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男性更年期障害―LOH症候群と勃起障害(ED) [LOH症候群]

https://www.facebook.com/atsushi.kasama.9/posts/604375756398774

テストステロン補充療法
(冒頭省略)
 テストステロンと性機能の横断的な研究では,テストステロンの低下程度と発現する症状を検討したものが挙げられる.それによれば,血中テストステロン値の低下につれ,まず性欲の低下,活力の低下,肥満という症状が発現し,さらに低下が進行するとうつ症状,睡眠障害,集中力の低下,糖代謝異常,ほてりが生じ,その後,EDが出現する
 …(中略)…
 LOH症候群に対する治療の第一選択であるテストステロン補充療法により,性欲や早朝勃起を含めた勃起頻度・勃起能が改善することは,これまでに多数報告がある.「加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)診療の手引き」にはテストステロン補充療法における性機能への影響に関するRCTlO編が解説されているが,そのうち8編で何らかの性機能が改善している. (以下省略)
 【辻村 晃:男性更年期障害―LOH症候群と勃起障害(ED). 日本医師会雑誌 第145巻・第2号 269-272 2016】

ミトコンドリア脳筋症 [MELAS]

ミトコンドリア脳筋症(mitochondrial encephalomyopathy)
 古賀靖敏 久留米大学教授・小児科

疾患概念
A 病態
 ミトコンドリア脳筋症はヒトのエネルギー代謝の中核として働く細胞内小器官ミトコンドリアの機能不全により,神経,筋,心臓,腎臓など全身臓器に種々の症状を呈する遺伝性進行性変性疾患である.原因は,エネルギー産生に関与する種々の遺伝子の異常であり,ミトコンドリアDNAもしくは核DNAが関与する.

B 経過・予後
 エネルギー産生系の残存活性が低いほど,低齢かつ重症型(多臓器不全)で発症し,軽症であれば成人期に臓器障害で発症すると考えられるが,加齢とともに多臓器症状は進行し,慢性進行性変性疾患の経過をとる.

症候
 2002年の厚生労働科学研究班の疫学調査により明らかにされた疾患頻度による3大病型を示す.
A メラス(mitochondrial myopathy,encephalopathy, lactic acidosis and stroke-like episodes:MELAS)
 40歳以前に,頭痛,嘔吐,痙攣,視野異常,四肢の運動麻痺,意識障害などで発症する脳卒中様発作を特徴とする.急性期の頭部画像では,脳卒中と類似した異常所見を呈するが,主な脳動脈の血管支配領域に一致せず,また,異常領域が経過とともに拡大したり消失したりする.病初期は,脳卒中様発作に伴う上記症状も可逆的であるが,発作を繰り返すうちに,明らかな後遺症として残り,最終的には梗塞様領域の脳は萎縮する.合併症に,片頭痛,易疲労性,筋力低下,るい痩,感音性難聴,外斜視,眼瞼下垂,神経症,肥大型心筋症,WPW症候群などの心伝導異常,デ=トーニ・ドゥブレ・ファンコニ症候群de Toni-Debre-Fanconi syndrome,糖尿病,低身長,甲状腺機能低下症などの多内分泌疾患を伴うことも多い.患者の80%でミトコンドリアDNAのA3243G変異を認める.時間的・空間的にこのような脳卒中様発作を繰り返し,最終的には脳血管性認知症類似の経過で寝たきりもしくは多臓器不全で死亡する.日本のMELASコホート研究では,平均死亡年齢は,小児型で15歳2か月,成人型で40歳である。

B 力ーンズ・セイヤー症候群(Kearns-Sayre syndrome;KSS)/慢性進行性外 眼筋麻痺(chronic progressive external ophthalmoplegia;PEO)
 20歳以前の発症,網膜色素変性症,外眼筋麻痺の3徴に加えて,心伝導ブロックや100mg/dL以上の高蛋白髄液症,小脳失調のうち少なくとも1つが診られればカーンズ・セイヤー症候群と診断できる.
 …(中略)…

C リー脳症(Leigh encephalomyelopathy)
 幼少期(多くは2歳未満)から発症する精神運動発達遅滞,退行,食事摂取障害,痙攣,呼吸の異常,眼運動異常などを特徴とし,心,筋,腎,肝などの多臓器の症状を示す重症型である. (以下省略)
 【編/水澤英洋、鈴木則宏、梶 龍兒、吉良潤一、神田 隆、齊藤延人 著/古賀靖敏:今日の神経疾患治療指針・第2版, 医学書院, 東京, 2013, pp791-797】

