

医療事故調査制度.jpg

医療事故調査制度の特徴

特徴1:
 医療機関の自主調査が原則で医療事故調査・支援センターが助ける
特徴2:
 客観的公平な調査であるべきで、法的責任や行政処分につながらない
特徴3:
 当該医療機関による報告と調査が義務化されている
=この法律で言う「医療事故」という用語、その定義は医療法第6条の10と厚生労働省令(2015(平成27)年5月8日厚生労働省令第100号「医療法施行規則の一部を改正する省令」)(p.89 資料2)で次のように決められた。
 要するに、①医療開始前の時点で、②医療途中で死ぬことが予期できたこと、③家族に説明するか、診療録に記載するか、当該医療従事者からの事情聴取で判明した、ときには「医療事故」に該当しないことになる。
 こうした「医療事故」該当の有無の判断が、病院等の管理者に委ねられているという難点があるものの、医療事故に該当するとなれば、必ず医療事故調査・支援センターに事故報告し、かつ自主調査を行わねばならないと法律化された意義は大きい。それは、従来から多くの医療事故が医療機関内限りで隠され、死亡した患者の遺族は医療事故が起きたことすら知らされなかった長い歴史を顧みて、医療機関による自主的報告かつ自主調査が医療安全の原点たるべきと考えたからである。

 【編/医療と法ネットワーク 法律家と医師が解明する・動き出す医療事故調査制度. SCICUS, 東京, 2015, pp9-13】

NEWS 23─医療事故調査制度 医療の不確実性 [医療事故調査制度]

NEWS 23─医療事故調査制度

 NEWS 23にて放送(2016.3.14)されました「医療事故調査制度」に関する報道では、この制度の現状での課題がよくまとめられておりました。
 番組冒頭にて、「医療事故は制度発足(2015年10月)当時、年間1,300~2,000件あると見込まれていたのに、この5か月間(2015年10月~2016年2月)でわずか140件に留まっている」ことが報告されました。
News23-医療事故調査制度.JPG
 番組において実際の事例として紹介されました山本さんのケースは、医療事故ではなく、「医療の不確実性」の事例だと私は感じました。


P.S.
1)医療過誤(いりょうかご) malpractice:
 診療過誤ともいい,医療行為一般の誤りをさす。医学知識の不足,医療技術の未熟,診療行為の全体としての疎漏さ,不適切な薬剤や医療器具の使用などが原因となる。具体的には誤診,診断の遅延,手術過誤,注射事故,輸血事故,誤薬使用,看護の過誤などが多い。【ブリタニカ国際大百科事典】

2)医療の不確実性:
 http://medg.jp/mt/?p=2195
 医療機関で治療を受けても思ったようにうまく治らないことがおありではないでしょうか。「どうしてこんなことになってしまったのか」ご不明な点があれば、先ずは担当の医師にお尋ね下さい。現代の医療は日に日に進歩しています。マスコミなどで「こんな病気でも治る」との紹介がなされていますから、病気や怪我をしたときに「完全に元の体に戻りたい」と願うのは当然ですし、それを医療者に期待する気持ちも良く分かります。しかし現実はほとんどが「治る例がある」というだけのことが多いのです。そして残念ながら医療には不確実性と限界があって、「やってみないとわからない」ことが少なくありません。そのために「この治療をすれば良くなります、絶対安全・大丈夫です。」という約束はできないのです。このあたりは車の修理等とは大きく違うところです。
 診察や治療の瞬間瞬間では医療者は常に最善と考える方法を選択しているのですが、後から振り返ると「ああしたほうが良かった」ということが少なくありません。たとえうまくいった手術や処置であっても、さらにより良い方法がなかったのかを繰り返し検討する事によって医療は進歩してきたのです。「医療は昔から 常に試行錯誤の繰り返しであり、かつ結果を保証するものではない」のです。そして、これからもできる限りの安全を確保しながらも試行錯誤は続き、医療は進歩していくのです。
 「いくら準備や練習をしていても、必ずよい結果が出せるものではない」というのは何も特別なことではなく、たとえばアイススケートや体操の演技、オーケストラの演奏などと同じです。「瞬間の判断を迫られること・やり直しがきかないこと」は同じですが、医療の場合は「健康と生命に直結する」ということが決定的に違うのです。