シロスタゾールとアミロイドβ [シロスタゾール]

朝日新聞アピタル「ひょっとして認知症-PartⅡ」第72回『軽度認知障害 物忘れがひどくなったら』(2013年3月6日公開)
 年度が替わる前にお伝えしたい話題がありましたので復習シリーズをいったんお休みしておりましたが、再び復習シリーズを再開したいと思います。
 復習シリーズのテーマも残すところあと5つです。5つのテーマとは、「軽度認知障害」「アルツハイマー病の予防」「アルツハイマー病の治療薬」「認知症終末期への対応」「認知症のケア」です。

 今回は、軽度認知障害についてお話したいと思います。
 アルツハイマー病(AD)の進行を観察していますと、認知症ではないものの、知的レベルの落ち方は正常老化とは言えない時期が、アルツハイマー病と診断が確定する数年前から認められるケースが多いことが分かってきました。この時期が、軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment;MCI)と呼ばれる時期で、アルツハイマー病の早期診断という観点からたいへん注目されています。
 独立行政法人国立長寿医療研究センター病院の鳥羽研二院長は、老年医学雑誌の特集「認知症治療の最前線─包括的ケアを踏まえた新しい治療戦略─」の序文において、MCIの頻度について以下のように述べております。
 「長寿科学研究朝田班による認知症高齢者の実態調査の結果は、国民を震撼させる結果であった。高齢者の14.4%が認知症であるという罹患率は、高齢者人口に当てはめると400万人を超え、予備軍である軽度認知障害(MCI)も同数存在することが初めて明らかになった。
 この結果は、認知症が新たな『国民病』であることを明確に示している。」(鳥羽研二:認知症治療の最前線─包括的ケアを踏まえた新しい治療戦略─ 序文. Geriat Med Vol.51 5-6 2013)

 それではまず、軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment;MCI)の診断基準についてご紹介しましょう。
1)物忘れがひどいという自覚症状があり、他の人からもそれが指摘されている
2)記憶検査で年齢に比し異常な記憶力低下
3)全般的な認知機能は正常
4)運転や家計などの日常生活の能力は保たれている

 ADの基礎的な研究が進み、根本的な治療法である疾患修飾治療(disease-modifying therapy;DMT)の研究開発も進んでいます。開発中の新しい治療方法の効果を臨床試験で確認するには、ADの発症・進行過程を客観的に評価することが極めて重要な課題でした。
 このような背景があって、2005年より米国においてADNI(Alzheimer's Disease Neuroimaging Initiative)と命名された臨床観察研究が始まりました。
 ADNI研究では、健常人、軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment;MCI)、早期ADを対象として、2~3年間、認知機能評価、MRI検査、PET検査、血液・髄液検査などを実施します。
 日本においても2007年に、東京大学大学院神経病理学の岩坪威教授が主任研究者となってJapanese-ADNI(J-ADNI)が発足し、2008年より全国38施設で研究が開始されています。
 J-ADNI(ジェイ・アドニ)における対象者は、60~84歳の健常人150人、MCI300人、早期AD150人で、2~3年の間、半年~1年間隔で診察を受けて上記の検査が実施されます。AD患者からMCI患者へと臨床試験の対象を早めることがADNIの目的であるため、MCIの解析は非常に重要であり対象人数が他よりも多く設定されています。
 日本でのADNI開始は米国よりも遅れましたが、その間にアミロイドPETの整備が進み、J-ADNIにおいてはアミロイドPETが高率に実施(約4割)されていることが大きな特徴となっています。
 これらの研究を通じて、最も信頼性の高い画像診断方法、認知機能検査、血液・髄液バイオマーカーの確定を目指しています。
 ADでは、アミロイドβというタンパク質が脳内に過剰に蓄積することが引き金となって神経細胞死が起き、認知症を発症すると考えられております。PET検査を用いると、そのアミロイドβを検出することが可能ですので、超早期診断(発症前も含めて)としてのPET診断がたいへん注目されています。