 この文章は東京保険協会の雑誌「診療研究」12月号に掲載されたものです。
 【医療ガバナンス学会 (2013年12月15日 06:00)】

医療事故調査の流れ [医療事故調査制度]

医療事故調査の流れ.jpg

 遺族と医療機関との関係で見れば、医療機関が行うのは、A)医療事故調査・支援センターへの事故報告(法第6条の10第1項)とB)事故調査及びその結果報告(医療法第6条の11第1項、第4項)である。これに対応して遺族は、A)医療事故調査・支援センターへの事故報告前に医療機関から省令で定める事項[事故日時、場所、状況、調査の実施計画の概要、調査制度の概要]の説明を受ける(医療法第6条の10第2項)ことができ、B)医療事故調査・支援センターへの結果報告前に医療機関から省令で定める事項[事故日時・場所・診療科名、病院名称・所在地・管理者氏名・連絡先、被害者性別・年齢、調査項目手法及び結果]の説明を受ける(医療法第6条の11第5項)ことができる。
 次に、医療事故調査・支援センターと医療機関との関係から眺めれば、上記A)事故報告とB)調査結果報告を医療機関から医療事故調査・支援センターが受けるのが根幹である。その上で、医療事故調査・支援センターは、病院管理者又は遺族からの調査依頼があったときは必要な調査を行い(医療法第6条の17第1項)、病院管理者に対し調査に必要な説明を求め資料の提出を求める(医療法第6条の17第2項)ことができるばかりか、この求めを拒んだ医療機関はその旨を公表される(医療法第6条の17第4項)ことになる。
 さらに遺族と医療事故調査・支援センターとの関係では、遺族は医療事故について医療事故調査・支援センターによる調査を依頼することもできる(医療法第6条の17第1項)とある。
【編/医療と法ネットワーク 法律家と医師が解明する・動き出す医療事故調査制度. SCICUS, 東京, 2015, pp8-9】

法律家と医師が解明する・動き出す医療事故調査制度―巻頭言 [医療事故調査制度]

医療事故調査制度.jpg

法律家と医師が解明する・動き出す医療事故調査制度―巻頭言

 もし不幸にも予期せぬ医療事故で身内が亡くなったら、「原因を知りたい」と願うのは家族として当然であろう。
 もし予期せぬ医療事故で患者が亡くなったら、「原因を知りたい。そして、二度と同じことを繰り返すまい」と誓うのは、真っ当な医療者であれば当然であろう。

 医療事故の原因を究明し、再発を防止するための「医療事故調査制度」が、十年にわたる紆余曲折を経て、ようやく昨年立法化され、本年(2015年)10月1日から実施されるに至った。原因究明・再発防止は、患者・医療者共通の願いである。しかし、お互いへの不信感ゆえか、その制度設立に際しては(そして設立後にも)、特に、届出の対象(入口)、調査の方法(中身)、報告の方法(出口)をめぐり侃々諤々の議論が展開された。そのなかで、届出対象にあたるかどうかの判断、院内調査に第三者委員を含めるか、報告書を遺族に渡すか等については、それぞれ、医療機関の裁量に委ねられることとなった。「それでは、制度を骨抜きにしかねない」と批判する声もある。どのような場合でも、新しい制度を導入する際には軋轢が生じるものであるが、そこでは、「小さく産んで大きく育てる」ことが大切である。
 ともかくも制度はスタートした。信頼される制度に育つかどうかは、医療機関が真撃に調査に取り組むかどうかにかかっている。本制度成立前から、「逃げず、隠さず、ごまかさず」の姿勢で医療事故に誠実に対処している医療機関も多く存在する。一部の悪質な医療者・医療機関の状況を全体の傾向かのように見て端から批判するのでは、何も生まれない。
 医療安全は、患者、医療者、法律家、ひいては国民共通の願いである。必要なときには厳しい意見を交わしつつも、社会全体でこの「医療事故調査制度」を忍耐強く見守り、大きく育っていくことを願いたい。

 2015年11月
 「医療と法ネットワーク」運営委員長   永田 眞三郎

 【編/医療と法ネットワーク 法律家と医師が解明する・動き出す医療事故調査制度. SCICUS, 東京, 2015, 巻頭言】


P.S.
 一般財団法人比較法研究センター「医療と法ネットワーク」のウェブサイトは以下です。
 http://www.kclc.or.jp/medical-legal/

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