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MCIの症状(編集/三村 將・飯干紀代子 著/岡 瑞紀:認知症のコミュニケーション障害─その評価と支援 医歯薬出版, 東京, 2013, pp121-122):
 人や物の名前が出てこない、忘れっぽい、とっさに思い出せない、手帳を見ないと予定がわからない、覚えていられない、新しいことが記憶できない、言いたい単語がみつからない、漢字が書けない、物の置き忘れ・しまい忘れ・探し物が増える、人の話を聞きながら次に話すことを考えるなど複数のことを同時に行うことが難しくなる、複雑な内容になると1回で理解できない、注意をうまく分配できない、集中力が続かない、元気がない、落ち込みやすくなる、傷つきやすくなる、イライラしやすい、だらしなくなる──
 おおむねこのような状態が、日常生活を大きく妨げない程度にみられる。これらは健常者でも時にみられるため、頻度や程度をみながら判断していかねばならない。

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MCI患者の行動(編集/三村 將・飯干紀代子 著/岡 瑞紀:認知症のコミュニケーション障害─その評価と支援 医歯薬出版, 東京, 2013, p122):
・相手に理解してもらおうと繰り返したり、理屈を説明する
・自分の話せる話題に話を持っていく
・躁的防衛をして冗談を言ったりおちゃらけたりする
・「頭が変になった」「年だから」と言い訳する
・怒る
・自己顕示する
・「正常」な状態を必死に守ろうとする
・「昔の自分」にしがみつく
・申し訳なさそうにその場を離れる
・必要最低限のことしか発言しない
・対人交流を避ける
・配偶者や家族を側に置きたがる
 これらのことは、前述の「MCIの症状」がもしも自分の身に起きたら、自分はどうやって生活を乗り切っていこうとするかを少し想像してみると、理解できる行動も多いのではないだろうか。また、どんな行動をとるかは人それぞれで、元々の性格傾向や話し相手との関係性・相性によっても変わることにも納得がいくだろう。

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 「抗血小板薬のシロスタゾールは抗血小板作用や脳血流増加作用のほかにcAMP response element binding protein(CREB)のリン酸化を介して脳内ドパミンの賦活や脳内シグナルの改善をもたらし、PSDやアパシーに有効であることが期待され(三村 將:パーキンソン病の認知機能障害とその対応. 神経心理学 Vol.23 166-175 2007)、さらなる研究が進められている。」(加治芳明、平田幸一:脳卒中後のdepression. 神経内科 Vol.79 57-66 2013)

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 2014年5月19日に放送されましたNHK・Eテレ「きょうの健康」(https://pid.nhk.or.jp/pid04/ProgramIntro/Show.do?pkey=001-20140519-33-06983)では、「メディカルジャーナル―認知症 新発想で挑む」と題して、MCIからアルツハイマー病へ移行を予防する最前線の研究構想について、国立循環器病研究センターの猪原匡史(いはらまさふみ)脳神経内科医長が出演し解説されました。
 国立循環器病研究センター(国循)が2014年2月27日、洲本伊月病院、先端医療振興財団との共同研究により、脳梗塞再発予防薬として広く用いられている抗血小板薬「シロスタゾール」が認知症の進行予防にも有効であることを明らかにしたと発表した(http://news.mynavi.jp/news/2014/02/28/170/)ことを受けての報道となったようです。

 猪原匡史先生がNHK・Eテレ「きょうの健康」において解説されましたポイントを以下に列記致します。
1 ドネペジルを服用しているMMSE 22~26点の軽度認知症の人を、シロスタゾールを服用している群と服用していない2群に分けて検討してみたところ、MMSE低下/年がシロスタゾール無し群では-2.25点/年であったのに、シロスタゾール有り群では-0.5点/年であり80%の進行抑制がみられた。
 猪原匡史先生は、これは、「アミロイドβが血管の壁にたまってくる『脳アミロイド血管症』にシロスタゾールが好影響を与えたものと考えています」と番組の中で語っておられました。
2 ラットの実験においては、脳血流が低下するだけで、海馬の体積が約20%減少することが分かっています。
3 シロスタゾールの主な作用は以下の2点です。
a 脳の血液循環の改善
b 脳の老廃物であるアミロイドβの排出を改善=脳にはリンパ管がなく、血管内を通してだけではなく、血管壁の平滑筋の間を通っても老廃物が流れていく。シロスタゾールの主な副作用として「頭痛」があり、それは血管が広がることに起因するが、その血管への作用により血管壁を通しての老廃物の排出促進ということに繋がるのではないか。
4 以上述べたようなシロスタゾールの作用は進行したアルツハイマー病においては効果が期待しがたく、MCI段階の方に対して臨床試験を実施し、2年間の追跡調査を行って効果を確認したいと考えている。
5 臨床試験は今秋より東京、三重、京都、大阪、神戸、倉敷の医療機関にて実施を検討しております。

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